side 井上織姫
今日もウルキオラさんをおいしく食べていたのだけれど、また破面の人たちがやってきたようだ。烏頭と狐花はウルキオラさんの封印に使っているからできれば使いたくないんだけれど、四季崎さんたちもやってきてるから多分大丈夫だよね? 大丈夫じゃなかったら大丈夫にするから多分大丈夫。その時はウルキオラさんともお別れかなぁ?
「ウルキオラさん?」
「……なんだ、女」
「もしかしたら、もうすぐお別れかもしれません」
「そうか。清々するな」
「ウルキオラさんってば酷いなぁ」
と言っても私だってウルキオラさんと同じような状態だったら同じようなことを言うと思う。もしかしたら怖くて言えないかもしれないけどね?
「……いらっしゃい。どちらさまですか?」
「ああ、気付いていたのか。君を攫いに来たよ」
振り向いてみれば、そこには見たことのある人がいた。藍染惣右介。確か、空座町を使って王鍵を作ろうとしているとか言う大悪人。霊圧の差からして勝てる気はしないなぁ……でも、わざわざ攫いに来たって言うなら何か理由があるんだよね? わからないけど。
「先に言っておこう。もしも君が私についてこないのならば、尸魂界に突如として全裸の黒崎一護が何十人か現れることになるだろう」
「脅し方が織斑さんそっくり!?」
「ああ、もちろん催眠によるもので決して本物ではないけれど、君も一緒に出演させてあげようか? 黒崎一護に首輪を嵌めてリードを手に持つ女王様として」
「やめてくださいよ本当に!?」
追い詰め方も織斑さんそっくりだ……!? そう言えば織斑さんの部下として過ごした時間がかなり長いとか言ってたような気がする!しかもかなり本気目の忠誠心もあるとか言ってた!尸魂界と敵対したから冗談だと思ってたけど、そう言えば忠誠の対象が尸魂界だとは言われてないね!普通に考えれば尸魂界なんだけど言ってた相手が織斑さんだと普通に考えてた自分が馬鹿だったと思える!不思議!
「それと……ウルキオラ。生きているのかい?」
「死んではいないというだけです。ここから出れば死ぬでしょう」
「あ、ウルキオラさんは私のごはんなんですよ!」
「……ごはん?」
「はい!美味しいです!」
「……そうなのかい?」
「自覚はありませんが」
「……そうか」
なんだか頭が痛そうな顔をしてるけど、多分私の方が頭痛いから知ったこっちゃないね!それに誘拐らしいし!ちょっと困ってもらった方がいいよね!
でも、なんで直接この人が来たんだろう? ウルキオラさんみたいな人たちに任せればいいと思うんだけど……なにかあるのかな?何があるのかはわからないけど。
「それで、ついてきてもらうよ。井上織姫」
「うーん……正直勝てる気はしないですし、いいですよ? ただ、どうして私なんですか?」
「君の能力は有用だ。尸魂界にとっても、黒崎一護にとっても、私にとってもね。尸魂界に使わせないようにすると言うだけで私の得になる」
「……ああ、なるほど。そういう事ですか」
「そうとも」
確かにそれならわざわざこの人が来る理由もわかる。そうやって使おうとは思ってなかったけれど、確かにそういう風にも使えるね。そしてそれは多分、この人の能力を考えればかなり致命的になるんだろう。能力を知られてしまったら、もう一度かけなおすのは大変だろうしね。警戒されているなら余計にそうだと思うけど……そもそも解放の瞬間を見せるだけでかけられるなら私が何をしても即座にかけなおして何の意味も無くせると思うんだけど、それだと駄目なんだろうか?
……そっか、解放中に解放の瞬間は見せられないよね。つまり、ある程度強い誰かと戦っている時に一番強い人を私が治して、能力を途切れさせたくない時に無理矢理戦うよりはずっといいのかも。この人にとっては事前に潰しておけることだろうしね。
それなら私を殺して魂を誰かに食べさせればいいだけの話だと思うんだけど、それをやらない理由もなんとなくわかる。もしかしたらこの人を倒せる可能性のある人は、尸魂界では四人しかいないらしい。総隊長のおじいちゃん、四番隊の隊長さん、十一番隊の剣八さん、しっかり解析する暇があるなら十二番隊の涅さん。織斑さんは番外として、この四人。そして私を攫えば恐らく黒崎君は私を助けに来てくれるだろう。現在の現世で唯一この人を倒せる可能性のある黒崎君が。
要するに、餌にするつもりなのだろう。私は食べるのは好きだけど食べられるのは好きじゃないんだけどな?
なんて言っても、ここで断ったら間違いなく死亡確定。これからも美味しいご飯を食べられるようにするには、大人しく誘拐されておかないといけない。黒崎君の足枷になるのも嫌だし、もしかしたら裏切りとかそういうのを疑われるかもしれないけど……仕方ないね。
でも、ただ利用されるだけというのは嬉しくない。ちょっとくらい私の我儘も通して見せたい。
「……じゃあ、ご飯はちゃんとください」
「勿論だとも」
「襲われたりしない場所をください」
「構わないとも」
「襲われたら反撃の許可をください」
「好きにしたまえ」
「ウルキオラさんはお弁当に入りますか?」
「食べすぎはよくないからね。駄目だよ」
……最低限通したいところは通したし、まあこれでいいとしようかな。一応書置きとかも残しておいて……さよなら、ウルキオラさん。
Q.藍染がなんか変な脅し方してる……
A.誰に似たんですかねー(すっとぼけ)
Q.ウルキオラはお弁当に入らない?
A.入りません。それ以上に食べ物ではありません。
本編完結後にこの話の外伝的な物を書こうかなと思うのですが、大雑把な内容をアンケートします。なお、ちくわ大明神が頑張ることでこれらの話は実現されますので無理だろとか思わないで大丈夫です。
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