ポケモン技など花拳繍腿   作:ちゅーに菌

1 / 6


 書いては死蔵している小説の中で、具合の良さそうな奴を投稿してしまいました。不慣れではありますが、楽しんでいただければ幸いです。ポケモンは昔から純粋に大好きですので頑張らせていただきます。



バトルガールとエスパー/フェアリー

 

 

 

「決闘よ! ポケモンバトルよ!」

 

「はぁ……?」

 

 

 俺は席についたまま、呆けた声を上げて目の前で声を荒げる水色の髪をした少女を見上げた。

 

 ここは屋根の色は黒が多く、岩山に囲まれた場所にあるジョウト地方のフスベシティ。ドラゴンタイプ使いのトレーナーの出身地として知られ、"ドラゴン使いの里"とも呼ばれる土地だ。

 

 そして、現在地は街にあるポケモンを学べるトレーナーズスクールであり、その教室内にいた。更に言えば中等部の始業式があった後であり、ホームルームが始まる直前である。

 

 フスベシティにトレーナーズスクールなんか無いと思われるかも知れないが、そもそもゲームでは、ジムとフレンドリィショップとポケモンセンターを除くと、民家と呼べるものが、3軒しか建っていないため、ゲームと現実を一緒にするのはナンセンスだろう。このフスベシティは、シティと名がつくだけはあり、都会ではないがそこそこ発展しているのだ。そのため、過疎化や少子化などが問題にならないレベルには発展している。

 

 話を戻すと目の前におり、ビシッと俺を指差している水色髪の少女は、初対面のハズにも関わらず、大変見覚えのある容姿をしていた。

 

 ズバリ、フスベシティのジムリーダー"イブキ"である。ただし、ゲームよりもかなり小さく、はずかしいかっこうもしていないので、まだジムリーダーではない。 

 

 …………本当に突然だが、高校デビューとはなんだろうか?

 

 高校デビューとは、中学生の頃は、それほどクラスで目立たない存在だった人が、高校に入ったと同時にイメージチェンジをして、垢抜けた格好や振る舞いをしたり、不良行為に手を染めたりすることなどを意味する用語である。

 

 別に俺はそれに当てはまるというわけではない。今の年齢は12歳で中学生だ。それに高校デビューではなく、むしろ前にいた()()で少々色々と弾け過ぎていたため、そういった世間のしがらみから離れ、まっさらで普通の中学生として学生生活を送りたいのだ。

 

 だというのにこの水色頭は何故か、ピカピカの入学早々やらかしてくれたのである。既にクラス中の視線は、俺とコイツに釘付けだ。

 

「……わけを聞いても?」

 

「ワタルさんがあなたをスッゴく強いトレーナーだって言ってたのよ!」

 

 その言葉に騒然となり始める会場。それもそのはず、ゲームではチャンピオンや四天王だったドラゴン使いのワタルは、今はまだフスベシティのジムリーダーをしている。そのため、この街の子供達にとっては四天王やチャンピオンよりもわかりやすい憧れの的である。そんな奴に強いトレーナーだなんて言われた日にはッ……!

 

 早くも普通の学生生活を送る計画が傾き始めたことに絶妙な苦笑いを浮かべるしかない俺であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲーム視点を知っている俺は、当然というべきか転生者という奴である。ここはポケットモンスターの世界であり、俺は転生……いや、身体的には憑依に当たるのか……? 兎に角、それを体験しているため、今こうしてここにいるのだ。

 

 ちなみに俺は前世とは違い、性別は女になった。それに加えて容姿は、藍色の髪をポニーテールに結び、灰色の目をした細身の女――"バトルガール"だったりする。この身体に割りきれてはいないが、第2の人生と言うこともあり、前向きに納得している……日に日に膨らむ胸とか非常に複雑な気分だが、納得はしている……ハズだ。

 

 それよりも問題はバトルガールな方である。バトルガールと言えば、からておうの対になる存在であり、かくとうポケモン使いである。その為なのか、妙にポケモンと身体を鍛えることに引かれるのだ。

 

 そして、当時の何を思ったか、前世では事故で死んでしまったため、今世ではせめてそんなことがないようにひたすらポケモンと身体を鍛えることに幼少期の全てを費やしたのである。目標は10万ボルトで黒くなるだけですんだり、爆発しても吹き飛ばされるだけで済むようなスーパーマサラ人だった。

 

 まあ、それ以前に味方ポケモンにも当たる全体技で、特にじしんとかはトレーナーにも当たりそうなものなので鍛えておいて損はないだろう。

 

 前にいた地方――まあ、ぶっちゃけ"アローラ地方"なんだが、アローラではロケット団(マフィア)だの、世界を征服するだの、新しい進化の可能性だのと傍迷惑な組織が今はいなかったため、何も考えず平和に鍛えられたことも拍車を掛けたのだろう。

 

 本当にひたすらポケモンと共に修行の日々に明け暮れた。まあ、途中で少々特殊なポケモンが2~3体ほど手持ちに加わったりもしたが、アイツらは突然家に来たり、修行してたら勝手に()()()()()ので俺のせいじゃない。

 

 そして、11歳になったときに鍛え抜いたポケモン達と旅をした。それはもう手当たり次第にバトルを吹っ掛けながら楽しく島巡りをした。

 

 

 

 その結果――。

 

 

 

 カヒリと同じように島巡りチャンピオンになってしまった。それも最速かつ無双もいいところでだ。そして、気がつけばアローラ地方中に俺の名を知らぬものがいないほど有名になってしまっていたのである。日課のモーモーミルクを飲むためにポケモンセンターに行こうとすれば、道中で観光客含む十数人に話し掛けられ、ポケモンセンターの椅子に座ってモーモーミルクを飲むだけで人だかりができ、挙げ句の果てにモーモーミルクが売り切れるような事態になることもあった。

 

 純粋にポケモンと身体を鍛えたかった俺としては、突然、パンダが何かになったような気分だ。なので、流石に反省し、ほとぼりが冷めるまで父親の田舎であるこのフスベシティに引っ込み、普通の学生生活を送ろうとしていたのだ。

 

 ちなみに母親はシンオウ地方のカンナギタウンの出身である。アローラ地方で育ったのは母親の趣味と父親の仕事の関係だ。経歴だけ無駄に複雑なバトルガールである。

 

「はぁ……」

 

 トレーナーズスクールからの帰宅中。俺は大きな溜め息を吐いた。初日から中学デビューに失敗したかもしれない……。

 

 とりあえず、はずかしいかっこうの少女にはせめて明日にして欲しいと頼み込んでおいた。ちなみに俺もイブキも学校指定のブレザーを着ていたので、格好は変ではない。スカート滅多に着ないからスースーする。

 

「寝る……」

 

 自宅のドアの前に立ったと同時にそう呟く。何もかも嫌になったので日課の鍛練を放り捨てて寝ることに決めた。

 

 そして、鍵を開けてドアを開け――。

 

 

『マスター! お帰りなさい愛してますラブですハグしましょう! あっ、お休みになるんですか!? 寝るなら合体しま――ぶへっ!?』

 

 

 いつものようにドアを開けた瞬間、頭の中に奇っ怪な内容の"テレパシー"が響くのと同時に、白と緑を基調とした配色をして、胸に赤い角のようなものが生えた女性的な外見をしたホウエン地方のポケモン――"サーナイト"が正面から突撃してきたのでアイアンクローで顔を掴んで止めた。

 

 生意気にもこのサーナイトは170cmも身長があるため、俺とはまだ20cmほど身長差があるが、最近俺の背が伸びたのでようやくこうして掴めるようになったのである。

 

『タップタップタップ』

 

 タップアウトは口で言えないときに、相手の身体を叩いて示すギブアップなので俺は何も聞いていない。

 

 彼女はサーナイトのサナエさん。俺のアローラ地方での最古参の手持ちポケモンの1匹であり、ホウエン地方やカロス地方から持ってきたわけではなく、何故かアローラ地方にいた元野生ポケモンである。ロトム図鑑などまだ無く、島スキャンが出来ないため、何故アローラ地方に当時キルリアだったサナエさんがいたのかは永遠の謎。

 

『テレポート!』

 

 すると手の感触が消え、代わりに背中から抱き締められる。花と太陽のような香りに女性特有の匂いが不思議な感覚を覚えた。俺の背後にテレポートしたサナエさんに抱き着かれたのだろう。サナエさんは柔らかいが、背中に当たる赤い出っ張りがゴリゴリする。

 

『ウェヒヒヒヒ――! 中学生に成り立てのマスターの肢体たまんねぇな――ぎゃー!?』

 

 俺はその体勢でサナエさんを投げた。廊下に背中を打ち付けたサナエさんから悲鳴が上がるが知ったことではない。ああ……本当にどうしてこんなサーナイトを手持ちポケモンにしてしまったのだろうか……。

 

『どっこいしょっと……私が強かったからでしょう。素で6Vのサーナイトなんて、この世界じゃ中々お目に掛かれませんからね。すごい特訓もこの世界じゃ今のところありませんし、あってもLv100のポケモンなんてこの世にいるかどうか』

 

 特にダメージを受けた様子もなく起き上がり、そう言いうサナエさん。何か違和感を覚えると思うが、このサーナイトのサナエさんは特性がテレパシーのため、普通に人間とも話せるだけに限らず、他者の心が読めるのである。そして、相手がその瞬間に考えていることや、挙げ句の果てに記憶まで読み取れる……そう、記憶を読み取れてしまうのだ。

 

『前世が男の人とか、この世界が元は国民的ゲームだとか、クッソ面白い記憶のある人間の手持ちポケモンにならない手はないと思いました。まあ、今はそれ抜き――いや、込みで好きですよマスター』

 

 きもちポケモン(ラルトス)→かんじょうポケモン(キルリア)→ほうようポケモン(サーナイト)

 

 と、進化していく過程で頭のネジをどこかに置き忘れてきてしまったのだろう。そのくせ、この通り他人の心や記憶を自由に読めるのだから質が悪い。

 

『ああ、それより今晩はカレーとシチューとハヤシライスどれがいいですか? 今、ルー入れようとしてたところなんですけど?』

 

「………………シチュー」

 

『はい、わかりました』

 

 そう言いながらサーナイトの鳴き声を上げてキッチンへと戻るサナエさん。こう見えてポケモンバトルは無茶苦茶強い上、家事万能だったりする。というか、胃袋と生活導線を握られているため、アローラ地方で集めた俺の手持ちポケモンで双璧をなす問題児の片割れである。

 

 しかし……悔しいが、サナエさんの料理無茶苦茶美味しいんだちくしょう。楽しみだなぁ……シチュー。

 

 もう片方の問題児は、リビングで寝転がりながらポテチでも食べていると思うので、今語ることではない。

 

 とりあえず、俺はブレザーから部屋着のジャージに着替えるために自室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アローラ~♪』

 

 翌日、中学デビューについては一旦考えるのを止め、大変トレーナーズスクールに着いて来たそうにしていたサナエさんを連れて来たのだが、クラス内は大変なことになっていた。クラス外までサナエさんを見に来ている生徒が集まっている始末だ。

 

 全国図鑑のごった煮もいいところのカロス地方やアローラ地方(近年の地方)のせいで感覚が麻痺していたが、そう言えばホウエン地方やジョウト地方では他の地方のポケモンは、レアどころか都市伝説レベルだったことをここで初めて思い知ったのである。

 

 そして、サナエさんは生徒とテレパシーで会話しつつ、挨拶でアローラの小っ恥ずかしい挨拶をしていた。キチンと手で丸く円を描くことも忘れていない。

 

 そう言えば、サナエさんは生粋のアローラ人だったと思いながら俺は遠い目で窓の外を見ていた。

 

 アローラ地方から手持ちポケモン……全部持ってきちゃったよ……だってほら……大切な仲間だし……あはは。

 

 そらきれい。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。