side 藍染惣右介
理解していた。ああ、理解していたとも。
黒崎一護に突かれた図星。その内容を知って、自分ではどうしようもないことだと生まれて初めて諦めた。それまで自身の力と時間さえあれば届かぬものなど何一つないと思っていた自信が、障子紙よりも容易く破られた。
三界は、霊体の重さによってバランスを取っている。尸魂界、虚圏、現世、地獄。この四つの腕を持つ天秤が崩れないように、死神はそれぞれの世界に存在する魂や霊子の量を調整しているのだ。
しかし、織斑一夏と言う存在がいる。もしも織斑一夏が現世に出ればどうなるか。凄まじい霊子の質量によって一瞬にして均衡は崩れ、三界を隔てる断界は生と死が入り混じった混沌へと一瞬にして姿を変えることは明白だ。
一応隊長格として尸魂界に縛り付けてはいるものの、その存在は隊長格どころか霊王のそれよりもよほど重い。下手をすれば三界全てを纏めた物より重い可能性すらある。それが表に出ていないのは単に織斑一夏という男の気まぐれにすぎない。もしも織斑一夏が『飽きたから』という理由で尸魂界から去ったり、あるいは三界でも地獄でもない所に移動してしまえば、間違いなく世界は突然の重量の変化によって大きく揺れることだろう。それも致命的な被害が出ることが確定していると言えるほど大規模に。
私は道化になる事を決めた。彼の関心を引き続けるために様々なことをした。笑い、笑わせ、戦い、振り回され、愚かなことも楽しんでみせた。戦闘狂に付き合い、裏では様々な事件の仕込みをして、必要なものを用意するために一般的には外道と言われるようなこともした。私はこの世界に愛するべき所を見出してはいなかったが、しかし滅ぼしたいと思ったことはなかったし巻き込まれて死ぬのも御免だったからだ。
できることなどほぼ存在しなかった。私がやろうとしたことなど、結果だけならば彼も同じことを私より遥かに短い時間で再現できたからだ。
彼は忠誠など求めなかった。もしこの世界に彼に対して絶対的な忠誠を捧げる存在が居たとして、しかし彼は気分次第でこの世界を崩壊させるような行動をとるだろう。それこそ飽きたからとこの世界の外側に行かれてしまえば、ただでさえ異常なバランスになっているこの世界が崩壊してしまうのは目に見えている。
同様に、金銭も権力も求めなかったし、色を求めることもなかった。彼が求めているのは結局のところ娯楽であって、それ以外のものはあっても無くてもそうそう変わらないものでしかない。そもそも権力を握ったとして、あるいは握らなかったとして、彼が本当にそうしたいと思って実力を行使すればそれに対して何かできる存在などこの世界には存在しない。かつて私達が滅ぼした滅却師の王であれば、その未来を改変するというその能力を使って何かできたかもしれないが……すでに滅却師の王は存在しない。尸魂界の影の中で国を作って生き永らえていた滅却師達はほぼ絶滅したと言っていい。涅マユリの研究室に何体か残っている可能性もあるが、それはとても生きているとは言えない状態だろう。
この時点ですでに霊王と言う存在と五大貴族のかつての行為を知っていた私は、今の霊王を廃して私は新たな霊王となる事を目指し始めた。天秤のようにバランスを取り続けなければ容易に崩れてしまうこの世界を、バランスを取らずとも続いていく世界に変えるために。一度変えてしまえば再び元の霊王に戻してもいいし、それを為すために必要なものも少しずつ揃えていった。彼は私のそういった行動を理解していながら私を止めることはせず、楽しそうに私の行動を黙認していた。
そのためにかつての隊長格を実験の材料にし、私の作戦への障害物として配置できるよう浦原と纏めて現世へと追いやった。あまりにも一方的なものでは飽きられてしまうし、そうでなくとも完全に秘密裏に、誰も気づかないうちにいつの間にか目的を達成しているのでは見所とも言えるところが無くなってしまう。こうした敵は必要だ。
見所を用意するために大虚を破面へと変え、主人公を用意し、その主人公の成長に合わせて破面達の力を調整し、主人公の成長の糧となるように尸魂界の死神たちを使う。幾つもの戦いを越えて主人公は大きく成長し、やがて私の前に立ち塞がるように場を整えて───
目論見が外れだしたのは、やはり彼が関わるようになってからだった。拘突によって主人公たちが尸魂界に来る時間がずれたことで瀞霊廷から流魂街へと休暇を取らせるようにした彼と出会ってしまった所から私の想定は役に立たなくなっていった。
ほんの一日の間に私が想定した主人公の最大値から数倍以上は強くなり、主人公を強化するための死神たちはその殆どが何の役にも立たないまま打ち倒されていった。隊長格であればそれなりに戦える者もいたが、本気で戦えば尸魂界が持たないほどの火力を持つ山本元柳斎重國と、主人公の斬魄刀との相性がいい浮竹以外は容易く倒されていった。京楽は初めからやる気を見せていなかったし、砕蜂は戻ってきた四楓院夜一に骨抜きにされてほぼ戦線離脱。更木剣八は……あれを制御する方が難しいので初めから数に入れていない。
尸魂界での戦いは、あっけなく終わった。
虚圏での戦いも変わらない。想定した実力を大きく上回った主人公たちは関門として用意した十刃を次々と攻略し、急遽追加の戦力として用意したネリエルもほぼ完全な形で救い出してみせた。封鎖した虚圏からの脱出も、いくつか用意しておいた道ではない最短の道を作って一直線にここまで駆け上がってきた。崩玉を取り込んで遥かに強化された私を十分に殺しうるだけの実力を持って。
更に強くなれ。私以上に強く在れ。そして願わくば───
───彼が消えても世界を崩さぬ楔となれるよう。
数十の死神と、数百の虚の魂魄から作り出した特別製の虚。
霊王が楔となってから現在に至るまで脈々と紡がれた死神の血。
霊王に届きうる超越者、滅却師の王たるユーハバッハの直系の血。
極僅かではあるが、世界の楔となっている霊王の一部。
これだけのものを使って作り上げた、ある意味では私の最高傑作。だからこそ私は。
ここで
君を
殺す
本編完結後にこの話の外伝的な物を書こうかなと思うのですが、大雑把な内容をアンケートします。なお、ちくわ大明神が頑張ることでこれらの話は実現されますので無理だろとか思わないで大丈夫です。
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原作世界に一護達in
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事前に見えざる帝国滅ぼしてなかった世界
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尸魂界でP1グランプリ開催
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虚圏でP1グランプリ開催
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全部やろうか(マジキチスマイル)