side 黒崎一護
漸くと言うかなんと言うか、白い塔が見えてきた。あそこにルキアがいるはずだが……多分あの建物も殺気石だよな? どうやって入る?
……いや、それより前に、その前に立ってるあいつを何とかしないとな。
「……久しぶりだな。俺の顔を憶えてるか?」
「忘れようにも忘れられねえよ……阿散井恋次」
俺はあの時より強くなった。だが、織斑さん曰く副隊長より上の席次だと現世に行く時には霊圧を五分の一まで抑える限定霊印とか言うのを付けられるらしい。つまり恋次も白哉も霊圧はあの時の五倍。今の俺が勝てるかどうかはわからない。
ただ、一角と弓親のおかげで身体の調子にも慣れてきたし、感覚も戻ってきた。今なら多分一角の時よりもう少し力を出しても大丈夫だろう。少なくとも俺自身の霊圧に身体や骨が負けて軋むとか痛むとかそう言うのは無さそうだ。いや、あまり出しすぎたらどうなるかわかんねえけどな。
身体の調子も確認できた。それより今は戦いだ。斬月に巻かれた布を払い、構える。そして切先を恋次の身体の中心に向けて、全体を眺める。
―――斬る。
身体が勝手に動くような奇妙な感覚。織斑さんに叩き込まれた瞬歩と飛廉脚の合わせ技。相手が本気を出していないとか、斬魄刀の始解をしていないとかは関係ない。戦いになるとわかっているのにまだしていないそいつが悪い。そう思うように織斑さんに教え込まれた。本気を出していないからとか、そう言うのはいらない。自分に負担がかかるほどの物を常にやる必要はないが、自分に負担がかからない程度の備えはいつでもしておくべきだと。
だから、俺はまだ戦いの準備を終えていない恋次を
恋次の斬魄刀は砕け折れ、恋次自身も脇腹から血を流す。かなり深めに斬ったし、内臓が一部損傷しているかもしれない。
「ごばぁっ!!?」
「悪いが、俺は止まれねえんだよ、恋次。ルキアを助けに来たからな」
「が、ぐぅ……っ!て、めえのせいで!ルキアは処刑されるってのにか!」
「だから助けに来たんだろうが。何のために何十回も何百回も死ぬような思いして強くなったと思ってんだよ」
……正直、内容を思い出すだけで目が死ぬよな。いやマジで。具体的にどこがどうやばいとかじゃなく、もう全体的に全てがやばい。あとイギリスのとある欠陥兵器に詳しくなった。
だが、あの時には手も足も出なかった恋次に勝てた。いくら始解をしていなかったとしても、あの時の五倍の霊力量の恋次が相手でもこうして勝てる程度に強くなっている。織斑さんには本当に頭が上がらない。
「俺はルキアを助ける。そう誓ったんだから助けるさ」
「誓い、だァ……? 何に、だよ」
「俺の魂にだ」
さて、恋次はこのまま置いといたら間違いなく死ぬな……仕方ないから近くにいる奴を適当に攫ってきて治させるか。あ、いや、治せる奴って少ないんだっけか。じゃあ攫ってくるんじゃなく恋次を適当な奴に押し付けた方が早いか?
鞘ごと叩き切った刀と一緒に恋次を担ぐ。そしてそのまま霊圧を探ってこの近くで集団から離れたところに居てかつ移動を続けているやつを探る。俺達が派手に突入したもんだから今はどこでも騒ぎが起きていて、そのせいだろうが一人で移動している奴はほとんどいない。一人だったとしてもその周りには誰かがいることが大半で俺が望んでいるような状態の奴は……あ、居た。
走る。恋次の身体がどんどんと冷たくなっていくような気がするが、あんだけ血を流せばこうなるのも当然っちゃ当然か。
そしてそいつの目の前に降りると、そいつはぽかんと俺を見上げる。まあ、結構な勢いで落ちてきたからな。戦い慣れてない奴だったらこうやって呆然としてもおかしかねえか。
「なあ、あんた」
「ひゃっ!ひゃいっ!」
「声裏返ってんぞ……まあいいや。あんた怪我とか治せるか?」
「へ……は、はい!僕は四番隊ですから、よっぽど酷くなければ……」
「お、そうか。じゃあちょうどいいな。こいつ頼むわ」
恋次をポイっと渡しておく。体重が結構あるから受け止め切れなかったらしいそいつは尻もちをついたが、すぐに状態がかなり悪いと言うことに気付いて治療を始めた。こいつ、内臓に届くような怪我でも治せんのか。すげえなオイ。井上なら……あ、井上も焦ってなければできそうだわ。
ここにもう用はない。俺はルキアを助けに行こう。
「あの、あなたは……?」
「黒崎一護。ちょっと知り合いを助けに来ただけだ」
「知り合い……?」
「ルキアって奴だ」
「ルキア……四季崎ルキアさん、ですか?」
「……知り合いか?」
「ええ、少し。……阿散井副隊長を治すまで、待っててもらえませんか」
「なんでだよ?」
「ルキアさんの居る懺罪宮の鍵……僕ならご用意できます」
……。
そいつは恋次の傷を治しながら、俺の事をじっと見つめる。
「初めまして。僕は、山田花太郎。四番隊の第七席で、ルキアさんと色々お話をする程度の仲です」
「……もう一度言うが、俺は黒崎一護。現世であいつに助けられてな。俺を助けたことが原因で処刑されそうになってると聞いたから、俺にできることはやっとこうと思ってる」
「そうですか……それじゃあ、よろしくお願いしますね。一護さん」
花太郎は俺を見て、幸薄そうな儚げな笑顔を浮かべた。
Q.……四季崎?
A.この世界のルキアは朽木家に引き取られてはいません。そして一夏は自分の斬魄刀として扱っている完成系変体刀十二本から自分の作り上げた集落を四季崎と呼んでいます。苗字のない人はそこから名字を付けられます。
Q.でも恋次は阿散井なのね?
A.そう名乗ってますからね。ルキアの旧姓とか知りませんのでとりあえずそう言う設定にしました。