IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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スメリア滞在五日目にして突然やって来た束とクロエ。その目的はエヴァンス邸への宿泊と簪に魔具「ケルベロス」を渡すためだった。他人のために武器を造る、そんな束に違和感を覚えた箒は思い切って二人で話す事を持ちかける。その中で束は昔、白騎士事件の様な大罪を起こした自分を信じてくれたエヴァンスとその妻雫。そして彼等の子供である火影と海之のために変わる事を決めたと打ち明ける。意外な答えに箒は驚くが同時に嬉しくもあった。


Mission75 スメリア最後の夜

スメリア滞在は最終日前日の六日目を迎えた。明日は昼過ぎに日本に帰国予定のため、夜は今日が最後である。

前日の五日目の夜は束とクロエ、更に火影達の叔母であるレオナもやって来て今まで以上に賑やかであった。しかも束とレオナが妙に意気投合してしまい、ギャリソンまで巻き込んで派手な飲み会まであった。もちろん少年少女達はソフトドリンクだったが。そんな日の翌朝、火影達がやや遅くに起きてきた時には既に束とクロエ、そして彼女らのロケットも無く、代わりに彼女らの部屋には手紙が置いてあった。

 

「おっはよー!!昨日は本当に楽しかったよ!束さんもクーちゃんもあんなに笑ったのは久しぶりだった!また学園にも顔出すからね!あ、朝ごはんなら心配いらないよ。ギャリくんがお弁当用意してくれたから♪レオナっちにも宜しくね~!

束さん&クーちゃんより♪」

 

…どうやらみんなが起きてくる前に二人は出発した様であった。ギャリソンがみんなにお別れは良いのかと尋ねると疲れてるだろうから良いよと言われたらしい。そんな束に改めて変わったなと感じる箒や一夏であった。

そんな朝を迎えた六日目。この日は前日の話にも出た通りスメリア一の花火大会の日である。スメリアで何故ここまで花火が打ち上げられるのかというとそれはやはり火影と海之の両親の影響。スメリアと日本の友好の懸け橋となった彼らが花火が好きだった事もあり、こうして定期的に開催される。中でも今日は最大の日であった。そして今火影達は街に来ている。

 

一夏

「やっぱスメリア一の花火大会という事もあってもうみんな動き出しているみてぇだな。…でももっと人で溢れかえると思ってたけど想像程じゃねぇな。カップルは多いけど」

海之

「この国は高層マンションが多くて基本平地だからな。更にどこから見てもそれなりによく見える様に計算されて打ち上げ場所を選んでいる。態々外に出なくても家からで十分なのだろう」

火影

「それにみんな良く見える場所を知ってるからな。実はアルさんの店も隠れスポットだ。今日はこの夏一番忙しいかもって言ってたぜ」

一夏

「…しかし遅いなぁ。やっぱ女の着替えって」

 

箒達は今向こうの店にあるシンディアの店で浴衣に着替え中だ。

 

火影

「まぁ七人もいたらしょうがねぇだろ。…と、終わったようだぜ」

 

やがてシンディアの店から立て続けに彼女達が出てきた。先頭を来るのは本音だった。彼女らしい。

 

本音

「お待たせ~!ねぇ見て三人とも!すっごく綺麗でしょ~!」

 

本音は白い生地に黒いラインと所々白と赤い花で模様付けされている浴衣だ。

 

一夏

「のほほんさんは箒と同じでやっぱ赤色が似合うな」

火影

「ああ似合ってるぜ本音」

本音

「ありがとう~!」

「本音、浴衣で走ったら危ないでしょ!あっ、ねぇ見てよ三人とも。どうかな?」

 

鈴は薄緑の生地に赤色や黄色の花が散りばめられた浴衣だ。

 

火影

「やっぱ鈴は緑が似合うな。良い感じだぜ」

海之

「ああ悪くない」

「ま、まぁ当然よ!」

 

続けてセシリアとラウラがやって来た。

 

セシリア

「あのシンディアさんと言う方、少し変わってらっしゃいますがセンスは素晴らしいですわね。どうですか一夏さん?」

ラウラ

「ど、どうだ?初めて着たのだが…似合っているか?」

 

セシリアは水色の生地に青や濃い蒼色の花、ラウラは黒い生地に小さい黒い花と大きい桃色の花の浴衣だ。

 

一夏

「セシリアと言えば青色だよな。髪の色とも合ってるぜ」

海之

「ラウラも髪と黒が合っている。よく似合っているぞ」

セシリア

「本当ですか?ありがとうございます!」

ラウラ

「あ、ありがとう海之…やはりまだ慣れんな」

 

セシリアもラウラも喜んでいる様だ。最後に来たのはシャルロットと簪、そして箒だった。

 

シャル

「お待たせみんな!」

「遅くなって御免なさい。…に、似合ってるかな」

「さすがに七人もいるとシンディアさんも大変でな」

 

シャルは黄色い生地に白い花と緑色の葉で模様付けされたもの、簪は白い生地に水草の様な模様で3匹ほど金魚が見えるもの、そして箒は赤い生地に黒のライン、そして大きい赤色の花の浴衣というものだった。

 

火影

「可愛いぜシャル」

海之

「自信を持って良い。良く似合っている簪」

一夏

「箒もやっぱり赤色が合うよなぁ。似合ってると思うぜ」

シャル

「ありがとう火影♪」

「嬉しい…。ありがとう海之くん」

「あ、ありがとう一夏」

 

三人とも喜んでくれている様だ。

 

「…でも本当に良いの?私達全員に浴衣をプレゼントしてくれるなんて…」

海之

「気にするな。シンディアさんが安く提供してくれてな」

火影

「ああそういや昨日店を出る時にシンディアさんに渡された物があった。手紙みてぇだがお前達が全員着替えて揃ってから渡せって言ってたぜ。ほら」

 

そう言うと火影はとりあえず最後にきた箒に渡す。箒は渡された手紙を開いて読んでいるとその横から他の皆も読んでみる。

 

女子達

「「「…!!」」」

一夏

「ど、どうした?何が書いてあるんだ?」

「な、何でもない!お前達が読む様な物では無い!」

 

一夏が読もうとすると箒が全力で止める。その内容は、

 

「誰が未来の旦那さんをゲットするか楽しみにしてますね♪」

 

女子達はみんな赤くなっていた…。

 

 

…………

 

着替えを終えた一行はアルティスと雫の墓がある丘の上に来ていた。近すぎる訳ではないがここは街を一望できる場所だけあって全ての花火が良く見える。他の見物客も少なからずいたがゆっくり見るには十分だった。やがて花火大会は始まり、様々な色の光が夜空を覆う。

 

一夏

「た~まや~ってか!」

シャル

「あ、あれ!タワーから花火が上がってるよ!」

ラウラ

「凄いな…火事になったりせんのだろうか?」

「そ、その心配は無いと思うけど…」

本音

「すごいね~!」

セシリア

「見事ですわ…素晴らしいですわね」

「国を挙げての花火と言っていたからな。流石だ」

「…あれ?火影と海之は…あっ」

 

火影と海之は…アルティスと雫の墓の前にいた。きっと明日帰る前に別れを言っているんだろうと思い、そっとしておくことにした。

 

海之

「……」

火影

「…ここが全ての始まりだ。俺達が父さんと母さんに出会った」

海之

「…ああ」

 

今から16年前に二人はここで両親に助けられたのである。二人のアミュレットと共に。

 

火影

「俺は拾ってくれたのが父さんと母さんだったのが最大の幸運だと思ってるぜ。…今思えば母さんは…母さんに似てたかもな。父さんと親父は…違うか。つっても親父の記憶はあんまねぇけど」

海之

「俺も殆どない。…俺達に閻魔刀とリべリオンを託してから直ぐに旅立ってしまった」

火影

「…まぁ母さんが死ぬまで愛してたんだから…案外親父と父さんも似てるのかもしんねぇけどな。少なくとも外見はブサイクじゃないね。俺を見たらわかるもんだ」

海之

「自分で言ってみっともなくないのか?…まぁいい」

火影

「向こうでみんなは俺達がISを動かせる事知ってどう思ってるだろうな。驚いてっかな?」

海之

「…案外受け入れているかもしれんぞ」

火影

「はは、不思議と俺もそんな気がする。……また来ます」

海之

「…それでは」

 

そう言って二人はみんなの所に戻った。

 

シャル

「あ、火影」

ラウラ

「遅いぞ海之」

火影

「悪い悪い」

海之

「一夏と箒とセシリアはどうした?」

「あっうん。もっと近くで見たいと言って一夏くんが行っちゃったんだけど箒とセシリアも追いかけてそのまま…」

火影

「…まぁ日本に帰ったら課題に追われるだろうから今の内に楽しんどくのもいいだろ」

 

 

……………

 

一夏・箒・セシリア

 

一夏

「ほら二人共来てみなよ!この角度からだと奥の花火も重なるぜ!」

セシリア

「本当ですわね」

「わかったから落ちつけ一夏」

 

箒とセシリアは走って行った一夏を追いかけ、やっと追い付いた所だった。

 

「普通の服と違って私達は浴衣なんだからな」

一夏

「ああ悪い悪い。…なぁ、二人共スメリアはどうだった?」

セシリア

「とても楽しかったですわ。それに良い方々ばかりでした」

「うむ。私も同じだ。火影と海之がとても大事にしているのが良くわかる」

一夏

「ああ。そして少し理解したぜ。あいつらはこの国とこの国に生きる人々。多くのものを背負っている。そしてこの国の人々もみんな二人を心から信用している。束さんがあいつらと出会って変わったのも…よくわかる」

「……」

一夏

「正直今の俺なんかじゃとてもかなわねぇ。でも改めて思ったぜ。俺もあの二人の様に強くなりたい。守れる様になりたいってな」

セシリア

「…きっとできますわ。一夏さんなら」

「ああ。それに一夏、お前一人ではない。私達みんなで強くなるんだ」

一夏

「…ありがとな二人共」

 

 

…………

 

海之・簪・ラウラ

 

同時刻、火影達も違う場所に移動し、海之達はその場所でゆっくり花火を眺めていた。

 

海之

「そろそろ最終局面だな。…二人共…、すまん、簪は半分ほどだったな。この国はどうだ?楽しめたか?」

ラウラ

「うむ。とても多くの想い出を作ることができて満足している。感謝しているぞ海之」

「私も楽しかったよ。海之くんと火影くんはこんな良い国で育ったんだね」

海之

「それは良かったな。…父と母が生きていれば多分誰よりも喜んだだろう。きっと向こうでも喜んでいる筈だ」

ラウラ・簪

「「海之(くん)…」」

海之

「俺は命を救ってもらったあの二人に何もできなかった。だからせめてこの命で大切なものを守ろう。二人が愛したこの国、人々。そしてお前達もな」

ラウラ

「…ああ。私も嫁であるお前を、そしてお前の大切なものを守ろう。お前がくれたパンチラインと共に」

「…私もケルベロスを必ず使いこなせるようになる。もっと強くなる。だから海之くん。これからも…私達と一緒に…いてほしい」

海之

「…ありがとう…二人共」

 

 

…………

 

火影・鈴・シャルロット・本音

 

火影達は一夏達と同じ様に別の場所から花火を見物していた。

 

本音

「そろそろラストスパートだね~!」

シャル

「ほらあっち!ものすごく綺麗だよ!」

「子供ねぇ二人共。…わぁすごい!!」

火影

「人の事言えねぇぞ。…三人ともどうだった、スメリアは?」

「とっても楽しかったわ。良い人達ばかりね。あんたの周りって」

シャル

「本当にね。できるならもっといたい位だよ」

本音

「私ももっといた~い!」

火影

「気にいってもらえてなによりだ。まぁまた誘ってやるよ。日本に帰ったら用事あるんだろ?」

シャル

「うん。日程はバラバラだけどセシリアもラウラも帰郷するって言ってたし、僕も一度国に帰ろうと思う。鈴は?」

「う~ん、私はそのまま日本に残ると思うわ」

本音

「中国帰らないの~?」

「帰っても軍に召集されるだけだしね。それなら日本にいた方がマシ」

火影

「…あれ?」

シャル

「どうしたの?」

火影

「この前買ってやった指輪、三人とも今日はしてんのな。もったいないから付けないって言ったのに。でも良く似合ってるぜ」

「あ…ありがとう…」

シャル

「えへへ……」

本音

「ありがとねひかりん…」

 

鈴達は想い出をより覚えておきたいとこの日は火影に買ってもらった指輪をしてきたのであった。

 

シャル

(鈴、抜け駆けは禁止だからね?)

本音

(大丈夫だよシャルルン。私も見張ってるから)

(な、なんの事かな~?あはは…)

火影

「?」

 

こうしてそれぞれの心に深い想い出を残し、スメリア旅行は幕を閉じたのであった。




スメリア編終了です。里帰り位平和に過ごさせたいと思いました。二学期からは戦いも多くなりますから。

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