リリカルなのは アナザーダークネス 紫天と夜天の交わるとき   作:観測者と語り部

48 / 84
●パンドラの扉の向こう側

 睡眠系の魔法でアリシアの意識をまどろみの中に誘導すると、精神的に追いつめられていたアリシアは意図も簡単に意識を失った。

 その身体を、駆け寄ったなのはが優しく抱き止める。大好きな母を喪った少女は、眠らせても泣き続けていた。そうなってしまうくらいにショックだったのだろう。

 なのはも泣きそうなくらい辛かった。そして、何もできない自分が悔しくて、プレシアを助けてあげられない自分に腹が立った。それが傲慢なのだとしても、なのははプレシアを助けてあげたかった。

 辛くて、悔しくて、悲しみのあまり涙を流しそうになった。でも、なのはは必死にそれを堪えた。だって、本当に泣きたいのはアリシアなのに、自分が泣いてどうするんだって思ったからだ。一番辛い本人を差し置いて泣くなどあってはならないと思ったから。

 そして、自らを戒めた彼女は、同時に自分自身を赦すつもりはなかった。何故ならばアリシアに嘘を吐いたからだ。貴女のお母さんを助けると誓ったのに約束を破ったからだ。

 プレシアが亡くなってしまったのは、どうしようもない事で、僕らでは手の施しようがなかったと慰めるユーノだけど。それでも、なのはは自分自身を赦せなかった。

 だから、己の全存在を掛けて、アリシアを支え、尽くすつもりでいた。極端な例えだが、死ねと言われれば自ら命を断ってしいまうほどの覚悟を持って。それくらい覚悟でアリシアに対しての贖罪を果たしたいのだ。たとえ自己満足だとしても。

 だって、アリシアは大切な母親を失ってしまったのだから。アリシアもなのはと同じで片親だったのに、目の前で大事な肉親を失ってしまった。たったひとりの家族を喪ってしまった。助けるって言ったのに、アリシアを独りぼっちにしてしまった。

 何と言って詫びればいい。どうすればアリシアに顔向けできる。あれだけアリシアに期待させておいて、なのはは、なのははっ……

 

「っぅ……!」

 

 なのはは自らに対する怒りでいっぱいになりそうだった激情を、頭をぶんぶんと振って追い払った。今はそんな事をしている余裕はない。

 何故ならば先程、時の庭園に緊急事態が起きたのだから。アリシアが泣き叫んでいる間に発生した事故。時の庭園の魔導炉の暴走。ジュエルシードによって無理やり魔力を引き出された魔導炉は、出力を限界以上に引き上げたせいで、自ら停止できなくなったらしい。何よりも長年、碌な整備もされていない魔導炉だ。暴走する結果は必然だった。

 その連絡が、庭園のメインシステムからユーノの元に届いたのがついさっきだ。アラートの文字と共に表示された真っ赤な空間モニター。異常を知らせる報告。ミッドチルダの文字が読めないなのはにも、ユーノは詳しく説明してくれた。

 

 このままでは時の庭園は崩壊し、次元の海の藻屑になると。そしてそれを止める術はないと。

 

 時の庭園の魔導炉は、それを設計したプレシアにしか迅速な操作が出来ない。魔導炉を緊急停止させる操作は誰にもできない。なのはは論外として、ユーノにも不可能な事。悲しみに暮れるアリシアに、そんな事をさせる訳にも行かない。何よりも暴走する魔導炉に近づいて操作こと自体が不可能な話。

 だから、迅速に庭園から脱出しなければならなかった。できればプレシアの事を弔ってやりたいし、アリシアが落ち着くまで泣かしてあげたかったのだが、そんな事をしている余裕など微塵も残っていなかったのだ。

 さっきから微弱な揺れが庭園を揺らしている。地震でいえば日本の震度二か、震度三くらいの揺れだろうか。段々とそれが強くなってきているのだ。ユーノの傍に展開するモニターには何処の区画が閉鎖されていくのか、逐一システムが伝えてくる有り様だった。

 

「……行こう、なのは。いろいろと名残惜しいのは分かるけど、ここにいても」

「分かって、います。分かっていますよ……ユーノさん」

「なら」

「でも、少しだけ祈らせてください。プレシアさんのこと」

「………少しだけだよ。今は本当に危険なんだからっ」

「――ありがとう」

 

 なのはは抱えていたアリシアの身体を、そっとユーノに明け渡すと、プレシアの傍で手を合わせた。

 病魔に蝕まれ、外界を見るための光すら失った彼女は、亡くなるその時までどんな気持ちだったのだろう?

 

 けれども、彼女は確かになのはの大好きなアリシアを見ていた。ちゃんとアリシアの事を気遣っていて、微かに笑い掛けてさえいた。観察力が鋭いなのはだからこそ気が付けた僅かな微笑み。

 プレシアは確かに母親だった。なのはの理想とするお母さんだった。娘に微笑みかける姿は、写真に映る桃子のモノとそっくりで。だからこそ救えなかったことが悔やまれる。

 なのはは両手を合わせて、一瞬の間にたくさんの事を祈る。アリシアの事。これからずっと彼女の傍に居て助ける誓い。天国から私達を見守って欲しいという願い。心配しないで欲しいという想い。後の事は何とかするから任せて欲しいという心からの宣言。

 それは時間にして数秒のことだったのだと思う。

 やがて閉じていた瞼を開けてユーノを見やれば、彼も何かを小さく呟いていた。たぶんユーノなりのお祈りなんだろう。なのはとユーノは視線を合わせると、そろって頷き合い、玉座の間を後にしていく。

 そして、なのはは去り際に、もう一度だけ振る向いて一言呟くのだった。

 

「さようなら。アリシアのお母さん……」

 

◇ ◇ ◇

 

 その後は時間との戦いだった。ジュエルシードを回収し、普段から厳しい不破の鍛錬で鍛え抜かれているなのはは、アリシアを抱きかかえて飛行する。万が一にも誤って落としてしまわないように、ユーノのバインドで自分とアリシアの身体を括り付ける念の入り用。左腕でアリシアの身体を抱え、右手には魔法を支えてくれる相棒のレイジングハートを握っていた。

 ユーノは飛行しながら、目先の横に空間モニターを展開している。そこに映るのは時の庭園の図面。最短ルートを通るための道しるべであり、自分たちが安全に脱出するための手掛かりだ。既に崩壊したり、封鎖された区画は赤く染まっている。或いは封鎖された通路が先に存在していることを知らせいていて、その度になのはのディバインバスターが防壁ごと粉砕して道を作っていた。

 すぐに転移で脱出しないのは、アリシアの使い魔であるアルフを連れ出すためだ。彼女はアリシアに負担を掛けない為に眠っているだけで、プレシアと違い生きている。アリシアの事を家族として理解できる唯一の存在。彼女だけは何としても助け出さなければならなかった。

 幸いにして彼女の眠っている居住区は被害がそんなに及んでいない。著しい損害を受けたのは魔導炉周辺の研究区画などだ。そこから徐々に被害が広がっている状況。また、最重要の区画は完全防護で封鎖しているらしい。その他にも、緊急時の為に全てのロックは解除されているのが救いだった。認証などの手間が省ければ破壊しなくて済む。その分の時間のロスは出ない。迅速な行動が必要な現在、それは貴重な時間だった。

 

「なのはっ、次の曲がり角の防壁だ。砲撃で撃ち破って!」

「はいっ、ユーノさん!」

 

 先導するユーノの声に従ってなのははレイジングハートを構える。片手撃ちで精度が著しく落ちるが、進行方向に風穴を開ける分には問題ない。飛行速度を徐々に落として直角の曲がり角を曲がった瞬間に、なのははディバインバスターを発射。区画と区画を遮断する防壁を、人を呑み込むような極大の砲撃で貫通させる。

 桃色の閃光が収まった時には、見事な貫通孔が出来上がっていた。

 

「この先が居住区。もうすぐ脱出できるからしっかり付いて来てっ!」

「大丈夫です。まだ、余裕がありますから」

 

 飛行する人間が余裕で通れる風穴を通過して、なのは達は居住区に飛び込んでいく。既に幾度も続く揺れによって時の庭園の通路はひび割れを起こし、中には天井の一部が崩落して通路に瓦礫が散らばっている所もあった。崩落の音やガラスの割れる甲高い音が何度も響いていたから、時の庭園を彩っていた調度品などは見るも無残に砕け散っているのは想像に難くない。

 アルフさんも無事で居て欲しいと、なのはは心の底から願っていた。あの部屋に飾られていた調度品は簡素なベットと勉強するための机だけだったから、天井や壁が崩れない限りは無事なはずだ。目覚めて下手に動かれても困るが、それらしい動体反応はないとユーノが言っていた。

 やがて、アリシアに案内された記憶の通りに、アルフの眠るアリシアの部屋までたどり着いた一同は、部屋の中へと転がり込むように駆け込んだ。

 

「よかった。無事でしたか」

「ここら辺も、いつ崩壊が始まるか分からない。すぐに脱出しよう」

 

 アリシアの部屋の中では、アルフと呼ばれた幼稚園児くらいの女の子が、あの日のまま眠り続けていた。足をかがめ、両手を胸元に運びながら穏やかに眠り続けている。横になって布団にもぐり続ける使い魔のアルフ。彼女はどんな夢を見続けていたのだろうか。

 なのはは抱きかかえていたアリシアを、アルフの隣に寝かせると、ふぅと一息ついた。命に関わるような緊急事態。迫る死の恐怖。いつ崩落するか分からない焦り。そんな感情を押し殺して必死に飛び続けられたのは、ひとえに不破の鍛錬によるものだろう。少しだけ自分を鍛えた父に感謝した。

 ユーノは、さすがに焦りはあるものの、ずっと落ち着いて居る様子。遺跡の発掘を生業とする彼は崩落などの事故も経験しているから常時冷静でいられた。なのはとアリシアは自分の判断に全て掛かっている責任も大きい。好意を抱いている女の子を二人を命に代えても護ろうとする責任感が彼を支えていた。

 後は転移魔法で脱出するだけ。ユーノが素早く正確に術式を組み始める。そんな中で。

 

『Please wait for sir friend!』

 

 今まで黙り込んでいたバルディッシュが制止の声を張り上げた。アリシアの右手の甲に収まる寡黙なデバイスにしてはらしくない態度。それに、なのはも、ユーノも困惑した表情を浮かべる。

 

「どうかしましたか。バルディッシュ? 急がなければいけないことは分かっていると思うのですが」

『There is a person wanting you to rescue it!』

 

 横たわるアリシアの傍に屈みこんで、三角形の金色の戦斧を覗き込んだなのはに、主を想うデバイスは必死に呼びかけた。

 彼は助けて欲しい人がいると哀願する。同時にユーノとレイジングハートに送られてくる救出対象の居場所を示した座標。ここからそう遠くない場所に救出するべき人物がいるらしい。

 しかし、先にも言ったとおり動体反応はセンサーに引っかかっていない。もしかするとアルフと同じように眠っている可能性が高いのかもしれない。

 もう、時の庭園の崩壊が危険域に突入するまで時間はないのだが、なのはにとって誰かの命を見捨てるなどという選択肢は微塵もなかった。目の前に救える命があるのならば、出来る限り救ってあげたいのが彼女としての本音。迷っている暇はなかった。

 それに、主が第一のバルディッシュが必死に助けを乞う程の人物だ。もしかするとアリシアにとって深い関係をもった人物かもしれない。なら、もはや答えなど決まっているも同然。

 なのははアリシアの手から三角形の金色の戦斧を取り外すと、自らの左手にバインドで巻き付ける。ユーノと一緒に行動したほうが迅速かつ安全なのだろうが、それは出来ない。故に忠実なる戦斧に例の場所まで案内してもらう事にしたのだ。

 

「なのは……?」

「わたしが行きます。ユーノさんはアリシアとアルフさんを連れて脱出してください。いつまでも危険な場所に留まっている必要はないでしょう?」

「そんなっ、危険だよ! もうすぐ時の庭園の完全な崩壊が始まるんだっ! そんなことなら僕が行く! なのはを危険な目に遭わせるくらいならっ」

「危険は承知の上です。助力の申し出も嬉しいです。ですが、ユーノさんは二人を無事に脱出させてあげてくれませんか? 貴方にしか頼めない事なのです」

「でもっ――」

「お願いします、ユーノさん。それにこんなところで死ぬつもりもありませんよ。わたしはアリシアに対して贖罪を果たさなければなりませんから」

 

 静かに頭を下げて、お願いするなのはの姿に、ユーノは唇を噛み締めた。できれば役目を変わりたいのがユーノとしての本音。だけど、一度やると決めたら言っても聞かないのが、なのはという女の子の性分なのだ。でなければ最初の事件の時に、自ら望んで戦おうとするものか。魔導師になろうとするものか。

 効率の面から考えても、脱出の可能性を考えても、ユーノが向かうのが最適である。フェレットモードで人が通れない場所を潜りぬけながら、対象の救出に向かい、転移で脱出すればいい。なのは達もあらかじめ転移魔法で脱出させておけばベストだ。

 でも、こうなったらなのはは意地でも退かないだろう。場合によっては無理矢理にでも戻ってこようとする可能性がある。そう、使ったことのない転移魔法を駆使してでも。この子はそれが出来てしまう程の才能を持った子供だから。魔法に愛された女の子。厄介すぎるだろう、とユーノな内心で嘆くしかなかった。

 意地這って、無駄に責任を背負い込んで、自分を責める。プレシアの事に対して負い目を感じているのは、なのはだけではないというのに。ユーノだって……いや、よそう。この場では、いかに最善を尽くすかが最優先される。ユーノは深い、とても深いため息を吐くと、諦めたように目を伏せて首を振る。

 

「なのは……レイジングハートを貸してくれる? 君が無事に帰って来れるように、いくつか魔法とマップデータを登録するから」

「はい、その……ごめんなさい。ユーノさん。我儘ばかり言ってしまって……」

「なら、無茶な事を言わないでよ。レイジングハート、これらの魔法とデータを受け取って」

『はい、確かに登録しました』「いいかい、なのは。危なくなったら全力で転移魔法を使うんだ。一応、海鳴の臨海公園に設定してあるけど、最悪どこか近くの辺境世界に跳ばされるかもしれない」

「ええ、その時はすぐにでも使わせてもらいます」

「それと、通路の床に不自然で不気味な穴が開いてるかもしれない。それは虚数空間と言って落ちたら二度と出られなくなる異空間だ。しかも、魔法が使えなくなる。絶対に落ちちゃダメだよ。そもそも近寄らないで」

「分かりました。注意します」

「それに、アリシア達を送り届けたら、すぐにでも迎えに行くから」

 

 それから、それから、他にも言いたいことがありそうなユーノだったが、迷ったように口を噤んだ。なら、話はこれで終わりだろうかと、なのはは背を向けて部屋を後にしようとする。そんな時に少年は再び言葉を紡いだ。

 

「なのはっ!」

「何でしょうか、ユーノさん」

「僕は君の事が好きだ! もちろん、アリシアだってっ! だから、だから、絶対、無事に帰ってきてっ!」

「っ……」

 

 なのはは背中に浴びせ掛けられた真っ直ぐな好きという言葉に肩をびくりと震わせた。

 いままでにも好意を向けられたことはある。アリサやすずかにそれとなく好きと言われた。だが、それは友達としての好きだし、アリシアだってとても深い友達としての好きに分けられる。だけど、ユーノのソレはちょっと違う気がした。たぶん、男の子から初めて向けられた好きという言葉だからに違いない。

 何だろうか? となのはは少しだけ戸惑いを露わにする。胸のあたりが少しだけ高鳴ったような気がした。恐らくだが、これから危険な所に向かうために身体が緊張し始めたのかもしれない。なのはは、純粋にそう思った。

 ただ、自分の事はひた向きに心配してくれる少年には、応えてなければならないと思う。純粋に心配してくれるからこそ、想っていてくれるからこそ応えてあげたい。

 

「わたしも――わたしもユーノさんの事は嫌いじゃ……」

 

 顔を合わせる勇気が出なかったので、背中を向けたままという失礼な態度になってしまった。おまけに最後の方は恥ずかしくて聞こえない位の小声だ。

 

「なのは?」

「いえ、何でもありません。すぐに用事を済ませますから、アリシアとアルフさんの事、よろしくお願いします」

「――うん、まかせてよ。なのはも無事でいて」

「ユーノさんも」

 

 たったそれだけの言葉を交わせば十分だった。なのはは振り向かずにアリシアの部屋を飛び出していく。文字通り浮かび上がって飛行し始め、目的地の救助者がいる区画へと迅速に向かう。

 

 ユーノに渡された時の庭園のマップデータを頼りに通路を飛行し続けると、あることに気が付いた。

 バルディッシュが示した座標ポイント。それは、なのはにも覚えがある場所だったのだ。以前、アリシアによって時の庭園を訪れた際に、此処からの方が玉座の間に近いと案内されたルート。その道程はなのはの中にある記憶と寸分違わない。

 

 空間モニターに表示される庭園の図面では、この辺りは研究区画らしい。稼働に大量のエネルギーを必要とするのか、魔導炉と隣接しているエリアで、通路は魔導炉暴走の影響でひび割れ、崩れているのが大半だ。

 なのははさらに飛行速度をあげる。自身が発揮できる限界速度まで振り絞り、足元に展開する光の翼は、魔力で形作られた光の羽根を大量に舞い散らせていた。

 やがて、たどり着いた扉の前で彼女は急停止。いや、厳重な扉によって封鎖されていたであろう通路の前にというべきか。

 

 巨大な両開きの扉はロックが解除されたのか、開け放たれたままで、その先にある同じような扉も、なのはを招き入れるように開かれていた。

 他の場所と比べて、照明が薄暗く先に何が待ち構えているのか予想もつかない。だが、バルディッシュの示した救い出すべき人物は、この先に間違いなくいる。

 

「うっ……!!」

 

 あの時と同じように鼻をつく刺激臭が漂ってきて、思わず防護服の袖で口と鼻元を覆う。嗅ぎなれない血の臭い。けれど、それにしては強烈すぎるだろう、となのはは内心で疑問に思う。

 同級生の子供が転んで、膝を擦りむいた時とは訳が違う。もっと、そう、なのはが初めて人を手に掛けた時と同じくらい、血の臭いが半端ではなかった。それに肉が腐ったような臭いも。確かレイジングハートが翻訳した時の文字は保管庫だったが、それにしては保存状態が悪すぎるだろう。遺体に何らかの処置をしなかったのだろうか。

 しかし、こうして漂う臭いに嫌悪感と拒絶感を抱き、二の足を踏んでも仕方がない。なのはは意を決して、素早く歩みを進めていく。まだ、手元にある二機のデバイスは危険信号を発さないが、庭園の崩壊までの猶予を考えると急いだ方が良い。ここに長居したくないという思いもある。

 

「誰かいますっ……か、ぁ……ぁぁ…………」

 

 だが、なのはは部屋に足を踏み入れて、発した声が霞んでしまった。身体は無意識に震えてしまい、瞳の焦点は定まらず、後退して壁に背中をぶつけてしまうくらいの衝撃を受けた。

 パンドラの扉。絶対に開けてはならず、踏み込んではならないと直感が訴えた部屋の先。アリシアが怯える程の秘密が隠されている部屋の先にあったのは……

 

 裸の死体だった。唯の死体ではなく、見覚えのある、在り過ぎたからこそショックだった彼女たちの亡骸。

 雪みたいに白い肌。陽光を反射して輝く金糸の髪。有名子役のように綺麗に整った可愛らしい顔立ち。なのはと同年代位の女の子、たち……

 みんな、みんな、アリシアと同じ姿で、同じ顔立ちをしていた。姉妹にしては瓜二つと言っていい程に似すぎた顔立ち。一卵性の双子のように似すぎている。ううん、双子なんかよりもずっと似ている。まるで、複製したみたいに。

 

「あ、ああぁ、うあ……」

 

 なのはは、あまりにもその光景が衝撃的すぎてなんて言っていいのか分からなかった。むしろ、叫び声をあげてしまいそうなくらい動揺している。下手すれば気絶していたかもしれない。そうならないのは、いかなる時でも冷静であれ、という不破の教えがあればこそだった。

 

「なん、で……どうして……?」

 

 ただ、あまりにも予想外すぎた事態に思考が追い付かず混乱している。動揺しすぎて眩暈がし始め、心臓は動悸が激しくなっていく。はぁはぁと苦しいくらいに繰り返す呼吸は、いささか過呼吸過ぎた。

 大好きな親友の遺体を前にして、生きている筈の女の子の遺体を前にして、なのはが冷静で居られる訳がなかった。なぜ、此処にアリシアがいるのか。どうして亡くなっているのか。だって、アリシアは生きている筈で、さっきまでユーノさんに連れられて……

 

『落ち着いてください、マスター。彼女達はアリシアととてもよく似ていますが別人です』

『……That's right.』

「でもっ! レイジングハート、この子たちは……」

『辛いでしょうが、マスターの向いている方角から左手前を見てください』

 

 冷静な二機のデバイスに、なのはの知るアリシアではないと指摘されながら、彼女は言われた通りの場所を恐る恐る垣間見た。

 そこに居たのはアリシアと同じ姿をした女の子。だけど、髪の色がまったく違う。その子の髪は白兎みたいに真っ白で、確かにアリシアとは違う存在。別人だろう

 

『この部屋にある遺体の保存用ポッド。もしくは培養槽とでもいうのでしょうか。その、楕円形の装置に刻まれたミッドチルダ語は……』

「なんて、書いて、あるんですか。教えてください、レイジングハート。私は、大丈夫、です、から……」

『……アリシア・クローン1と、他のも番号が違うだけで全て同じです』

「アリシアの、クローン……」

 

 胸に手を当てて呼吸を落ち着けながら、なのはは噛み締めるように己の言葉を呟いた。

 アリシアのクローン。クローン、テレビのニュースなどで少しだけ聞いたことがある単語だ。確か食糧生産の分野で、元となる牛の細胞からまったく同じ牛を作り出すような技術がクローンだった、ような。ニュースキャスターが、そんな感じの説明していたのをうろ覚えだが、記憶に留めてある。

 だとしたら、この子たちはアリシアと同じ細胞から作られた姉妹なのか? アリシアは……なのはには難解すぎる問題で、色々と考えることが多すぎて理解不能な事柄だった。聡明なユーノなら何か閃くか、考え付くのだろうが。

 

 それにしても、改めて見渡しても、その、アリシアに似た遺体は惨すぎる有り様だった。遺体の所々に喰らいつかれた痕があるのだ。明らかに人間の歯型と思わしき痕。柔らかそうな太もも、二の腕の筋肉、そしてわき腹に集中して付けられている。中には肉を食いちぎられた遺体もあって、そこからおびただしい量の出血をしたんだろう。周辺が紅色に染まっていた。

 十一個もの楕円形の培養槽らしき装置が収められた部屋の床面は乾いた血がびっしりとこびりついていて、そこが血の海だったことを容易に想像させる。せめてもの救いはウジ虫が発生しなかった事だろう。遺体は分解されずに原型をとどめている。それでも腐敗は多少進行し始めていて、凄まじい臭気が漂っていた。時間からして、そう長くは経っていないようだが。

 培養槽のガラスは全てが割れていた。この区画は暴走による影響を受けないほど頑丈なのか構造物に損傷はない。だから、意図的にガラスを割って、中に収められていた遺体を取り出したのだろう。恐らく惨劇を起こした人物が保存されていた遺体を食べる為に。

 

「バルディッシュ……助けるべき人は、此処にいるの、ですか……?」

『The other side of the door』

 

 あまり見ていても気持ちの良い光景ではないので、なのはは先を急ぐことにした。バルディッシュによると対象はこの先に居るらしい。

 プレシアと同じく、アリシアの姉妹らしき子供たちを丁寧に弔ってやれないのは残念だが、そうしてあげられる時間もない。なのはは手を合わせて少しだけ祈りを捧げると、バルディッシュの示した扉の前まで移動する。

 レイジングハートが翻訳する部屋の名称は『誕生室』。それがいったい何を意味するのは分からない。

 

「なっ、これは……」

『Too late!』

 

 なのはは驚きを隠さず、バルディッシュが珍しく感情を露わにして舌打ちする。

 開け放たれた扉の先にあったのは、明るい照明に照らされた二個の培養槽。

 しかし、二つとも横向きにされていて、密閉している筈のガラスは開け放たれていた。左側の十二番と右側の十三番の培養ポッド。

 その十三番の培養ポッドに気になる部分があった。開け放たれたばかりなのか、水とは違う液体で濡れていたのだ。そこから転々として液体のあとが続いていて、何処かに移動している。

 ついさっきまで誰かが此処に収められていた証。バルディッシュの言う連れ出してほしい人物がいたのだ。

 

「レイジングハート! センサーに反応はありますか!?」

『微弱ですが、転々と移動しています』

「行き先はっ」

『方角から玉座の間だと思われます』

 

 急いで保護しなければならない。

 なのはには助けて欲しい人物が誰なのか検討が付いてしまった。先の様なアリシアの姉妹だ。まだ生きている子がいるっ!

 だから、最速で向かおうと飛行魔法を使おうとしたのだが。

 

「くっ、これは、立っていられない……」

『マスター、屈んでください!』

「ええ、わかっています。レイジングハート」

 

 時の庭園が大きく揺れる。立っていられない程の揺れだが、地震大国の島国で伊達に生きて来た訳じゃない。なのはは取り乱さず、落ち着いて対処する。

 その規模は今までの比ではない。施設全体が崩れ去ってしまうんじゃないかと思えるくらいの震動。天井や床が悲鳴を上げ、大きな音と共に亀裂が走っていく。影響が殆どなかったこの場所まで崩落しそうな勢いだ。もはや時間は残されていない。

 見るも無残な部屋と化した『誕生室』と保管庫を飛び去って、なのはは目的地である玉座の間に向かう。バルディッシュの指示によれば、此処から玉座の間に続く隠し通路が存在しているらしい。でも、その通路は先の震動で崩れてしまったようだった。だから、仕方がなく遠回りをする羽目になる。

 道を塞ぐ瓦礫を砲撃で消し飛ばし、落ちてくる構造物を避け、時には誘導弾で迎撃し、二基のデバイスによるサポートを受けて全速力。

 なのはは今まで以上に魔法を全力で行使して、既に息はあがっている。頭がくらくらして疲労困憊で倒れそうになるのを気合で捻じ伏せる。

 しかし、たどり着いた玉座の間にアリシアの姉妹らしき女の子はいなかった。

 

「ハァ、ハァ、いったい、何処、に……」

 

 見るも無残な瓦礫の山と化した玉座の間。柱が倒れ、散らばった瓦礫が無数にある。

 そんな中でアリシアの姉妹らしき女の子の姿を探すも、全く見当たらない。

 ふと、寝かされているプレシアの遺体になのはは目を向ける。驚いたことに散乱した瓦礫で傷つくこともなく、綺麗な顔で眠ったままだ。周辺だけ不自然に何も積もっていない。辺り一面が砕けた構造物の欠片や破片だらけなのに。まるで、誰かがプレシアを崩落から守ったような……

 

「プレシア、さん……」

『マスター! これを見てください!』

「これは、血の跡っ」

 

 まさか、この崩落の中でアリシアの姉妹は大怪我てしまったのかと息を呑む。

 だが、落ち着いて観察してみれば出血量はさほどでもない。床に手形でも付けるみたいに、子供らしき足跡が点々と続いていた。恐らく目覚めた時に衣服も着ておらず、靴も履いてない可能性が高い。この瓦礫の山を裸足で歩けば足の裏を怪我するのは当たり前だろう。

 早く見つけて連れ帰ってあげたい。服を着せて、温かい食事と寝床を与えてあげたい。怪我も治してあげたい。

 焦燥感に駆られながら、なのはは血の跡を追いかけていく。それは玉座の裏に隠された扉の奥まで続いていて。

 彼女は、そこに居た。

 

「アリシア――?」

「……? おねぇちゃん、だぁれ?」

 

 なのはの知っているアリシアと瓜二つの顔立ち。とても幼く見える表情。紅玉みたいな瞳。水に濡れて輝く金糸の髪。雪のように白い肌。血で所々が赤く染まった肌。

 生まれたての赤子のように純粋無垢な笑顔を浮かべて、なのはのことを見上げる女の子はまさしくアリシアと同じ姿だった。

 アヒル座りで、ぺたんと床に尻餅をついている彼女は、愛らしい笑顔でなのはの事を見ている。

 初めて出会ったなのはという女の子に興味津々で、瞳は好奇心が輝いているかのようだ。この無邪気さはアリシアとそっくりである。

 けれど、彼女は何も着ていない生まれたままの姿で、怪我も酷い。足の裏は血で赤く染まり、転んで擦りむいたのか膝も所々血がにじんでいた。ときおり床から手を離すと、赤い手形の跡が残る。もしかすると手のひらも怪我しているのかもしれない。瓦礫の山で転んで手を付き、破片が刺さってしまったのだろう。

 

「わたしは、いえっ、そんなことより、早くこちらに!」

「おねぇちゃん!」

 

 言いながら、なのはは手を伸ばして、アリシアの姉妹に近寄っていく。でも、足を止めざるを得なかった。

 嬉しそうにおねぇちゃんと叫びながら、座り込んだ女の子が指を伸ばした先にあるものに気が付いたから。アリシアの姉妹に視線を釘付けにしていて、それに気が付かなかった。

 そこに存在したのは培養槽の、半透明の緑色に染まった液体に浸されている『アリシア』の姿。なのはの知るアリシアと、目の前に居るアリシアの姉妹に瓜二つの女の子。それは、とても丁寧に、大事そうに保管されているのがよく分かる。

 一見すると生きているのか、死んでいるのか分からない『アリシア』は、膝を抱えた姿で眠っているかのようだ。

 彼女も生きているなら助けなければ、でも、どうやって培養槽から出せばいい。そんな思考がなのはを支配する。『アリシア』が亡くなっているとも知らずに。彼女こそがアリシア達のオリジナルだとも知らずに。

 だから気が付くのが遅れた。咄嗟の出来事に出遅れた。

 再び時の庭園が揺れる。

 

「えっ、わぁっ!」

 

 アリシア達の足元が崩落で崩れ去って行く。

 その真下は崩落した時の庭園の構造物でもなく。次元の海が広がる空間でもない。見たこともない不気味な異空間。

 虚数空間。落ちたら永遠に出て来れないと言われる異次元の空間。或いはブラックホールのような存在。

 魔導炉の暴走が小規模の次元断層を引き起こし、時の庭園の至る所で局地的に発生している現象。よりにもよって、こんな時に。

 狙ったように発生したそれはアリシア達を呑み込まんとしていた。

 

「――危ないッ!」

 

 だが、なのはが咄嗟に駆け出して掴み取ることが出来たのは、アリシアの姉妹のみだった。オリジナルの『アリシア』が保存されたカプセルは虚数空間の底を目指して真っ逆さまに落ちていく。

 

(くっ、わたしはまたっ……!)

 

 また、誰かを救えなかった。魔法という力が在るにもかかわらず、誰かを目の前で失った。その事で、なのはは歯噛みするも、今は目の前にいる幼い女の子をすくい上げる方が先だった。

 しかし、落ちないように掴み取ることは出来ても、持ち上げることが出来ない。床が崩落した瞬間に、頭から滑り込むようにして飛び込んだので体勢が悪いのだ。なのはの姿勢は寝そべるようにして、アリシアの姉妹の身体を両手で掴んでいる状況。両足で踏ん張ることも出来ず、共に落ちないようにチェーンバインドで身体を固定する事が精一杯だった。

 

「レイジングハートっ、このまま転移を」

『起動までに時間が掛かります。それまで何とか持ちこたえてください!』

「分かって、います。なるべく早く……!」

 

 この状況では彼女を掴んだまま転移するのが最良の手段。しかし、なのはの足場はすぐにでも崩落しそうな勢いだった。徐々に、徐々に虚数空間の穴が広がるように大理石の床が崩れていく。

 そして、いくら鍛え抜かれた身体をしていても、なのはは幼い子供である。同じ体格をした少女を腕の力だけで支えるのは厳しいものがあった。

 バインドで自分と少女を固定しようにも、穴の先まで魔法の効果が及ばず発動がキャンセルされてしまう。だから踏ん張るしかなかった。絶対に落とさないように掴んでいるしかなかった。

 

「おねぇちゃん! おねぇちゃんっ!」

 

 だというのにアリシアの姉妹は泣きそうな顔で、落ちて行ったオリジナルの『アリシア』に向けて手を伸ばす。掴みあがろうとするどころか、自分で落ちようとするような行動。それ程までに『アリシア』は彼女にとって大切だったんだろう。自分の命を試みない程に。

 このままではアリシアの姉妹が落ちかねない。最悪、足場が崩落して二人そろって虚数空間に呑み込まれる。

 そんなの、なのはは嫌だ! 誰かが目の前で死ぬのはもう、耐えられないっ!

 

「ッ――待っています!」

「えっ……」

「貴女の、お姉さんが――アリシアが待ってます! だから、死なないでっ! 生きてください! 二人でっ!」

「おねぇ、ちゃん……?」

「そうです。貴女のお姉さんが待ってます!」

 

 なのはの口から咄嗟に出たのは紛れもない本心だった。彼女を説得しようとして叫んだ言葉ではない。無意識に、そう口走っていた。

 アリシアの姉妹は、潤んだ瞳でなのはのことをじっと見つめ、それから虚数空間に向けて伸ばしていた手を使って、なのはの手を掴み取る。良かった。彼女が生きようとしてくれている。声は弱々しく掠れているようだが、後は転移を終えるまで耐えるだけ。

 だというのに。

 

(手が、すべる……この子の血で……)

 

 怪我をした少女の手のひらから流れ出る血が、それを妨害する。ぬるぬると生温かい感触と共に伝わるそれは、少しずつ二人を繋ぐ腕を解き放とうとしてくる。

 なのはがどんなに話すまいと腕から指に力を込めても、残酷な事実は覆らない。一刻と少女は虚数空間に落ちようとしていた。もはや、転移が先か、落下が先かという問題。時間との勝負だった。

 

「絶対に、離すもんかっ。絶対に――!」

 

 なのはは歯を喰いしばりながら必死の形相で耐えている。自分の命が必要なら平気で差し出さんばかりの覚悟が滲み出ていた。

 額から流れ出る脂汗が、なのはの消耗を物語る。魔法を使った全力疾走で身体に残った疲労。バインドで身体を支えながら、子供一人の体重を支える状況。どんなに頑張っても限界は訪れてしまう。

 少女を支える腕が痺れてきた。指に上手く力が入らない。心の中でお願いと哀願しても、焦って叫び出しそうになって、それをこらえても状況は変わらない。何よりも。

 

「あっ……」

 

 アリシアの姉妹から漏れた呟き。意識しないで零れた声。少女の左腕が力を失ったかのように離れた。

 どうして? と疑問に思ったのか首を傾げながら少女は離れた腕を持ち上げようとするも、すぐに力を失い垂れ下がってしまう。

 手のひらから、右腕を伝って零れ落ちていく血液。足元からぽたぽたと零れ落ちる赤い滴。虚数空間に零れ落ちていく命の源。

 白い肌に刻まれた無数の怪我が彼女を追い詰める。

 そう、なのはよりも、少女の方に限界が訪れようとしていた。

 

「しっかり、しっかりして下さい! もう少しですから」

『転移まで、あと三十秒です』

「ほら、もうすぐ助かります」

 

 意識が朦朧とするのか、アリシアの姉妹は首をうつらうつらさせながら、瞼と閉じたり開いたりと繰り返す。なのはの手を握り返す手も、力が喪われていくのがよく分かる。彼女は、意識を失いかけている。生きようとする生命力や気力といった物が、今まで少女を支えてきた。

 しかし、それも限界のようだった。

 

「頑張って! わたしが付いてますから!」

 

 なのはは少女を励まそうと、自分も辛いだろうに、精一杯の笑顔を浮かべた。なのはの大好きなアリシアに向ける笑顔とまったく同じ微笑み。

 

「えへ、へ……」

 

 虚ろで意識を失いかけていた少女は顔をあげて微笑んだ。嬉しい時のアリシアとそっくりな笑顔で笑った。

 

「やさしい、おねぇ、ちゃん……」

「なんですか!? まさか、どこか痛いのですかっ!?」

「うう、ん、違うの。ありがとね――」

「あっ、だ……」

 

 だめですと叫ぼうとして、時の庭園が完全に崩落するのと。なのはが転移すること。

 そして、なのはの手からアリシアの最後の姉妹がすべり落ちるのは、ほぼ同時。

 純粋無垢な笑顔を浮かべた十三番目の『アリシア』の妹は虚数空間に呑み込まれていく。いや、言葉から伝わるくらい大好きなお姉ちゃんを。自分のお姉ちゃんを追いかけたかったのかもしれない。

 だって、彼女は自ら、なのはの手を離したのだから。

 次元の海に呑み込まれていく時の庭園。玉座の間を中心に虚数空間に呑まれるアリシアの家。虚数空間に落ちていく娘を愛した母親と二人の姉妹。失われていくアリシアの思い出の場所。

 

「うあ、あっ……あ、あぁ……」

 

 結局、何一つとして救いたい人を救えなかった不破の少女は。

 

「うわあああああああぁぁぁ――――っ!」

 

 転移した辺境の世界で、ユーノが迎えに来るまで声にならない慟哭を叫んでいた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。