side 黒崎一護
かつて織斑さんは俺に言った。俺と言う存在は、全てが伸びしろのような存在だと。
人間の力、死神の力。虚の力。滅却師の力、そして完現術師としての力。それらの能力を全て兼ね備えている存在など現状では誰もいない。霊王ですらも人間と死神と滅却師、そしてそもそも完現術師としての力は霊王の肉体が持っているものらしいから完現術師としての力も持っているだろう。だが、それでも虚の力は持っていない。
強さをベクトルで表すとする。原点から離れれば離れるほどにより強くなれるとして、しかし伸ばした力の中心部が原点から離れるほどに負荷は大きくなっていく。
想像してほしい。指にスプーンを載せて、バランスを取ってみる。ある一点を指の上に乗せていればスプーンは指の上から落ちることは無く、しかしその一点が指の上からいなくなればスプーンはすぐに落ちてしまう。力と言うのはこれに似ている。
弱ければ関係ない。指と言う大きな受け皿の上にその一万分の一の大きさにも満たない埃のような粉末が乗っていたとして、それがバランスを崩して落ちることを心配することは無い。そもそもバランスがどうこうと言うよりも粉末そのものが吹き飛ばないかを心配するはずだ。
だが、ある程度強くなってくれば話は変わってくる。鍛え、強くなることで力は様々な方向に延びていく。たとえ話ではあるが、死神として強くなるのであればプラスの方向に延びていく。方向性が鬼道に寄ったものか斬魄刀に寄ったものだとかそういった違いはあるが、ともかくプラスに延びていくとする。そうなると原点に存在していた指先にあった埃のような粉末は大きくなっていき、指からはみ出すようになっていく。そして重心が指という原点から外れれば、重力に引かれて落ちてしまう。それが魂魄の強度の限界であり、強くなりすぎた魂魄が崩壊する原因の一つでもあると。
ただ、原点で他の奴は指先で支えているにも関わらず掌で支えている奴が居たり、机の上に置いている奴もいる。そう言った奴の能力は大きく伸び、限界値もけた外れになりやすい。
しかしそれ以外にもより大きく能力を伸ばす方法がある。例え支える位置が指先であっても、伸ばしていく方向がプラスの方向だけでなくマイナスの方向にもあればどうなるか。つまり、死神の力だけでなく虚の力も同じだけ伸びていけばどうなるか。答えは簡単なことで、指に乗せている物が強度的に支えられる限界になるか、支えている指にかかる重さが限界になるまではどこまでも伸ばし続ける事ができるということに他ならない。
そういった意味で、死神と虚と滅却師という三つの力を人間の器に抱えている俺は伸びしろだけならば無限に存在しているという話をされた。勿論強度の限界などはそのままなので基礎力の底上げはどこまで行っても付きまとってくるということも聞かされはしたが、それはつまり俺の努力によってどうにかなる範囲であることのはずだ。
事実がどうかは知らないし興味もあまりないが、できることが多いのは有り難いことでもある。
それと、最近は虚の俺にも斬月のオッサンにも割と勝ち越せるようになってきた。斬月のオッサンは俺の中の滅却師としての力しか使えず、虚の俺は俺の中の虚の力と一部の死神の力の塊。そもそもとして出力で負けるようなことはほぼ無く、そうなれば技量の差で抑え込まれるかあるいは技量の壁を俺がぶち抜けるかの差で勝負は決まるんだが、その壁をようやく超え始めたという感覚がある。
「そういうことで、これからの相手は私がしよう」
「出たな事実上のラスボスがよ」
「ラスボスはどちらかと言えば織斑隊長だと思うのだがね?」
「織斑さんはあれだろ、クリア後に挑もうと思えば挑める隠しボスとかそういう奴だろ、多分。勝てる気しねえけど」
「ああ、敗北前提で『ゲームシステム的に極め尽くせばここまでできますよ』ということを見せつけてくるタイプのあれか。心折れるね」
「相変わらずの心折設計だよな」
「そういう君は突然背後から首を落とそうとしてくるじゃないか。私とて死ぬときは死ぬんだよ?」
「でぇじょうぶだ、
「君は崩玉の事をそんなモノ扱いしていたのかい……? あと、いくら崩玉でもどうにもならないことはあるよ?」
「織斑さんが霊子操作で霊子から魂魄を作り出してたから、崩玉でブーストかければ俺の中で死んだ以上どうにかなるかと思ったんだが」
「淡々と死者蘇生の方法を考えるんじゃない。しかも若干できそうなのが嫌だ」
俺も正直多分できるなと当たりを付けられるのが嫌だ。作れるのはほぼ義骸みたいなものだったとしてもそれに『ブック・オブ・ジ・エンド』で人格とか挟み込めばほぼ同一人物として作れるなとか思えるのもまた嫌だ。
……殺すことはそんなに気にしねえし、殺せと言ってくる相手を生かしておくのも気にならねえのに、どうして新しく命を作る際にまともじゃない方法を取ろうとすると嫌悪感が勝るんだろうな。わかんねえもんだ。
少なくとも、作った後に問題なく生きて、そして一般的な存在と同じくらいの寿命を生きれるのであれば何も悪くないとは思うんだが、どうにもなぁ……。
「いや何黄昏ながら千本桜のように月牙を放って操っているんだ君は。断空で防いでも断空に使っている霊圧を取り込んで巨大化して分裂してさらに数を増やしてくるし」
「できそうだなって思ったからよ」
「できそうだからと言って本当に何でもやっていたら織斑隊長になってしまうよ」
「なってたまるか」
いやマジでなってたまるかよ。
本編完結後にこの話の外伝的な物を書こうかなと思うのですが、大雑把な内容をアンケートします。なお、ちくわ大明神が頑張ることでこれらの話は実現されますので無理だろとか思わないで大丈夫です。
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