IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

83 / 258
一夏達は火影と海之の案内でESCに、そして二人の叔母でありESCの社長でもあるレオナと出会う。レオナの強烈な性格にやや引き気味の一夏達だったが、彼女もまた二人の事を深く思っている事を知る。

「自分の分まで二人を助けてやってほしい」

彼女の願いを聞いた一夏達は二人の助けとなる事をレオナに約束し、別れたのであった。


Mission72 意外な来訪者 

ESCへの訪問とその社長レオナとの対面から翌日。スメリア滞在は四日目に突入していた。スメリアには一週間の滞在予定であり、明々後日には帰る予定である。残った時間を有効に使いたいと一夏達は今日は何をしようか朝食を終えて考えていた。

 

本音

「それで今日は何をする~?」

シャル

「折角だからプールに行くのはどう?あっみんな水着持ってきてる?」

ラウラ

「ああ抜かりはない」

「臨海学校の時はあまり泳げなかったからな。私も賛成だ」

「私も賛成~!」

火影

「…鈴、前みたいな失敗すんなよ?」

「プールではしないわよ!」

(…それに寧ろ得したっていうか)

一夏

「失敗って?」

「な、なんでもない!」

セシリア

「さすがにプールではサンオイルは難しそうですわね」

 

どうやら今日の予定はプールに決まりそうだった。とその時、

 

ギャリソン

「…失礼致します。海之様、お客様が御見えでございます」

海之

「客人?名前は?」

ギャリソン

「それがどうしてもお名前を申し上げられませんでして…。皆様を訪ねて来られたと。皆様と同じ位の女性の方でございます。あと青色の髪をしてらっしゃいますね」

火影

「海之の名前を知ってて僕達と同じ位で青い髪の少女…!海之!」

一夏

「まさかそれ!」

海之

「…直ぐに行く」

 

そう言うと一行は玄関に向かう。そして、

 

「…驚いたぞ」

シャル

「本当…」

海之

「……簪」

「えへへ…」

 

青い髪の少女とは……やはり簪だった。

 

本音

「かんちゃん~!?」

「本音、それにみんな。…来ちゃった」

一夏

「マジ驚いたぜ!」

ラウラ

「全くだ。どうやってここまで来たのだ?」

「昨晩の飛行機で来たの。だからスメリアに来たのは昨日だったんだけどあまり遅いと迷惑かなと思ってその日はホテルに宿泊して。そこからはタクシーで来たんだよ」

セシリア

「そうだったんですの…。お一人で?」

「ううん。お手伝いさんが一人来てくれたよ。今はホテルにいるんだ」

「にしても思い切った事するわねー!」

海之

「…簪。家は大丈夫なのか?」

「…うん。最初は無理かなと思ってたんだけど…でも来たかったから行きたいって伝えたの。…そしたら許してもらえた」

本音

「良かったねかんちゃん~!」

火影

「…まぁ許してもらえたんなら良いか。歓迎するぜ簪」

「ありがとう火影くん」

海之

「とにかく荷物を置いてくるといい。ギャリソン、頼む」

ギャリソン

「畏まりました、海之様」

ラウラ

「簪。水着を持ってきているか?早速だがこの後プールに行く予定だ」

「うん。大丈夫だよ」

 

そして簪はとりあえず荷物を簡単に整理し、その後全員揃って街にあるプールに向かう事になった。因みにこの日の「火影の後ろジャンケン」の結果は行きが本音、帰りが鈴であった。

 

 

…………

 

一行が来たのはスメリア最大のプール。ウォータースライダーやアスレチック、さらには競泳用のプールも置いていて規模としては結構大きい。着替えを終えた一行はエリア入口を超えてすぐのパラソルエリアで合流した。

 

「やっぱ凄い人ねー」

本音

「すご~い!滑り台やアスレチックまであるよ~」

一夏

「さっそく泳ごうぜー!」

「あ、一夏待て!」

セシリア

「私達も行きますわ!」

 

一夏達は早速プールへと繰り出した。残ったのは火影、海之、簪の三人。

 

火影

「やれやれ、元気なこった」

海之

「…どうした簪。移動の疲れが出たか?」

「ううん、大丈夫。海之くんは泳がないの?」

海之

「なに、時間はある。ゆっくりしても良いだろう。簪こそ行かないのか?」

「…うん。もう少ししたら行こうかな」

(…久しぶりだし…もう少し一緒にいたい)

火影

「…それじゃ僕も行くか。簪、頑張れよ~」

「…へっ?ひ、火影くん!」

 

そう言って火影もプールに繰り出そうとした時だった。突然プールに向かった鈴が戻って来た。

 

「火影!ちょっと来て!」

火影

「な、なんだよ鈴」

「良いから早く!」

 

そう言うと鈴は火影を引っ張って行ってしまった。

 

海之

「…?俺も行くか。行けるか簪?」

「うん」

 

海之と簪も後を追いかけた。

 

 

…………

 

…辿り着いたのはある大きいウォータースライダーだった。それはこのプールの中でも全工程を数分かけて巡る一番大きいスライダーだった。そこには…、

 

シャル

「来ると思ったよ鈴」

本音

「ずるいよ鈴~」

「あ、あはは…」

 

シャルロットと本音がいた。会話からしてどうやら待ちかまえていた様である。鈴に全速力で引っ張られてきた火影は既にややお疲れだった

 

火影

「つ、疲れた…」

海之

「鈴。このスライダーに何かあるのか?」

「…あっ、もしかして…あれ?」

 

簪が指さしたのはとある看板。

 

「夏休み特別企画!!二人乗りの特別ボードで夏の想い出と互いの仲を深めよう!!」

 

シャル

(一緒に遊んでいたのに突然いなくなったからなんでだろうと思ったら…抜け駆けは駄目って鈴も言ったよね?)

本音

(そーそー!)

(…はい)

 

どうやら鈴は火影と一緒にこれに参加したかったようである。

 

海之

「二人乗りのボードか…。なら火影が三回乗ってお前達は一回ずつ乗れば良いではないか」

火影

「いやいや三回も乗ったら僕でも疲れるって…」

「あっ、でも二人乗りについては一人一回って書いてあるよ」

海之

「…つまりこれに限定するなら火影は一回のみということか」

鈴・シャル・本音

「「「むぅ~…」」」

 

火影と一緒に乗りたい三人は互いに目に見えない戦いを繰り広げていた。そして火影は、

 

火影

「それなら四人乗りの方にすれば良いじゃねぇか?これなら全員一緒に乗れんだし」

 

確かにもうひとつ四人乗りボードのコースもある。

 

「…そうね。そうしましょ。それが一番平和だわ」

シャル

「うん。みんなで一緒に乗ろ!」

本音

「私もそれで良いよ~!」

 

鈴達と火影は四人乗りボートのコースで回る事になった。すると簪が、

 

「…ねぇ海之くん」

海之

「なんだ?」

「…あの、もし良かったらでいいんだけど…、私、海之くんと二人乗りボードに…乗りたい…」

 

簪は頬を紅くしてそう言った。

 

海之

「……」

「…やっぱり駄目?」

海之

「…いや、構わん。俺で良いならな」

「ほ、ほんと?…ありがとう」

 

簪は嬉しそうだった。

 

鈴・シャル・本音

「「「良いなぁ~…」」」

 

 

…………

 

スライダーのスタート地点は二人乗りと四人乗りで入口が別れており、火影達と海之・簪は途中で別れた。二人乗りボードは透明なビニールの球体の中に二人乗りのボードが固定されているという一風変わった物だった。簪は今まで以上に直ぐ隣に海之がいる状況にやや緊張していた。

 

海之

「簪、持ち手から手を離すなよ」

「う、うん…」

 

そして二人が乗るボールはゆっくりとスタートした。

スタートしてすぐボールは100メートル以上ある真っすぐなコースを下って行き、その後渦巻きの様なコースへと入って行く。最初の加速で勢いがついていたのでボールも大きく揺れたが簪は踏ん張っていた。

 

「~~~~!」

 

やがて渦コースの真ん中に来ると今度はそのままトンネルに入る。トンネル内部は虹色に輝くライトが点灯し、暗くはなかったが先はまだ続くようだった。

 

「綺麗…」

 

やがてトンネルを抜けて少し行くとそこは先ほどと同じような渦巻のコース。しかし先程よりも勢いがついて速い。どうやらトンネルを巡っている間にスピードが付いていたようだ。先ほど以上に激しく揺れる。海之は大丈夫そうだが簪はやや不安そうだった。

 

海之

「大丈夫か簪?」

「だ、大丈夫!」

 

二つ目の渦巻きを終えるとそのまま真っすぐ下って行き、こんどはそのまま円錐形のトンネルへと流れつく。先ほどの渦と真っすぐなコースを下って来たためかこちらも勢いが付いていてボールがやや傾いてしまった。

 

ザバーンッ!

 

「!キャアッ!」

 

その勢いで簪が持ち手から手を離してしまった。

 

海之

「簪!」

 

一瞬放り投げられそうになった簪の手を海之が掴み、そのまま自分に引き寄せる。自然と簪は海之に抱きしめられる形となる。

 

「!!」

海之

「その腕ではもう無理だ。ゴールまでもう少しだからこのまま掴まっていろ」

「あっ…」

 

ボールは円錐コースからスラロームコースへ入り、そのまま三回目の渦コースへ突入。…そして中心に着くと今度はそのまま40メートル程のほぼ垂直のフリーフォールへと突入した。

 

「キャアァァァァ!」

 

ザバーンッ!……

…着水し、ボールはゆっくりプールに向けてプカプカ流れて行く。どうやら今のが最後の仕掛けだったらしい。

 

「……」

海之

「大丈夫か簪?」

「う、うん。大丈夫…!」

 

簪は自分が抱きしめられている形になっていたのを思い出した。

 

「ご、ごめんね海之くん!あ、ありがとう!もう大丈夫だから!」

海之

「そうか」

 

そう言って簪は海之から離れた。

 

(…び、吃驚した…。…また海之くんに迷惑かけちゃったかな?…どうしよう…)

 

経緯とはいえ抱きしめられた喜びともしかしたら海之に迷惑をかけたかもという不安で簪の心は穏やかではなかった。するとそんな簪を察したのか海之が言った。

 

海之

「…簪。もし迷惑かけたとか考えているなら、気にしなくて良い」

「!……ありがとう」

 

海之の言葉に簪はほっとした様子だった。

 

 

…………

 

その後全員集まって昼休憩を取る事になり、パラソルエリアに集まっていた。

 

「…美味しい」

「だろう?でもギャリソンさんの料理はもっと美味しいぞ」

火影

「そういや簪はまだ食ってなかったな。日本に帰る前位に食っていけ。といってもレオナさんが来るから頼まなくても良いか」

一夏

「そういや昨日聞く暇なかったんだけど…火影と海之ってひー坊みー坊なんて呼ばれてんだな♪」

セシリア

「私も驚きましたわ。可愛いらしいですわね♪」

海之

「…俺はずっと止めてほしいと言ってるんだがな」

「ひ、ひー坊?」

火影

「…そっとしておいてくれ」

 

そんな中鈴達が簪にそっと話しかける。

 

(ねぇ簪~どうだった?海之と二人きりで乗ってみて)

(えっ!!…うん、…良かった…よ…)

 

簪は真っ赤になってそう言った。

 

シャル

(羨ましいな~)

本音

(ラウランにはヒミツにしておくねかんちゃん♪)

(う、うん…)

ラウラ

「…?どうした四人とも」

シャル

「な、なんでも無いよ~」

 

そんな調子で楽しく時は過ぎて行った…。

 

…………

 

楽しい時間はあっという間に過ぎ、時刻は夕方前にさしかかっていた。それぞれ思い切り遊んでくたくたな中、火影がみんなに話しかける。

 

火影

「…みんな、少しだけ付き合ってもらって良いか?」

「私は別に良いけど?」

 

他のみんなも同意見だった。

 

火影

「ちょっと行きたい所があるんだ」

シャル

「行きたい所?」

海之

「…ああそうか」

 

そう言うと火影と海之はまず花屋に立ち寄って花を買い、目的地に向かって走り始めた。

そして約10分程走り、一行はその場所へと到着した。そこはスメリアの街を見渡せる位の高台だった。沈みゆく夕陽がとても美しい。

 

セシリア

「なんて美しいんですの…。それに街並みもはっきり見えますわ」

ラウラ

「本当だな…。昔は何も感じなかったが今はとても美しく感じる」

「ねぇ火影。ここになにがあるの?しかも花まで買って」

火影

「すぐわかるさ。…ほら、あれだ」

 

火影が指さしたのは高台の上に見えるひとつの石だった。それはまるで…。

 

一夏

「…なぁ二人共、あれって…」

「もしかして…」

海之

「……」

 

そこにあったのは墓だった。そこにはふたつの名前が刻まれている。

 

「アルティス・藤原・エヴァンス そしてその愛妻 雫・藤原・エヴァンス」

 

「二人の…お父さんとお母さんの…」

セシリア

「とてもたくさんのお花とお供え物ですわ」

火影

「ああ…毎日誰かしら来てくれてるらしくてな。管理人が大変だって言ってたよ」

「…本当に愛されていたのね、みんなに」

「しかし何故この様な所に二人の墓を…?」

海之

「父と母の願いだそうだ。立派な墓なんていらないから自分達が死んだ時はこの島で一番美しい場所に一緒にしてほしい。とな」

火影

「…だがここには二人の遺体は無い。つーか誰の亡骸も見つかってないそうだ。まぁあれ程の事故だったからな、当然だ。だからせめて二人の願いだけでも叶えてあげたくてな」

シャル

「火影…」

本音

「ひかりん…」

 

そして火影と海之は花を供え、祈りをささげる。そして一夏達も祈りをささげた…。

 

火影

「……さて、帰るか。付き合わせて悪かったな」

シャル

「ううん、そんな事無いよ。寧ろ嬉しかった」

ラウラ

「うむ。お前達の親なら私にとっても親だからな。来て当然だ」

「あんたそれ大袈裟よ。でも来て良かったというのは本当よ」

「うむ。私も同じ気持ちだ」

セシリア

「私も今度お家に帰りましたら真っ先に母と父に会いにいきますわ」

本音

「なんか私もお母さんとお父さんに会いたくなったな」

「ふふ。きっと喜ぶと思うよ」

火影

「……ありがとよみんな」

一夏

「……親か…」

 

ここでも一夏は自分の両親について考えている様だった。

 

海之

「…一夏。色々あるだろうが…悲しむ事はない。お前にはまだ織斑先生がいる」

一夏

「!…そうだな。ありがとよ海之」

海之

「気にするな。…帰ろう」

 

そして一行はその場を離れた。火影と海之は一行の最後尾で墓に向かって一瞬振り向き、再度皆と共に歩き始めた。




時間を開けてしまいました。
今後もこういう事よくあるかもしれませんが頑張ります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。