リリカルなのは アナザーダークネス 紫天と夜天の交わるとき   作:観測者と語り部

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●やっぱり私の娘って素敵!

 

 アリシア、運命に翻弄されてしまった可哀想な子。

 神様はどうして彼女に不幸ばかりを与えるのでしょうか?

 彼女はお母さんが大好きで、病に伏した母を助けようとしただけなのに……

 

 アリシアが苦しむと私も苦しくて辛くて堪らない。

 でも、わたしにはどうしようもなくて、苦しむ彼女を見ているしかない。

 そんな自分が歯がゆいと思ったのは何度目だろうか。

 

 春の出会いから梅雨を経て、夏の始まりまでの時間。

 結局、彼女の病は和らぐどころか酷くなる一方で、わたしの中には焦りが生まれていく。

 徐々に徐々に失われていくであろう命の灯。

 わたしは、それが怖い。

 

 変わってあげられるのなら、変わってあげたい。

 必要だというのなら、この命を差しだしてもいい。

 

 でも、わたしは無力だった。

 人殺しの力を得ても、魔法の力を得ても、たった一人の大事なあの子を救う事は出来ないのだ。

 

 そうして何も出来なくて謝るわたしに、いつもあの子は笑うのだ。

 なのは、いつもありがとう。大好きだよって。

 それがわたしを苦しめる。追いつめる。

 

 だって、こんなにも大好きなあの子を喪いたくないと思ってしまうんだから。

 

◇ ◇ ◇

 

 バニングス邸はいつみても壮大すぎると、不破なのはは常々思っていた。

 

 だってそうだろう。こうして玄関まで近寄ると、見上げなければ屋敷の全容が見えなくなってしまうのだ。窓の配置から考えて四階から五階は在りそうな程の豪邸。馬で駆けまわる余裕がありそうな程広い敷地。一部は色鮮やかな花が彩る庭園にもなっている。映画なんかで出てきそうな庭木の迷路も存在する。しかも、警備に訓練されたドーベルマンという軍用犬まで徘徊する始末。アリサが大財閥のお嬢様だと再認識する瞬間である。

 

 もちろん隣で機嫌良さそうに歩いているすずかも例外ではない。こちらもバニングス邸と負けず劣らずの豪邸に住んで居る。むしろ、アリサが言うには月村邸の方がヤバいらしいが、五十歩百歩だとなのはは思うのだ。

 

 とはいえ、一般家庭の子からすれば不破なのはの屋敷も大概である。なにせ家が二つ並べられそうな敷地に道場まで完備。おまけに庭園は盆栽や大きな池で彩られているのである。普通と比べればこちらも規格外なのだ。なのはの中の基準が少々? おかしいだけである。

 

「なのちゃん。とっても浮かない顔をしてるね」

「……そんなに酷い顔をしていますか? わたしは」

「うん、心配なのは分かるけど、もっと明るく笑わなきゃだめだよ? アリシアちゃんが心配するよ」

「……分かっています。分かってはいるのですけど」

「ユーノ君だって頑張っているんだから、ね?」

 

 そう言って自分を慰める少女をなのはは素直にすごいと思った。自分はアリシアの病気の事が心配でたまらないのに、この娘はそれを表に出すことはないのだから。

 

 すずかはいつも柔和に微笑んでいる。たとえどんな時でも、だ。アリサが怒っている時も微笑んで怒気を静めてしまうし、アリシアが病で苦しんでいる時も健気に微笑んで励まそうとする。決して相手を不安にさせたりはしない。大丈夫だよ。心配ないから。この二言で相手の心を落ち着かせてしまうのだ。

 

 自分には決して真似できない芸当。一度、貴女はとても強いです、とその事を話してみても、そんな事ないよと静かに否定された。

 

 本当は泣きたいくらい不安なんだよ? 彼女はそう言って微笑むのだけなのだ。

 

 むしろ、そうした不安を隠せる時点で充分強いとなのはは思うのだが。現に今だって自分の不安が顔に出てしまうくらい、なのはの心は揺れているのだから。

 

 ただ、あの事をぶり返された時には納得してしまうと同時に、不覚にも笑ってしまった。初めてなのはと出会った時のこと。アリサに大事なヘアバンドを取られて泣いていた頃のすずか。確かに泣き虫だったなぁと思ってしまったのだ。

 

 そしたら当の本人から、笑うなんて酷いよなのちゃん、と頬を膨らまして拗ねられる始末。おまけにその光景すら普段の姿とかけ離れていて笑いを誘うのだから性質が悪い。

 

「それにしても遅いね。アリサちゃんとアリシアちゃん。すぐに出発するから玄関で待ってて。そう言われてもう数分も経つのに」

 

 言いながら携帯電話で時間を確認するすずか。

 確かに遅いとなのはも思うが、なんとなく事情も察している。アリシアがバニングス家の養子になってから起きた問題。自由奔走で風のように無邪気にはしゃぐ少女を、バニングスという家のルールで縛れるわけないのだから。

 

「恐らくいつものアレでしょうね……」

「ああ、そっか。アリシアちゃん苦手だもんね。上品、華やか、厳格どれも無縁だったと思うし」

『そうだよ~~』

「アルフちゃん!」

 

 念話で話し掛けてきた元気な幼い少女の声。

 

 自分の頭の中だけに響いた言葉に反応して、なのはが顔を向けると、それに気が付いたすずかが近寄ってきた橙色の仔犬を嬉しそうに抱き上げた。

 

 仔犬はただの動物ではない。使い魔と呼ばれるアリシア・テスタロッサのパートナー。主の負担を軽減するために眠り続けていた存在。健気にして最後に残されたアリシアの家族としての拠り所。アリシアが嬉しそうに紹介してくれたアルフという幼女の正体である。いや、本当は同性すら羨むほどの引き締まった身体に、男性が思わずチラ見してしまう程の巨乳の持ち主だと、本人は主張するのだが。いかんせん、アリシアの魔力負担を軽減するために幼女のままである。なので嘘か真か真実は定かではないのだ。

 

 そして長い時間を眠り続けて過ごしてきたためか、精神面でも幼く。口調も比例するかのように幼く感じる。本人いわく精神面がアリシアに引っ張られているから仕方がないと。舌っ足らずな声で説明してくれたから間違いない。

 

『アルフ。元気そうで何よりです』

『うん、だいじょ~ぶ。おいしいお肉とクッキーみたいなのたくさん出してもらえるし、いっぱいあそんでもらってるから。えへへ』

 

 すずかに抱き上げられて、もふもふで、ふさふさで、すんげぇ暖かそうな毛並みに頬ずりされながらも、アルフは嫌がる素振りを一切見せず、犬のように(実際、犬だが)口の端をつりあげてハッハッと笑いながら念話で答えた。

 

 この人懐っこい仔犬幼女、人と同等の知能を有する分、ものすごく甘え上手。その愛くるしい瞳で見つめられて、可愛らしい外見で懐かれたら犬好きの人間はたちまち陥落してしまう。アリサとすずかは当然として、バニングス夫妻を初めとした殆どの人間が籠絡されている。

 

 そして彼女の性格がこんな感じに年相応で幼いので、皆から愛されて本人も大満足であるらしい。

 

 ちなみにアルフが人間の幼女に変身できることを知っているのは、なのはとアリシア以外に、アリサとすずかだけである。

 

 もう一人、妹が増えたとアリサは大喜びで、それにアリシアが少なからず嫉妬して、アルフとしては嬉しいような嬉しくないようなハプニングがあったりもした。アルフの人間形態はなのは達よりも幼いので、アリサの中では完璧に第二の妹扱いだ。

 

 アリシアが友達のような妹なら、アルフは甘えん坊の妹と住み分けが出来ているのも大きいだろう。

 

 普段は犬として接しているが、秘密を知っている子供達だけの時は喋れる。それ以外は犬の姿のまま、身振りでコミュニケーションをすることが多い。もっとも念話が使えるアリシアとなのはの二人は、こうして普通に会話できるのである。

 

『それでね~、アリシアはいつものアレ』

『はぁ……ということは逃げ出したんですね?』

『アリシアは頭はいいんだって、でも、ベンキョーが嫌いだってアリサお姉ちゃんがいつも言ってる~~。今はね~~、こわくて、ドキドキしてるかんじ?』

『そうですか……』

『うん、だれか助けて~~って聞こえるよ。でも、めいどって人やしつじって人はたすけちゃいけないって言うの。だから、何もできないんだぁ~~』

 

 そうして世間話をしている内に、豪邸の立派な扉がゆっくりと開かれた。まるで、誰にもばれない様に恐る恐るといった様子だ。扉の隙間から美しい金糸が溢れだし、続いて宝石のような紅い瞳を潤ませながら、一人の少女が外を覗き見た。

 

 バニングス家の養女となった女の子。アリシア・T・バニングスその人である。

 彼女は二人の親友と目が合い、なのは達も困ったように視線を合わせた。

 

「あっ……なのは、すずか! 助けてっ!!」

 

 するとどうだろう。二人の背中に隠れるように脱兎のごとくアリシアが飛び出してきたではないか。それは、天心満欄で誰からも愛され、そして他人をあまり人見知りしない彼女を恐れさせる存在が近づいてきた証。

 

「こぉ~らぁ~~アリシア~~。せっかく、アタシが時間を割いて、アンタのレッスンに、付き合ってあげてるのに、逃げ出すとは、いい度胸ね」

 

 怒髪が天を衝くといった様子で身体中から怒気を滲ませながら、ゆらりと豪邸の扉から現れた人物はアリサ・バニングスその人である。わざわざ一句を区切って話している辺り、相当頭に来ているらしい。アリシアが怯えるのも無理はない。

 

 現にアリシアを庇ったすずかが小動物のように怯えだし、あまり動揺しない、あのなのはですら顔を引きつらせていた。

 

 そりゃもう本当に怖い。直視できない位に恐ろしいといえば分かるだろうか。肌を差すような威圧感に、本当に髪が逆立っているんじゃないかって雰囲気。鋭い眼光で睨まれたら、たちまち委縮してしまうんじゃないかってくらい、彼女はおっかない。

 

 すずかの腕の中に居るアルフだって身体を丸めて怯え続けている。御主人の危機に立ち向かうのは無理そうだった。

 

「アンタ達……うちの妹を庇い立てして、甘やかすんなら容赦しないわよ? わかるわね――?」

「「こくこく、コクコク」」

「ちょ、みんな、ひどい! ボクを見捨てるっていうのっ!?」

「アリシアちゃん。ごめん、今回は無理だよ……助けてあげられない……」

「逆らったら後が怖い。貴女が一番、理解しているでしょう」

 

 そんなギルティの使徒と化したアリサに逆らえるはずもなく、アリシアを無意識に庇っていた二人は、ずいっ、と罪人を前に差し出す。

 

 彼の者の罪は家の御稽古をサボろうとしたこと。その大義名分を前にしては、さすがの親友二人でも助けてあげられない。正統性は姉のアリサにある。何よりも彼女はアタシの怒りが有頂天状態なのだ。戦う前から二人の戦意は挫けていた。

 

「そ、そんな……なのはぁ~~、ボクたち親友だよね? どんな時でも一緒だよね」

 

 せめてもの旅は道ずれ、世は情けといわんばかりに、一途の望みを託してなのはに子犬のような視線を向けるアリシア。それを制するようにあぁん?とガンをつけるアリサ。二人の親友どちらに付くのか、なのはの心は大いに揺れ、そして。

 

「アリシア。運命を受け入れてください」

「そんな……そんなぁ、そんなぁ~~っ!」

 

 なのはが遠い目で首を振る。その瞬間絶望に顔を染めるアリシア。

 

 無情にもアリシアに罰を与えられることが決定した。いや、本人が悪いのだから自業自得なのだが。しかし、瞳を潤わせて本気で泣きそうになっている彼女を見ると、どうにも可哀想になって来るというか。なんというか、やるせない。

 

「毎回っ! 稽古を抜け出してッ! アタシや鮫島に苦労を掛けるアンタにゃっ! 梅干しの刑だゴラァッ!」

「うぎゃあああああぁぁぁ……」

 

 その日、バニングス邸の周辺にて、あまりにも痛々しい少女の叫び声が聞こえたとか、何とか。

 

 合掌。

 

◇ ◇ ◇

 

「うぅ~~痛いよ~~、頭がじんじんするよ~~……」

「よしよし」

 

 アリシアのおしおきが完了した後、涙目の彼女を抱き締めながら、なのははあやすように彼女の背中をなでた。相当に痛かったんだろう。アリシアの瞳から零れ落ちた涙が、なのはの肩の衣服を濡らしていく。それで庇わなかった罪悪感を感じてしまうなのはだった。

 

「痛いの痛いのとんでいけ」

「はふっ、はふ、ワンっ!」

「ふんっ……」

 

 ついでにアリシアの頭を撫でながら、おまじないを口にするすずかと、慰めるようにご主人様の頬をしきりに舐めまわすアルフ。ここまで優しくされれば、そのうち機嫌を直して元気になるだろうとふんぞり返っているアリサ。

 

 でも、心の内ではアリシアに嫌われるんじゃないかと、兎のように怯えているアリサである。飴と鞭は使いようなのだが、やりすぎは良くないと自覚してもいた。このお姉ちゃん、基本的に妹に甘々なのだ。ちなみに父親はデレデレである。二人そろって似た者同士のダメ親子なのだ。

 

「で、今日は何の御稽古から抜け出したんですか?」

「ダンスのレッスン……あのガミガミ怒るオバサン嫌い……」

「オバサン言うなっ。たくっ、今度からアタシがマンツーマンで踊ってリードしてあげるから、次は頑張んなさい」

「ホントっ、アリサお姉ちゃん大好き!!」

「アンタはステップとか得意なんだし、運動神経も良いから、リズムにさえ乗ればワルツでもマーチでも踊れるはず何だけどなぁ」

 

 妹の調子の良さに呆れながらも、内心ではお姉ちゃん大好き!? いぃぃぃやっほうっとアメリカン魂全開のテンションで喜んでいるアリサが居た。しかし、誰も気が付くことはない。というよりも気が付かれたらドン引きされること間違いなしである。

 

 アリサは必死ににやけそうになる口元を意志の力で抑え込んだ。普段のイメージを壊さないようにする為の努力。その甲斐あってなのはとすずかは友人の意外な一面を目にすることはなかった。

 

 ふと、ダンスの練習? と首を傾げて、なのはは改めてアリシアの格好を眺めた。彼女は上流階級の社交ダンスに出るような、華やかな衣装を着こんでいたのだ。アリサ有頂天事件に気を取られ過ぎてまったく気が付かなかった。

 

「ほえ? なのは、どうしたの?」

「ちょっと、じっとしていて下さい」

 

 なのはは、アリシアの肩にそっと手を置くと、可愛らしく首を傾げる彼女をよそに、念入りに薄い化粧が施された姿をじっと観察していく。

 

 雪のように白い肌はファンデーション(白粉のようなもの)で整えなくとも、日本人から見れば綺麗すぎる。紫外線対策に最低限の下地だけ練り込んであるようだ。さらにはアリシアの可愛らしさを引き立てるように、唇にはピンクのリップが塗られている。しかも、頬にチーク(頬紅のこと)が施されているものだから余計に魅力が増している。

 

 アリシアの明るい性格を補強するかのような薄い化粧。他の女性から見れば素顔のままでも充分なのに、美しい顔の造形はさらに洗練されて、周囲から見ればますます輝いているように見える。

 

 卑怯である。世の女性はマスカラ、リップ、マニキュア、さらにはヘアカラーで武装を施さねばならないというのに、アリシアという少女はそのままでも完成された存在なのだ。そこにちょっとした工夫をするだけで、此処まで違うのかと悔し涙を流したくなる。

 

 簡単に言えば、薄い化粧が施されたアリシア、まじ可愛いである。少なくとも、化粧なんて一ミリも興味ない不破なのはが魅了される位には。

 

 ただ、残念なことに泣きながら逃げまくったせいで、せっかくの化粧が崩れて魅力半減である。見る人が見れば保護欲を湧き立てる姿なのだろう。

 

「……すごく、良い」

「なのは、どうしたの……? ボクの顔に何か付いてる?」

 

 現に約一名がチャームの状態異常に掛かっているのだから。

 

 なのはさん。擬音語で表すると、ぽけ~~とか、ふわふわ~~とか、意識が半分くらい飛んでいる様子。詳しく言えば、アリシアをじっと見つめたまま呆けたように固まってて、目の前に手をかざそうが、激しく手を振ろうが反応しない状態である。

 

「そっか、なのちゃん。社交界に出席した経験ないから」

「普段のアタシらと印象が百八十度違うからしょうがないわよ」

 

 おかげで、すずか嬢はくすくすと微笑ましそうに眺めているし、アリサは肩を竦めてやれやれと呆れている。

 

「だったら、びっくりするんじゃないかな。アリサちゃんが、社交界ではお淑やかで慎ましい大和撫子のような、お嬢さんって評されてること」

「パパとママ、んんっ! 父様と母様に恥は掻かせたくないもの。すずかだって人見知りする癖に、明るくて社交的、まるで満月のように美しいお嬢さんって言われてるじゃない」

「分かってて言ってるよね? あれは家名を貶めない為の演技だってこと。わたしだって猫くらい被るよ?」

 

 上流階級とは一般家庭よりも裕福な生活を送れる分、その苦労も半端ではない。上に立つ者としての重責。下々から、他家の人間から恥ずかしく思われない為の品格と立ち振る舞い。その苦労が滲み出ている年に似合わない少女達の会話。

 

 次期当主のアリサ。次期当主候補のすずか。彼女達も裏の世界や魔法の世界に片足を突っ込んでいるなのはとは、別の意味で苦労しているようだ。

 

「アリシアも大人しくしていれば、すごく可愛らしいお嬢さんで済むのに。あのままじゃおてんばなお姫様よ。だから教育係の苦労が知れるってわけ」

「その割にきちんと面倒見てるんだよね。アリサちゃんが学んだことを、進んで教えちゃうくらい」

「別に。姉として見苦しいから放って置けないだけ。妹になったアリシアが可愛いわけじゃ……ないんだからっ」

 

 そんなこんなで、社交界デビューは当分先ね、とか。アリサちゃん苦手じゃなければすぐに吸収しちゃう天才肌だから、教育係の人もアリシアちゃんも大変そうだよ、とか。いろいろと子供らしくない世間話で盛り上がるなか。

 

「……かわいい」

「なのはもドレス着てみる? きっと似合うと思うけどなぁ」

 

 一目惚れしたような状態の不破家の末っ子はアリシアのドレスをずっと眺めていた。

 

 子供用とはいえ高級な生地で仕立て上げられたドレス。触ってみると素材の良さがよく分かる。分かりすぎて困ってしまう。

 

 肌触りが良すぎてゲレンデのように滑るのだ。しかも、ぐっと押し込めば包み込んでくれそうなほど柔らかい。着心地は想像するまでもなく良いだろう。表面に施された刺繍も見事なもので、一流の職人が丁寧に施した意匠だと分かる。

 

 アリシアも自分の華やかな衣装に憧れているのかと思って、なのはにされるがままだった。正しくは衣装を着こなしたアリシアの姿なのだが。まあ、間違っていないから良しとしよう。たぶん、訂正しても聞こえないだろうから。

 

「この服を着せたまま、はやてにお披露目しましょう」

 

 アリシアの姿に完全に魅了され、駄目っ子と化したなのは。

 

「はっ?」

「えっと?」

「ん? おひろめ? 新しい友達に、この格好で会いにいくの?」

 

 そんな彼女の口からとんでもない言葉が漏れた。人目に気を使うアリサとすずかが、ぽかんとして口を開いてしまったのも無理はない。それくらい、なのはの意見は常識を逸脱していた。まさしく、何言ってんだこいつ?状態である。お前は何処の子煩悩もとい親馬鹿ですかと。いや、友馬鹿か。

 

「なのは、アンタね。その衣装がいくらすると思って、だいだい……」

「ですが、こんなにも可愛らしいアリシア――」

「でも、なのちゃん。いきなり豪華な衣装に身を包んで会いに行ったら、絶対にビックリする。それに変に威圧させちゃうし……」

「ですが、こんなにも可愛らしくて、綺麗で、清楚なお嬢様になったアリシアが――――」

 

 それから、彼女の説得にアリサとすずかが苦労したのは言うまでもない。

 

 衣装の値段から手入れの大変さ。図書館で待ち合わせしているのに、こんな格好で行ったら異様に目立つこと。唯でさえリムジンで目立つのに、バニングス家が何かやらかしてると噂になること。はやてちゃんは庶民暮らしだから威圧とか圧倒させる真似はまずいこと。そもそも初対面でフル装備して来る友人ってどうよ、と印象の面でも色々とまずいこと。

 

 とにかく棒読みでアリシアの可愛らしさ、素晴らしさを繰り返すなのはを、アリサ達は肩を掴んで揺さぶりながら何とか説得し、四人と一匹は新しい親友となる少女に会いに行くのだった。

 




なのはさんに、Pさんが乗り移ったようだ。

トロフィー獲得
「貴女は私の半身」
「脱走の常習犯」
「実はシスコン」
「笑顔の裏に隠された素顔は?」

誰が何のとはあえて言わない。



本編に関係ないような話に見える今回。

アリシアがバニングス家に引き取られたらどうなる?→バニングス家って習い事多いよね?→お稽古に耐えられなくて脱走→涙目でなのはに縋りつくアリシア可愛い。

まで妄想したら筆が勝手に動いていた。何言ってるか分からねぇと思うが俺もry



アリシアの姿が想像つかない人。

まず、明るく笑うフェイトの姿を思い浮かべる。次に薄い化粧で画像検索して美人さんの姿を眺める。照らし合わせてアリシアの姿を想像する。

それでも思い浮かばなければ、ホテル・アグスタのなのは達のドレス姿を見ればいいんじゃね?

あっ、ドレスはお好みでピックアップしておくれ。曖昧な表現にしといたから。誰とは言わないけど、黒が似合う人は白も似合うよね。

ん、ということはプレシアさんもなのか!? あのロリ姿でフェイトの格好してた。衝撃的な画像のようにっ!? 美人は何着てもry

作者、この小説が終わったらマテ子たちにダンス踊らせるんだ……


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