IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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スメリア滞在五日目。この日一夏達は夏季休暇の課題を行っていた。そんな中エヴァンス邸の庭に謎の物体が飛来、墜落してくる。火影達が駆け付けるとそれはセキュリティに掛からない様文字通り自由落下で墜落してきた束とクロエのロケットだった。しかし束とクロエは墜落などものともせず、火影達との再会を喜ぶ。何故来たのかみんなが尋ねると、以前約束(一方的に)した火影達の家に泊まりに来たとの事。そしてもうひとつ、束に依頼していた簪の魔具、キングケルベロス(通称ケルベロス)を渡すためだった。


Mission74 ケルベロス再誕

エヴァンス邸 アリーナ

 

ここはエヴァンス邸の敷地内にある簡易アリーナ。簡易といっても観客席が小さいだけで規模としては競技を行うには十分な大きさがある。そこに一行は来ていた。

 

「火影達の家ってこんなアリーナもあるんだ」

本音

「凄いね~!」

セシリア

「シャルロットさんのお家にもあるのではありませんか?」

シャル

「会社にはあるけど家には流石に無いよ」

ラウラ

「でもなんでお前達の家にこんなものがあるのだ?」

海之

「父が学校や競技選手達のために用意したのだ。球技や陸上競技を行うために必要だとな」

「本当に良い人達だね。みんなのために建設するなんて」

 

少し遅れてキャリーケースを運んできた一夏達が来た。

 

一夏

「つ、疲れた…」

「お疲れ~いっくん♪」

クロエ

「ありがとうございます。織斑様」

「…姉さん。ここまで来るなら最初家に運ばなくても直接ロケットから運べばよかったじゃないですか」

「…あっそうか!メンゴメンゴ♪」

火影

「まぁ元気出せ一夏。後で課題手伝ってやっから」

一夏

「おう!もうすっかり元気になったぜ!」

「…お前って本当に単純だな…」

「…さて、それでは一同とくと見よ!」

 

ガチャッ、プシューッ!

 

束はアタッシュケースを開ける。その中には三本の棒が大きい輪で繋がれている一見フレイルやヌンチャクの様に見える物があった。棒の先端部には美しい結晶がはめ込まれている。

 

ラウラ

「これがケルベロスか」

セシリア

「美しいですわね…」

海之

「簪、手に取ってみろ」

「う、うん」

 

そう言うと簪はケースからケルベロスを取り出す。

 

「!すごく軽い…」

「それじゃ…えっと御免、君の名前は?」

「あ、す、すいません。更識…更識簪です…」

「了解!んじゃこれからはかんちゃんと呼ぶね♪んじゃかんちゃん、ケルベロスの使い方を説明するね」

「は、はい。宜しくお願いします」

「……」

本音

「どうしたのしののん?」

「…いや、姉さんがあんな気軽に話かけるのが…信じられなくてな」

一夏

「ああ俺もそれあるかも。今までの束さんなら考えられない事だからな」

シャル

「そうなの?僕は以前の束さんは知らないから分からないけど」

「私もだけどそんな感じの人には見えないわ」

火影

「気になんなら後で話してみたらどうだ?今日は束さんも泊るんだし」

「……」

 

 

…………

 

簪は学園から貸出てもらっている訓練機を持ってきていた。

 

「んじゃケルベロスの使い方を説明するね!クーちゃんも宜しく!」

クロエ

「はい束様。先ほどもお話しましたがこちらのケルベロスは3つの形態と力を持っています。現在の形態がフレイル形態、そして氷の力を持ちます」

「氷の力?」

海之

「ISのSEを使って空気中の水分を氷に変え、攻撃や防御に利用する。簪。棒の一本を持って振るってみろ」

 

簪は言われた通りのやり方でケルベロスを振るってみた。すると簪の周りに冷気が発生し始める。

 

ビュオォォォォォォォォ…

 

一夏

「…さぶ!」

海之

「簪、ケルベロスを地面に思い切り打ちこめ」

「う、うん!」

 

ドゴォッ!ビキィィィィィィィィィン!!

 

火影・海之・束以外の全員

「「「!!」」」

 

簪は言われた通り地面に思いきりフレイルを打ち込む。すると目の前に瞬く間に氷の柱が出現した。

 

本音

「すご~い!」

セシリア

「何もないところから氷の柱が!」

「大成功~!」

クロエ

「見ての通りです。それを勢いよく打ち込むと氷柱を形成し、氷の槍でダメージを与える事ができます。相手に連続で打ち込むと氷漬けにして動きを封じる事もできます」

「こ、氷漬けって…」

海之

「…さて次だ。簪、中央に大きな輪があるだろう?それに腕を通して振り回してみろ」

 

簪は棒を繋いでいる大きな輪に腕を通し回転させる。すると簪を囲むように空気中の水分が凍り始め、バリアの様になった。

 

「まるで氷のバリアだな」

海之

「その通りだ。実弾や爆発によるダメージを軽減できる。SEの消費量によって自分だけじゃなく広範囲にも使える様になる」

「…凄い…」

 

簪自身が一番驚いている様だ。

 

「フレイルについてはとりあえずこんな感じだね♪んじゃ次行くよ。かんちゃん、フレイルから別の形態に変形させてみて」

「…どうやってやるんですか?」

クロエ

「更識様。ケルベロスはISの世代に関係なくインターフェースを展開できます。スティック、三節棍、そして今のフレイルから形態を選択してください」

「は、はい」

 

簪はケルベロスの形態をスティックに合わせた。すると瞬く間にフレイル上から棒状に変形し、

 

ボオォォォォォォォォォッ!

 

先端から炎が噴き出ているスティックとなった。

 

一夏

「す、すげぇ!」

ラウラ

「ああ凄まじい火力だ」

「簪!あんた熱くないの!?」

「う、うん。私は全然…」

シャル

「…もしかして使い手は何も感じないのかもしれないね。さっきの冷気も僕らと違って簪は平気だったし」

海之

「簪。その形態の基本戦術は炎を纏った棒術だ。打ち・突き・払い・殴ぐ等千変万化の攻撃を繰り出す。長刀を使っているお前には一番使いやすいだろう」

「あとSEをチャージして相手に打ち込むと周辺を巻き込む爆発を起こすよ♪多数を相手の戦い向きだね」

ラウラ

「先程の氷のフレイルはどちらかといえば一対一の戦い。炎の棒は一対多数向きか」

「スティックに関しては以上だね。では最後に三節棍行ってみよ~♪」

本音

「ねぇさんせつこんってなに~?」

「中国の武器で二尺位の棒を三本、鎖でつないだものよ。扱いがかなり難しいんだけど…火影は使えるのよね?どうやって覚えたの?」

火影

「ああ自分で会得したんだ」

クロエ

「では更識様。ケルベロスを変形させてください」

 

そう言われて簪はケルベロスを変形させる。すると、

 

ビリリリッバチチチッ

 

今度はケルベロス全体に紫色の電流が走った。

 

一夏

「うわ!」

セシリア

「び、吃驚しましたわ!」

「大丈夫か簪!」

「う、うん。驚いたけどこれも何ともない。…あの火影くん。私まだ三節棍の事知らないし、教えてもらって良い?」

火影

「ああそうだったな。んじゃこれに関しては僕が見せてやるよ」

 

そう言って火影は簪からケルベロスを受け取る。その時火影は心の中で「久々だなワンちゃん」と思った。

 

「んじゃひーくんによる三節棍口座はじまりはじまり~!パチパチッ」

火影

「…簪、さっき鈴も言ったが三節棍っつーのは三本の棒を鎖でつないだ物でいわば長い棒を短く三本の棒に分けた物と思えば良い。ただ短くなった半面三本共しっかりコントロールしねぇと振り回したりした時自分に当たっちまったりするから気をつけろ」

「うん」

火影

「で、こいつの持ち方だが基本は4つだ。真ん中と端の棒を持って端のもう一本をフレイルの様に振るうやり方。真ん中の棒を両手で持って振り回し、両端の棒で打つやり方。片側の端の棒を持って広範囲に振り回すやり方。そして最後に両端の棒を持つやり方だ。これは主に防御の持ち方だな」

シャル

「本当に難しそうだね」

火影

「で、見ての通りこいつは超電圧の電流を伴なった雷の三節棍だ。今から見せるから良く見てろ」

 

そして火影は三節棍形態のケルベロスを振るう。その中で雷を伴った弾や放電による攻撃。さらに三節棍を前に広げて電磁波によるシールドを張ったりして見せた。

 

本音

「ひかりんかっこいい~!」

「ほんとに使いこなしてるわ」

一夏

「すげーな火影、あんな武器まで使いこなせるなんて」

火影

「まぁこんなもんだ。簪、とりあえず今は三節棍とこいつの特性を掴む訓練からだな」

「ありがとう火影くん」

「ふぅ~、これでケルベロスの説明は取り合えず終わったね!お疲れかんちゃん♪」

クロエ

「お疲れ様でした」

「あ、はい。ありがとうございます。篠ノ之博士、クロエさん」

海之

「簪、どうだ?使えそうか?」

「凄く難しいそうとは思う…、けど頑張るよ。折角海之くんや篠ノ之博士達が造ってくれたんだもん」

 

言葉では不安そうだが簪の目はやる気に満ちていたので海之や火影は大丈夫だろうと感じていた。

 

火影

「…それじゃ戻るか。一夏の課題手伝わなきゃなんねぇし」

一夏

「…げっ!途中だったの忘れてた!」

海之

「束さんとクロエもお越しください」

「ありがとー♪」

クロエ

「御世話になります」

「………姉さん」

「?な~に箒ちゃん。あっ!もしかしていっくんへの告白」

「違います!…そうじゃなくて…」

「?」

 

 

…………

 

その日の夕方、エヴァンス邸浴場

客室にはそれぞれお風呂が備え付けられているが屋敷の広い浴場もある。その中の湯船に二人の人物がいた。

 

「……」

「いや~!我が最愛の妹である箒ちゃんからお誘いを受けるなんてほんと久しぶり!気分爽快だね~♪」

「…話がしたいとは言いましたが一緒にお風呂に入りたいとは言ってません」

「気にしない気にしない♪裸の付き合い♪全部さらけ出して話そうよ♪」

「…ハァ」

 

あの後箒は束と二人きりで話がしたいと言ったのだが束が何を思ったか一緒に風呂に入りたいと言い出したのだ。

 

「それで箒ちゃん。話って?」

「……大した事では無いんです。ただ…姉さん変わりましたねと思って」

「えっ本当?嬉しいな♪まだ身長伸びたんだ!」

「そういう事ではありません。…なんというか、昔に戻ったというか…」

「?どゆ事?」

「…はっきり言いますね。あの…白騎士事件を起こしてからの姉さんは…自分以外の事に全く関心が無い。命を命とも思わない。交流があるのは私や一夏や千冬さんの三人だけ。私から見ればまさに異常でした。なんでこんな人が自分の姉なんだろうって思った事も何回もあります」

「いや~それほどでも♪」

「…ハァ。…でも先程や先月の臨海学校の時の姉さんは…私達以外の人とも普通に喋ってたり火影と海之のお願いも聞いたりして、今日なんて殆ど話もした事が無い簪に武器の使い方を教えたりなんかしてましたし。私も一夏も正直驚きました。今までの姉さんなら考えられない。まるであの事件を起こす前、私がまだまだ小さい頃の、ずっと昔の姉さんに戻ったみたいだって。…何かあったんですか?」

「ん~~~~~何にも変わって無いと思うんだけどなぁ…。まぁ強いて言えば……ひーくんとみーくんかなぁ」

「火影と海之?」

「うん。実はね~…」

※詳しくはMission04をお読みください。

 

 

…………

 

「…というわけ♪」

「火影と海之が…、そして二人の御両親が…」

「うん。…束さんはあの時の自分の気持ちなんて絶対誰にも理解してもらえてないって思ってた。でもアルティスさんと雫さんは全部わかっていた上で私を許してくれた。ひーくんとみーくんもね。それを聞いた時思ったんだよ。束さんがISなんて造らなければあの人達は今も幸せに暮らせてたんだろうなって。そしたらめっちゃ泣けてきて。本当に心から謝ったよ。あんなにごめんなさいを言ったのは初めてじゃないかな」

「……」

「だから決めたんだよ。束さんを信じてくれたアルティスさんと雫さんのためにもISを正しい方向に必ず発展させてみせるって。そしてひーくんとみーくんの力になるって。ひーくんみーくんの友達なら束さんにとっても友達だからね♪だから協力は惜しまないよ」

「…姉さん…」

 

箒は心の中でかなり驚いていた。しかし同時に僅かだが何とも言えない嬉しい様な感情があったのも事実だった。

 

「…で箒ちゃん。いっくんには何時告白するの~?」

「…それがなければもう少し…」

 

先程の嬉しさが一気に引いてしまった様に感じた箒だった。

その後束とクロエ、簪、更にレオナも加わり、全員でギャリソンの料理を堪能した。特に束はその余りの美味しさにクロエに弟子入りを指示したが箒が全力で阻止した。そんな箒は相変らず苦労していたが、以前とは少し違った目で姉を見ることができる様な気もしていた。


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