BLEACH~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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BLEACH~51

 

 side 黒崎一護

 

 起きた。身体は全快、霊圧も問題なし、あと精神的にも余裕がある。睡眠としてはあまり長くない物だったはずだが、それでも十分に回復できた。

 花太郎の方は……少なくとも恋次を回復させた直後に比べれば大分回復したらしい。これ以上の休憩は時間の浪費にしかならねえから回復してくれて助かった。

 

 花太郎を連れて懺罪宮まで戻る。恋次は適当な所に放り出しておいたから流石に待ち伏せされてたりはしないだろう……と、思っていたんだがそうでもないらしい。隠す気も無いのがわかる剣呑な霊圧。その圧は俺達を威圧して来た時の織斑さんのそれより遥かに重苦しく、鋭い。多分、織斑さんに聞かされた要注意人物の誰かだろう。

 ただ、こうして直接的にやってくると言う事は―――

 

「……花太郎、平気か」

「ぅ……ぁ…………」

 

 ……平気ではなさそうだな。霊圧に当てられた、って奴か。俺はまだ何とか平気だが、このままの状態がずっと続けばせっかく回復したってのにまた精神がやられちまう。

 幸い即座に襲い掛かってくるつもりはないらしい。そして何か罠が仕掛けられていると言うようなこともないようだ。十二番隊ではなさそうだし、十三番隊の隊長や八番隊の隊長ならばこうして威圧してくるような事はまずないそうだから……十一番隊の更木、って奴だろう。一番隊の総隊長なら威圧するより先に斬りかかってくるそうだし、多分間違いない。

 

 ともかく、まずは花太郎をなんとかここから移動させねえとまずい。隊長格が目の前にいるなら流石に二番隊の奴も手を貸してはくれないだろう。だったら……俺が移動した方が早いだろう。

 花太郎を近くの建物に寄りかからせ、俺は瞬歩で移動を始める。とりあえずついてきているのはわかるんだが……流石と言うかなんと言うか、速い。懺罪宮は殺気石でできているらしいからこんな霊圧の持ち主でも中にいる奴に影響は出さないだろう。とりあえずそっちの方に移動しておく。

 数分。たったそれだけで十キロには届かないだろうが五キロは移動した。少し前までなら信じられないような移動速度だが、追手は迷うことなくついてきている。ほんと、自信無くすぜ。

 

「……この辺りでどうだ?」

「ああ、いいぜ」

 

 声がかけられた方に即座に斬月を走らせる。霊圧を研ぎ澄ませ、霊圧を食わせ、巨大な霊圧の刃を放つ。

 しかしそれは止められた。ボロボロの刃をもつ長刀によって、月牙そのものがへし折られると言う形で。

 

 ……霊圧を食って斬撃そのものを巨大化させて飛ばす月牙天衝。それを真正面から弾き飛ばされると言う事は、巨大化して重くなった斬撃でも弾き飛ばせるだけの力が相手にはあると言うことに他ならない。それも、横から弾くとかではなくて真正面から打ち消される形で。

 流石に眩暈がしそうだ。それに、さっきから感じる霊圧がどんどんと跳ねあがっていくのがわかる。テンション次第でどこまでも性能が上がっていくテンションモンスターとかマジかよ護廷の隊長は化物か。……ああ、織斑さん含めて化物だったわ。

 

「……あんたの事は聞いてる。十一番隊の、更木剣八―――だよな?」

「ああ、そうだ。お前と殺し合いに来たぜ」

「……十五秒待ってくんね? 卍解して、あと一応切札も使うのにそのくらい必要なんだ」

「あん? さっさとしろよ。今のままじゃ勝負になんねえぞ」

 

 織斑さんの言うとおり、強い相手と戦うためなら少しくらい我儘を聞いてくれるようだ。その間に俺は卍解し、そして虚の仮面を被る。更に天鎖斬月に死神の霊力と虚の霊力の両方を食わせ、月牙を纏わせて一撃の威力を上げる。さらに加えて更木剣八は霊圧感知が苦手と言うだけでなくこっちの手の内に関してはかなり大雑把な反応しか返さないと聞いていたので、こっそりと動血装を纏って速度と威力を上げる。

 

「……待たせた」

「ハッ!いやいや、俄然楽しみになってきたなオイ!さっきまでのとはわけが違う!今の状態なら俺とあいつ、あと爺さん以外には勝てるんじゃねえか?」

「まあ、かなり努力はしたからな……」

「いいぜ!早速始めようじゃねえか!」

 

 聞いていた通りの戦闘狂。強い相手と戦いたくて、しかし戦えないせいで自身に無意識のうちに枷を嵌めてしまうほどの化物染みた使い手。織斑さんの方が強いらしいが、そのせいか織斑さんと戦う時には初めっから全開で戦うようになっているらしい。

 逆に言えば、それ以外の奴に対してはそこそこのリミッターが付いた状態から戦いが始まるらしい。そのリミッターによって制限されている能力が解放される前に、リミッターの開放が行われないような状態から最大威力の一撃を一発目からぶち込む。それが今の俺にできる対更木剣八用の最適解。そして一発目で致命傷を与えられなければ、潔く諦めた方がいいと言われた。怪我とか関係なしにテンション次第でどんどん強くなるそうだから、油断はとてもできそうにないな。

 

 お互いに踏み込む。卍解状態なら速度は俺の方がそこそこ上。月牙無しの一撃の威力は剣八の方が圧倒的に上で、月牙ありならトントンには届かない物の差はかなり縮まるだろう。

 そして俺は回復したての霊圧の殆どを月牙につぎ込み、しかし刃の大きさを上げずに形も大きさもそのまま斬撃そのものの密度と威力を更に上げて斬りかかる。

 

 勝負は一瞬で着いた。初めから全力の俺と、無意識の手抜きによってかなり実力の落ちているだろう剣八。しかしそれでも上回ったのは僅かで、虚の仮面は既に砕け散ってしまった。

 

「……おぉ……俺の剣を折りやがるかよ……しかもまだ成長途中と来た。おもしれえ、また今度殺ろうや」

「勘弁してくれ」

「お? なら今やるか? それじゃあ楽しめそうにねえなァ……」

「わかったまた今度な……今はほんとに勘弁してくれ」

「おう、良いぜ」

 

 ……なんでか助かった。いや、理由はわかる。ある程度先が楽しみだと思われたからだろう。織斑さんから『自分に届きそうなやつがいない? だったら自分で育ててみればいいだろう』とか言われて多少そっちの方も考えるようになってたらしいからな。それが無かったら間違いなく死んでるところだぜ……いや、本当に。

 とにかく、花太郎の所に戻ろう。霊圧の回復は……仕方ないから周りにある霊子を少し取り込んでおく。滅却師の力だからあまり使わない方がいいらしいが、背に腹は代えられない。

 

 俺は姿を隠しながらその場を離れた。恐らく、と言うか間違いなく、ここで起きた戦いとも言えない霊圧のぶつかり合いの原因を探るために誰かが向かってきているだろうからな。

 




Q.なんか剣八丸くなってね?
A.普段から割と全力で戦える相手がいますし、ついでに一夏から『他人を育てる』と言う事を学んだので期待できる相手には少し優しくなっています。

Q.でも殺すんでしょ?
A.戦いになれば殺します。

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