side 井上織姫
閉じ込められてしまった。私が、ではない。私達が、だ。
黒崎君たちがここにやってきた道は封鎖され、こちらから現世に戻ることはできないようにされてしまった。もしも内側から道を開ける人がいるなら話は変わってくるのだけれど、私も私の中の虚もちょっと無理。そしてその上で十刃の一番、二番、三番の人は現世の空座町を使って鍵を作るために出ていってしまった。
そしてそのことについては一緒に現世に向かった東仙さんが鬼道で黒崎君たちに伝えていたから多分もうみんな知っていると思うけれど、なんだか色々ちぐはぐだ。
そもそも戦いに行く必要なんてない。本人が行く必要もない。私を虚圏に引き入れたらその場で鏡花水月を使っておけば済んだ話のはずだ。私がいるように錯覚させる……のは、見せていない人が多いから無理だとしても、初めから十刃全員を空座町に送り込んでおけば流石に黒崎君でも勝てなかったはずだ。それにそれぞれの能力は何となくわかるけれど、ウルキオラさんより上は広域破壊が十分にできる系統の刀剣開放のはず。特に二番のお爺ちゃんは尋常な方法では防ぐことのできない技を使うのだから、搦め手の苦手な黒崎君相手なら完封できただろう。
なのに、あのお爺ちゃんたちは連れて行って他の全員を残していった。それも留守の間ここがどれだけ壊されても問題ないと言うかのように留守役を誰に任せるでもなく無造作に。
もしもあの人が求めるものが王鍵なんてものじゃなかったとしたら。そもそも初めから尸魂界が想定していたのとは全く別の理由であの人が動いていたとしたら。その計画の着地点は一体どこになるのか。
考える。一体何が目的なのか。考える。甘いものが欲しくなってきたのでウルキオラさんを抓みながら考える。
私の知らないことも多い。けれど私の知っていることもある。私の知らないことに関して私が考えても推測にしかならないから一旦置いておくとして、あそこまでの事をして求めたものとは一体何なんだろう? 多分、一応王鍵や霊王と呼ばれる誰かの所に行くことも目的の一つではあるんだろうけれど、本命とは思えない。実は本命はあの人がすでに殺していた四十六室の命であって、他の物はそこまでやってしまったついでに得ようとしているだけなのかもしれないとすら思う。実際どうなのかは私にはわからないけどね。
虚夜宮の中で最も高い場所、尖塔にある玉座の間で私は座り込む。以前見せてもらった崩玉はすでにこの場所には無く、私にできることは……これくらいだろうか。
「ウルキオラさん」
「どうした、女」
「……さよならです」
「そうか」
烏頭と狐花の張った分厚い結界が解け、ウルキオラさんが外に出される。ほんの僅かな霊子の欠片から無理矢理に再生され、何度も私に食べられてきたウルキオラさんの身体は、私の能力で保たれていた。それがなくなった今、ウルキオラさんはすでに消えていくしかない。
まるで大気に溶けるように霊子として消えていったウルキオラさんは、最後まで私の事を見つめ続けていた。私に何かを言いたかったのか、それともただ見ていただけなのか、わからないけれどともかくこれで準備はできた。
虚夜宮を覆うように舜桜とあやめに結界を張ってもらう。中で怪我をした皆を治すための盾だけれど、人間のままの私だと少し霊圧が足りない。だから烏頭の盾で私自身を一度虚に変える。自分ではどこかが変わったとかそういう認識は無いのだけれど、霊圧は上がった自覚がある。少し歪んでいた結界をしっかりと張り直し、内部を私の近くの範囲に収める。盾で覆った中は私の領域。逆に言うと盾は私の領域外には張れないという事なのだけれど、虚になると人間の時より基礎スペックは上がるから結構遠くまで盾を作れるようになる。
ぐったりとしている四季崎さんの霊圧を回復させ、細かい傷の多い阿散井さんも同じように。茶渡君は……うん、大きな傷は無いけどちゃんと直しとこっか。石田君と黒崎君は流石だね、傷一つ負っていない。黒崎君の所に居る知らない誰かはちょっと体の中がボロボロすぎるからちゃんと治しておいた方がいいね。じゃないと多分死んじゃうと思うし。
……実は、私のこれには欠点が一つ。私は虚化すると、黒崎君の事が食べたくて食べたくて仕方なくなってしまう。黒崎君が私の目の前に来たとき、ちゃんと我慢できるかな……? 正直無理な気がする。
すぅ、と息を吸い込むようにこの場に漂う霊子を取り込む。黒崎君が来るまでにこうやってできるだけ食べておけばちゃんと我慢できると思うんだけど、できるといいなぁ……。
『自信は無いけどね』
うん、ないね。
『黒崎君美味しいから仕方ないね』
仕方ないよねぇ。
『大丈夫。食べたとしても先っぽだけだと思う』
先っぽだけでも駄目だと思うな私。
『食べても直せるよ?』
直さなくちゃいけないようにしたら駄目だと思うんだけど?
『駄目だっていうのはわかってるんだけどねぇ……ここしばらく食べてないからね』
そうだね。暫く黒崎君の霊子を食べれてないよね。
あーあ、おなか一杯黒崎君を食べたいなぁ……絶対やっちゃ駄目だけどね。
Q.ウルキオラさんようやく解放されたの?
A.はい。冥福を祈ってあげてください。
Q.我慢できるの?
A.賽子振ってみます。
本編完結後にこの話の外伝的な物を書こうかなと思うのですが、大雑把な内容をアンケートします。なお、ちくわ大明神が頑張ることでこれらの話は実現されますので無理だろとか思わないで大丈夫です。
-
原作世界に一護達in
-
事前に見えざる帝国滅ぼしてなかった世界
-
尸魂界でP1グランプリ開催
-
虚圏でP1グランプリ開催
-
全部やろうか(マジキチスマイル)