side 黒崎一護
……大きくなって、小さくなって、また大きくなって、最後に小さくなったまま戻らない。チャドの霊圧は消える気配こそ見せないが、小さくなったままだ。
チャドが、負けた……? 信じられないがそう考えた方が無難だろう。織斑さんが言ってた化物も多いし、俺自身ついさっきまでその化物の一人と戦っていた。一応剣はへし折ったし、あのまま戦いはしないだろうから剣八じゃあないとして……誰だ?
いや、まずはルキアだ。まずはルキアを拾って、それからチャドと……あ、ルキア助けた後にどうやってそれを伝えるか決めてねえや。チャドは伝えようとしても今動けないだろうからこっちから行くとして、良い感じに霊圧を隠してる石田と井上、それに夜一さんはどうすっか……。
とりあえず、見張りをぶん殴って気絶させる。声を上げる間もなく意識を奪ったし、大丈夫だとは思うんだが実際に大丈夫かどうかはわからない。剣八相手に結構暴れたしな。誰かがここに向かってきている可能性は十分にある。
で、花太郎に持ってきてもらった鍵で牢の扉を開けてみれば、そこにはちゃんとルキアがいた。ただ、俺がここに居ることにかなり驚いているようだが……知ったこっちゃねえ。
「よう。助けに来たから大人しく助けられてろ」
「きっ……来てはならぬと、あれほど言ったであろうが……莫迦者め」
「悔しかったら自力で助かってみろ。まあ今のお前じゃ絶対無理なのはわかりきってるけどな。オラ部屋の隅っこでブルブル震えて『お助け~』とか言ってろ。ちゃんと助けてやるからさ」
「……私の意見は?」
「あ、すまんいきなり耳が遠くなってよく聞こえねえわ。なに? 『オタスケクダサイイチゴサマ』?」
「いっとらんわそんなこと!」
当然わかっているが聞くつもりはない。ルキアを抱えあげてさっさとこの場を去る。
……いや、その前にやっておくべきことがあったか。
「花太郎」
「はい? なんですか?」
「ここの鍵を持ち出したら問題になるよな?」
「……ええ、まあ、なるでしょうね」
「自分の怪我は治せるか?」
「? そこまで酷くなければできますけど……あ」
「そう言うことだ。悪いな」
そこそこ血が出るように、しかし致命傷にはならないように花太郎を斬る。その場に懺罪宮の鍵を放り捨て、俺が花太郎を脅して無理矢理鍵を開けさせたかのように。
意識は失わせないようにしながらそうやるのはかなり難しいが、滅却師の力の使い方によって相手に麻酔をかけて痛みだけを感じさせないようにしながら斬ることができるから問題はない。
「一護、貴様っ!?」
「ここで斬っとかねえとあとで花太郎が困るだろうが!一応俺は剣八と戦って生き延びてるし、俺に脅されたってことにしとかねえと花太郎が罰受けるだろうがよ!」
「……大丈夫です、ルキアさん。死なないように切ってくれたみたいですし、それに鋭く切ってくれたのですぐくっつけられます」
「しかし!」
「大丈夫です。それに……痛くないんです。一護さんですよね?」
「まあな。さっさと傷塞いでくれ。全部治しきらないようにしてくれると治している途中で限界が来て気絶した感が出て良いと思うぞ」
「ははは……ルキアさん、お元気で」
花太郎はゆっくりと自分の傷を治し始めた。花太郎は随分と腕が良いようで、放置していても死なない程度に傷を治してからは目立たないように出血を抑え、痛みを抑える方向に移っていった。本当に優秀なんだな、花太郎。
俺はルキアを抱えあげたまま瞬歩で走る。ついでに懺罪宮の尖塔の一つを剣圧で斬り砕いておいた。これで多分わかるだろう。花太郎の居ないところを狙ったし、中に残っている花太郎も多分大丈夫だ。
……だが、どうも簡単にはいかないらしい。俺の霊圧を感じ取ってきたのか、それとも今俺が剣圧で懺罪宮をぶった切ったのを見て飛んできたのかはわからないが、朽木白哉がそこに居た。
「……ルキア。そこで大人しくしてろよ」
「莫迦者!お前が義兄様に勝てるはずが」
「うるせえ、黙って見てろ」
こっそりと滅却師のやり方で周りの霊子を吸収して霊圧の回復をしていたおかげで普通に戦える程度の霊圧はある。剣八相手に限界寸前まで使った時に比べれば雲泥の差と言えるくらいだ。いや、最悪の時と比べてどうするんだって話だが。
まあとりあえず、先手必勝ってことで剣圧を飛ばすが瞬歩で避けられる。一角相手には今ので十分通じたんだが、流石は隊長格と言うべきか回避しながら向かってきている。
だが俺も強くなった。動きは見えているしこの程度なら十分に防げる。ついでに織斑さんが俺の……と言うか俺達の月牙を見てその場で見様見真似してくれたのをさらに俺が見様見真似した手刀での月牙で斬りつける。剣八相手だったら絶対効果がないとやらないでもわかるが、白哉相手なら十分効果が見込めそうだ。
実際効果はあった。刀は弾くことができたし、そのついでに肩口から斬りつけることもできた。傷自体はかなり浅く皮一枚ほどではないにしろ肉で十分止まっている。やっぱ織斑さんみたいにはいかねえか。
「なん―――」
白哉の言葉を叩き切るように斬月を振るう。月牙は霊圧によって斬撃そのものを巨大化させて飛ばす技だが、飛ばさず纏わせることもできる。だったらこういう使い方もできるんじゃないかと考えて練習している所を織斑さんに見られて『こんなか?』と実演されて凹みつつ覚えた、斬撃を打撃に変えて撃ち出す峰打ち攻撃。死ぬこたないだろうが暫く寝ててもらうことにした……んだが、防がれてしまった。
「大丈夫か、朽木」
「……兄か」
「あー……どちらさんか聞いても? あ、俺は黒崎一護。ルキアを助けに来た旅禍だ」
俺の打撃の月牙を刀一本で受け止めた白髪の男は、少し驚いたような顔をしつつ答えてくれた。
「十三番隊隊長、浮竹十四郎だ」
……ああ、確か霊圧を使った放出系の攻撃を吸収反射してくる性格の悪い斬魄刀の使い手だったっけか。あと瞬歩がクソ上手いって聞いた。
さて、こうなると色々難しいな……どうするか。
Q.なんで当たり前の顔して花太郎斬ってんの!?
A.実は現在一護さん発狂中で人情が欠如しています。
Q.なんでそんなことに……。
A.修行中に何十回か死んだからじゃないですかね? あとこちらで勝手に決めたとあるオリジナル斬魄刀のせい。
夜一さんの斬魄刀の名前を以下より選べ。(配点5)
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禍福
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禍因福子
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ちくわ大明神
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竹輪大明神
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Chikuwa大明神