BLEACH~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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BLEACH~61

 

 side ■■■■■■

 

 時は来た。賽の目は収束し結果が定まる。それが誰の得になるのか、あるいは損になるのか。誰も理解できぬまま。

 

 

 

 

 

 side 四楓院夜一

 

 突然の事だった。斬られたことを知覚した次の瞬間には砕蜂も同じように斬り捨てられていた。

 感知など全くできなかった。何もいないはずの場所からの突然の攻撃に、為す術なく倒されてしまった。

 しかし、儂も砕蜂も隠密機動を率いる、あるいは率いていた者。自身の身体に刃が食い込めばそれを即座に察知して身体を翻らせる程度の事はできる。お陰で胴が真っ二つになる事は無かったが……しかし、動くことはできそうにない程度の傷を受けた。

 

「―――腰から下を斬り落とすつもりだったのだが……流石と褒めておけばいいのかな?」

「―――藍、染……!?」

 

 砕蜂の目が大きく開かれる。砕蜂の情報では藍染は儂らが瀞霊廷に入り込んだ次の日に何者かに殺害されていたはず。それが今こうして儂らの目の前に立っており、儂等を攻撃して来た。即ちそれはいつからか瀞霊廷は藍染の手の中で転がされていたと言うことに他ならない。

 そして今ここに来ていると言うことは、狙いは間違いなく―――四季崎ルキア。

 

 今の四季崎はほぼ人間の霊体と変わらない。隊長格の霊圧を間近に受けて、立っていられるほど一般的な人間の霊魂と言うのは頑丈にはできていない。膝をつき、ただ震えながら藍染を見つめることしかできていないのがわかる。

 逃げろ、と叫んだところで逃げられるような状態にないのは見ればわかる。そしてそれ以前に、刀傷が肺にまで達しているせいで声を出せない。呼吸もままならず、繰り返し血を吐き出しながらその光景を見ている事しかできない。

 

 ふと、手に触れるものがあった。百年以上も触れていなかった、自身にとって最も身近で最も役に立たない武器。始解状態の名は知っているが卍解の名を知らず、しかし何故か卍解し続けるという奇妙な斬魄刀。

 何が起こるかわからない。良い方向にも悪い方向にも状況を変えうる、自身の刀。既に呼吸もままならないままに、儂は儂の知る刀の名を呼ぶ。

 

(まろ)ばせ―――『明神(みょうじん)』」

 

 声にならない声。しかしそれでも刀は形を変え、十の面を持つ賽子へと形を変えた。

 同時に自身の置かれた状況が客観的に理解できるようになる。まるで自身が物語の登場人物であり、自身の意のままに動かすことができる、一番近いもので言うならばかつてやったことのあるTRPGが一番近いだろうか。

 状況は、はっきり言ってかなり悪い。体力は刻一刻と減っていくし、身体はまともに動かせない。この状況で頼ることができるものと言えば……

 

 賽を振る。放たれる、というよりは転がり落ちると言った方が正しく思えるほどの弱々しい投擲だが、これに関してはこれでいい。ころころと転がり、出された目は―――

 

『……相変わらず、こういう時には運がいい』

 

 世界が向かうレールが切り替わった音がした。最高の結果ではないにしろ、少なくとも悪い方には行かないと言うことがほぼ確定した。

 再び賽を拾って投げる。一度切り替わったレールがさらに切り替えられ、予想だにしない方向へと向かっていく。

 目の前では四季崎が胸を貫かれ、その中に封印されていた崩玉を藍染が引きずり出している。決定的な結果が出る前に、もう一度。

 

 ……世界は決定づけられた。

 

「そこまでです、藍染隊長……いえ、大逆の罪人、藍染惣右介」

「……ほう。予想よりはるかに速い……なぜここが?」

 

 四番隊隊長、卯ノ花烈。なにがどうしてそうなったのかはわからぬが、運良く致命的な結果が出るより早く到着してくれたようじゃの。

 

「昨日、貴方の死体に強く違和感を感じ始めました。故に貴方の死体は完全にあなたの死体にしか見えませんでしたが、貴方の死体ではないという前提で動き始めました。初めは隠れるならば禁踏地である清浄塔居林を探しましたがあなたの姿はなく、けれどあなたが生きた状態でその場にいたという確証だけは得ました。そこで―――」

「ああ、もういいよ。摑趾追雀だろう? 虎徹君かな」

「―――ええ、そうですね。ですが一つわからないことがあります。一体あなたはいつ、あれほどまでに精巧な死体を用意することができたのです?」

 

 それから聞かされた話は、なんとも言えない物だった。鏡花水月。解放の瞬間を一度見せればそれ以降全ての存在に対して完全催眠に落とし込むことのできる斬魄刀。死体があるように見せ、四十六室を全員殺害して乗っ取り、全てを騙して自在に操る能力。

 ……そして、もう一人の隊長格、九番隊の東仙要の裏切り。

 

 それを話してから藍染は悠々とこの場を去った。脊髄が両断されて腰から下を動かせん砕蜂と、脊髄は無事じゃが内臓が全体的に腹からこぼれ落ちようとしておる儂。そして霊圧に当てられて動くこともままならぬ四季崎。儂と四季崎はともかく、このままでは砕蜂が隊長に復帰できるかは非常に怪しい。上手く治してくれるとありがたいんじゃが……。

 




Q.夜一の斬魄刀って十面ダイスで合ってる?
A.合ってます。

Q.幸運ロールして成功すると幸運が訪れる感じで正しい?
A.正しいです。

Q.ところでちくわ大明神は?
A.卍解!

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