職業、英雄。趣味、幼馴染を護ること。   作:杜甫kuresu

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少しプロットを大改造したのでジョイントとして短い話を挟みます。
ついでに後書きはよくありそうな質問にお答えしておきました。興味があればご覧ください。長いです。本編と同レベルです。


馬鹿と商売

「おや、ヴィンストラムさん。アルの相手は終わりですか」

「ガルガンチュアの話を始めると沈んでしまってな」

 

 あーりゃりゃ、とバハクが頭を掻く。酔っ払っているからかフラフラとしていて、ヴィンストラムは見ていて心配になってくる。

 

 とはいえ、ヴィンストラムは彼が沈むのに関してそう感じるところはなかった。彼女は当事者でないから何も感じないが、彼に関しては想像の余地が無いと言うか。

 仕方なしと言った様子で焚火の周りに腰を落ち着けると、ヴァールの方を見て含みげに笑う。

 顔を向けられた当事者はキョトンとしている。

 

「こういう時の特効薬はヴァールと相場が決まっている。行ってきてやると良い」

「…………言われなくても行くわよ」

 

 何だか拗ねたような、何とも言えない反抗的な視線を向けながらヴァールがアールゴーンの方へと歩いていった。

 ヨセフカは芋をチマチマ食べながら肩を叩いているヴァールを眺める。

 

「相変わらず好敵手扱いですね。いえ、姉のような感覚なのでしょうか?」

「さあな、私をどう感じても彼女の勝手さ」

 

 相変わらず成るがままというような返答で煙に巻いてしまう、昔からそんな感じの性格だ。

 

 酔いが冷めきってしまったバハクが小枝を入れる音だけがしばらく響いていたが、大体向こうから話し声が聞こえだしたくらいだろうか。徐にヴィンストラムが話し出す。

 

「そう言えばアールゴーンはバハクにヨセフカの商売の技術を盗むことを期待していたらしいぞ」

「え、ホント? 無理だよ無理無理」

「君、諦め早いな…………」

 

 いやーだって出来ないことは出来ないっすよ、とカラカラ笑う。

 

 バハクはその後にうーん、と唸ってから手を叩く。着っぱなしの手甲のガチャガチャとした音が響いた。

 

「まーでも観察はしましたぜ?」

 

 

 

 

 

 

 

 まずですな、ヨセフカの商売は――――――というかまあ人間皆そうだけど、丁寧な挨拶から始まる。

 

「お初にお目に掛かります。私はヴェーリオ商会から来たヨセフカというものです」

 

 さて、此処が多分キモだな。

 ヨセフカの本名は知っての通り「ヨセフカ・ヴェーリオ」。言うまでもなくヴェーリオ商会ってのは彼女の管理する商会なんだが、このご時世で名字ってあんまり持ってないんだよな。

 

 だから「ヨセフカ」って名乗ると、取締だとは思われない。

 やっぱり下の階級ってのは上の階級に一定の壁があるもんだから、そういう所考えてんのか?

 

 で、聞くのは最近の悩み事とかなのよ。

 

 横にいる御本人が言うには、「物は売りつけるものではなく、買ってもらうもの。だから、買ってもらえるように私は信頼をまず押し売りするしかありません」だったかな。

 要するにいやに丁寧な商売をする。一日目、回った家全部と殆ど世間話だけして終わった。しばらく滞在する旨、ヴェーリオ商会がそれなりに利便性が有って、大きな組織だって旨。ここらへんは全員にきっちり話してたが。

 

 ついでに言うと、彼女はまず物々交換から始めた。初め数日…………まあアルが寝込んでた頃だな、この時期に一旦帰って住人が欲しいものを取り揃えてくるのよ。

 それで相手の望む比率で交換する。ヨセフカは不思議なことを言っていたが、「人は対価が重すぎても軽すぎても気に病むもの」らしいぜ、変なの。俺はいっぱい欲しい。

 

 要は信頼関係から始めるのだと言っていたが、ヨセフカはこういう事も言っていた。

 

「物の融通者になってもらうならば、必ず物々交換をするように心がけています。金貨や銀貨は親しんだ私からはとても便利で、そして有価値に見えているのですが…………残念ながら辺境の村ではまだ不審物です」

 

 金貨や銀貨がイマイチ飲み込めない住民も多いんだと。

 俺はエミリアル家がまあ中央に行く機会もあるし、何だかんだと教育は高等なものを受けていると言うか、進んだものを身の回りから感じてたから違和感はない。

 

 まあ俺の品格とかにはあんまり関係ないけどな!

 ちなみにどの民家も俺の甲冑姿を見て「騎士様って雇えるの?」って聞いてきた。もうとても騎士とは言えないから悪い傭兵ですって答えておいたけど、随分成金趣味な傭兵と思われたに違いない。アイツラ鎖帷子大好きだもんな。

 

 

 

 

 

 

 

「って感じで、まあざっとこれぐらいしか分からんかった! アルには謝らねえとな、はははは!」

「いや、大体主旨は汲めているんじゃないか? 頭が悪いというわけではないんだな、バハク」

 

 俺馬鹿だと思われてたの、と大仰に驚いて聞き返すバハクに沈痛な表情で頷くヴィンストラム。彼女は剣を振るっている姿か、酒を飲んでおかしな事をしている姿ばかり頭に残っているから信用はまるで無かったらしい。

 

 焦ったバハクがヨセフカの方ににじり寄って捲し立てる。

 

「ヨ、ヨセフカは馬鹿だと思ってないよな? な?」

「…………」

 

 明らかに必死なバハクに引き気味だ。少し後ずさるヨセフカに頭を両手で抱えて喚き出す。

 

「冗談だろ!? ヴァールとアルに馬鹿呼ばわりされてるだけでも割と最近になって慣れてきた感じだってのに!? 俺は馬鹿じゃねえよ!」

「分かってます、分かってますよバハク。貴方は第一印象がちょっと…………その、あれなだけで」

「あれなだけ!?」

 

 しまったな、と思わずヨセフカが口で手を隠す。

 とうとう顔を逸らされてしまった。

 

「聡明な方だと私は思っていますよ、はい。大丈夫です、誰も馬鹿になんかしていません」

「いや、だから私は馬鹿だと思っていたぞ」

 

 ヴィンストラムの言動にバハクが兜から地面に倒れ込んだ。

 

「嘘だ…………俺は美人約三名から馬鹿だと思われたまま旅をしてたのか…………心が折れた、アルには旅に出たと伝えてくれ」

「今も旅をしているんですよ…………しっかりしてください、バハク」

「もーやだぁ…………アルもヴァールもどいつもこいつも嫌いだぁ…………」

 

 兜を地面に擦り付けながら啜り泣き出すバハク。男のプライドがへし折られた、目も当てられない惨状としか言いようがない。

 

 突っ伏して完璧に拗ねてしまったバハクの背中をヨセフカが擦る。だが鎧だ。

 

「私はバハクが、えっと、ちょっと頭が弱くても嫌いになんかなりませんよ。心配しなくて良いんです」

「まだ俺が馬鹿だと思ってるなアンタ!?」

 

 ヨセフカの返答はしどろもどろになる、もう本音がスケスケである。

 

「ち、違いますよ………………まあ万が一そうでも私がどうにかしようと思っていただけで…………」

「え? 何をどうにかするの?」

 

 突然ヨセフカが下手な口笛を吹いた。

 

「いえ何でもないです」

「何なのほんとさぁ!?」

「君達は君達で愉快だな、何時まで小芝居を続ける気なのやら……………ふふっ」

 

 ヴィンストラムが酔っ払いの泣き言に少し笑った後、立ち上がった。

 

 バハクが泣き言をやめる頃には、もうヴィンストラムは居なかったという。




Q1.ガルガンチュア牧師について
A.私は基本、キャラモチーフを既存作品からそっくりそのまま拝借しています。なのでキャラクターの雰囲気や内容をパロディが強いと窘められたのは正直な所、カルチャーショックでした。
恐らく登場の一文が有名すぎたせいなのでそこだけ投稿する頃には修正します。見た目や言動はストーリーラインや伏線と大いに関係するので未修正。

Q2.ヴァールとバハクでエミリアル家の扱いが違う?
A.此処はとても重要な箇所です。あの時代の価値観では、エミリアル家は全く悪人ではないのですよ、少なくとも私にとっては。
忌み子が迫害されたなんて現実でも有るし、それで人間の質を問えるとは私は思っていません。彼らは熊が降りてきた時に射殺するのと何ら変わりないことをしただけです。
二人の性格がまっすぐで、バハクが感謝をしている点から彼らの本来の性根は見えるかと。アールゴーンも彼らが悪い人間とは思っていません、「ヴァールの扱いが自分は気に食わない」だけです。

Q3.アールゴーンは何故チート持ちなのに剣が使えない?
A.彼は「運動行為」がアシストされていると考えると楽なのですが、彼にとっては剣というものが馴染みが薄いです。だから正しい振り方を「知っているわけではない」。これが理由になります。
彼に出来るのは本能的な肉体の扱い方であって、技術的な武器の使い方はまた別です。もちろん、学ぼうとすれば勢いは他の比ではない事は確か。

Q4.ヴァールがヨセフカを呼ぶ時に「ヴェーリオ」と呼ぶ理由
A.ヨセフカの本名が「ヨセフカ・ヴェーリオ」だからという安易な理由です。ちなみに商売ではヴェーリオ商会、として近隣では名が通っており、ご時世柄名字や名前を想定しないことから「ヨセフカ」と名乗ると人は別人と解釈します。
ちなみに「自称魔法使いなんだけど大変手に余る弟子もどきに困っている」(以下「魔術師」と表記)や「友人枠だが百合に挟まれと圧力が来ている」(以下「百合男」と表記)に子孫のヴェーリオ家当主が登場しています。かなり、濃いです。名をアンナ・ドライツェン、私が作った中で最も残忍かつ身勝手で、そのくせ嫌いになれない女となっています。

Q5.ヴァールとアールゴーンが互いを意識したのは何時?
A.恋のタイミングを暴こうなんて野暮です。ヨセフカは明記できているはずなのでそちらで我慢してください。
ちなみにこの作品では誰も結婚しません。アールゴーンとヴァールも子宝に恵まれたりはしません。これは断言しておきます。

Q6.「聖女」の正確な基準はないのか
A.特徴としては赤い瞳と白い髪。一般的に赤い瞳だけでも貴重で、白い髪になるには特定の実験や薬物で「啓く」必要があるのが大半です。
ちなみに「百合男」に登場するアストラ・ファンタールとリリィ・フォン・カラキアも聖女に分類できます。ヴァールは別格です、もとより白髪だった例は時系列で最新である「百合男」時点でも片指で足りる筈。
ちなみに先述したアンナも擬似的な聖女に分類できなくもない。此処は追々「魔術師」で取り上げる予定です。

Q7.登場キャラの身長について
A.アールゴーンは成人男性の平均より16歳時点で15,6cm高いです。一話に登場したタイミングなら更に10cm以上は期待して大丈夫です。モデルのアルトリウスが神族に類するので、背が高いことから来ています。
16歳時点で他のキャラがアールゴーン基準だと何センチ差が有るか、を並べておきます。大体です。
ヴァール:-30cm
ヨセフカ:+5cm
バハク:-10cm
ヴィンストラム:-25cm
ガルガンチュア:+15cm
考えにくいという人は、現在の男性の平均身長は確か172。
よってアールゴーンは187。ここから引けば良いだけ。だからヴァールにトサカを引っ張られるととても痛いです。彼でも嫌がって当たり前。

Q8.「アールゴーン伝説」を纏めた話
A.「魔術師」を読み進めるだけで出てくるでしょう。サブタイトルがとてもわかり易く、内容が計り知れるので、ネタバレはどうしても無理という人は読まないようにしましょう。
ちなみに「魔術師」本体はこちらでも取り扱う魔術の才含め、多くの設定をある程度詳細に語っているので、世界観の理解の手助けになるかもしれません。ちなみにヴィンストラムの関係者も居ます。

Q9.一話まえがきの「最近はやった作品」って?
A.あたりめ様の「好きな人を幸せにする能力【一話完結】」です。

Q10.ファンアート、二次創作は駄目?
A.ユーザーページを見れば分かりますが、何であればクロスオーバーして戴いても結構です。絵や二次創作は単純に報告があれば嬉しいです。知らない間に書いててもまあ特には。
ただファンアートとなるとアルトリウスを描いてもらう事にならざるを得ないのがハードル高いですよね…………。

Q11.年齢設定
A.ヴァールとバハクはアールゴーンの二歳上、ヨセフカは20歳で家を追われたので四、五歳上。ヴィンストラムは秘密です。

Q12.更新がまばらで我慢できない
A.大人しく「魔術師」と「百合男」を読んでください、二つとも癖がありますが悪くはない作品だと思います。



質問があればまたこういった小話のあとがきで回答するので、幾らでもお寄せください。
ただし、リクエスト等はお応えしかねます。私は商売をしているのではないので、何か指摘されたりリクエストをされても突っぱねたり聞き入れたりは気分です。責任が取れないので基本的には辞めてくださいね。

誰が好きですか?

  • アールゴーン
  • ヴァール
  • バハク
  • ヨセフカ
  • ヴィンストラム
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