リリカルなのは アナザーダークネス 紫天と夜天の交わるとき   作:観測者と語り部

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メリークリスマス!!

 クリスマスの日。闇の書の完成も間近となり、あと数ページ蒐集すれば、はやては真なる主として覚醒する。そうなる前に、はやてが心の底から楽しみにしていたクリスマスを祝おうというのが、二週間ほど前に守護騎士となのはが計画したことだった。

 

 アリサ達も、はやて本人ですら闇の書のことは知らない。ばれないように努めてきたし、なのはが守護騎士の行動をフォローして、互いに口裏まで合わせてきたのだ。はやてを支える側と救う側で協力し合えば、日常生活を怪しまれずに蒐集することなど造作もなかった。

 

 各々でプレゼントを用意して、集合場所と時間を決めておいたのが一週間前。場所は海鳴大学付属病院の玄関前である。それぞれが温かい恰好をしながら、プレゼントを入れた紙袋を手に、集合を待っていた。

 

 最初にやってきたのは守護騎士一同。次に月村すずか。そしてアリサ・バニングスとアリシア・T・バニングス。意外なことに最初に来そうな不破なのはは最後だった。しかも、集合時間に数分遅れるというおまけ付き。

 

 時間を厳守する親友の失態に、怒りよりも心配が先に訪れる子供たち。そんな彼女たちを迎えたのは、どこかそわそわした様子のなのはだった。

 

「どうしたのよ、なのは? 何か良いことでもあった?」

「それとも心配事でもあるの?」

「い、いえ、何でもないです」

 

 長年の付き合いから察しの良いアリサとすずかが、口下手ななのはを促してみるが、彼女は恥ずかしそうに顔を俯けるだけで、何があったのか語ろうともしない。

 

 ただ一言、遅れてしまってごめんなさい、と謝るとそのまま黙り込んでしまった。

 

 う~んと唸るアリサ。何か悪いことをして隠し事している様子ではない。むしろ嬉しいことがあって、それを素直に喜べないといったほうが近い気がする。でも、無理に聞き出すのもどうかと思うし、彼女は先を急ぐことにした。

 

「それなら早く行きましょ、はやてが待ちくたびれてるわ」

「そうだね。はやてちゃん、この日をすごく楽しみにしてたもの」

「そ、そうですね」

「ボクもクリスマス超楽しみ~~!」

 

 先頭を歩き始めたアリサ、追従するすずか、どこかほっとした様子のなのは。それに続いてアリシアが何時になくご機嫌な様子で、なのはの後ろに続いて。

 

「クリスマスって、な~に?」

 

 そして、淡い灰色のダッフルコートに身を包んだアリシアの肩から下げた鞄から、彼女たちよりもさらに幼い声が聞こえ、場が一瞬で凍りついた。

 

 アリサを筆頭に親友三人組はこの声を知っている。首謀者であれば尚更。守護騎士一同は固まった子供たちを不思議そうに眺めていたが。

 

「アリシア? な~にか、アタシに黙って変なの持ち込んでない? 具体的には橙色の子犬とか」

「えっ? そんな事ないよ? アリサお姉ちゃんの勘違いでしょ?」

 

 この期に及んで堂々と白を切るアリシアは流石と言うべきか。しかし、対するアリサの表情は怒りメーターが壱上がって、顔が引きつっている。あぁん? とでも言うように睨みを聞かせ、九歳の子供とは思えない鋭い眼光がアリシアを射抜いた。

 

 威圧されて肩をびくりと震わせたアリシアは、何でもないよというように鞄を背中に隠したが、むしろ何かあると言っているようなもので。

 

「その鞄、見せなさい」

「やだ」

「怒らないから」

「そう言って、いつも怒るからやだ!」

「今なら拳骨いっぱつで許してあげるわ」

「やっぱり、怒るじゃないか~~!!」

 

 必死に無駄な抵抗を続ける義妹に、アリサは溜息を付きながら実力行使に出ようとして、やめた。何というか不毛な争いだ。せっかく飲んで騒いでの祝い事なのに、こんな事しているのもバカらしくなってしまったのだ。

 

「アルフ、出てきなさい」

「は~い!」

「うわぁっ!! 出てきちゃダメだって~~!!」

 

 やれやれといった様子でアリサが語りかけると、アリシアの鞄の中から、橙色の毛並みをした子犬が姿を現した。額には特徴的な赤色の宝石のようなものが付いている。間違いなくアリシアの使い魔、アルフだった。

 

 アリシアは必死に隠そうとしているが、アリサもご主人様の一人であるので、アルフは素直に言うことを聞く。

 

 困惑するアリシアの胸にしがみつく子犬は、ますます幼くなった様子。事実、アリシアのリンカーコアに負担を掛けないよう、アルフは必要以上のリソースを取らないよう自ら切り捨てた。

 

 おかげで精神や肉体が幼児退行を起こしているが、アリシアがその分、長生きできれば本人としては満足である。彼女はここ数ヶ月で狼型使い魔の誇りを捨てて、ただの子犬に成り下がっていた。その選択に悔いはない。

 

 喋らなければ、ただの可愛らしいペット。バニングス家の面々から愛されるマスコットだ。

 

 しかし、アリシアに負担を掛けないよう成長途上で眠りについたので、知らないことには興味津々。周りが身内だけなら、こうして喋りだすこともある。夏のお祭りにも行きたがっていたし、意外と賑やかな事が好きなのかもしれない。

 

 おかげで義姉に睨まれたアリシアは、やや怯えたように肩をすくませているが。

 

「なんで連れてきたの?」

「だって、一人ぼっちじゃ可哀そうじゃんか~~」

「病院はペット厳禁て、言ったでしょ」

「じゃあ、人型に変身させる」

「省エネモードじゃないと、アンタに負担が掛かるからって、アルフと約束して禁止にしたでしょうが」

「む~~!!」

「たくっ、ホントにしょうがないわね」

 

 引き下がろうとしない義妹の様子に、呆れたように頭を押さえるアリサ。彼女はアリシアから優しくアルフを抱き上げると、一同に突き出してこう告げる。この子、うちで開発した最新型のペットロボットよ。いいわね。と。

 

 その九歳児とは思えない気迫に誰もが、お、おぅ……と頷くしかなかった。もちろん守護騎士の誰もがアルフの正体に気が付いている。だけど、病院にペットを持ち込むのは厳禁と言っておきながら、それは如何なんだろうと苦笑いを浮かべるのも無理はなかった。

 

 もしこれがザフィーラだったなら、ロボット扱いされた彼は何て思うんだろう。

 

「そういや、犬で思い出したんだが、ザフィーラは?」

 

 ここで思い出したかのように、ヴィータがシグナムに問う。途中まで一緒だったのに、使い魔扱いされることを嫌う誇り高い守護獣がいないのだ。

 

「アイツはふと通り掛かったサンタ役だ。人の姿でサンタの格好をしてプレゼントを配る予定になっている」

「いつの間にそんな計画を……」

「あまり人型の姿で主はやてのご友人たちと接していないからな。あまり見知ら人と行き成り祝い事を楽しむというのも難しいだろう?」

「確かに……」

「それに、守護獣の姿で病院に連れてくるわけにもいかない。故にクリスマスにどうやって参加させようかと悩んだ末の答えが、これだ。サンタの格好なら誰でも気兼ねなく接することができる、筈……自信はないが」

 

 蒐集の合間にいろいろ考えてたんだなぁとヴィータは感心する。

 

 何でも図書館でクリスマスの絵本を借りてきて、サンタとはどういうものなのか学び、口調を変えてメリィィィクリスマァァァスと発声練習とかもしてたらしい。おかげで、それを聞いたシャマルが腹を抱えて大爆笑だったとシグナムはザフィーラから聞いたらしい。

 

 ザフィーラの渋い声でメリィィィクリスマァァァス。そんなに面白いなら、ちょっと聞いてみたかったヴィータだった。

 

「ザフィーラ頑張れよ」

「ああ。それに、サンタの姿なら狼の耳と尻尾も仮装で誤魔化せそうなので、筋骨隆々のケモミミサンタさんになる。ちゃんとサンタの白い髭もつけるらしい」

「ご、ごめんザフィーラ。想像したら腹が――」

「今のうちに笑っておけ、私も失笑を抑えきれなかったからな」

 

 付け加えるなら道中、不審者と間違われないようにと思うシグナムだった。獣耳+尻尾+褐色+筋骨隆々=サンタの格好。普通の人が見たら変な外国人と思うのは間違いなかった。

 

◇ ◇ ◇

 

――メリ~~クリスマ~~ス!!

 

 大人と子供を含めた七人の声が一斉に病院の個室で響き渡った。この日を八神はやては生涯忘れないと誓う。それくらい感動的な光景が彼女の前には広がっていた。

 

 何せ今日は初めて皆で祝う本格的なクリスマスだ。いつもは一人寂しく過ごしていたし、石田先生と食事を一緒にすることもあったが、基本的に一人ぼっち。幼い頃に両親と過ごしていたかもしれないが、曖昧すぎてよく覚えていない。

 

 だから、こうしていろんな人と祝い事を過ごすのは新鮮で、何より楽しい雰囲気に包まれて嬉しくなる。一人ぼっちの寂しさを感じることのない時間はなんて心地良いんだろうと思うのも自然だった。

 

 今年は最高の一年だ。確かに持病が悪化して、発作に苦しんだこともあった。

 

 それでも守護騎士の皆が現れて、優しい家族ができた。それから親切な子供に助けられて、すぐに仲良くなり、念願だった友達もできた。学校に通うことは叶わないが、そんな友達から小学校の授業や生活というのを教えてもらって、日本に住む子供が当たり前にしていることがどんな事なのか知ることができた。

 

 しかも、仲良くなった四人の子供たちは全員いい子で可愛くて、海遊びや夏祭りにまで連れて行ってくれた。絶対に叶わないと思っていた願いを二つも叶えてくれたのだ。

 

 近頃は一緒に過ごす時間も少なくなったが、優しい守護騎士はいつもはやてを支えてくれて。友達の皆も暇を見ては、はやての家に遊びに来てくれて。おまけに生活するために必要で、いっぱい練習した自分の料理を美味しいと食べてくれて。だから、自分の心は幸せでいっぱいだと感じるのだ。今もこうして心の底から笑っていられるのだから。

 

 だから、死ぬのが怖くなってしまって。痛くて苦しいのだって本当は嫌で。でも、なのはちゃんが自分の罪を打ち明けて、はやての不安を紛らわそうとしてくれて。それから病気のことも何とかするといって、彼女は頑張ってくれた。

 

 それだけで、はやてにとって充分すぎるほどで、満足している。

 

 だから、精一杯、今日というこの日を楽しむことに彼女は決めていた。たとえ、どうしようもなくなって足の麻痺や発作で亡くなるのだとしても。後悔がないといえば嘘になるし、やりたいことだっていっぱいある。だけど、満足したから後悔していない。

 

 そんな矛盾に満ちた嬉しい気持ちで、はやては心の底から笑っていた。だって本当に楽しかったのだから。

 

 まず、手始めにアリサとアリシアのバニングス姉妹が、はやての眠るベッドに近づいた。暖かそうな格好をしたアリシアの手には大きな紙袋が握られている。なのはが告げたクリスマスプレゼントが入っているのだろう。中身が何なのか分からないが、湧き上がるワクワク感だけはすごかった。

 

 自然と上がる期待の眼差し、アリサが得意そうに喋り始める。

 

「社交界のクリスマスパーティーには劣るけど、皆でクリスマスプレゼントを用意したわ。アタシとアリシアからはこれ」

「はい、これ! 病院だと暇そうだからって買ってきたよ」

 

 そう言ってアリシアが袋の中から取り出したのは、赤を基準としたクリスマス用の可愛らしい包装紙に包まれたプレゼント。それも二つあって、ハードカバーの本より少し大きめのサイズだ。

 

 包装紙の絵柄には可愛らしくデフォルメされたサンタさんとトナカイさんが描かれていて、はやてはそれだけでも気分がいっぱいになった。

 

「うわぁ! ほんまにありがとうなぁ、わたしとっても嬉しい!」

「ちなみに中身は、画面をタッチペンで操作するゲームと、UMDとかいうディスクを入れるやつ。CMでよく話題になってる、何だっけ?」

「開ける前にネタ晴らしすんなっ!!」

「あいたぁっ!!」

 

 アリシアの悪気のない台詞にはやては苦笑い。アリサがすかさず義妹のおでこにチョップする光景もそうだが、プレゼントの中身を知ってしまった事のほうが大きい。

 

 彼女の思い浮かべる思考はただ一つ。そんな高いもの貰ってしまってもよいのだろうか?である。タッチペンの奴は1万5千。UMDの奴は2万ちょっとしたような……テレビのCMでそんな事をやっていた気がする、うろ覚えだが。

 

 そうすると合計で3万5千円相当のプレゼントを貰ったわけで。しかも、暇つぶしと言っていたから当然ソフトも込み。だとすると金額はさらに膨れ上がる。

 

 プレゼントを貰った経験は殆どないに等しいが、それにしたってこんな高い商品を貰う経験は初めてで。嬉しさもあるが、本当にいいの?という戸惑いもある複雑な気持ちである。

 

 それを察したのか、アリサははやての肩を叩いて気にしないでと、太陽みたいな笑顔を浮かべた。

 

 彼女が上流社会の世界を知ったら、驚愕するだろう。主に金額的な意味で。

 

「それじゃあ次はわたしだね」

 

 入れ替わるようにすずかが、はやての眠るベッドに近づいた。

 

 同じように紙袋の中から取り出したのは丁寧に包装されたプレゼント。受け取ってみると大きさや手触り、そして重さなどから本だということが分かる。それも結構分厚いやつだ。二、三冊はあるだろうか。

 

「すずかちゃんもありがとうなぁ」

「ううん、気にしないで。前に、はやてちゃんが欲しがってた本と、わたしのお気に入りの本を選んでみたの。あとで感想聞かせてね」

「えへへ、それくらいやったら、お安い御用や」

 

 二人して談笑を重ねる姿は、幼馴染と言っても過言ではないくらい似合っていた。それくらい二人の波長が合うのだろう。

 

 はやてのベッドの上にプレゼントが増えていく。それだけで、子供なら誰もが喜んでしまいそうな状況。

 

 プレゼントはまだまだ増えるし、クリスマスも始まったばかり。お楽しみはこれからである。

 

「我ら守護騎士一同から、私が代表してこれを」

「みんなと相談して、はやてちゃんが喜んでくれるようにって買ってきたの」

「あたしが言うのもなんだけど、結構可愛いと思うぜ」

 

 お次は守護騎士たちがはやてに近寄り、代表してシグナムが紙袋の中からプレゼントを取り出した。

 

「わぁぁぁ、テディベアや。すごく可愛いなぁ。とっても柔らかい感触で、肌触りもええ感じ。これ、高かったやろ?」

「いえ、それほどでもありません。主はやてが喜んでくれて何よりです。念には念を入れて選んだ甲斐があったというもの」

 

 それは某国某社の老舗によって、手作りで作られたテディベアで、ちまたで話題の人気モデルである。クリスマスプレゼント用としてお勧めされていた商品でもあった。

 

 シグナムとシャマルが悩みに悩み、アリサやすずかに相談し、彼女らの伝手を使って手に入れた高級品。大事にすれば何年もいっしょに居られる丈夫さも持つ。はやてと自分たちが過ごす日々の、新たな思い出になってほしいという願いが込められたプレゼントだった。

 

 おかげでシグナムの貯めていた給料が吹っ飛んだが、本当に嬉しそうな主の笑顔に比べれば些末なこと。彼女の喜びが、守護騎士にとっての何よりも変えがたいクリスマスプレゼント。本当に頑張ってきてよかったと思う。

 

 後は怒られる覚悟で主を、闇の書の真の所有者として覚醒させれば、彼女を苦しめている足の麻痺も治るだろう。そうすれば穏やかな日々が戻ってきて、万事解決である。事を為すにはまだ早いが、もうすぐハッピーエンドなのは間違いない。

 

 守護騎士と入れ替わるように、はやてに近づいたのは、なのは。彼女のプレゼントで最後になる。もちろん、ここに居る子供たち全員に向けてザッフィーサンタが急行中であるが、はやてへのプレゼントはこれで最後だ。

 

「わたしからは、これを……」

「これは、マフラーかな? ちょっと解れてるけど。もしかして、なのはちゃんの手編みなんやろか?」

「え、ええ。いっぱい練習したんですけど、あまり上手く出来ませんでした。その、初めてで……」

「ううん、そんなことない。よく出来てる。わたしの為に一生懸命編んでくれて、ありがとうなぁ――ほんまに、嬉しい」

 

 なのはが取り出したマフラーは可愛らしい桃色の毛糸で編まれたものだった。

 

 プレゼントは何が良いのか悩んでいた時に、兄の婚約者である忍さんが、手編みのプレゼントを作っていたのを思い出して、自分でも実践してみたのだった。しかし、思いのほか苦戦してしまい、出来上がったのは製作者の不器用さと、不器用な性格を表したかのようなマフラーだった。

 

 それでも喜んで貰えたなら何よりである。何せこれは。

 

「はやて、その足が治ったら一緒に出掛けましょう。そのマフラーに、はやての足が良くなるようにと願いを込めました。そのマフラーを付けて外を歩けるように、と」

 

 そう、なのはの心の底からの願いが込められた大事なマフラーなのだから。

 

 かつてアリシアがジュエルシードに願ったのと同じくらいの想いが、マフラーには込められている。

 

 そして、暗に聖夜の夜を終えた瞬間に、はやての足の麻痺が治るという暗示でもあった。

 

「なのはちゃん、それって……」

「あっ、あ~~! アタシ喉が渇いたし、温かい飲み物が飲みたくなったわ」

 

 何かを察したかのような、はやての言葉を遮ったのはアリサだった。

 

 彼女は唐突な話題変更とでもいうように、微妙になりかけた場の空気を霧散させようと、注目を一身に集めた。

 

 その顔は何だか、とても恥ずかしそうだし、親友のフォローになのはは心の底で感謝するしかない。彼女には助けられてばっかりだ。

 

「そうなの?」

『そ~なの?』

 

 アリシアが首を傾げると、いつの間にか胸に抱かれていた子犬のアルフも首を傾げた。

 

 二人の主従は幼く、可愛らしい。周りが大人びているのもあるだろうが、それにしても一段と雰囲気が幼いのである。つまり可愛い。

 

 だから、最近シスコン気味に為りつつあるアリサは、恥ずかしそうに顔を逸らす。犬好きで、可愛いものが好きで、妹も好きとあっては、受けた衝撃も並々ならぬものがあろう。

 

 頑張って、アリサちゃん。とすずかは心の中で応援していた。

 

「そうなの! アタシが買ってきてあげるから、好きなの頼みなさい!」

「ココア!」「ミルクセーキ!」「わたしは緑茶」「主と同じで」「はやてちゃんと同じで」「わたしは平気」

「ああ、もう! 一人ずつ喋りなさいよ!」

「アリサにお任せします」

 

 ちなみに声を上げたのは、アリシア、ヴィータ、はやて、シグナム、シャマル、すずか、なのはの順である。

 

「アルフぅぅ、任せたよ!」

『は~い!』

 

 人数が人数なので、運びきれないだろう。そう思ったアリシアは、アルフを手放すと、手伝ってあげてと姉の所に向かわせる。

 

 アリサもそれを察したのか、近寄ってきたアルフを抱き上げると、小声でトイレで変身するわよ。と伝えていた。

 

 アリシアを引き取るにあたって、彼女の諸々の事情を、アリサは把握している。使い魔のこと。魔法のこと。抱えてしまったリンカーコアの持病のこと。親には内緒だが、アリサと親友たちは事情を把握していた。子供達だけの大切な、そして内緒にしなければいけない秘密である。

 

 ちなみに、はやてにもアルフは、最新型の子犬ロボと説明しているが、察しの良い彼女はザフィーラと同じような存在だと感ずいて、あえてスルーであった。はやてなりの優しさである。

 

「じゃ、行ってくるわね」

『くるね~~』

 

 橙色のモフモフ子狼を腕に抱いて、アリサは部屋を飛び出していった。




メリィィ苦しみますぅぅぅ!!

本当はクリスマスの日に投稿して、そこから連続更新する予定だったけど、無理でした。

皆様、大変お待たせしました。忘れたころにSilentBible聞いて復活する作者です。

完結するまで諦めない心、大事。

さて、まず一人目。

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