IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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とある休日。火影達は文化祭で使う衣装の資材を買うためにショッピングモールへ。久々に弾や蘭とも再会したりして賑やかに買い物していた。
そんな最中で一夏はひとりになった時に巻紙礼子という女性に呼び止められる。どうやらIS専門の装備を造っている企業の人間らしい。彼女から少し話を聞きたいと言われて了承しかけた一夏だったがその時偶然火影が入って止める形になる。また後日と言い残して去った礼子。だが火影は彼女に何か不穏な空気を感じていた…。


Mission84 ふたりの覚悟

IS学園 アリーナ

 

一夏

「おぉぉぉぉぉ!」

「はぁぁぁぁぁ!」

火影

「……」

 

ガキィィィンッ!!

 

火影はリべリオンで一夏のアラストルを、カリーナ・アンの銃剣で鈴の双天牙月を受け止める。

 

一夏

「そこ!」

 

すると一夏は片手の荷電粒子砲をほぼ零距離で撃とうとする。

 

火影

「ほう零距離か…しかし!」

 

ドンッ!

火影は二人の剣を受け止めたまま瞬時加速を行い、振り払う。

 

一夏

「うぉ!」

「くっ!逃がさないわよ!」

 

ドンッ!ドンッ!

鈴はガーベラの連続加速で火影を追いかける。しかし距離が近づくと、

 

ボシュボシュボシュ!

火影のカリーナからこちらに向けて無数のミサイルが飛んできた。追尾される鈴。

 

「…逃げられない!なら!」

 

キュイィィィィン!

 

鈴は逃げながらガーベラにエネルギーをチャージし、そして

 

「開きなさい!ガーベラ!」

 

ドギュゥゥゥゥゥゥン!ドガガガガン!

 

鈴は空中で拡散レーザーを射出し、なんとか撃ち落とした。

 

「はぁ…、そうだ火影は!」

火影

「遅い!」

 

キィィィィィン!

 

火影は鈴の一瞬の隙をついて瞬時加速で近づき、リべリオンで斬った。

 

「きゃああああ!」

火影

「油断したな鈴!一夏は…」

一夏

「そこだぁぁぁぁぁ!」

火影

「!」

 

ガキィィィィィン!ビシュッ!

 

火影は遥か上空から振り下ろしてきた一夏の剣を受け止める。しかしその剣圧で腕に僅かに傷を付けた。

 

一夏

「見たか火影!この前みたいなかすり傷なんかじゃなく確かに見える傷だぜ!」

火影

「…そうだな。大したもんだ。だが、また油断したな」

一夏

「えっ?」ドォォォンッ!「ぐあぁぁぁ!な、後ろから!?」

火影

「さっきミサイルを一発だけお前にロックオンしておいたんだよ。おそらく必死で気付かなかったんだろうけどな」

一夏

「くっそぉぉ…」

 

そのダメージで一夏の白式のエネルギーはゼロになり、降りて行った。とその時、

 

「火影ー!」

火影

「!」

 

見ると前方から鈴がこちらに向けてガーベラを展開していた。何時の間にか離れ、一夏に隠れていて見えなかったようだ。

 

「いっけぇ!」

 

ドギューーーーン!

 

鈴はガーベラのレーザーを収束モードで撃った。

 

火影

「!」

 

火影はガーベラのレーザーに飲み込まれた…。しかし、

 

ジャキッ!

 

「!」

 

実は違っていた。飲み込まれる瞬間瞬時加速していたのか、火影は鈴の後ろに立ってコヨーテを向けていた。

 

「い、いつの間に!?」

火影

「残念。惜しかったな。あの時名前さえ呼んでなけりゃ当たってたかもな」

「…はぁ、降参よ」

 

一夏と鈴のペアと火影の実戦トレーニングは火影の勝利で終わった。

 

 

…………

 

それと同刻、

 

「はぁぁぁぁ!」

セシリア

「たぁぁぁぁ!」

 

箒とセシリアは海之と戦っていた。但し正確には海之本人ではなく、ウェルギエルの残影で作った分身体だ。ひとり一体ずつ。剣の訓練の為にと海之が一対一で戦わせているのだ。

 

キイィィィィィィィンッ!!

 

「くっ…、本物の海之じゃない。分身体なのにこれ程とは…」

セシリア

「確かこの分身は海之さんの10分の1と仰ってましたわ…それなのになんという動きと剣ですの…」

「…だか強くなっているのはあいつらだけではない!必ず勝ってみせる!」

セシリア

「ええ、もちろんですわ!」

 

海之の分身の強さに二人は驚愕しつつも果敢に向かっていく…。そして本物の海之は今、ラウラ、シャルロットと戦っていた。

 

ラウラ

「おぉぉぉぉぉ!」

 

ラウラはレーゲンのワイヤーブレードを飛ばす。海之はそれを切り払おうとするが、

 

シャル

「させないよ海之!」

 

ドドドドドドドドッ!

 

シャルロットが反対方向からライフルを撃つ。

 

海之

「……では」

 

ガキキキキキキキキン!!

ズドズドズドズドズドズドンッ!

ドガン!ドガガガガガン!

 

ラウラ・シャル

「「!?」」

 

海之は閻魔刀でシャルロットの銃弾を切り払い、もう片手に持ったブルーローズでラウラのワイヤーブレードを撃ち落としていた。

 

シャル

「くっ!さすが海之。剣だけじゃなく銃もハンパじゃない!」

ラウラ

「ならば!」

 

ドンッ!

 

ラウラはパンチラインのブレイクエイジを起動し、海之に向かっていく。

 

海之

「…いいだろう受けてたってやるぞラウラ」

 

海之はベオウルフに持ち替え、そして、

 

海之・ラウラ

「「はぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

ドーーーーンッ!

 

ベオウルフとパンチラインが凄まじい勢いで正面からぶつかった。

 

ラウラ

「くっ!」

海之

「やるなラウラ。パンチラインの威力が増している」

ラウラ

「感心するのはまだ早い!」

 

するとラウラはもう片手のビーム手刀を展開し、海之に向ける。しかし、

 

ガキンッ!

 

海之はもう片方のベオウルフでそれを受け止める。その時、

 

ガシッ!

 

突然ラウラが海之の腕を掴む。

 

海之

「!」

ラウラ

「今だシャル!」

シャル

「はぁぁぁぁ!」

 

突然後ろからシャルロットがグレースケールを展開して向かってきた。

 

海之

「成程、考えたな。だが忘れているぞ?」

 

ギュイィィィィィン!

 

突然海之の周りに幻影剣が展開し、ラウラに襲いかかる。

 

ラウラ

「うあぁぁぁぁぁ!」

 

凄まじい剣撃を受け、ラウラはダウンした。

 

シャル

「ラウラ!…!!」

 

シュバババババババ!

 

ラウラがやられて動揺し、一瞬動きが止まったシャルロットの周りに幻影剣が集まる。一歩でも動いたら全てが向かってくるだろう。

 

海之

「よそ見する暇はないぞシャル」

シャル

「ま、参った…」

 

シャルもその攻撃の前に降参せざるを得なかった。こちらも火影と同じく海之の勝利で終わったのであった。

 

 

…………

 

トレーニングが終わった後、全員で食堂に来ていた。

 

一夏

「くっそぉぉ、一撃当てられたとしてもやっぱこう負けてばっかだと悔しいよなぁ」

「ほんとどんだけなのよあんたらの強さって。全く隙がないじゃないの。火影反応速度が速すぎよ…」

「海之に至っては10分の1の力の分身相手にこっちは全力でやっと勝てた位だからな…」

セシリア

「…そうですわね。私もローハイド、それにビットを動かせる訓練をしっかりしてなければ間違いなく勝てなかったですわ」

ラウラ

「私も脚を止めるのに精一杯だった」

シャル

「僕も同じだよ…。一瞬の油断が駄目だった」

 

全員やはり負けた事にそれなりに悔しい様だ。

 

火影

「気を落とすなって。全員しっかり強くなってるじゃねぇか。今日の一夏の一撃は今まで以上に強いものだったし、鈴はしっかりガーベラの特性を掴んでたぜ」

海之

「うむ。ラウラのあのパンチラインの一撃もこちらが全力で相手するほど強いものだった。シャルもラウラに脚を止めさせて攻撃しようとしたのはよく考えられていた。箒とセシリアも同様だ。みんな確実に成長している」

一夏

「…へへっ、ありがとよ。今度こそは勝ってやるからな!」

 

他のみんなも元気を取り戻したようだ。

 

「…それにしても毎回思うがやはり二人のISは変わっているな。デザインといい、あの能力といい」

シャル

「うん、僕もそれは思ってた…。ねぇ火影、あのISについて本当に何もわからないの?誰が造ったのかも」

火影

「…ああ。寧ろこっちが知りたいぜ」

セシリア

「ああそう言えばすっかり聞き忘れておりました。ずっと気になっていたのですが、お二人のISは何故剣や銃弾が通るんですの?普通はバリアやシールドがあるものでしょう?」

「それ私も気になってた。クラス代表戦の時に火影が私を庇ってくれた時に銃弾を受けて出血してたよね?あの時ほんとに焦ったわよ…」

ラウラ

「…うむ。私も以前その手に持った剣で海之を貫いた…」

海之

「もう気にするなラウラ」

火影

「鈴もあん時は恐い思いさせて悪かったな。……そうだな…わかる範囲でよければ話してやるか」

一夏

「マジか。教えてくれよ」

 

 

…………

 

火影と海之はアリギエルとウェルギエルが9年前に起動した事だけを隠し、それ以外の情報についてはみんなに話した。流石にみんな驚きを隠せなかった。

 

一夏

「な、なんだって……!?」

シャル

「ぜ、絶対防御もバリアも無いISなんて…そんな事ってあるの…!?」

海之

「正確にいえば急所以外だ」

セシリア

「で、ではおふたりのISは全ての攻撃をほぼそのまま受けると言う事ですの!?」

火影

「ああまぁな」

「まぁな、じゃないわよ!それってどれだけ危険な事か分かってんの!?防ぐものが何もないんじゃそれで死んでしまう可能性だってあるってことじゃないの!」

「…そうか。ふたりのISのあの異常な再生速度はそのために」

海之

「そうだ。アリギエルとウェルギエルは頭部または心臓が破壊されない限り再生し続ける。剣で刺されようとも銃で撃たれようとも手足が吹き飛ばされてもな。まぁ頭か心臓がやられれば死んでしまうが」

ラウラ

「! ぶ、物騒な事をいうな海之!」

シャル

「そ、そうとも知らずに僕達はふたりに…」

 

シャルロットの台詞を聞いた火影は、

 

火影

「シャル、そしてみんなも聞いときな。今の話を聞いて今後もし俺達を戦わせまいとか戦いたくないと考えているなら…もう俺達に関わらない方が良いぜ?」

全員

「「「…えっ!?」」」

海之

「俺達は寧ろアリギエルとウェルギエルがあれで良かったと思っている」

ラウラ

「…どういう意味だ海之?」

海之

「それを話す前にひとつ話しておこう。…以前束さんも言ったが、本来ISは宇宙での活動のために生み出されたものだ。それ故生命を守るためにISは防御に重点を置いている。これは知っているな?」

セシリア

「ええもちろんですわ。ですがその計画は今はほぼ凍結状態と伺っておりますが…」

「……」

海之

「そして今のISの現状はスポーツとされている…が、その裏では兵器として見られている。あの軍用ISのゴスペルがいい例だ。宇宙活動のために使われる筈だったISが兵器として、そして宇宙の脅威から命を守るための筈の絶対防御やシールドが、今は戦うための盾という意味に変わってしまっている」

全員

「「「……」」」

火影

「だがそれは云わば戦いでの痛みを感じにくくしてるって事だ」

「…?ダメージが軽減されるなら良いんじゃないの?」

火影

「…まぁな。だが…本来戦いってのは痛みがあって然るべきだ。昔の戦争とか考えてみな。兵士は銃弾の一発でも受けたら死んじまってたし、戦闘機ならミサイル1発でも直撃すれば終わりだ。そんな戦いを経験するからこそ人は多くの事を学び、実感できる。その無意味さも、そして二度とあんな事あってはならないという気持ちをな」

「…そういうものかもな」

火影

「ああでもお前らのISが悪いって言ってんじゃねぇぞ?もうここまでISは発展してしまってるわけだし今さらそれを変える事なんてできねぇさ。だが…それはISを使えるお前らみたいな幼い者が、今後万一起こるかもしれない戦いに使われる可能性があるって意味を含んでる。俺達のと違ってお前らのISは国が管理しているんだしな」

全員

「「「!!」」」

 

全員言葉を失った。二人の言う通り確かにほぼ全てのIS、そしてコアは国が管理している。そしてISに関わる多くの武器や兵器が同時に開発されている。それはつまり今後ISが従来の戦闘機や戦車に変わる新たな兵器に成り代わるかもしれないのだ。代表候補であるセシリアや鈴、シャルロットはまだいい。その気になれば候補を降りる事もできる。だが既にロシア代表であるここにはいない楯無やドイツ軍人であるラウラはそうはいかない。

 

海之

「話が少し逸れてしまったな。さっきも言った通りアリギエルとウェルギエルが誰に造られたのかはわからない。でも俺達はこれを造ってくれた人に感謝してる。痛みを忘れない様にしてくれた事。そして守るための力を与えてくれた事を」

火影

「だから俺達はこれを捨てる気はない。どんなに傷つこうともな。これは誰かに従っているわけでもない。俺達の本能に従っている。だが…もし今の話を聞いて俺達が怖くなったんなら…もう俺達に関わらない方が良い。何回も血を見ることになるかもしれねぇからな。……さて、今日は風呂が使える日だったな。折角だから入るか。じゃあなみんな、お疲れさん」

海之

「…俺も戻るか。ではな」

 

そう言って火影と海之は先に出て行ってしまった。残されたみんなは暫く黙っていたがやがて、

 

一夏

「あいつら…あんな気持ちで今まで戦っていたんだな」

「…どんなに傷ついても守るために戦い続ける…か。凄い覚悟だな」

セシリア

「…ええ。簡単にできることではありませんわ。でもおふたりのあの目は…本気ですわね…」

「戦いの痛みを忘れない様に…か。全然考えた事も無かったな」

シャル

「…僕もだよ。もっともっと考えないといけない事があるんだね…」

ラウラ

「…うむ」

 

火影と海之の覚悟を知ったみんなはそれから暫く考え込む事になった…。





お久しぶりです。この先もこういった事があると思いますので、すみませんが気長にお待ちいただければ幸いです。完結まで必ず書きます。

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