BLEACH~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

90 / 155
BLEACH~85

 

 side 藍染惣右介

 

 ……成程。流石は彼のキチキチ☆ブートキャンプの卒業者だ。ウルキオラがこうまで容易く屠られるとは。流石に予想外だった。

 それに、虚化。未だ卍解を見せていないことからあれよりも更に上がある。そうなると……流石にそろそろ動き始めた方がいいだろうな。

 

 腰の刀を抜き、その名を呼ぶ。織斑副隊長に追いつくために力を求め、屈服させた結果知った鏡花水月の新たな名前。人に催眠をかけるのではなく、世界そのものに催眠をかけることで世界を自在に操る幻術の極地。これを用いて虚夜宮の建物部分を作り上げ、様々な事象を捻じ曲げ……そして捻じ曲げた事実に気付かれて当然のように空間を殴り壊して移動してきた織斑副隊長に「仕事が増えっから戦闘の時までとっとけアホンダラ」と頭をひっぱたかれたのはいい思い出だ。

 上に誰かがいる。下にも誰かがいる。孤独に慣れていた私にはそれこそ最も強力な毒となり、それ以上に強い薬となった。心が弱くなった自覚がある。しかし純粋な能力はそれまで以上に強くなったと確信できる。今ならば山本元柳斎重國と真正面から戦闘を行い、圧倒できるだろう。当然搦め手も使った方が強いとは思うが。

 

 そして、ある意味山本元柳斎重國以上に注意を払う必要があるのが黒崎一護だ。突如送り込まれてきたヤミーとウルキオラの眼球によって黒崎一護の戦闘力が飛躍的に伸びていることに気付くことができた。瀞霊廷での戦いでは必要がなかったからだろうが、ただ一度きり、ほんの一瞬だけしか使っていなかった虚化を見事に使いこなしていた。

 虚が虚圏と現世を移動する際に使う黒腔に飛び込んだウルキオラを追って仕留め、内側から黒腔をこじ開けて出ていくのも眼球だけになったウルキオラの目が記録していた。第四刃、上に三体居るとはいえ十刃の上位をほぼ無傷で打倒できるだけの実力。実際の戦闘能力という面では明確に私より上にいる織斑副隊長と更木隊長以外で私に刃を届かせうる唯一の存在。やはりあの時、実験体にした虚が暴走したのを途中で打ち切りにしないでよかった。これだから世界はとても楽しい。

 更にもう一つ。空座町全体を覆い、外にも内部にも被害を出さないようにしてのけた井上織姫。彼女の能力の異常さは一目見ただけで理解できた。時間・空間回帰にも見えるそれは、実際にはその程度の能力では決してない。盾で覆った場の時間を巻き戻すよりも、空間ごと回帰するよりも、なお上の能力。実質的には治す能力でもなければ修復する能力でもない。自身の意に添わぬ出来事をこの世界から拒絶し、そのようなことは起きていなかったと世界も理も真正面から打ち破る……神の定めた地平を易々と踏み躙る能力。そしてそれは、私の鏡花水月の催眠に対しての対抗措置にすらなりうる。

 

 私の鏡花水月が効果を及ぼすのは、鏡花水月の解放の瞬間を見せた相手のみ。つまり、井上織姫はやろうとすれば私の鏡花水月の支配下にある何者かが鏡花水月の解放の瞬間を見たという事実を拒絶し、なかったことにした場合……それをされた相手は鏡花水月の支配から抜け出すようになる。

 流石にそれをされると色々と辛いものがある。特に更木剣八と山本元柳斎重國を鏡花水月なしで相手にするとなると、ちょっとした被害などという言葉では済みそうにない。そこに黒崎一護が加われば、負けは確定したようなものだろう。

 ……織斑副隊長はもう参加した瞬間こちらの敗北が決まるからノーカウント。彼は根本的に個人に被害が及ばなければ全く危険はないから今回の戦いで敵対することは無いと思うが、万が一にも敵対することになったなら……覚悟だけは決めておくとしよう。決めたところで無駄になる未来しか見えないが。

 

 しかし、これは問題だ。井上織姫があちらにいる限り、こちらの有利に状況を進めることは難しくなる。この状況を覆してこちらの有利になるように進めるにはどうするべきか。

 

 ……。

 

 

 

 

 

 side ???

 

 何もわからなくなって、どれだけ時間が過ぎたか。時間の経過という感覚すら失って、どれだけここにいるか。何もわからないままここにいる。

 記憶を失い霊圧を失い姿を失い、ここにいるのが誰かもわからなくなったままここにいる。

 

 目の前に刀が差しだされる。そしてその直後に何もなかった私の中に私というものが生まれ落ちた。

 

「調整は任せる。有効に使っておくれ」

「畏まりました」

 

 声が聞こえた気がしたが、全てを放棄していた私の身体はそちらに視線を向けることも声を上げることもできないままただそこに居た。そしてすぐに誰かが私に何かを話しかけた。

 

「君の身体を保存しておいてよかった。いつか何かに使えるかもしれないとは思っていたし、君自身の能力も中々に応用の利く能力だからね。無駄にはならないとは思っていたが……ここまで役に立つ機会がやってきたと思うと感慨深いものがあるね」

「……」

「そうか、答えることもできないか……それは重畳。暴れられると欠損が増えてしまうこともあるからね」

 

 腕を取られた気がしたが、それが事実かもわからない。

 私になった私はそのまま意識を手放した。

 




Q.藍染はキチキチブートキャンプ受けてないの?
A.ブートキャンプより戦いに参加していました。脳筋ですね。

Q.ところで最後の誰よ?
A.まだ内緒。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。