side ■■■■■■
カロロロロロ……
賽子の転げる音がする。
転げまわってやがて止まって、そして全ては動き出す。
瞳に移る無数の未来。選定し、数値を当て嵌め、賽子を転がす。
くるりくるりと転げ落ち、地に落ち弾けて目を見せる。
見せた目に映る未来を一つ選んで進んでいく。
カロロロロロ……
カロロロロロ……
繰り返し、賽子を転がす。転げ
未来が一つ、はじけて消えた。
side 黒崎一護
急にチャドの霊圧が現れた。一度弱まってそれから回復して、その直後に一瞬で押し潰されるようにして消えたから何かあったんだろうとは思っていたが、多分封印されていたんだろう。どんな方法でそれをやったかは知らないが、瀞霊廷の科学力は侮れない。
ルキアを夜一さんと……夜一さんに抱き着いて猫吸いしていたちょっとお近づきになりたくない二番隊の隊長に預け、外に出てその方向に走り出す。
……剣八がいる。そしてそのすぐそば、それこそ背負われてるんじゃないかと言うくらい近くに井上がいて、そのすぐ後ろを石田とチャドが追いかけている。剣八のそばにいつもいたピンク色の髪のちっこいのは……どうやら邪魔が入らないように適当にその近くにいる奴を相手に飛び回っているようだ。剣は抜いていないようだし、これなら遊びで済む範囲ってことなんだろうな。
その方向に走っていけば、双極の丘とは完全に逆方向に走っていた剣八たちに追いつくことができた。剣八がもう少しゆっくり走ってくれていればもっと早く追いつけたんだが、剣八変な所でめっちゃ速え。井上が後ろから走って追ってる俺を見つけれくれなかったらあと数分は走り続けていたところだ。
で、なんで剣八が井上たちと一緒に居るかを聞いてみたんだが……俺と戦うためだったそうだ。
まず、俺は現世で白哉に一方的に倒されている。いや、白哉どころか恋次にも負けている。それから一月と過ぎていないのに俺は恋次を瞬殺し、白哉を圧倒した挙句に四人の隊長格を同時に相手にして勝ちに近い引き分けにまで持って行っている。その成長速度を知って、とりあえず一回見逃してもう一度戦ってみたいと思ったらしい。
俺がここまで強くなれたのは浦原さんが基礎を作ったところに織斑さんが基礎を増築してその上に城をおったてようとしたせいなんだが、そんなことは言われないとわからねえだろうしまあ仕方ねえわな。それに織斑さんとの約束で俺は瀞霊廷内で事が終わるまでは織斑さんの名前を出さないようにしているから伝えられないしな。
だから今の俺にできる限界は少し前に剣八にやった卍解+虚化+動血装のあれと変わらないんだが……それを聞いても多分剣八は止まらないだろう。
と言うか、なんで剣八の剣は折れてから一日二日で綺麗に元通りになってんだろうな。いや、元が綺麗じゃないから綺麗に元に戻ったって言っていいのか微妙な所だが。
「まあ何でもいい、とりあえず
「マジで勘弁してほしいんだがなぁ……ああわかってる、わかってるから。どうせあれだろ? 逃げても追っかけてくんだろ? で俺が戦わざるを得ない状況にまで持って行くんだろ? わかってるって」
「強くて物分かりのいい奴は嫌いじゃないぜ?」
「……でもよ。周りに面倒な奴らが来てるようだからできればまた後でにしてもらいてえんだが」
「あァ?」
背後に跳び、斬月を振るう。月牙ではなく大気を切り裂く剣圧が、放たれた炎を切り捨てる。なお月牙を放たなかったのは霊子は燃やされるが霊子のない真空は燃えないからだ。
そして視線を向けた先では、俺の知った顔と知らない顔がいくつも並んでいた。
「ほぉ……山じいの炎を斬り捨てるのか。こりゃまた随分と強いんだねぇ」
「いやあんたも相当だろ。見ただけで分かるわあんた強い」
「そいつはどーも」
……こいつは辛いな。あの燃えてる刀を持ってんのは間違いなく織斑さんの言っていた一番隊総隊長、山本元柳斎重國。威力だけで言えば最強の斬魄刀を持つ最古の死神。
それから隊長格の事だけは聞いていた。六番隊の朽木白哉、七番隊の狛村左陣、八番隊の京楽春水、九番隊の東仙要、十番隊の日番谷冬獅郎、十三番隊の浮竹十四郎。それに加えて今すぐ襲い掛かってくるかどうかはわからないが十一番隊の更木剣八もいる。
いや、これほんとマジで詰んでないか? ここから何をどうしたらひっくり返せる? 俺も人間であるからして、ひっくり返せる戦力差には限度ってもんがね?
「山じいがいきなり斬りかかっててなんだけど、一つ質問があるんだけどいいかい?」
「? なんだよ? 答えられることなら答えるぞ」
「藍染君を殺したの、君かい?」
「藍染……確か、五番隊の隊長だっけか。いや、俺はここに来てから誰も殺しちゃいねえよ」
「そうかい……なるほどね。彼女の予想は正しかったってわけだ」
何が何だかわからないが、とりあえず今すぐに戦いになるわけじゃねえみたいだな。ただ、あっちの爺さんと白哉、それと狛村は俺の事を狙ってるし、他の奴らも今すぐ襲い掛かってきたりはしなさそうだが俺達の誰かが逃げようとしたら即座に追いかけていくだろう。
……どうする?
いや、答えは決まっている。俺はルキアを助けに来たんだ。だったらここで止まっているわけにはいかねえし、誰一人失うつもりもねえ。
さあ、斬ろう。
Q.最初の何?
A.後々わかる。
Q.一護がなんか脳筋になってない?
A.一夏に関わると大抵脳筋になるんですよね。びっくり。