IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
話しあいの中、火影と海之は何故自分達を生徒会に入れたのか、その真意を楯無に聞くと楯無は火影と海之に興味を持った事とそれ以上にふたりのISの危険性とそれを持つ二人が気になっている事を素直に打ち明ける。
するとそこに部屋の外で聞いていた簪が乱入し、ふたりを信じてほしいと必死に訴える。彼女らの説得に応える形で楯無はふたりに何もする気はないと約束。一同が安心する中、楯無がいきなり火影と海之のどちらかと戦いたいと言ってくるのであった。
IS学園内 某アリーナ
あの生徒会室の一件の後、火影や楯無達はここに来ていた。そして中央にISスーツを身につけた楯無、そして海之がいた。観客席には火影や簪達、そして一応アリーナを使うので千冬もいた。
千冬
「全くいきなりアリーナを貸してほしいというからなんだと思ったら…」
簪
「すいません先生…」
千冬
「ああいや更識、お前のせいではない。気にするな」
発端となったのは楯無の一言だった。
楯無
(生徒会長として君達に命令します!どちらか私と勝負しなさい♪)
火影と海之に関しての生徒会の一件の後、楯無はいきなりふたりに勝負を願い出た。理由は?と聞くと、
楯無
(一度戦ってみたかったのよね~♪もし勝ったら君達に悪い気持ちを持たせてしまったお詫びにひとつだけ何でもお願い聞いてあげるわよ~♪)
扇子
(約束!)
如何にも至極簡単な理由である。そして話し合った結果、名乗り出たのが海之であった。
火影
「しかし日本じゃなくロシア代表か、候補とかでもねぇんだな」
虚
「はい。お嬢さまのIS「ミステリアス・レイディ」はロシア製のIS「モスクワの深い霧」をベースにお嬢さまご自身で造り上げた機体です。故にロシアの代表という形態を取っておられます」
本音
「おまけにかっちゃん自身もめちゃんこ強いからね!」
火影
「成程」
簪
「……」
千冬
「更識と海之か…どんな勝負になるかな」
千冬も含め、誰もが勝負の行方が気になる様子だった。
…………
アリーナ中央
楯無
「海之くん。付き合ってくれてありがとね♪」
海之
「いえ」
楯無
「クールねぇ~。でも嫌いじゃないわよ♪」
海之
「……」
楯無
「…あと海之くん。簪ちゃんの事…ほんとにありがとね」
海之
「? 先程も言いましたが俺は助言しただけです」
楯無
「うん、君からすればそうかもしれないね。…でも簪ちゃんは君や火影くんに凄く感謝してると思うよ。約半年前までのあの子からしたらまるで別人みたいだもん。…なんだか羨ましいな」
海之
「?」
楯無
「簪ちゃんは君たちを、特に君を信頼しきってる。私なんかよりよっぽど。私が自分のISを自分で組みたてたりロシアの代表になったりした辺り…ううん、もしかしたらもっと前からかもしれない。あの子が私を避ける様になったのは…。私はそんなつもり無いんだけど…どうもあの子は私に対して劣等感を持ってるみたいなんだよね…。どうすればいいだろうって考えている間に今まで来ちゃって…」
海之
「…本当に苦手なら先程あなたがいる生徒会室に入ってきたりしないでしょう。俺達の事で勢いもあったとは思いますが。…ですが簪もいつまでもこのままではいけないと考えています。俺に話してくれましたから。あとは互いが歩み寄ろうとするタイミングだと思います」
楯無
「!…そう、あの子が。…うん、そうだね、…そうなのかも知れないね」
海之
「それに俺は間違いなく世界で最も仲が悪かった兄弟を知っています」
楯無
「え?」
海之
「…ふっ、気にしないでください」
かつて自分と火影、正確にはバージルとダンテは存在そのものが戦う理由となる位殺し合う仲であった。まぁその半分以上は自分の方に非があったのであるが…。そんな自分達が生まれ変わったとはいえ共に新しい人生を生きているのだから皮肉なものだ、と海之は感じていた。しかしだからこそ楯無と簪もきっとやり直せると思っていた。
楯無
「それじゃそろそろ始めましょ♪言っとくけど女だからって手加減なんていらないからね!」
海之
「無論です。そちらも手加減なんて無用ですよ」
楯無
「当然よ!ぶっ殺すつもりで行くんだから♪」
そして楯無は自身のISを展開する。全体的に水色のカラーで巨大なランスを携えた機体だ。
海之
「…それがあなたのIS」
楯無
「そ!これが私のIS、ミステリアス・レイディよ!覚えておいてね♪」
海之
「…わかりました」カッ!
そして海之もウェルギエルを展開する。
楯無
「…近くで見るのは初めてだけどやっぱり変わってるわね~。なんか悪魔みたい…ああごめんね、はっきり言っちゃって」
海之
「気にしないでください。案外間違ってませんから」
楯無
「…えっ?」
海之
「なんでもありません。…では始めましょう」
~~~~~~~~~~~~~
そして二人の戦いを始めるアラームが鳴った。
ドンッ!!
すると同時に海之が前に出る。
楯無
「!!」
急な反応に楯無は反応できずウェルギエルの閻魔刀の一撃を受けた。
ザシュッ!
…と思ったのだが、
海之
「…!」
確かに切ったと思ったそれは手ごたえが無く、やがて水の塊となって崩れ落ちた…。
海之
「…今のは水?」
楯無
「そうよ!」
すると上空の方に楯無がいた。
楯無
「これがミステリアス・レイディの能力!ナノマシンによって水を操る事ができるの。今みたいに自分の分身体を作り出す事もできるわ♪」
海之
「…成程」
楯無
(危なかった…。念のために準備しておいて助かったけど後もう少し遅かったらまともに受けていたわ。なんて加速なの…)
「それじゃ今度はこちらから行くわよ!」
ズドドドドドドドドッ!
楯無は自らが持つランスからガトリングガンを斉射する。
海之
「…」
キキキキキキキキンッ!
一方の海之も幻影剣を展開しそれらを全て弾く。その時、
楯無
「はぁぁぁぁあ!」
海之
「!」
ガトリングガンを弾いている間に楯無がランスを構えて突進してきていた。しかし、
キィィィィィィン!
海之は閻魔刀でそれを受け止める。
楯無
「さすがね!今の攻撃に対応するなんて!」
海之
「どうも…円陣!」
ギュイイイイイン!
海之は幻影剣を回転させ斬りつける。…しかしそれも先程と同じく水の塊だった。今の会話の間にどうやらに分身を生成していた様だった。本物の楯無はまた離れた所にいた。
海之
「…流石ですね。今の瞬間に分身体を作っただけでなく更にそんな場所まで離れているとは」
楯無
「それはこっちの台詞よ。正直傷のひとつ位できるかと思ったんだから。最も君のISは凄い再生能力だから何の意味もないだろうけど」
海之
「ええ。ですから先程も言った通り殺すつもりでどうぞ」
楯無
「当然!」
…………
火影・千冬以外全員
「「「……」」」
火影
「流石はロシア代表だけの事はある。言っちゃ悪いが鈴やラウラ達より強いな…、ってどうしたんだみんな?」
本音
「えっと…やっぱみうみう凄いな~って思って」
虚
「ええ。あのお嬢さまがここまでしても一撃も当てられないなんて…信じられませんわ」
簪
「…うん」
千冬
「まぁ海之だからな。今までの相手とは違うのかもしれん。おまけに更識とは違ってあいつにはまだ余裕がある」
簪
「…海之くん…お姉ちゃん…」
…………
海之と楯無の勝負は続いていた。どちらもまだ決定的なダメージは受けていなかったが海之の攻撃をナノマシンでかわし続けていた楯無の方がSEの消費は大きかった。
キイイイイインッ!
鍔迫り合いから二人は距離を取った。
海之
「流石です。お強いですね」
楯無
「はぁ、はぁ…そう言ってもらえて嬉しいわ」
海之
「貴女の腕ならあの黒いIS達も倒せる」
楯無
「…でも君まだまだ余裕がある感じね。お姉さんはこう見えてももう結構本気なのよ。…ねぇ、そろそろ君の本気も見せてよ♪」
海之
「…気付いていたんですか」
楯無
「もう意地悪ねぇ~、君がこの程度の訳ないでしょ!はっきり言うけど私の方がチャレンジャーだからね。お・ね・が・い♪」
海之
「……」
海之は目を閉じて暫く黙っていたがやがて、
海之
「…では少しだけ」
ドンッ!!
目つきが変わった海之は今まで以上のスピードで突如突進した。
楯無
「!! 速い!」
ナノマシンを生成する暇がないと感じた楯無は自身のランスで刀を受け止めようとする。しかし、
ガキィィィィン!
楯無
(! 刀じゃなくて鞘!?)
受け止めたのは刀が収まったままの鞘だった。その反動で抜かれた閻魔刀が上段から振り降ろされる。
ズガァァァン!
楯無
「きゃああああ!」
強烈な一撃を受けた楯無は地面に降下するが落ちる前に体勢を整える。しかし、
ズドドドドドドド!
楯無
「えっ!?」
無数の幻影剣が間髪入れず迫って来た。慌ててナノマシンを展開してそれらを避ける楯無。
楯無
「くっ…油断したわ…」
そして幻影剣を全て受け止め、身に纏う水のヴェールを解除した瞬間、
ズドズドズドズドズドンッ!
強烈な衝撃が楯無を襲った。
楯無
「きゃああああ!…な、なに!?…!」
楯無が目にしたのはブルーローズをこちらに向ける海之。幻影剣の後に展開し連射した様だ。
海之
「まだ戦いは終わっていませんよ」
楯無
「…くっ、スピードも攻撃もさっきまでとは段違いだわ。まさかこれ程までなんて…」
因みにこの間約数十秒。楯無は海之の力に驚きを隠せなかった。
…………
火影
「海之の奴一瞬本気だったな」
本音
「…みうみう速~い…」
虚
「…信じられませんわ。あのお嬢さまが…圧倒されているなんて…」
千冬
「海之のレベルは代表候補や代表どころではない…最早次元が違う…」
簪
「……」
火影
「簪、辛いなら見なくてもいいんだぞ?」
簪
「…ううん大丈夫だよ火影くん。…私は大丈夫」
(これ位耐えられないと…お姉ちゃんに追いつく事なんて、海之くんを支える事なんてできない!)
…………
海之と楯無の勝負は佳境に入っていた。未だに決定的なダメージを受けていない海之に対し、楯無は先程のダメージが大きかった。
楯無
「くっ…、君って本当に強いわねぇ」
海之
「大した事はありません。まだ修行中の身です」
楯無
「それビミョーに傷つくんだけど…。どうやら勝負は私の負けが濃厚ね。でも簡単にはやられてあげたりしないわよ!……さっきからなんか蒸し暑くなってると思わない?」
海之
「?……!」
海之は周囲の異常に気付いた。見るといつの間にか周りに深い霧が発生していた。
海之
「これは…」
楯無
「見せてあげるわ。ミステリアス・レイディの真の力を!」
海之
「真の力…?」
楯無
「そうよ!君のISはダメージを直接受けるからできればこれは使いたく無かったけどね。でもこれ位しないと君には勝てないだろうから使わせてもらうわ!…受けなさい!」
カッ!!
楯無
「クリアパッション!!」
海之
「!」
ドガァァァァァァァァァァァァァァァン!!
突然海之の周囲で連鎖的な爆発が起こった。海之は避ける間も無くその爆発に巻き込まれるのだった…。
…………
千冬
「海之!」
簪
「海之くん!」
本音
「みうみう!」
虚
「…お嬢さま…まさかアレをお使いに…」
火影
「水蒸気爆発か…」
簪
「確か海之くんのISって直接傷を受ける…そんな…そんな!」
千冬
「楯無の事だ、威力は抑えているだろうが…海之…」
火影
「…大丈夫ですよ先生、簪」
簪
「えっ?………!」
千冬
「……あれは!」
…………
爆発による煙はまだ上がっていた。それに遮られて海之の姿は見えない。
楯無
(クリアパッションは自分のSEとレイディのナノマシンを犠牲にして行う一回きりの切り札…。これに耐えた者は今まで一度たりともいないわ。正直彼のISにこれは危険だから使いたくなかったけど。…でも間違いなく)
その時、
?
「…今のは驚きました」
楯無
「!!」
楯無は後ろから声がしたので振り向いた。するとそこには、
海之
「……」
無傷のウェルギエル、海之がいた。
楯無
「む、無傷!?そんな!」
海之
「成程…水を操れる力を用いた水蒸気爆発ですか。ただあれ程の攻撃、消費エネルギーも大きい様ですね」
楯無
「な、なんで!?さっき確かに爆発に巻き込まれた筈よ!?いくら再生能力が凄いって言ってもそんな簡単に」
海之
「ええあのままでは確かに受けましたよ。だから貴方と同じ手を使いました」
楯無
「? 私と同じ?」
?
「そうです」
楯無
「…えっ!?」
楯無は再び自分の後ろから声がしたので振り向いた。見るとそこには、
海之?
「……」
海之がいた。だが高速で移動した訳ではない。前と後ろに海之がいたのだ。
楯無
「!? ど、どう言う事なの!?」
海之
「これが俺のウェルギエルの秘儀「残影」です。貴方の機体と同じく分身を作り出せる能力です」
楯無
「!?じゃ、じゃあさっき爆発に巻き込まれたのは」
海之3
「ええ。これによって作った分身体です」
今度は上空に海之がいた。因みにこれも分身の様だ。
楯無
「も、もうひとり…、で、でも爆発に巻き込まれた君は確かにISの反応があったわよ?」
海之2
「俺の分身は熱源も質量も持っています。だからレーダーにも反応します」
海之4
「因みに分身体は無尽蔵に生み出す事が可能です。更に自在に操る事ができます」
海之5
「最もSEの消費が大きいのであまり多くは使えませんがね」
新たに横にふたりの分身が現れていた。楯無の周りには五人のウェルギエルがいた。
楯無
「…はぁ、ほんとに君達のISって規格外なのね…でも面白いじゃん♪」
海之
「どうします?先程の攻撃でそちらのエネルギーは殆ど尽きかけていますが…、まだやりますか?」
楯無
「…当然!降参なんて私の心が許さないわ!最後まで君には付き合ってもらうからね!」
楯無は笑ってそう言い、ランスを構える。
海之
「…分かりました。では俺も敬意を払います」
すると海之は閻魔刀を収め、海之と全ての分身体は楯無の周りを回る様に高速回転し出した。
楯無
「!」
囲まれる形になった楯無は逃げることができず、そして海之が言った。
海之
「次元斬…絶!!」
ズガガガガガガガガガガガガガガガガンッ!!
その言葉と同時に全てのウェルギエルが次元斬を使い、楯無の周辺に凄まじい真空の斬撃が起こった。
楯無
「きゃああああああああああ!!」
無数の次元斬を受けISも強制解除されて倒れかける楯無。それを海之が支える。
楯無
「…イタタ」
海之
「大丈夫ですか?」
楯無
「ええ。…君、大したダメージにならない様に攻撃してくれたでしょ?普通あれだけの攻撃受けたらこんなものじゃ済まないもの」
海之
「貴方が傷つくと簪や虚さん達が悲しみますから」
楯無
「…ありがとうね」
海之
「気にする事はありません」
楯無
「簪ちゃんが惹かれるだけの事はあるわ。あーあ、もっと早くに知り合っとけば良かったな~。惜しい事しちゃった♪」
海之
「…?」
…………
火影以外全員
「「「……」」」
火影
「久々にアレ使ったなあいつ。アレ使わせるなんてやっぱあの人強えよ」
本音
「みうみう…凄すぎだよ~…」
虚
「ええ本当に…。まさかこれ程の方がいるなんて」
簪
「……」
(海之くんもお姉ちゃんも無事で良かった…。私がずっと越えたいと思っているお姉ちゃん、そんなお姉ちゃんを簡単に倒してしまった海之くん。今の私にはとても届かない…。でも諦めない。頑張って、ケルベロスも使いこなせるようになって、もっと強くなってみせる!)
千冬
「……」
(海之のあの力…。それにきっと火影の奴も同じ位の力を持っているんだろう…。こんな力を持つ二人を更識が危険視する気持ち、教師としては分からなくはない。…しかし私にはどうしてもふたりを手放す気になれない。ふたりは信じられる、…必要な存在だ)
想いはそれぞれであった。
ようやくウェルギエルの残像能力と次元斬・絶を出すことが出来ました。
あと海之の一撃目が鞘で二撃目が剣というのはるろうに剣心の双龍閃・雷から考えてみました。
※
お詫び
Mission77にて楯無の初登場時、彼女を簪の双子と謝って書いておりました。読者の方にご指摘頂いて間違っていると気付きました。78,79には双子を表す記載は書いていませんでしたので大丈夫でしたが、間違いました事、大変申し訳ありませんでした。