ポケモン技など花拳繍腿   作:ちゅーに菌

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バトルガールとトレーナーズスクール

 

 

(汚い場所ね……)

 

 

 ほんの少し前まで輝かんばかりに白い砂漠と、きらびやかな宝石だけがどこまでも存在する場所にいたポケモンが思った最初の感想はそれだった。

 

 地面は過度に濡れており、過剰で鬱蒼とした植物の緑が目に毒で、辺りを這い回る生き物は不細工な彩りをし、あまつさえ大気まで湿っぽい。

 

 どこを見ても不潔で汚く不衛生。触れることどころか、この大地を踏み締めることさえ不快にそのポケモンは思っていた。

 

 唯一見れるものは、同じ色をした青空ぐらいのものだろう。そのポケモンは天を仰ぎ、深く溜め息を吐いた。その様子は女性とある虫を合わせたような容姿により、暗黒に落とされたダイヤモンドのように酷く輝いて見えた。

 

 故にだろう――。

 

『先手必勝! テレポートドロップキック!――あれっ!?』

 

 

 この世界を不浄と切って捨て、全てに気を許さなかった彼女は、真後ろから突如出現した女性のようなポケモンによる奇っ怪な攻撃を事も無げに躱した。

 

 その女性のようなポケモンは、これまで見たこの世界の存在にしては見れる方ではあったが、頭の方が足りないと、彼女は嘲笑を上げる。

 

 その様子にテレポートをしてまで蹴りを入れようとしてきたポケモンは、猫が背中の毛を立てて威嚇するように敵意を剥き出しにしていた。

 

『なんだコイツやっぱり見た目通りの中身じゃねーですか!? ぶっ殺してや――いったい!?』

 

「おい、待てや。そこのアホサーナイト」

 

 がしりと音を立て、そのポケモン――サーナイトの首が背後から掴まれる。

 

『おぅ!? ギブギブ絞まる絞まる!?』

 

「首が絞まろうと会話(テレパシー)に支障はねぇな。ウルトラビーストを見掛けた瞬間、避難命令を無視して突っ込んでいったポケモン――いやバカモン」

 

『あんだけデタラメな身体能力してるクセに何チキってるんですか!? マスターのばかぢからとノーてんきと空気の読め無さをここで使わずしていつ使うのです!?』

 

「お前が俺のことをどう思ってるかよくわかった」

 

 サーナイトと言い争っているのは、サーナイトよりも小柄な少女だった。身長的に手を伸ばすと、丁度サーナイトの首に届くぐらいである。

 

『気に入らねぇんですよ!? その如何にも育ちが良さそうな面構えが気に入らねぇ!』

 

「私怨じゃねぇか」

 

『私怨も私怨ですよ!? なんだっていい! 育ちの良い奴の鼻を明かして、足蹴にするチャンスだ!』

 

「お前、本当にポケモン生の性格厳選失敗してるな」

 

『性格いじっぱりで頭のとくこうが低い人に言われたくないですぅー! どうせマスターはマッシブーンの親戚か何かでしょう!?』

 

「はははは、表に出ろ。カプ・テテフの完全下位め」

 

『い……言ってはならねぇことを言いやがったなぁぁぁ!? 寄越せ! メガストーンを寄越せください! メガバングルを下さいぃ! そしたら今すぐあの疫病神(テテフ)に特攻してやるぅ! XYではあんなに持て囃しといて、サンムーンでテテフが出た瞬間にゴミみたいにヤリ捨てしやがってよぉ!? お前らぜってぇ許さねぇからなぁ!?』

 

「お前はいったい何と戦っているんだ……」

 

「ジャラ……」

 

 そんな二人の隣にいるポケモン――ジャラランガは"またか……"と言わんばかりの困り顔をしている。

 

 

(――え、なにコイツら……)

 

 

 彼女は綺麗や汚いの概念の外にある何かよく分からないものに困惑していた。

 

 しかし、それと同時に自身が無視されていることにフツフツと苛立ちが募り、彼女は自身から行動に出た。

 

 

「かぶりん」

 

 

 いい加減にしろという意思を込めて、口喧嘩を続けている二人に彼女は一瞬で迫り、足を振り上げる。

 

 同じ種族の中でも、最速の己を止めれる者などいるはずもない。彼女はそう自負しており、実際に彼女の速度は、常人からすれば瞬間移動のようにさえ錯覚しただろう。

 

 

「あ゛あ゛ん?」

 

『引っ込んでなさい白ゴ○ブリ!』

 

「――――がふッ!?」

 

 

 それはあまりに完璧な連携だった。

 

 まず、とんでもない速度で反応した少女が、片腕を盾にして彼女の蹴りを受け止める。そして、カウンターに近い要領で苛烈な震脚を行い、自身を中心として周囲の地面に衝撃を与えた。

 

 地に立つ彼女はその衝撃によりよろめき、その僅かな隙にサーナイトが"サイコキネシス"を放った。あまりに息の合ったタイミングのそれは彼女に直撃する。

 

 タイプ一致かつ弱点。その上、特攻種族値125の威力を受け止められるだけの特防が、スピードとパワーに全てを懸けたようなポケモンである彼女にあるわけもない。

 

 

(きれいだわ……)

 

 

 その刹那の時間に彼女は魅力された。ポケモンとトレーナー、本当の意味で隣に並び立つ光景は正しくパートナーを思わせ、その輝きに彼女は当てられたのである。

 

 彼女は目を回して地面に倒れ込む。完全に戦闘不能であった。

 

『………………あれ? やりましたよマスター! なんか倒しましたよ! 捕獲しましょう捕獲! ポケモンゲットだぜ!』

 

「お前本当に調子いい奴だなぁ……」

 

「ジャラ……」

 

 これがウルトラビースト――フェローチェとドラキアたちとの奇遇の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 尚、幾ら様々なボールを投げても捕まらなかったため、いっそのこと目覚めたフェローチェに直接どうしたら捕まってくれるか聞いた結果。ドラキアがアローラ中のチビッ子からボールのお姉ちゃんと呼ばれる程、10個刻みでモンスターボールを買うハメになるのだが、それはまた別のお話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イブキを撃退してから少し経った頃。ようやくトレーナーズスクールにも馴染んできたという気がする。

 

『アローラであれだけ好き勝手やってた奴が今さらなんですよねぇ……』

 

 ポケモンの特権をフル活用し、俺の隣で何処かから持ってきたパイプ椅子に座りながらそんなテレパシーを呟くサナエさん。授業中なので、俺以外に伝わらないように話しているのが幸いである。

 

 よくよく考えれば、イブキが家に来たとき、勢いのままにフスベシティのジム破りをしていたらアローラの二の舞になったかもしれないので、踏み止まった俺はグッジョブと言えるだろう。

 

『ドラゴン単体も、みずタイプ込みのドラゴンもフェアリーの的ですのに……』

 

 その図が容易に想像出来るから嫌なんだよ……ポケモンの反応を見るからにもフェアリータイプなど浸透している気がしない。なので幾らワタルさんと言えども事前知識無しにフェアリータイプを刺されたら全タテされかねない。そうしたら最悪の場合、ワタルさんをポケモン1体で全タテした女というとんでもない存在になってしまうじゃないか。

 

『武勇伝が増えるだけですよ。まあ、それよりもこの学校――』

 

 サナエさんは溜め息のようなテレパシーを出してから更に呟く。

 

『つまんないですねぇ……』

 

 サナエさんが言うことも一理あった。何せ、中等部と言えどもトレーナーズスクールで今やっていることは、正直なところ復習にすらならないような初歩的なことだ。タイプ相性がどうとか、状態異常がどうとか、俺やサナエさんにとっては考えなくても身に付いているような基礎的なものだ。まあ、子供の頃を思い出すと、そのような事もよくわからずにポケモンをしていた記憶があるので妥当な教育だろう。

 

 しかし、教育とはそのようなもの。例えるならば必ず全員で一歩歩かされ、一歩も歩けない子の事や、百歩歩ける子の事は考えないのが、今の教育と言うものだ。こうして、型にハマったトレーナーが量産されるのであろう。

 

 前世の教育の闇を見ている気分だが、まあクラス内の当人は楽しくやっているし、百歩歩けるのも俺一人なので微笑ましいものだ。なにより、ポケモンは前世の教育と違って楽しい上にパートナー足り得る。故に苦ではない。それだけで幸いだ。

 

 しかし、サナエさんは俺のそんな心を覗いても口をへの字に曲げているようである。

 

『もっとこう、ポケモンにとっても為になるようなことを教わるモノだと思っていました。ターン終了後の順番の法則とか』

 

「無茶言うなや……」

 

「…………? どうしたのドラキア?」

 

「あ、いやなんでもない」

 

 サナエさんのあんまりな発言に思わず呟いてしまい隣の席のイブキが反応してしまった。悪いことをしたな。

 

 ターン終了後の順番の法則なんて、レートでは必須級の知識のひとつだが、それ以外では知らないでも全く問題のないようなことである。

 

 軽く説明すると――。

 

 

①天候ダメージ、すなあらし、あられ

②みらいよち、はめつのねがい

③ねがいごと

④たべのこし、だっぴ、うるおいボディなど

⑤アクアリング

⑥ねをはる

⑦やどりぎのたね

⑧どく、もうどく

⑨やけど

⑩あくむ

⑪どくどくだま、かえんだま

⑫くっつきバリ

⑬のろい

⑭しめつける、まきつく、ほのおのうずなど

 

 

 そのような順番で処理がなされ、この14項目を覚えておけば特に問題はない。本当はこれだけではなくもっとあるが、それ以上は壁の切れるタイミングなどの微妙な誤差レベルなので覚えておいて損はないのはこの辺りまでだ。

 

 ちなみに同じ番号の処理は素早さが高い方が先に発動する。例えば天候を変更するポケモンを出した場合、まず素早さの高い方の天候が優先され、その後に遅い方が発動する。結果的に遅い方の天候が反映されるというわけである。そのため、レートでは砂パや雨パなどで最鈍調整が行われるのだ。ここ、テストに出るからな。

 

『ポケモン学会で発表すれば学会を震撼させれますよね』

 

 先にポケモン虐待で捕まるのが落ちだろう。仮にこの法則を証明出来たのならどれほどの母数のポケモンたちを使って実験したというのか。そんなのゴメンである。

 

『……え? ポケモン虐待? えっ?』

 

 何か言いたいことがあればハッキリと言うように。修行や鍛練は決してポケモン虐待ではないのである。

 

『まあ、それは置いておき、私からするとこの教室は、ヤングースとツツケラの群れの中にマッシブーンが1匹混じっているような気分なんですけど?』

 

 ははは、そのマッシブーンって言うのはあれだな? サナエさんのことだよな? 断じてサナエさんのトレーナーのことではあるまいな?

 

『あっ! マスターそろそろお昼ですよお昼! 私、購買部で焼きそばパン買ってきますね! 自分の食べる!』

 

 そう言ってサナエさんはパイプ椅子ごとテレポートで逃げた。サナエさんにしては珍しいテレポートの正しい使い方である。

 

「あれ? サナエさんは?」

 

「パン買いに行った」

 

 しかし、問い掛けにおいて無言と無回答は肯定と知れ。後でシメる。

 

 

 

 

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