side 黒崎一護
胸に突き刺さった刀から伝わるものがあった。刀を合わせればある程度相手の思いを読み取れるが、今まで経験したどの戦いよりも一太刀から伝わってくる情報の多いやり取りだった。
世界を壊そうと思えばいくらでも壊せる相手を前にした焦燥。自身には届かない目標に対して手を届かそうと思えば簡単に届かせることが出来る相手への嫉妬。まるで蟻が作った地中の世界に無遠慮に割り込んできたブルドーザーに対するような絶望。力があるというのに必要だと思うことに対してその力を振るわないことに対しての嫌悪。そして自身に力が無く、力があるものを動かすこともできないことへの無力感。
しかし同時に楽しい日々でもあった。限界と認識していた壁など無いと証明する目の前の存在に対する羨望。そこに自身も届きうるという期待。自ら動くことは無いが自身の動きを知ってもまるで気にしない超越者に挑むという愉悦。限界を超えて伸びていく自身の力に対しての希望。そして手に入れた、世界を変える卍解に対しての熱情。
藍染にとって俺は王と馬のような関係だと思っていたのだろう。人間と動物という意味ではない、姿も力も思想も何もかも同じ二つの存在が居たとして、どちらが王となり馬を従え、どちらが馬となり王の力となるのを決めるか。
虚の俺はそれを本能だと説いた。剣を、力をより求める者が王となり、そうでない者が馬となる。
俺の中のオッサンは思いだと説いた。自身の意志をより強く持つもの。力も思考も同じであれば、より強い意志を持つ方が他者の意志を平伏させて王となるのだと。
既に消えてしまったが、少しの間だけ俺の中に居た織斑さんはそもそも王になる必要などなく、不満があれば不意を打って王を殺して力を奪えばいいと言った。まあこれは例外だが。
藍染はここでわざわざ俺を殺すつもりはない。もしも俺が想定より弱かったり、既に成長の限界に達していると判断すれば殺そうとするだろう。だが、力を示してさらなる成長を見せている今の俺であればわざわざ殺そうとはしないはずだ。でなければ───俺の胸に刺さった刀は既に下に振り切られているだろうからな。
半瞬、虚化して藍染の刀を引っこ抜いて傷を再生させる。ついでとばかりに藍染が垂れ流している霊圧と周囲に漂う霊子を虚の力で食って体力回復。出力は上がるがかなり疲れる虚化を解いて再び藍染と斬り合う。
俺は月牙を使わない。藍染も鬼道は使っていない。お互いにただの剣術で鎬を削り、三界から離れたこの場を霊圧で擂り潰しながら戦い続ける。
剣を振るう度に周囲に漂う拘流が剣圧で切り刻まれ、その先から磨り潰されて霊子に還元されてこの場に溜まっていく。水の中で剣を振るっているような異様な空気の粘り気を斬り裂き、剣の衝突が重圧を弾き飛ばす。互いの瞬歩や飛廉脚、響転によってかき回された大気はいつの間にか渦を巻き、霊圧を巻き込んでこの場を更に過酷な環境へと変えていく。
藍染の剣は俺の精血装と鋼皮を容易く斬り裂く。俺の剣は藍染の霊圧を抜けて致命傷を与えることができる。お互いに防御らしい防御が必要ではない存在として、ひたすらに斬り合う。
俺は斬られた瞬間に藍染の刀が抜けた次の瞬間から超速再生で傷を治し、藍染は俺の知らない奇妙な方法で俺から受けた傷を無かったかのように消す。互いに痛みはあるような気がするが、同じように無視を続けてひたすらに斬り合っている。
周囲を巻き込んで作られた霊圧の嵐が作る闘技場の中心で、いつの間にか回避も忘れて戦いに没頭する。こんなに戦い続けたのは、俺の精神世界の中で織斑さんに修行を付けてもらった時以来だ。あの時は俺の隣に虚の俺が居て、その逆隣にはオッサンがいた。今はどちらも俺の手の中で、俺と共に戦い続けている。
だからこそ俺はまだ戦える。斬って斬られて裂いて裂かれて貫き貫かれてなお戦いは続く。
そして、ずっと続くと思っていたこの戦いは、突然終わる時がやってきた。
お互いに殺し合っている間、ずっと互いに高め合っていた俺と藍染の霊圧が、均衡を崩し始めた。さっきまでは俺が10成長すれば藍染も同じように10強くなっていたにもかかわらず、少しずつ藍染の力が俺に届かなくなっている。その少しの差が積み重なって、気付けば俺の斬月が藍染の鏡花水月を斬り折っていた。
その途端に藍染の傷が治らなくなる。お互いに付け合っていた傷を無視できなくなり、しかし最後の力で藍染が俺の胸に折れた刀を無理矢理に突き刺す。
「決着だ、黒崎一護」
次の瞬間、俺と藍染の霊圧が周囲を巻き込んで作っていた戦いの舞台が内側に崩れるように流れ込んだ。まだ余裕のある俺にではなく、完全に力を失っているように見える藍染に向けて。
それは言ってしまえば、俺の全周囲から押し寄せる月牙だ。俺と藍染の霊圧が周囲の霊的存在を磨り潰して取り込み、いつの間にか俺と藍染の二人の霊圧を合計したそれより巨大になった、重く、分厚く、斬撃と言うよりは巨大な壁が迫ってきているような形ではあるが間違いなく霊圧の塊と言えるものだった。
その場の全てを巻き込むような力の塊が藍染に炸裂し、その衝撃で俺は意識を失った。
最後に見えたのは、全身を削り飛ばされながらも最後の瞬間まで刀を放さなかった藍染の腕と、妙に力の抜けた死に顔だけだった。
本編完結後にこの話の外伝的な物を書こうかなと思うのですが、大雑把な内容をアンケートします。なお、ちくわ大明神が頑張ることでこれらの話は実現されますので無理だろとか思わないで大丈夫です。
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