IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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スメリア滞在六日目。
この日は国を挙げての花火大会。女子達は新しい浴衣を手配されて大喜び。やがて花火大会が始まりみんなが盛り上がっている中、火影と海之は両親の墓の前に来ていた。二人が拾われたのは両親の墓が立っている正にここであったのだ。二人は両親の墓にまた来ると約束し皆の元へ。それぞれ想い出をつくり、スメリア旅行は幕を閉じたのであった。


Mission76 篠ノ之神社のお祭り

IS学園の夏季休暇も順調に過ぎ、残りは約10日程となった。セシリアとラウラはまだだがシャルロットは既に戻って来ていた。簪はケルベロスの訓練をしたいとまだ家で頑張っているらしい。本音も簪を応援したいといってギリギリまで簪に付き合っているとの事だ。そして鈴も実は数日前から中国に戻っている。先日の火影とのデートで会いたい時に会いに行けば良いと言われたのがきっかけだったのか急に帰る気になったとの事だ。

 

そんなある日の夕刻に差し掛かる頃、ここは篠ノ之神社という場所。篠ノ之という名前の通りここは箒の生まれた家、つまり箒はこの神社の巫女である。ここの巫女は「剣の巫女」と言われ、祭りの時期に神楽舞を行う習慣があるのだ。そして今回神楽舞を行う箒は今叔母の仕事を手伝っていた。

 

箒の叔母

「ごめんなさいね箒ちゃん。結局仕事を手伝ってもらっちゃって」

「気にしないでください叔母さん。これ位お安いご用ですよ。それに…本当ならこれは私達の役目なのですから」

叔母

「そんな事気にしなくて良いのよ。…それで、束ちゃんとはその後は?」

「…えぇ…まぁ。…先日話したりはしました」

叔母

「そう…。でも話す事はできたのね。それだけでも良かったわ」

「…はい。…またいつか話そうと思います」

叔母

「そうね。それが良いわね」

 

長年積み重なった束への気持ちは完全なる雪解けにはまだ時間がかかりそうあった。しかし箒の中でいつまでもそれではいけないという気持ちが表れ始めているのも事実だった。

 

一夏

「よう箒!」

 

そこには一夏、火影、海之、そして浴衣姿のシャルロットがいた

 

「! い、一夏!それに火影達も。吃驚した…」

叔母

「一夏くんじゃない!久しぶりねぇ。そちらの皆さんはお友達?」

一夏

「ご無沙汰してます叔母さん。はい、みんな俺や箒の同級生です」

火影

「火影・藤原・エヴァンスです。初めまして」

海之

「初めまして。火影の兄で海之と申します。宜しくお願いします」

シャル

「シャルロット・デュノアです。こんばんわ」

叔母

「まぁまぁご丁寧に。箒ちゃんの叔母です。みんな箒ちゃんの神楽舞を見に来てくれたの?」

一夏

「ええまぁ」

「み、見世物では無いぞ!それにそんなに大したものでは無い」

叔母

「…そう言いながら箒ちゃん嬉しそうよ?お友達、特に一夏くんがいるからかしら♪」

「!お、叔母さん!」

叔母

「ふふっ。…折角だから箒ちゃんも神楽舞が始まる迄みんなと一緒に回ってきなさいな。ここは私がやっておくから」

「ですが手伝いが…」

叔母

「いいからいいから。楽しんでらっしゃい」

「…すいません」

一夏

「……」

火影

「どうした一夏?」

一夏

「ああ、箒の巫女姿って初めて見たけど…綺麗だなと思って」

「………私は夢を見ているのか?或いは空耳か?」

火影

「心配するな箒。気持ちは分かるが現実だ」

「そ、そうか!…ああ…」

一夏

「?」

 

 

…………

 

一行は出店の通りを歩いていた。時間も夕刻を過ぎたあたりなので盛り上がりも大きくなってきていた。

 

火影

「こんな場所も随分久々だな」

海之

「ああ…幼い頃に母の実家に来た時以来か」

シャル

「僕も初めてだよこんな場所に来るの」

「篠ノ之神社はこの一帯でも大きいからな。こういった出し物の規模も大きい」

一夏

「やっぱこういう所に来たら一番は食い物系だよな~…ん?あれは…」

 

そう言って一夏が見た先には、

 

千冬

「…ああお前達。来ていたのか」

 

そこには浴衣姿の千冬がいた。

 

シャル

「こんばんわ、織斑先生」

一夏

「来てたのかってこっちの台詞だよ。千冬姉も来たのか」

千冬

「ああ、たまには篠ノ之の叔母さんに挨拶しておこうと思ってな。こういう時でなければお会いできないから。…そういえば篠ノ之、一夏から聞いたが今回お前が神楽舞を行うらしいな。折角だから拝見させてもらうぞ」

「…一夏ぁ、余計な事を…」

一夏

「ま、まぁそう言うなって。ほんとに楽しみにしてたんだから」

「…ありがとう」

千冬

「…では私は叔母さんに挨拶してこよう。……海之」

海之

「? はい」

千冬

「その…すまないが付いてきてもらえるか?うるさい奴らの虫避けを頼みたい」

シャル

「虫避け?」

一夏

「千冬姉もてるからなぁ~]

千冬

「余計な事は言わんで良い」

海之

「わかりました」

 

そして千冬と海之は行ってしまった。するとシャルと箒が何やらこっそり話をし始めた。

 

シャル

(…ねぇ、箒)

(…わかっている。ここは…)

一夏

「? どうした二人とも」

シャル

「う、ううん別に!…あっそうだ火影!僕と一緒に回ってくれない?さっき言った様に僕こういうの初めてなんだ」

火影

「ああ構わないぜ」

「い、一夏!神楽舞が始まるまで私を持て成せ!」

一夏

「持て成せって…。まぁ別に良いけどよ」

 

こちらもそれぞれの組み合わせに別れ、出店を回る事になった…。

 

 

…………

 

火影・シャルロット

 

シャル

「凄い人だねやっぱり。でもこういうのが良いんだろうねきっと」

火影

「ああそうだな。シャル掴まれ、逸れるぞ」

シャル

「…え!あ、ありがとう…。あっねぇ火影、あっち射的があるよ」

火影

「ほぅ」

 

火影と一緒に回っていたシャルが指さした先にあったのは射的の出店だった。

 

店主

「どうだい?お似合いカップルのお二人さん」

シャル

「!カッ、カップルって、ぼ、僕と火影がカップルって…」

 

シャルロットは一気に茹でダコみたいに真っ赤になってしまった。

 

火影

「シャル、なんか取ってほしいものあるか?」

シャル

「…えっ?ええっと…あ、あの髪飾り良いな」

 

シャルが指さしたのは白い花の髪飾りだった。

 

店主

「お嬢さん良い目してるねぇ。あれは中々の物だよ。まぁ全部高得点当てなきゃいけないけどね」

火影

「了解」

 

パシュ!パシュ!パシュ!

火影は見事に全部高得点の的に当てた!

 

シャル

「凄い火影!」

火影

「大したこと無い」

店主

「おめでとう~!いやー兄ちゃん凄いね!愛の力ってやつかい?はい、お譲ちゃん」

シャル

「あ、ありがとうございます」

(あ、愛の力。ど、どうしよう…)

 

シャルロットは色々言われて心中穏やかでは無かった。そして彼女は火影に、

 

シャル

「あの…火影。お願いがあるんだけど…この髪飾り、付けてもらって良い?」

火影

「ああ良いぜ」

 

火影はシャルロットから髪飾りを受け取り、彼女の髪に付けてあげた。

 

火影

「よく似合ってるぜシャル」

シャル

「あ、ありがとう火影。大切にするね…」

 

シャルロットは赤くなってそう言った…。

 

 

…………

 

海之・千冬

 

その頃、海之と千冬は箒の叔母の家に来ていた。

 

叔母

「いや~嬉しいわ!まさか一夏くんだけじゃなく千冬ちゃんまで来てくれるなんて」

千冬

「すみません叔母さん。暫くご挨拶できずに」

叔母

「良いのよ良いのよ。学校の先生ともなると忙しいでしょうし。でもまだちっちゃい頃に家で剣を学んでいた千冬ちゃんがこんなべっぴんさんになって~」

千冬

「お、叔母さん」

海之

「先生はこちらで剣を?」

千冬

「ああそうか、海之は知らなかったな。私と一夏は篠ノ之の父君から剣を学んでいたんだ。篠ノ之や叔母さんとはその頃からの付き合いでな」

海之

「そうでしたか」

千冬

「叔母さん。こちらの海之も私の生徒です。彼も剣の腕は確かですよ」

叔母

「ええ先ほど一夏くんと一緒に来てくれました。でも随分大人っぽい子ねぇ。私はてっきり千冬ちゃんのお付き合いしている方だと思ったわ~」

千冬

「! ななな何を言ってるんですか!?私と海之はそんな関係じゃありません!」

海之

「はい。教師と生徒として付き合っています」

千冬

「!! 海之!紛らわしい返事をするな!」

叔母

「ふふっ、御免なさい。だって千冬ちゃんが男の方を連れてくるなんて初めてなんですもの。海之さんでしたっけ。千冬ちゃんの事、宜しくお願いしますね」

海之

「はい」

千冬

「!! み、海之!頼むからもう少し考えて喋れ!」

叔母

「…これは留袖を用意しておかないといけないかしらねぇ♪」

千冬

「お、叔母さん!」

海之

「?」

 

何時も以上にらしくない千冬に海之は不思議がった。

 

 

…………

 

一夏・箒

 

その頃、一夏と箒は境内のベンチにいた。

 

一夏

「食い過ぎた…」

「調子に乗るからだ馬鹿もの」

 

別れた後二人、主に一夏は露天のメニューを食いまくり、現在満腹で休んでいた。

 

一夏

「だってこういう時のああいうものって旨いだろ?つい食べ過ぎちまった…」

「まぁ分からなくもないがな。……なぁ一夏、何年ぶりだろうな、お前とこうしているのは…」

一夏

「? どうした急に」

「…本当なら私はこの神社でずっと育ち、父と母、…姉さん、そしてお前や千冬さんと一緒に時を過ごせる筈だった。…しかしあれが、白騎士事件があってから全てが変わってしまった。姉さんは世界中から狙われる身となり、私達一家は逃げる様にこの地を離れた。はっきり言うと当時の私は姉さんを恨んだよ。あの人のせいだ、あの人があんな事件さえ起こさなければ平和に暮らせたのに、お前や千冬さんとも一緒にいられたのにってな…」

一夏

「……」

「正直今でも姉さんへの恨みの気持は…まだ完全に消えてはいない。…でも先日姉さんと話した時、姉さんも変わってきたんだなと感じた。限定的だけどな。…でも、私も以前の様にただ恨むのではなく…知らなければいけない、変わらなければいけない。未来のために。…そう感じたよ」

一夏

「…それでいいんじゃねぇか?」

「えっ?」

一夏

「前にスメリアで火影と海之が話してたのを聞いたんだけどさ…」

 

 

…………

 

火影

(もし父さんと母さんがあの飛行機に乗らなければ、二人の運命は…違ったのか?今も二人は…生きていただろうか?)

海之

(…さぁな。生きていたかもしれんし、帰りの飛行機で死んだかもしれん。仮に生きていてもその後病気で死んだかもしれんし、また別の事故で死んだかもしれん。…何時など誰にもわからん。…俺達だって明日死ぬかもしれんぞ?)

火影

(はは。…何時なんてわからねぇか…その通りだな)

海之

(過去はこれからどう生きるかという自分の道標だ。俺達はそれを心に刻んで未来を目指していくしかない)

火影

(…そうだな…)

 

 

…………

 

「あの二人、やはり悩んでいたんだな…」

一夏

「ああ…。でもあいつらは過去を受け入れて前を目指している。常に全力で生きている。そう思ったよ。…それにさ、あの事件があってから確かに一度は別れたけど、今はこうして一緒だろ?」

「…えっ」

一夏

「…こんな事言ったら怒られるだろうけどさ。俺は今の人生、結構好きだぜ。最初はかなり驚いたけど自分がISを動かせるって知ることもできたし、そのお陰でみんなにも出会えた。もちろん箒にもな」

「…一夏」

 

箒は普段の一夏からは想像できない様な言葉に少し驚いてた。

 

一夏

「お前が束さんや昔の事で思う事があるのは当然だと思うよ。今はそれで良いじゃねぇか。慌てる事なんてねぇさ。俺もお前もまだ若いんだからゆっくり考えれば」

「…年寄りくさいぞ一夏。…ふふ」

一夏

「うっせー」

 

二人は笑い合った。

 

一夏

「…って箒、そろそろ時間だぜ?」

「ああそうだな、では行って来る…一夏、見ていてくれよ」

一夏

「おう、頑張れよ」

 

そして箒は神楽舞の準備に向かった…。

 

 

…………

 

数刻後、巫女装束を纏った箒が舞台に姿を現し、太鼓や笛の音色と共に舞が始まった。

 

「……」

 

彼女の舞は実に美しく、地元の者や観光客等多くの者が魅了された。そして少し離れた所で火影達も見ていた。

 

シャル

「綺麗だね箒」

火影

「…そうだな。一夏、惚れ直したんじゃねぇか?」

一夏

「………へっ?」

海之

「…どうやら箒やセシリアはまだ苦労しそうだな」

千冬

「…全くこいつは」

一夏

「??」

 

するとシャルが火影に質問した。

 

シャル

「あのさ…火影、ひとつ聞いていい?」

火影

「なんだ?」

シャル

「あ、あくまで参考なんだけどね。…その、惚れると言えばさ…火影ってさ…、どんな女の人が…好きなのかな?」

火影

「僕の好きな女性?…う~ん…あんまり深く考えたこと無ぇけど…やっぱり母さん達みたいな人かな。清らかで優しくそして強い女性」

シャル

「そうなんだね…ん、達って?」

火影

「気にすんな」

 

火影の心に浮かんだのは今の自分の母、そして前世の母の二人の姿だった。

 

シャル

「清らか、強く優しい人か…僕になれるかな…」

火影

「なんか言ったか?」

シャル

「な、何でもないよ~」

 

そしてその一方、

 

千冬

「…海之、お前も…火影と同じか?」

海之

「…そう…かもしれません。はっきり分かりませんが」

千冬

「そうか…」

海之

「織斑先生はもう十分お強くてお優しいじゃないですか」

千冬

「! だ、だから先程も言ったがお前はもっと言葉を!」

一夏

「いやいやそれはねえって海之。千冬姉はラオウだぜ?強いのは当たってるけど」

千冬

「…一夏、帰ったら覚えておけ」

一夏

「申し訳ございません…」

 

そんな感じで夏祭りの夜は老けて行った。

 

そして物語は波乱多き新学期に向かう…。




夏休み編終了です。次回より新学期に入ります。
様々なキャラクターが出る二学期ですが火影と海之を上手く絡ませられる様頑張ります。

また少し開けます。すいません。

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