side 黒崎一護
あの修行と言う名の拷問を受けてから、身体が軽い。と言うか、ふわふわと浮いていて地に足がつかないような感覚だ。織斑さんは一気に強くなりすぎた弊害だと言っていたが、なんと言うか早めに慣れておかないとヤバい気がしている。魂そのものが俺の霊圧に軋みを上げているような、そんな感覚。今本気出したら俺死ぬんじゃね……?
ともかく俺は大分強くなったが、瀞霊廷の中には今の俺よりも強い奴がそこそこいると言うのだから行動は慎重にしないとまずい。まあ門が使えなくなったから侵入はド派手になるんだが。
それと、なんだかよくわからねえけど夜一さんがずっとぶつぶつ文句を言っている。何があったのかはわからねえけど何か良くないことがあったみたいだ。いや、純粋に良く無い事とも言い切れないから困っている、みたいな感じか?
「……着いたぞ」
……何だここ超入りたくねえ。なにあの旗持ってる腕……絶対こんなの作っちゃうから町中に居られなくなっただけだろ? 絶対そうだろ? 夜一さんは『中々良い』とか言ってるけどどこがいいのか全く分からねえ……。純粋な死神と俺とじゃここまで大きな認識の差があるのかよ……!? いや、別にその認識の差を埋めたいとは思わねえけども!
いや、良いから入るぞとか言われても超入りたくねえんだけど……いや入る、入るから少し心の準備を―――
「はよせい」
「……ハイ」
夜一さん怖え。強さで言えば多分今の俺の方が強い……いや、強いかどうかはともかく霊圧だったら俺の方が間違いなく上だと言う確信があるが、あの雰囲気には逆らえそうにない。怖え。
それより今はこの状況……この奇妙なオブジェの立てられた残念な家に入らなければいけないという受け入れがたい事実を受け入れねえといけない訳か……織斑さんとの修行で色々と理不尽に慣れたつもりでいたが、まだまだだったか……世の中は理不尽で満ちているってのは本当だったな。まさかこんな理不j
ゴッスゥ!
「はよせい」
「……鼻が……鼻はどこだ……」
めっちゃいてえ。このくらいだったらすぐ治るのはわかってるけどすげえ痛い。霊圧感知……と言うか、斬月のおっさんから教えてもらった滅却師としての霊子感知で前が見えなくても何がどこにあるのか、だれがどこにいるのかくらいはわかるようになってるが前が見えないとかなりきつい。人間はやっぱり視覚がないときついわ。
まあそんな訳で思いっきり凹まされた顔面をさすりながら夜一さんに続いて階段を降りていく。なんで玄関入って二秒で階段なのかはわからない。こんなところに階段を作るんだったら上に建ってるあの建物の必要性は何なのかと。金彦と銀彦の住居か?
ともかくこれから色々とやらなきゃならないことがある。まずは今の状態に慣れることだ。このふわふわした状態じゃあ戦いにくくて仕方がない。身体が霊圧に慣れてきているのか少しずつ馴染んでは来ているが、完全な状態になるまでは時間がかかりそうだ。
「く、黒崎君、その……大丈夫?」
「おう。ちょっと前は見えねえけど大丈夫だ」
そろそろ治ると思うんだが……お、治った。めり込んでいた鼻が元に戻り、前も普通に見えるようになった。よかったよかった。なんか井上が物凄い物を見る目で俺を見ているんだが、大丈夫か?
「黒崎、お前は一体いつの間に人間を辞めたんだ?」
「俺は今も昔も人間のままだぞ!?」
「いや、あそこまで顔が凹んでいる状態から普通に治しておいて人間と言うのはちょっと……」
「ヤロウ……」
「大人しくしておれ」
「「ハイ」」
夜一さん怖え……。
そんなコントにも似たことをやりつつ進んでいくと、そこそこ大きな場所に出た。そこに居たのは……隻腕の、女。ただ、この女が只者じゃないってことだけは今の俺にもわかる。なんと言うか、身体の感覚が鋭いんだか鈍いんだかわからねえ今の状態でも何となくかなり強いってことはわかる。……夜一さんと同等か、少し劣るか、って所だろうな。
……と言うか、ほんとさっきからこの感覚はなんだ? 同じものを見ているはずだってのにその瞬間ごとに全く違う姿が見えてくる。およそ、四つ、か……? そのくらいの物がほぼ同時に重なって見えるせいで感覚が定まらない。
多分だが、四つのうち三つは死神としての霊圧知覚、虚としての探査回路、滅却師としての霊子知覚だろう。これらのそれぞれ違う方法での感知能力が全部混ざることで今みたいに感覚が滅茶苦茶になっているんだろうなと思うが、あと一つは何だろうな……?
俺が迷っている間になんか話は進んだらしい。いつの間にか移動することになっていて、いつの間にか移動していて、そしていつの間にかなんかでかい大砲みたいなもので空から瀞霊廷に入ることになっていた。別にそれに問題があるわけではないし、あの拷問……じゃなかった、修業のおかげで俺も多少は霊力を扱えるようになったからとりあえずこの球に霊力を込めてm
ズヴォン……!(あまりに大量に込められた霊力によって半径にして二十キロほどが瞬間的に隔絶された図)
ドボシャァ!(驚いて気を緩めたら爆発しそうになったがそれを滅却師の能力で抑え込んだは良いものの落下に対処するのを忘れて顔面から行った図)
……調整はマジで必要だわ……クッソ痛い……。
Q.四つ目の感覚は完現術士の感覚?
A.いいえ、人間としての感知能力です。意味が解らない? 大丈夫、いつかわかる。多分。
Q.二十キロって……やばくね……?
A.やばいよ? あと藍染にばれたよ?
夜一の斬魄刀ですがどうしてほしいです?
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出さなくていい
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オリ斬魄刀作っちまえよ
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ネタ斬魄刀にすれば使わない理由になるよ?