BLEACH~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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BLEACH~109

 

 side 藍染惣右介

 

 力とは何か。それだけをひたすらに考え続けた時期があった。

 力があれば何でもできる。傷つけられることも無くなり、全てにおいて自分の思い通りにすることができる。それが力があるという事だと誰かが言い、多くの者がその言葉に同調した。

 では、私は何だろうか。私はやろうと思えば誰でも傷つけられる自信があったし、戦いになればだれにも負けることは無いと確信していた。それは僕自身が生れて間もない頃に母親を僕自身の霊圧で潰してしまったこともあって揺るがぬ事実として認識していた。それは虚と言う存在を初めて目にしたときも変わらなかったし、虚が僕がただ垂れ流している霊圧だけでひしゃげて潰れていくのを眺めていれば、そして僕にとっては触れるまでもない虚に死神が複数で挑んでいるのを見てしまえば確信を強めることはあっても否定する要素を見つけるのは難しいものだった。

 力だけであれば僕以上に強い存在がいなかったわけではない。しかしそれでも戦って負けるとは思わなかったし、あらゆる手を使えば誰が相手でも勝てると思っていた。

 

 そんな思いが砕かれたのが、彼、織斑一夏と出会った時の事だ。

 そこに存在しているということはわかる。しかしその認識はほんの一角、天の星を眺めている時に満月が見えていればそこに意識を引き付けられるように、わざと見えるようにされた全体からすればほんのわずかな霊圧。しかしその全体を把握しようとするとまるで分らなくなってしまう。霊圧の差を理解した。

 ただそこに存在しているだけで、世界そのものが悲鳴を上げているかのようだ。一歩を踏み出す度にぎしぎしと世界が薄氷を踏むように罅割れていく。そこに存在しているだけで、現世とそれ以外の世界で釣り合っているはずの世界の均衡が崩壊しかねない極大の重量と、その重量が人間一つ分の大きさに収められているという事実。

 剣術、白打、鬼道、歩法。その全てにおいてあらゆる存在を凌駕する。それは死神も、虚も、当時は今ほどの完成度は無かったがそれでも通常の虚に比べれば相当の実力を持っていた破面ですらも問答無用で打ち倒せるに足る能力。

 しかし自分と違ってその能力を使っても排斥されることも無く、かといってその能力を隠すわけでもなく、本人の思うとおりに行動するその姿に当時の私は胸の奥底から湧き上がる奇妙な感覚を持て余してしまう。今ならばわかるのだが、あれは恐らく嫉妬というものなのだろう。妬んだことすら理解していなかった私はその感情のままに行動することこそなかったが、理解できない感情そのものを理解するために彼に近づいた。結果として様々な意味で染め変えられてしまったわけだが、正しくはないかもしれないが決して悪い事ではなかったのだろう。こうして私と対等以上に戦える相手も見つかり、私自身は充実した生活を送ることができていた。

 

 満たされた私は、今まで以上に強くなった。満たされて初めてわかる自身の飢え。私に近しい存在、もしくは私以上の存在が私の傍にいる。死神としても人間としてもそれ以外としても異常な存在である私を目をそらすことなくありのままの形で受け入れた彼。そして私に私以上の異常さを持つ存在を見せつけた彼に、私は救われた。彼が求めるのであれば尻を差し出してもいい♂

 ……まあ、求められたこともこれから先求められることもないとは思うが。

 

 意識が徐々に塗り替えられていく。鏡花水月が通らない更木剣八と、何らかの形で対策を済ませたのだろう涅マユリ。その二人を東仙と共に相手をする。鏡花水月の能力からどのように抜け出したのかはわからないままだが、だからといって私と更木剣八の間に圧倒的な霊圧の差があることに変わりはない。

 戦闘能力ではまず間違いなく更木剣八は私を上回る。卍解を使いこなしているのであれば恐らく山本元柳斎重國をも上回っているだろうからそれ自体はおかしなことではない。そして涅マユリは研究者だ。時間と自由を与えておけば自身の能力によって手の届く範囲の全てを網羅しようとするだろう。更に言うならば更木剣八という私の能力下にない存在と自分たちと言う私の能力下の存在がどちらもそろっているのだから、サンプルを取るには困らなかっただろう。

 負けるつもりはない。しかし、死神としての限界値にほど近い私の能力は戦闘に特化されている更木剣八を相手にするには若干であるが足りないものがある。故に、私はこうしよう。

 

 黒腔を開き、閉ざされた虚圏に更木剣八を送り込む途中でこちらに繋がる道を閉ざす。これにより更木剣八は永い時の中でひたすら過ごし続けることになるだろう。

 ああ、しかしこのままではそろそろ多少慣れてきた者が出てくるだろう。鏡花水月の能力によって入れ替えていた様々な感覚を再び別の形に入れ替える。痛覚に入れ替わっていた視覚は冷覚に。平衡覚に入れ替わっていた聴覚は深部覚に。様々な形で入れ替えられた感覚は、それまでの慣れを完全に失わせることに成功した。そもそもどの感覚とどの感覚が入れ替わっているのかを理解することができなければ慣れることもできはしない。そして、この状態でそんな速度で慣れることができるとしたら……浦原喜助くらいのものだろう。なお織斑隊長は除く。そもそも効かないからな。

 

 さて、いったいどのように涅マユリは鏡花水月の完全催眠から逃れているのだろうか。恐らく最低限必要な部品を体内に仕込むことで個人は能力を受けなくなり、同時にこの場に仕込まれている設備によって鏡花水月を一時的に、あるいはこの場においてだけでも完全に使用できなくすることが目的なのだろう。真正面から受けてやるのが嗜みかもしれないが、私はそのようなことをする理由がない。この場に存在していた設備を入れ替えられた街並みごと粉砕した。

 

本編完結後にこの話の外伝的な物を書こうかなと思うのですが、大雑把な内容をアンケートします。なお、ちくわ大明神が頑張ることでこれらの話は実現されますので無理だろとか思わないで大丈夫です。

  • 原作世界に一護達in
  • 事前に見えざる帝国滅ぼしてなかった世界
  • 尸魂界でP1グランプリ開催
  • 虚圏でP1グランプリ開催
  • 全部やろうか(マジキチスマイル)
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