IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
そんな新学期初日の第一限は体育館での全校集会。そこで火影達が出会ったのは生徒会長にして簪の双子の姉、楯無であった。彼女は今月の末に開かれる文化祭の話の後、火影と海之のふたりを生徒会に強制入会させると言いだす。新学期早々波乱を予感する火影と海之であった…。
IS学園 生徒会室前
本日の総会で火影と海之は生徒会長である更識楯無によって生徒会に強制的に入会させられる事になった。更に楯無から放課後に生徒会室に来てほしいと言われた火影と海之は簪と一緒には部屋の前に来ていた。
火影
「ここか…」
海之
「…簪。お前は入らない方が良い」
簪
「…えっ?」
海之
「今のお前は先程の例え話を聞いて少し心が乱れている。そうなるとは限らんが万が一そうなった場合お前と姉とで言い争いになってしまう可能性がある。それは俺達の望む事ではない」
火影
「…確かにそうだな。簪、後は俺達だけで行くぜ」
簪
「で、でも…」
海之
「心配するな」
火影と海之に止められて簪は渋々了承した。そして、
火影・海之
「「失礼します」」
ガチャッ
二人は扉を開けて入って行った。
楯無
「いらっしゃ~い♪良く来てくれたね、えらいえらい!」
眼鏡をかけた女性
「お待ちしておりました」
部屋の奥のデスクには楯無がいた。その横には女子生徒が二人。一人は一見自分達の先輩であろう眼鏡をかけた女性。そしてもう一人は、
本音
「ひかりん~、みうみう~、いらっしゃ~い」
本音だった。
火影
「…本音?お前生徒会所属だったのか?」
本音
「うんそうだよ~。書記をやってるの~」
海之
「…とすると日頃の仕草は芝居か。能ある鷹はなんとやらだな」
楯無
「ううんそんなこと無いよ。本音はいつもこんな感じだから~」
本音
「いや~それほどでも~」
火影
「褒めてるわけじゃねぇと思うが…。そちらの人は?」
女性
「申し遅れました。私この生徒会で会計を担当しております布仏虚と申します。お見知りおきを…」
本音
「因みに私のお姉ちゃんで~す♪」
火影
「…だと思ったよ。外見が良く似ている。…外見だけは」
海之
「ああ外見だけはな」
本音
「ほへ?」
虚
「…お恥ずかしい限りです。…ああ申し訳ありません。只今お茶をお入れしますね」
楯無
「虚ちゃんの入れてくれるお茶は美味しいから期待して良いよ♪さ、座って座って」
…………
火影
「…美味しいです」
海之
「ええ」
本音
「でしょ~」
虚
「ありがとうございます」
楯無
「やっぱみんなに愛される味だよね~!でも君達も料理上手いんでしょ?本音から聞いたよ。今度作って来てよ?」
虚
「お嬢さま、少々強引では?」
楯無
「気にしない気にしない♪…ああそういえばちゃんとしたご挨拶がまだだったね。先ほども名乗ったけど私は更識楯無。2年生だよ。宜しくね♪」
扇子
(宜しく!)
本音
「かっちゃんはロシアの代表でもあるんだよ~」
火影
「ロシアの?へぇそれは凄い。1-1の火影・藤原・エヴァンスです。初めまして」
海之
「海之です。宜しくお願いします」
楯無
「君達の事は本音からよく話聞いてるよ。特に火影くんの話なんてしょっちゅう」
本音
「わーわー!」
楯無
「あと海之くん。簪ちゃんと仲良くしてくれてありがとうね」
海之
「礼を言われることはありません。俺は助言しているだけです」
楯無
「ううん、そんなこと無いよ。タッグマッチに出たいと言った事も先日のスメリアに行きたいと言い出した事も。前のあの子からしたら考えられないもの。…あなたや火影くんの影響かな」
海之
「俺達は何もしていません。簪の強さです」
火影
「簪はそれほど弱くはありませんよ」
楯無
「そう言われると姉の私としても嬉しいわ♪」
海之
「……簪とは最近は?」
楯無
「…う~ん…なかなかね…、まだあの子側に遠慮があるみたいだし」
火影
「? 先日のスメリア行きの相談時に話してないんですか?」
楯無
「…まぁね」
本音
「かっちゃん…」
虚
「お嬢さま…」
火影
「…更識さん。ひとつ聞いても良いですか?」
楯無
「? なに?火影くん」
火影
「何故俺と海之を生徒会に?」
楯無
「言ったでしょ?君達の才能が欲しいんだよ♪」
火影・海之
「「……」」
火影と海之は楯無が中々本音を見せないのでこちらから仕掛けてみる事にした。
火影
「…良いんですか?俺達の様な者を入れても」
楯無
「…どういう意味?」
火影
「単刀直入に聞きます。あなたは…俺達を監視するために生徒会入りを決めたのでは無いですか?」
本音
「…えっ?」
虚
「……」
楯無
「ふふっ、何言ってるの?私は」
海之
「失礼な事を言っているのは分かっています。ですが俺達は本気で話しています。そちらも本気でお話いただきたい」
楯無
「……」
楯無はふたりの言葉に嘘はない、本気であると感じていた。そして、
楯無
「…はぁ、織斑先生の言ってた通りね~。君達って本当に16歳?なんかもっと人生経験してる先輩っていう位の気迫を感じるんだけど。…まぁ良いや、君達の本気に答えて私も話してあげるよ」
虚
「お嬢さま…」
本音
「かっちゃん…?」
火影・海之
「「……」」
火影と海之は黙って聞く事にした。
楯無
「私は君達の事を入学した時から知ってたんだけどね。その時から興味があったって言うのはほんとだよ。何しろあの篠ノ之束博士の推薦で、しかも博士も知らないIS持ちって聞いたからね。私も凄く驚いちゃった。あっ因みにそれは織斑先生から聞いたのであって別に盗み聞きしたわけじゃないからね?…で、興味が一層強くなったのは一組のクラス代表決定戦後の君達の試合を見た時かな。ふたりとも正直とても数ヶ月で動かせる様な動きじゃなかったしね。だから私の方でも悪いけど色々調べさせてもらったんだよ」
火影
「…と言う事は俺達のISを動かしていた期間についても」
楯無
「うん、織斑先生から聞いたわ。実は数ヶ月どころか9年間も動かしていたなんて。でもそれじゃあの動きも納得できるわ。ふたりとも国家代表レベルどころかそれ以上だもん」
火影
「…本音、お前も知ってたのか?」
本音
「…うん、…ごめんねひかりん」
火影
「…気にすんな。どうせ何時か分かる事だ」
楯無
「…そしてこの数ヶ月で色々わかったよ。ふたりとも共に赤ん坊の時にスメリアで拾われて出生は不明。記録も無し。まぁふたり共捨て子なら記録が無いのも理解できるからこれは仕方ないよね。でも実の兄弟である事は判明している。保護者はスメリアの今は亡きエヴァンスご夫婦。その後ご夫婦の養子として育てられる。おまけで調べた事も話すとふたり共文句無しの文武両道。特に海之くんなんて小中に続いてここでも全校一の成績。更におまけでどちらも超イケメン♪…とまぁ君達本人の事は出生以外ははっきり言って何も疑問無し。…ただ、どうしても分からない事があるの」
火影と海之はその言葉を聞いて次の言葉が分かった。
火影
「俺達のIS…ですね?」
楯無
「その通りよ。先ほども言った通り君達のISは9年前、突然君達のアミュレットが起動した事によって世に出てきたとあったわ。そして篠ノ之博士はそれの開発に関わっていない事もわかってる。でも9年前と言えばISが世に出てまだ一年しか経っていない頃よ。そんな時に篠ノ之博士以外の人がISを造れるなんてちょっと考えられない。もっと言えばそのアミュレットは赤ん坊だった頃の君達と一緒に拾われたんでしょ?もし最初からそのアミュレットにプログラムが組み込まれていたなら16年以上も前にそれがあった事になる。そんなの考えられないわ」
火影・海之
「「……」」
楯無
「もっと言えば君達のISは他のものとは違いすぎる。従来のデザインには無いデザイン、急所部分のみの絶対防御、剣や銃弾をそのまま受ける装甲。更にISは操縦者の技術がダイレクトに反映されるけど君達のそれは度を超えている。オーバーテクノロジーとかそんな話じゃないわ。はっきり言って異常なのよ」
火影・海之
「「……」」
本音
「か、かっちゃん、ちょっと言い過ぎじゃ」
虚
「…黙っていなさい本音ちゃん」
楯無
「結果、君達のISについては何ひとつ分からなかったわ。正直お手上げ~。でもとても君達以外の誰かに使える様な物じゃないわね。正直危険すぎるわ」
火影
「…それでどうします?俺達を」
楯無
「…どうするって?」
海之
「そんな危険な物を持っている俺達が学園にいたら色々不都合でしょう?しかもタッグマッチ戦の頃に俺達の存在は少なからず世界に知られてしまっています。場合によっては俺達を退学させたりした方が宜しいのではと思いまして」
本音
「! み、みうみう何を言ってるの!?」
楯無
「……」
火影
「本音。これは決して簡単な問題じゃない。学園の安全に関する問題だ」
本音
「ひかりん…」
虚
「……」
楯無は黙っていたがやがて口を開く。
楯無
「…確かにそれが最善なのかもしれないけどね」
その時、
ガラッ!
生徒会室の扉が勢いよく開いた。
その場の全員
「「「!!」」」
簪
「お姉ちゃん!」
そこにいたのは簪だった。彼女は気が高ぶっている様子だった。
海之
「簪…!」
火影
「お前…」
本音
「かんちゃん!」
虚
「簪様…」
簪
「なんで、なんでそんな事言うの!?海之くんも火影くんも何も悪いことしてないじゃない!なんでふたりを危険とか言うの!?なんで二人を退学とか言ったりするのよ!?」
楯無
「簪ちゃん…」
海之
「簪…お前今の話を…」
簪
「…ごめん海之くん。聞いちゃった…」
海之
「…そうか」
火影
「簪、生徒会長が言っている事は間違ってはいない。学園のためには当然の考えだ」
簪
「…それでも、それでもさっき言った通り私はふたりを信じる!みんなだって!海之くんや火影くんがいてくれなかったら、私は今もきっと変わってなかった。ふたりは私やみんなをたくさん助けてくれた。ふたりがみんなを危険にさらすとかそんな事ある筈無い!ふたりのISだってそう!確かに分からない事だらけかもしれないけど…、海之くんと火影くんのISだもの。きっと大丈夫だよ!」
簪は力強くそう言った。更に楯無に訴える。
簪
「だから、だからお願いお姉ちゃん!ふたりを学園から出て行かせないで!ふたりを信じてあげて!みんなからふたりを取りあげないで!……私から…くんを…取りあげないで…」
楯無
「…簪ちゃん」
簪は半分泣きながら最後は消えそうな声で訴え、海之にしがみついた。
本音
「…かっちゃん、私からもお願い。確かにひかりんやみうみうのISは他とは違うよ。それは私もなんとなくわかるよ。でもひかりんとみうみうだもん。きっと大丈夫だよ…」
楯無
「本音…」
虚
「本音ちゃん…」
楯無は簪や本音を見て暫く何も言えなくなった。そして二人がただ変わっただけでなく強くなったという事も感じていた。
虚
「…簪様、大丈夫です。最後までお嬢さまのお話を聞いてあげてください」
簪
「……えっ?」
楯無
「…火影くん、海之くん。君達がさっき言った通り、最初は学園から出て行ってもらった方が良いと私も思ったわ。それについては否定しない。ごめんなさい。でも君達は…既に多くの人に良い影響を与えているわ。君達の一組だけじゃなく他のクラスのみんなにも、かんちゃんや本音にもね。…安心して。君達をどうこうしたりなんてしないから」
簪
「ほ、ほんと!?」
楯無
「ええ本当よ」
火影
「…まぁそういうわけだ」
海之
「安心しろ、ふたり共」
簪
「…うん…うん」
本音
「信じてたよ~かっちゃん!」
楯無
「それにふたりに何かしたら夜も眠れない位女子生徒達からストライキを起こされるかもしれないし♪」
扇子
(一揆!)
火影
「一揆って…」
火影はそう言うが学園にいる男子は火影、海之、一夏の三人だけ。その内のふたりも辞めるなんて事になったら学園の女子生徒達はパニックになってしまうだろう。
楯無
「まぁでも予定通り君達は生徒会に所属してもらうね。その方が色々やりやすいでしょ?因みに役職だけどそれは追々決めるわ。まぁ君達ならなんでもできそうだけどね~」
扇子
(博学多才)
火影
「随分かってくれるんですね」
楯無
「まぁね!でもそこまで簪ちゃんや本音の心を掴んでしまうなんて…なんか妬けちゃうわねぇ♪」
虚
「ええ私も妬けちゃいます」
簪
「! お、お姉ちゃん、虚まで!」
楯無
「…うん、決めたわ!」
海之
「? 決めたとは?」
楯無
「早速最初の指示よ♪今から私と戦って!」
おまけ
本音
「…そういえばひかりん。ひかりんとみうみうって9年前からIS動かしてたんだよね~?」
火影
「ああ。隠してて悪かったな」
本音
「ううん、それはいいんだけど…」
海之
「どうした?」
本音
「9年前って言ったらひかりんとみうみうって7歳でしょ?IS纏ったら大きさどうなるの?」
火影
「ああ…等身大サイズだからあれがそのまま縮小した感じだ」
楯無
「へぇ~!じゃあ昔は小悪魔だったんだ~。か~わ~い~い~♪」
虚
「お嬢さま。それは意味が違うかと…」