BLEACH~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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BLEACH~65

 

 side out

 

 更木剣八と戦う藍染を中心に、護廷十三隊の隊長陣が揃う。山本元柳斎重國。卯ノ花烈。傷を治した朽木白哉。狛村左陣。京楽春水。東仙要。日番谷冬獅郎。浮竹十四郎。これだけの数の隊長陣を相手にしては、いくら完全催眠の能力を持った藍染とはいえ勝つことはおろか逃げることもできるわけがない―――

 

「等とそんなことを考えていたのだろう? 私からすれば実にお笑いだ」

「……爺さん、あんたこんな弱かったか?」

 

 僅か五分。周囲への被害を考えていたとはいえ、更木と戦いながらの片手間で護廷十三隊の隊長陣はほぼ全滅。立っているのは藍染と更木、そして東仙の三人のみ。見事に蹂躙されていた。

 完全催眠と言われる幻術により、隊長たちの視界には全く別のものが見せつけられる。それは例えば匂いを視覚化したものであったり、口の中に広がる鉄の味が音楽として聞こえてきたり、指先で触れる物の感触が口の中に味として広がったり、それまで生きてきた中で全く経験のない状態に陥っていた。

 平衡感覚と位置覚が入れ替わり、聴覚が触覚と味覚の三つで入れ替わり……そのような状態でまともに動けるはずもない。致命的だったのは、霊圧知覚が痛覚と入れ替わったことだろう。藍染の霊圧を感じ取ろうとする度に痛みが走る。元から霊圧知覚をほとんど使っていない更木剣八を除き、その場にいたほぼ全員がその痛みに耐えられずにいた。

 

 今ここには初めから視覚を持っていない東仙要と鏡花水月を握る藍染惣右介、そして藍染惣右介の霊圧以上の霊圧を体内に押し込められ続けているために完全催眠に陥っていない更木剣八の三人だけが立っていた。

 

「何やったのかはわからねえが、やるな、おい」

「それはどうも」

「今の状況からして……そいつも敵ってことでいいんだよな?」

「そう。東仙要は僕の部下だ」

「そいつ弱いぞ。鍛えてやったらどうだ」

「鍛えてこれさ」

「……見る目ねえな」

「胸が痛いね」

「織斑の奴に任せてみたらどうだ? あいつなら三日あれば猫でも獅子にできんだろ」

「虫を竜にするくらいでなければ難しいと思うがね」

「そうか。まあ死ね」

「断るよ」

 

 会話の最中にも関わらす剣戟が飛ぶ。性に合わないからと一日足らずでやめた剣道ではなく、しかし戦いの中で手に入れた自己流でもないそれはまさに剣術。細かい技は面倒だと覚えもしなかったが、いくつかの使いやすく効果の高い技だけを織斑から勝手に学んだ。

 例えば、この技もその一つ。

 半歩にて音を超え、一歩の時点で敵に隣接し、二歩目で敵の足を踏み砕き、斬る。本来は一歩目にて接近し二歩目で敵の足を奪い三歩目で敵の頭を拳で打ち抜く三歩必殺だが、剣ならばそこまでの溜めも必要なく速度と勢いを殺さないままついた方が手っ取り早いという事で省略した技だが、はっきり言って剣八にとっては普段やっている事と変わらない。ただいつもより少し力が入りやすくなる程度の事だ。

 そしてそれを藍染は真正面から受け止める。ただ受けただけでは鏡花水月を折られかねないことを理解して、霊圧で覆い、強度を増した状態で。

 瀞霊廷中に響き渡るような金属音が波となって周囲を砕く。音そのものが衝撃波となって大気を揺らす。

 

 藍染は表面上余裕の笑みを浮かべていたが、ひっそりと冷や汗も掻いていた。自身は限定霊印を外していて、剣八は外していない。霊圧放出量を五分の一に抑えられてなお自身と剣で打ち合うことができるというのはあまりに驚きだ。限定霊印によって体内に抑え込まれ、濃厚になりすぎた霊圧のおかげで鏡花水月の完全催眠にかからずにいるのだから限定霊印は必須かもしれないが、その状態で自身と戦える者など一人しかいないと思っていた。

 藍染が四十六室を殺害したのは、彼らがいては今回の計画が決して上手くいかないだろうということを理解していたのに加えてもう一つ。自身より間違いなく強いと言い切れる相手である織斑一夏を瀞霊廷の外に出すことで自身の計画から排除しようとした事に遡る。あと自身の限定解除を自由に行うことができるようにと言うのもあったがそれはほぼおまけのようなものだ。

 そうして藍染は十分な戦闘能力と自由に動くことができる状況、そして天敵ともいえる相手を一時的にではあるが排除することまでできるようになったために目的のために行動に出ることができるようになった。

 想定外だったのは黒崎一護の異常なほどの成長速度とそれによって四季崎ルキアが処刑前に奪われてしまったことだったが、それについても二番隊の隊員をそこそこの数催眠にかけてしまえば十分に取り戻すことができた。

 

 ……しかし、自身と同じように限定霊印で縛られ続けていた更木剣八がこうして目の前に立つことも、限定霊印を解除していないにもかかわらずこれほどの実力を持つことも予想できていなかった。藍染の背筋を伝う冷汗がそれを如実に語っていた。

 藍染の思考はすでにこの後どうやって更木から逃れるか、という点にのみ絞られていた。

 




Q.えっぐぅ……
A.まあいきなり匂いで物を見ろとか言われてもできるわけありませんからね。一番手っ取り早い方法です。

Q.ちなみにこれを考えたのは?
A.一夏です。
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