IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

99 / 258
IS学園学園祭。火影達1-1のメイド喫茶は大盛況のまま一日目の幕を下ろした。男子達はかなり大変そうだったが女子達や千冬はみんな満足そうだった。
そして日は開けて学園祭二日目。この日は午後より生徒会長である楯無考案の特別企画があるという。それを聞いて火影達はなぜか嫌な予感しかしなかった…。


Mission87 灰被り姫(シンデレラ)

IS学園学園祭二日目、午後。

 

学園内のとある一角。ここに何故か隠れるように火影達がいた。しかも仮装して。

 

一夏

「はぁ、はぁ、はぁ……ほんっとどこまでしつけーんだよ…」

火影

「…やれやれだぜ…」

海之

「…ハァ」

 

珍しく火影や海之も疲れている様だった。

 

火影

「やっぱ悪い予感が当たったか…。恨むぜ楯無さん…」

 

何故こんな事になっているのか。事は数刻前まで遡る。

 

 

…………

 

学園祭は二日目に突入していた。二日目の午前中は昨日に続いて出し物や催し物を行い、午後は生徒会長考案の特別企画を行う予定である。そんな二日目の午前の部も無事に終わり、時間帯は午後に差し掛かろうとしていたのだが…。

 

1-1

 

一夏

「つ、疲れた…」

シャル

「みんなお疲れ~!昨日に続いて大盛況だったね~」

「うむ。おかげで経費も十分賄えた。もしかしたら人気トップかもしれないぞ」

ラウラ

「…しかし過ぎればあっという間だったな。折角嫁や弟が服を作ってくれたのにもう着る機会がないと思うと…なんか寂しい気がする」

「気にいってたのねあんた…、まぁわかるけどさ。それってオーダーメードなんでしょ?」

セシリア

「そうですわ。御二人が私達の希望通りに作ってくださいましたの。例えば私のは青色の生地に白いリボンですわ」

シャル

「僕のは黄色い生地に緑のリボンだよ」

海之

「もし気にいったのなら持ってても良いぞ。もう必要ないからな」

ラウラ

「本当か!?」

火影

「ああ。本音と簪は…まだみてぇだな」

「二人の整備科も人気だったぞ。休憩中に見に行ったが、最新型の弐式が将来ISの整備士を目指す生徒や装備メーカーへの就職を狙う生徒の注目の的だった」

「へ~。……どうしたのよ一夏?」

一夏

「…箒、お前が整備科に行った時にオレンジの長髪の女の人はいなかったか?」

「オレンジの長髪の女性?…いや見なかったな。その女の人がどうかしたのか?」

一夏

「いや、只の知り合いだ。…巻紙さんも来ると思ったんだけどな。ISの装備メーカーの人なら」

火影

「……」

一夏

「まぁいいや。それより午後の特別企画ってやつだけど結局何すんのかわからねぇままだな。火影達は聞いてるか?」

火影

「いや、俺達も聞いてない」

セシリア

「生徒会員のおふたりもご存じないなんて」

 

~~~~~~~~~~~

 

とその時、校内放送が鳴った。聞こえてきたのは、

 

楯無

「…コホンッ。え~エヴァンス兄弟のふたり、そして織斑一夏くん。以上三人は急いで生徒会室に来てね~。…あああと女子達は全員体育館に集合してくださいね~。以上!」

 

楯無の声だった。

 

全員

「「「…………」」」

 

全員は暫く黙っていたがやがて、

 

火影

「…行くか」

海之

「…ハァ」

一夏

「そうだな。…んじゃみんな、後でな」

シャル

「うん。また後でね」

 

そういうと男子組は女子達と別れて生徒会室に向かった…。

 

 

…………

 

生徒会室

 

火影

「失礼します」

 

ガラッ

 

火影達は扉を開けた。…しかし中には誰もいなかった。

 

一夏

「? なぁ、誰もいないぞ?」

海之

「変だな…確かに生徒会室に来いと楯無さんが…」

火影

「おい、ここに3つ袋があるぜ」

 

火影の言う通り机の上に3つの袋があった。

 

一夏

「…これは服か?」

火影

「名前もある」

 

それぞれの袋には名前も書かれている。おそらく自分の名前が書かれているのが自分の袋なのだろう。そしてそこには手紙もあった。その内容は、

 

「火影くん海之くん一夏くんへ

お疲れ様!来てくれて申し訳ないけど楯無さんは準備で忙しいから先に行ってるね!袋はそれぞれの名前が書かれている物だよ!それじゃ準備が出来たらアリーナに来てね~♪

楯無さんより」

 

火影・海之・一夏

「「「……」」」

 

服が入っているらしい3つの袋とこの手紙を見て三人は何故か嫌な予感がした。しかしやらない訳にもいかず、

 

海之

「…着替えるか?」

火影

「それしかねぇだろ…。とっとやって終わらせようぜ」

一夏

「…そうだな」

 

三人は袋に入っていた服にそれぞれ着替え、アリーナに向かう事にした…。

 

 

…………

 

アリーナ

 

数刻後、着替え終わった三人はアリーナに来ていた。…しかし、

 

一夏

「…なぁ、なんで俺だけこんな格好なんだ?」

 

一夏にあてがわれた服は膝部分までしかないズボンの下に白タイツ。赤い服にラフカラー。そしてマントに王冠と、一見昔の英国貴族の様な格好である。

 

火影

「知るかよ。つーか俺達も同意見だっての…」

海之

「…全くだ」

 

火影の服は一夏と同じく赤い服だが一夏のとは感じが違う物で、他には白いズボンに黒のブーツ。マント。腰には一振りの剣。そして胸の部分に銀の勲章の様な物がある。

一方海之は火影の服と色違いで色は青。腰には火影と同じく剣。そしてこちらは金色の勲章がある。ふたりとも一見騎士の様な格好だった。

 

一夏

「二人はまだ良いよ…。せめて俺にも剣があれば良かったのにな」

火影

「剣と言っても模造品だがな。…しかし遅えなぁ、もう20分位経ってるぞ」

海之

「……」

 

~~~~~~~~~~~

 

とその時アリーナ中にアラームが鳴り響く。その音はまるで映画の開幕前のアラームに似ていた。そして、

 

楯無

「…皆様。大変長らくお待たせ致しました。只今より生徒会特別企画、「シンデレラ」を開演致します」

 

楯無の声がした。どうやら管制塔にいるらしい。

 

一夏

「び、吃驚した…」

 

すると突然アリーナのスクリーン画面に絵が映し出された。そして同時に楯無のナレーションが始まる。

 

楯無

「むかしむかし、とある国のとある街にひとりの女の子がいました。少女の名前はシンデレラ。その街で最も美しいと言われている少女。ある日の夜、お城で開かれた舞踏会に参加したシンデレラは、そこでとある国の王子と名乗る人物と出会います。彼の優しさにシンデレラは瞬く間に恋に落ちてしまいました。そして王子の方も、彼女を好きになったと伝えました。夢心地のシンデレラは近い内にまた必ず会いましょうと王子と約束し、その日は別れる事にしました」

火影・海之

「「……」」

一夏

「なんかストーリーが違う気が…」

 

三人を尻目に楯無のナレーションは続く。

 

楯無

「翌日、まだ夢心地が覚めないまま街で買い物をしていたシンデレラは、立て看板を見ているらしき人混みと出会います。何事だろうと自分も近づき、人混みを割って立て看板を見る事にしました。そして…そこにはこう書かれていました」

 

「敵国に雇われたスパイ!?この似顔絵の人物、王子と偽って極秘文書を盗んだ疑いあり!捜索隊に協力してくれる勇士募集!」

 

火影・海之

「「…!」」

一夏

「…なんかえらい話になってきたな」

楯無

「シンデレラはそれを見て驚愕します。書かれていた似顔絵の人物はなんと…昨日自分が出会った王子そのものだったのです!一国の王子を名乗っていた人物が実はスパイだったという衝撃の事実に、彼女は激しくショックを受けてしまいました。……と思いきや、シンデレラの心には別の感情がありました。それは……」

 

「純粋で清らかな女の子の恋心を、乙女心を傷つけた…。許さない!!必ず私の手で捕まえてやる!!」

 

火影・海之

「「……」」

一夏

「シンデレラってこんなキャラクターだったっけ…?」

 

楯無のナレーションは更に続く。

 

楯無

「偽王子への復讐を決意したシンデレラはその翌日お城に出向き、捜索隊に参加する事にしました。実は彼女は街一番の美少女であると同時に、街で一番の女剣士でもあったのです。実力が認められ、参加が許された彼女ら捜索隊に王は伝えます」

 

「王子に扮したその男はふたりの手練れの剣士を護衛につけている。決して油断するでないぞ!!打った証としてその男の王冠、または剣士の勲章を持ち帰るのだ!そうすれば何でも望みのものを授けようぞ!」

 

火影・海之

「「!」」

一夏

「王子とふたりの剣士って……」

 

楯無

「その王の言葉に捜索隊の面々は凄まじいやる気となりました。そしてシンデレラも」

 

とその時、

 

火影

「!」

 

カキイィィィィンッ!!

 

火影は腰の剣で後ろから来た何かを受け止めた。それは、

 

「くっ!やっぱりやるわね火影!」

 

槍(木製)を振るってきた鈴だった。

 

火影

「…は!?」

一夏

「鈴!?…って、お前、なんだその格好?」

 

火影や一夏は驚いた。というのも…鈴はシンデレラの様な純白のドレスを纏っていたからだ。

 

「そんな事は今はどうでもいいの!一夏!あんたの王冠を渡しなさい!火影に海之!あんた達の勲章でもいいわ!」

 

鈴の狙いはどうやら一夏の王冠、または火影と海之がつけている勲章の様だ。すると、

 

海之

(…赤い光?…これは…レーザーサイト?…!)

「伏せろ一夏!」

一夏

「えっ!?」

 

一夏は言われて素早く頭を下げた。すると、

 

ボソッ!

 

突然地面に穴が空き、土が飛んだ。

 

一夏

「な、なんだ!?」

海之

「…これはゴムの弾か?……!」

 

海之は飛んできた方向を見ると観客席からセシリアがこちらにライフルを構えているのが見えた。

 

セシリア

「流石ですわね海之さん。当たると思いましたのに。でも諦めませんわ!あの王冠は必ず私が!」

 

話の流れからしてセシリアの狙いもどうやら鈴と同じらしかった。

 

一夏

「あ、あぶねぇ…」

海之

「…!」

 

ガキンッ!ガキンッ!

 

海之もまた剣を抜き、何かを払いのけた。

 

一夏

「今度はなんだぁ!?」

海之

「…ラウラ」

 

見るとドレスを纏ったラウラがいた。

 

一夏

「…作りもんのナイフ?ラウラ!お前あぶねぇだろ!」

ラウラ

「…嫁よ。王冠かその勲章を渡せ。逃げられはしないぞ。学園中がお前達を狙っているんだ!」

一夏

「訳わかんねぇっつーの!」

 

とその時、楯無のナレーションが聞こえた。

 

楯無

「さぁ始まりました!自らの願いを叶えようとするシンデレラ!目指すは偽王子がもつ王冠!もしくは護衛の騎士の勲章!それを手に入れようとシンデレラは雨に降られても砂埃を被っても灰を被ってもひたすらに進みます!その姿はまるで兵士そのもの!そんな彼女を人々はこう呼びました…「灰被り姫」と。果たしてシンデレラは願いを叶える事が出来るのか!?」

 

とその時、

 

~~~~~~~~~~~~~

 

アリーナ入口から大量の女子達が入って来た。しかもみんなドレスを着ている。

 

「一夏くーん!」

「火影くーん!」

「海之くーん!」

 

火影

「…そういう事か。お前らはシンデレラで俺らはその王子と騎士。そして一夏の王冠か俺らの勲章を取れば…お前らの望みを聞いてもらえるってわけだな?」

一夏

「な、なんだって~!!」

海之

「…ハァ」

「そういう事!だから早く渡しなさい!この状況ではもう逃げられないわよ!」

 

そう言いながら鈴は今度は丸腰の一夏に襲いかかる。

 

火影

「一夏!コレ使え!」

 

火影は自らの剣を一夏に投げて渡す。

 

ガキィィィィン!

 

一夏

「あ、あぶねぇ~!サンキュー火影!」

「ああもう~!」

 

そうこうしている間に外から他の生徒も迫ってくる。

 

ラウラ

「くっ…素直に渡してくれ海之!嫁のお前に傷を付けたくはない!何よりそれを他のみんなに渡したくないんだ!」

海之

「…どうかな?逃げられないと決めつけるのはまだ早いぞラウラ」

 

すると海之は自らの懐から何かを取り出し、それを放り投げる。

 

カランカランッ…ボンッ!!

 

生徒達

「「「!!」」」

一夏

「うぉ!」

「えっ!?」

ラウラ

「なっ!スモークグレネード!?」

 

周辺にものすごい白煙がたつ。観客席から狙うセシリアも困惑している。

 

セシリア

「これでは照準が定まりません!」

海之

「俺が造った護身用だ。まさかこんな遊びに使うとは思わなかったが。因みに無害の煙だから安心しろ。ふたり共、行くぞ」

火影

「おう!」

一夏

「あ、ああ!」

 

三人は煙に紛れて逃走した。…そして煙が晴れた時には三人の姿は無くなっていた。多くの女子が残念がっている中、

 

(さすがは火影と海之。あと一夏も。やっぱそう簡単には行かないってわけね…。でも諦めないわよ。必ず私が王冠取ってみせる。そして…火影と相部屋になってやるんだから!)

セシリア

(あんな物を隠し持っていたなんて…。ですがチャンスはまだある筈ですわ。3つの内のひとつで良いんですもの!必ず一夏さんと相部屋になってみせますわ!)

ラウラ

(まさかあんな物を持っているとは…。海之の奴やはりやるな…。だがそれでこそ私の嫁だ。…待っていろ、お前との相部屋の権利は誰にも渡さんからな!)

 

鈴達はますますやる気の様であった。一方今の様子を管制塔から見ていたこの企画立案張本人の楯無は、

 

楯無

「ふっふ~ん♪やっぱやるねぇ火影くん海之くん。スモークグレネードとは正直恐れ入ったよ。…でもそれで良いよ。まだ企画は始まったばかりなんだから♪そんな簡単に捕まっちゃ面白くないからね~!」

 

楯無は悪戯っ気で一杯の笑みを浮かべていた…。




おまけ

その頃、先程姿が見えなかった簪と本音は…、こんな所にいた。

火影と本音の部屋

本音
「ねぇいいの?かんちゃん~。みんなと一緒に参加しなくて~。このままじゃみうみうとの相部屋の権利取られちゃうよ~?」

「…うん、わかってる。でも…」
本年
「でも~?」

「…あんな企画に参加して…海之くんを困らせたくないもん…。相部屋でなくなるのは嫌だけど…、海之くんに変に思われるのは…もっと嫌」
本音
「かんちゃん~…」

「…本音はいいの?火影くんとの相部屋が無くなるかもしれないよ?」
本音
「…かんちゃんがここまで頑張ってるのに私が頑張らないわけにいかないでしょ~?」

「…ごめんね本音」
本音
「いいの~!私とかんちゃんの仲だしね♪」

「…ふふっ」

ふたりが一番大人かも知れない…。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。