side 東仙要
現世の空を見上げる。この数百年であまりにも汚らしくなった、しかしそれでもなお青く、そして私の目には映らない空を。
そしてそこで戦う、藍染様と二十年の成果を。
巨大な霊圧だ。目が眩み、何も見えなくなるほどの。全てが霊圧に覆われ、何も感知できなくなるほどの。この場に転がる更木剣八のそれよりもはるかに大きな、傷付けられることもなく無力化された山本元柳斎重國のそれよりもよほど大きな、二つの霊圧のぶつかり合いを眺める。
私の願いは叶えられている。彼女を殺した男を、四大貴族の筆頭とされていた綱彌代の一族であった時灘を殺し、復讐は既に終えている。
だからこそ私は今、こうして目の前の敵を殺すこともなくただ戦いを眺めている。
私を動かし続けた復讐心は既に無く、彼女との約束や想いだけで動いている今の私はあまりにも大きな空虚に支配されていた。
「……狛村。聞こえていないだろうが、話をさせてくれるかな」
倒れ伏し、まともに身体を動かすこともできない狛村に言葉をかける。狛村からの返事は当然無いが、気にすることなく私は話しかけ続ける。
「なあ、狛村。君は案外聡いからもしかしたら気付いていたかもしれないけれど、私はこの世界と言う物が好きではなかったんだ。いっそ憎んでいたと言ってもいいかもしれない」
気付いていないと思っていたが、復讐を終えてよくよく思い出してみれば狛村は時折私を奇妙な感情を載せて見ていたような気がする。それも、大抵私がこの世界について語った後の事で、彼女の願いを私の口から語った時に特に多かった。
今の狛村に問いかけた所で答えは返ってこないことを理解していながらも、私は狛村に言葉を向ける。
「前に話したと思う。私にはかつて思い人がいて、彼女は死神に殺されたんだ。その上、彼女を殺した死神は彼女を殺したことを悔やむでもなくのうのうと生き延びて、私が復讐に走らなくてよかった、死神に守られて生きているのだから今まで通り死神に感謝して安寧の中を生きていればいい……などと言われてね。そこで彼には私の心の安寧のために死んでもらったのさ。彼が言ったことだし、喜んで死んでくれたはずさ」
そんなはずがないと分かり切っていることを口にしながらも、言葉は止まらない。この言葉を聞いていれば、狛村はなんと言っただろうか。復讐は悪だと叫んだだろうか。それとも肯定しただろうか。……いや、彼の事だ。復讐を肯定することは決してなかっただろう。
空の上ではまだ戦いが続いている。双方が理の外に立つ者であり、一名の殿堂入りを除けば最強格。既に私では決して届かない高みに踏み入っている二人の戦いを見ることもできないまま、空を眺める。
この空に瞬く星を覆い隠す雲はあるのだろうか。二人の霊圧に吹き散らされ、跡形もなくなっているのではないだろうか。今の状況にまるで関係のないことを考えながらも言葉は止まらない。
「なあ、狛村。私は私の思う正義を為したよ。君はそれを正義ではないと言うかもしれないけれど、私にとっては正義だったんだ」
「……すまない。今、私は言葉を誤魔化した。どうせ聞いている者もいないのだし、本音を言おう。私は正義を為したと言ったけれど、本当の所は正義であろうと悪であろうと彼女を殺した男がのうのうと生き永らえているということが許せなかったのだ。それを解決しなければ、正義も悪も為すことができないと思うくらいには、私の思いはその一つだけだったのだ」
あの男を殺した時の事はよく覚えている。苦しませることよりも何よりも、あの男が生きているということそのものが許しがたかった。故に私は藍染様の手を借り、綱彌代時灘を殺した。殺されたという認識すらさせずに、首を刎ね、刎ねた首と残った胴体を砕き、魂魄の欠片でも残していればそこからあの男の悪意が滲み出てくるかもしれないというほぼありえない事すら考えて魂魄どころか霊子すらも解体した。
それが終わってみれば、私の元には残るものなど何もなかった。正義を為すと口にしていたものの、私の思いは彼女から借り受けたもの。私本来の思いではなく、私は彼女の思いに共感しただけだったのだ。
しかしそれでも、長年続けてきた行為は私の
藍染様は何を求めているのか。それは知らない。私が知っていることと言えば、霊王の存在とその在り方に藍染様が憐憫を抱いているということと、それを良しとしている五大貴族に対して憤懣やるかたない感情を抱いているということ。それくらいだ。
空を見上げる。霊圧に塗り潰された、青い、青い空を見上げる。
不意に、光を映さぬ視界の中で何かが輝いたような気がした。私にそれが何かはわからないが、願わくば———この空にも彼女が好んだ星が瞬いていますように。
本編完結後にこの話の外伝的な物を書こうかなと思うのですが、大雑把な内容をアンケートします。なお、ちくわ大明神が頑張ることでこれらの話は実現されますので無理だろとか思わないで大丈夫です。
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