BLEACH~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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BLEACH~55

 

 side out

 

 四人がかりで戦っておきながら何たる無様か。朽木白哉は内心そう吐き捨てた。

 現世で義妹から死神の力を奪い取った男が、その時よりも遥かに強力になって現れた。そして自分を含む四人の隊長格を手玉に取り、まんまと逃げおおせてみせた。それも、義妹を連れてだ。

 自身の隊の副隊長である阿散井恋次が敗北したと聞いた時には情けないと思ったものだが、これほどまでに強くなっているなどと誰が予想できるだろうか。できるはずもない。少なくとも白哉にはそんなことは予想だにできなかった。

 

「やれやれ、逃げられたか……」

「何を悠長な……」

「無茶はよせ、狛村。その手首、折れているんだろう?」

「この程度どうと言うことはない!」

「完全な状態で簡単に対処されたのが怪我をしている状態でよくなるとは思えん。まずは治療を受けておくべきだと思うぞ俺は」

「それに関しては僕も同意だ。君の卍解は君の身体の状態に左右される。最大戦力を出すためにも一度治療は受けておくべきだと思うよ」

「ぐっ……!」

 

 三人の言葉を聞いているうちに、白哉の胸の内に二つの感情が生まれた。

 一つは貴族としての自分から生まれた感情。例え妻の妹であり、妻の健康を保つための薬師であり、彼女がいなくなれば妻の健康は失われてしまうと言うことを理解していてもなお、貴族として掟を破ることはできない。故に義妹であるルキアを逃してしまったことに対する自身への憤り。

 そしてもう一つは、個人として、緋真の夫として、ルキアの義兄としての自分から生まれた―――安堵であった。

 ルキアが逃げることができた。ならば恐らく逃げ込む場所はあの場所だろう。かつて自身が通い詰め、特殊な事情により内部から招かれることがなければ例えそれが霊王であろうとも踏み入ることのできない特殊地域。作った本人曰く、流魂街番外地区・四季崎。

 あの場であれば、内から招き入れられない限りは例え護廷十三隊の者であろうとも入ることはできない。つまり、命を落とす事は無い。

 

 突如として自身の内側より沸き上がる吐き気に白哉はその場で膝を落とし、胃の中身をその場にぶちまけないように無理矢理抑え込んだ。

 自分は今何を考えた? 白哉は自問する。義妹の事を自分から救おうともせず、ただ外から救われるのを見て自分の手が届かなくなった事を感じ、安堵した?

 こみ上げてくる吐瀉物を無理矢理に胃へと流し込む。背を摩る浮竹の手から流れ込んでくる治療の霊力に僅かではあるが癒されたためか、喉が胃酸に焼かれる感覚は消え去っている。

 

「朽木、お前も一度四番隊に行くべきだな」

「……必要ない」

「行くべきだ」

「必要ない」

「三番隊に行くか?」

「…………………………………………………………四番隊に行く」

「それでいい。東仙、狛村についてやってくれ。無茶して四番隊に寄ろうとしないかもしれないからな」

「そうだね。わかっているよ」

「ぐぬ……わかっている。ちゃんと行く」

「そうだね。では共に行こう」

 

 東仙に連れられた狛村と、浮竹に抱えられた白哉がそこそこの速度で四番隊に移動している間、浮竹の思考はまた別の方に向いていた。

 藍染を殺したのは、間違いなく彼ではない。四対一という状況ですらこちらを殺さないように手加減をし、さらに手を出してこない物にはできるだけ攻撃しないという戦い方を見て、あまりに完璧に殺されていた藍染への行動の違いを認識した。

 つまり、藍染を殺した者は別にいる。

 

 そもそもおかしい事ばかりだ。侵入して来た旅禍の人数は多く見積もっても十人には届かない。遮魂膜を打ち抜いてきた玉の大きさから見てもそうだし、今まで旅禍に襲われ気絶させられた者達の証言からは四人分の姿しか得られなかった。陽動として大きく暴れているのだとしても、隠れていられる人数は精々一人か二人。隠密機動の目をかいくぐってそれ以上の人数が潜んでいるとはとても思えない。

 そんな状態で、態々藍染を殺しに行くことに一体どんな利点があるのか。あまりに無益であり、同時に無駄であるとしか言えない。それでは陽動の他に誰かがいると教えるような物であり、そこから先の隠密行動がより難しくなるものでしかない。隊長格一人を落とせるというのは利点になるかもしれないが、そもそも藍染があのような状態で死んでいるというのも納得いかない物がある。

 藍染は元十一番隊であり、現在の十一番隊の隊長である更木剣八とも十分に戦うことができる程度の実力は持っていた。しかしその藍染が、敵がどこにいるかもわからないという状況において無防備に背後を取られて鎖結と魄睡を抉り取られる等と言う真似が可能だとはとても思えない。

 

 ……それに、今回の四季崎への判例はあまりにも異常だ。

 現世で死神の力を民間人に与えたこと。そして死神の力を失い、尸魂界の捕捉から逃れたこと。報告も無く現世で死神代行を作ったこと。精々その程度だ。この程度の罪状で双極による処刑が行われるようなことは通常あり得ないし、彼女が現世から戻ってから処刑が決まるまでが早すぎる。そして更に処刑までの期間までもが早まろうとしている。

 何かが、今回の件の裏で蠢いている。それも相当悪意の強い出来事が。

 

 ……今回は流石に元柳斎先生に怒られるだけじゃ済まないだろうなと思いながら、浮竹はこれからどうするかを考え始めた。

 




Q.なんで朽木隊長は勝手に精神的に折れそうになってるの?
A.この人も昔一夏のブートキャンプに参加したことあってな? そういう事や。

Q.浮竹さんリアルアイディア高すぎない?
A.もともとそういうキャラでしょうに。

夜一さんの斬魄刀の名前を以下より選べ。(配点5)

  • 禍福
  • 禍因福子
  • ちくわ大明神
  • 竹輪大明神
  • Chikuwa大明神

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