BLEACH~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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Q.なんでこんな遅くなったの?
A.ちょっと予定が詰まり始めて……。



BLEACH~82

 

 side 茶渡泰虎

 

 右腕の力は防御の力。相手の拳を受け止め、打ち払い、受け流し、俺の背後に居る者を守る力。

 左腕の力は攻撃の力。相手の腹を、頭を、全身を打ち付け、排除するための力。

 では、俺の脚は一体何の力なのか。それは、俺の拳が届かない場所、俺の腕が守れない場所に行くための移動の力。これのおかげで俺は霊子を踏んで空に立ち、目の前にいる奴と同じ高速の移動法を使って戦う事ができる。

 

 頑丈さは俺の方がやや上。膂力はあちらがやや上。速度はほぼ同等だが完現術で移動中に加速・減速できる分俺の方がやや有利。総合した結果が現状だ。

 相手の拳を、蹴りを受け止め、受け流し、弾き返してこちらの拳を叩き込む。だがこいつは本当にタフだ。何発叩き込んでもすぐに殴り返してくる。ただ、戦いが好きという訳ではなく相手を甚振ることや殺すことが好きなのだろう。さっきからイライラしているのが手に取るようにわかる。

 

 だが、速度が上がるわけでもなければ威力が上がるわけでもない。虚閃は口から撃つタイプらしいので発射直前にアッパーを叩き込めば暴発させられるし、虚弾はモーションが大きいから懐に潜り込んで打つ前にカウンターを決められる。特に口の中で自身の虚閃が暴発したダメージは無視できない物だったらしく足元がおぼつかなくなっているから、このままできる限り削っておく。

 殴る。殴る。大きく横に振られた腕を踏み込みながら身体を沈めて躱し、沈めた反動を使ってもう一度浮き上げるように拳を打ち込む。今度は吹き飛ばすのではなく、全ての衝撃を相手の体内に潜り込ませるように筋肉の隙間にねじりこむようにして。

 内臓を一つ弾けさせた手応えがあった。だが、虚には超速再生をする個体もいるらしい。内臓一つ程度なら十分動くこともできるはずだし、治せる可能性もある。油断せず更に拳を打ち込み、胸の骨をへし折る。何故胸にしたかと言えば、こうできるからだ。

 

 折れた骨を更に殴りつけ、内臓に突き刺す。位置からして恐らく肺に突き刺せたと思うが、流石にそれを確認するほどの余裕は与えてくれないようで下からの蹴りを足で受け止め、逆らわずに距離を取る。

 相手の顔色はかなり悪い。内臓が一つ破裂し、肺に血が溜まり始めているのだから全くおかしい事ではないが……なんと言うか、さっき感じたイラつきの質が変わってきているような気がする。

 俺に対してのイラつきは当然あるが、それ以上にこの状況……本気を出せれば打開できるのは確実なのに本気を出せない現状にイラつきを覚えていると言う感情もある気がする。一護は剣を合わせれば相手の考えていることがなんとなくわかるような気がすると言っていたが、俺も拳を交わし続ければ多少わかってくることがある。

 こいつの強さの源は、怒りだ。怒りが強くなればなるほど強くなり、筋力も速度も上がっていく。今はほんの僅かずつでしかないが、いずれ速度も力も越えられるだろう。幸運なのは……幸運と言っていいのかどうかはわからないが、恐らくそのことに本人は気付けていないと言うこと。死神のように刀を解放することで本領を発揮するんだろうが、無しでもできていることを認識できていないはずだ。でなければ遅滞戦術を取らない理由がないからな。

 

 突如、重苦しい霊圧が周囲を覆う。重圧の方向は一護と戦っているあの男の方だ。この重圧、霊的な耐性のない魂がこれを受ければ徐々に、などと言う悠長な言葉を使っている暇など与えられないほどの速度で摺り潰されて消えてしまうだろう。井上の盾が覆ってくれていなかったら危ない所だった。

 一護ならば負けることはないだろう。そう思い俺はこちらの敵に集中する。少しずつ上がっていく力と速度、しかしそれ以上に出血や霊圧の消耗によって衰えていく敵の動きを可能な限り封殺しながら繰り返し拳を叩き込んでいく。こいつの皮膚は確かに固いが、中まで衝撃を通せないほど固いわけではなく、踏み込みとその反発で生まれた力を適切に扱えば十分に貫ける程度の固さでしかない。

 流石に右では完全に貫くことはできずかすり傷を与える程度に収まってしまっているが、それでも相手の隙を作ることくらいはできる。しかし相手も戦いの中でこちらの左こそを危険視するべきで、右の方はあまり威力は出ないと言う事を察知しているようだった。

 

 だからこそ、俺は右手に力を込める。防御の力である右の盾をあえて攻撃のために使い、攻撃のための力である左の腕を相手の攻撃を弾くために使う。相手が大きく振りかぶった拳を左腕で受け止め、そして右でへし折った骨を狙って完全に零距離から衝撃だけを体内に叩き込む。へし折れた骨が相手の体内を貫通して反対側から飛び出し、敵は血反吐を吐いて地に伏せる。命はまだ失われていないようだが、しかしこれで立ち上がることはできないだろう。

 それに、井上の盾の中に居る限りは井上の認識した事象であれば井上の意思で拒絶できる。例えこいつがここから高速で再生したとしても、その再生そのものを拒絶して傷が治ったという事実を無かったことにできるはずだ。井上自身が言っていたから間違いない。

 

 俺はその場に座り込み、一護ともう一人の敵の戦いを眺める。俺は一護にこいつの相手を任された。一護は信じて俺に任せてくれた。ならば俺もまた、一護を信じてその戦いを見届けよう。

 




Q.チャド強くね?
A.一護に背中を任せられる男でありたいという願いが叶ってよかったですね!

Q.それはそうとパンジャンは?
A.チャドは紅茶に染まってないので。

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