BLEACH~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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BLEACH~84

 

 side 井上織姫

 

 ようやく中で起きていた戦いが終わった。黒崎君が一人倒して、茶渡君はとどめを刺しきることこそできなかったけど勝ちを拾った。だから私はそれに喜んで、黒崎君たちの戦いによって破壊された街や人の魂の損傷及び消滅を拒絶し、何事も起こらなかったかのように世界を整えた。

 黒崎君は私の術を見て凄いと言ってくれたし、もう大満足!お土産も手に入れたし、もう言うことなしだよね!

 

「……織姫。本当にいいのかい?」

「? なにが?」

「わかっているだろう? 彼の事だよ」

 

 舜桜が私にそう問いかける。あやめやリリィ達も私を不安そうに見つめているけれど、実のところ全く問題はないんだよね。もちろん初めからこんなことをしようとしていたら失敗していたと思うけれど、ちゃんと見計らったから大丈夫。

 烏頭と狐花、新しい私の力になってくれた二人だけで作った盾。舜桜とあやめの二人で作った盾が双天帰盾ならば、烏頭と狐花の作った盾はさしずめ二天埋盾と言ったところだろうか。双天帰盾のような回復効果ではなく、ただただ相手を拘束するための盾。烏頭と狐花の張った盾に相手の身体を埋め込み、対象を決して死なせない、しかし自由にさせることも無い盾。

 その中に、黒崎君に斬られて消えゆくだけだったあの人を取り込んだ。盾に取り込まれたとき以上に欠損することも無く、それ以上に再生することも無い。そんなものをどうするかと言えば使い道はただ一つ。食べるのだ。

 そこら辺によくいる虚はなんと言うかかなり薄い。霊圧を持たない人間よりは多分ましなのだろうけど、それでもほとんど味がない。黒崎君くらいになるとただ放たれているだけの霊圧にも味があるんだけれど、普段の黒崎君はそれを抑えているから味わう機会は多くない。仕方ないよね、だって黒崎君が本気になったりするとそれだけでその辺にいる人間の魂魄は砕けて消えてしまうんだもの。

 だから黒崎君の霊子を食べられるのは私たちにとっては結構珍しい事なのだけれど、今回の事でもしかしたらもっと手軽に食べられるおやつが手に入ったかもしれない。私はうきうきしながら無理矢理に圧縮して小さくした盾を持って家路についた。

 

 

 

 

 

 side ウルキオラ・シファー

 

 死んだ、はずだ。あの、仮面をつけた黒崎一護に斬り捨てられて。

 覚えている。肩口から斬りこまれた刃の冷たさを。痛みとも熱とも取れる感覚が身体を犯し、大半の臓器が欠損したことで生きるための熱が失われていったことも。

 そして、最期に胴に突き刺された刃から炸裂した黒崎一護の霊圧の感覚も、すべて覚えている。

 だと言うのに、俺はこうして生きている。身体はまるで動かすことができず、超速再生もできないが……生きている。

 

 きぃ、と甲高い音が鳴り、一人の人間が姿を見せた。

 

「あ、おはようございます。気分はいかがですか?」

「……ここは、どこだ」

「ん~……じゃあこうしましょう。お互いに聞きたいことがあるでしょうから、順番に一つずつ相手に質問ができる。質問された側は質問には全て正直に答えるか、答えられない旨を述べてもう一度質問を受けるかを選択する。お互いに損も得もする、一方的ではない関係。いいですよね!」

「…………断ったらどうなる?」

「動けない貴方は動けないまま生きても死んでもいない状態でこの世界にくくり付けられます。私はそれでもいいですよ?」

「……わかった。では、俺から質問しよう。ここは、どこだ?」

 

 人間の女は俺を……恐らく笑顔だろう表情で眺めながら口を開いた。

 

「私の家のクローゼットの中です。現世の空座町にありますよ」

「そうか」

「はい。それじゃあ私の番ですね? あなたの名前は何ですか?」

「……ウルキオラ・シファー。第四刃(クアトロ・エスパーダ)だ」

「じゃあ、ウルキオラさんってお呼びしますね?」

「好きにしろ。質問だ。俺は死んだはずだが、何故ここにいる?」

「私がウルキオラさんを死んだ状態から死にかけの状態まで戻したからですよ? 黒崎君に気付かれないように霊子の欠片を捕まえて、この状態まで戻すのに凄く苦労したんですから」

 

 ……人間が、あの、何をしたところで死以外の未来のない状態を覆し、こうして俺を封じているだと?

 壁に埋め込まれた腕を動かそうとしてみるが、全く動かない。感覚も無い。腕がそこにあるのは見えているのに、霊子の壁に呑み込まれた先に力そのものが入らない。

 いや、これは力が入らないと言うよりも……力が入ったと言う事実そのものが消えている、のか……?

 

「私からの質問ですね。ウルキオラさんって、好きな食べ物はなんですか?」

「……そういったものはない」

「ないんですか」

「ない。質問だ。お前はなぜ、俺を蘇らせた上で捕らえている?」

 

 空気が歪んだ。胡桃色の髪が白く塗り替わり、眼球の色があの時の黒崎一護と同じように黒く変わる。そして何よりも、霊圧の感触が人間の物から虚のそれに切り替わった。

 笑顔が歪む。かろうじて人間の姿という殻の中に押し込められていた狂気が溢れ出したようにも感じた。

 

「私達、ご飯が食べたいんです」

『おいしいものが食べたいんです』

「普通の虚は薄いんです」

『黒崎君は食べたらなくなっちゃうんです』

「茶渡君は友達なんです」

『死神はおいしくないんです』

「人間の魂は薄いんです」

『黒崎君は美味しいんです』

「だから」

『だから』

 

「『貴方を食べたいから』」

 

「『私達は』」

 

「『あなたを救ったんです』」

 

 形だけは取り戻していた左腕に食いつかれ、もぎ取られる。痛みは無い。ただ、納得させられた。黒崎一護と言う異常な男の傍にいる女が、異常でないわけがなかったのだ。

 これからどれだけの時を過ごすのかはわからない。しかし、俺はやらなければならないことはやった。黒崎一護を殺すことはできなかったが、それを伝えることはできた。黒控に入った時に、記録を残した俺の目を引っ張り込んだヤミーの身体と共に藍染様のいる虚夜宮に送り込んだ。

 

 けらけらと笑い俺の身体を食い続ける人間だった女の姿を眺めながら、俺はゆっくりと瞼を閉じた。

 




Q.こっから先ウルキオラの出番は?
A.井上のおやつ兼お弁当。

Q.正気で言ってる?
A.井上は発狂済みなので正気ではないです。私は紅茶を飲んでいるので正気です。

Q.そういうのを狂気の沙汰と言うんだ。
A.発狂した人間の思考をトレースし続けてるとだんだん自分が発狂しているような気分になってくるんですよね……。
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