黒猫氏の異界滞在記   作:〈黒ウィズ二次を飽きるほど読む夢〉

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黒ウィズの二次創作の少なさに〈夢〉を失ってしまったので初投稿です。

この話の時系列はUWGの終盤です。黒猫氏の社会性が上がらない。

黒猫氏の好感度が高いので苦手な方はご注意下さい。

9月16日:サブタイトル変更


『魔道を追求し魔道を極める異界』
アルティメットワーキングガールズ!エピローグ①


 君は、クエス=アリエスの魔法使いだ。

 

 草原に落ちていた紙切れを拾った君は、異界へ飛ばされた。これでもう何度目だろうか。10や20なんて回数ではないのは確かだ。そうそう簡単に起こることではない筈なのだが。

 

 飛ばされた先で大魔道士の少女達と再会し、君はここが『魔道を追及し、魔道を極める異界』だと気付いた。

 そこでは新しい法律が施行されたらしく、それが原因で君は社会更正施設であるマドーワークに収容された。

 

 マドーワークで働く中で施設長の企みを知った君達は、革命を起こしマドーワークから脱出、施設長の企ては失敗に終わった。

 まぁ、企みの大部分は外にいた『最強』の魔道士が粉砕したのだが。

 

 

 

 

 

 『最強』の魔道士──ミツボシとの激闘を終えて数日後、お花見の前日だからと早く眠ってしまった皆を尻目に、君はアパートを一人と一匹で出ていく。そろそろクエス=アリアスに帰る頃だという不思議な確信があった。

 君が異界を訪れたときは、その異界の事件を解決するとクエス=アリアスへと送り返される。今回は、マドーワークの件がそれだったのだろう。

 

 君が黙ってただ一人で外に出てきたのは、その際発生する異界の歪みという現象の危険性を鑑みてのことだ。

 唐突に出現し、唐突に消え、人間や魔物を異界に送る異界の歪み。その神出鬼没さ故に、かなり歪みに触れてきたはずの君でさえ知らないことの方が多い。つまり、皆といた場合、何が起きるのかが予想もつかないのだ。

 仮にその時に君とウィズだけで無事に帰れたとして、異界の歪みというものが知られてしまえば、彼女達は恐らく歪みについて研究を始めてしまうだろう。そして、研究の結果、異界から悪しき者が現れる可能性は十分にある。

 例えばラディウスの仲間を奪った魔物だとか、エネリーのような非人道的な魔法使いだとかは、異界から現れた。そういった存在に彼女達が勝てないか、と言えばそんなことはないとは思っているが、自分が原因で危険を招くことを、君は許容できない。

 かといって、口で言って聞く相手でないことは、過去の共闘から嫌と言うほどわかっている。

 

 そんな訳で君は、社会性がないと言われようが、探し回る手間を掛けさせようが、こうして何も告げず、異界の人間であることを悟られない様に帰ることにした。万が一にも彼女達に危険が及ばないように。

 キワムを笑えないな、と別の異界の親友の再会したときの泣き顔と心配したと震えた声、その後に何だかんだで君も負けず劣らず心配性だけどにゃ、と師匠に笑われたことを思い出し、君は苦笑いを溢した。

 

 でも、いきなり姿を消してキワムを猛烈に心配させてしまったこともあるし、今回リルムに正論を叩きつけられたのは堪えたし、と。

 次は、別れの挨拶代りに置き手紙でも残しておこうか。そんな考えがふと頭をよぎり、思わず君は苦笑する。

 次、か。この異界にまた来ることがあるのかもわからないのだが。そう思うと寂しさが込み上げる。

 

この異界は、滅茶苦茶で、たまに理不尽で──究極に楽しかったから。

 

 とはいえ、帰らないという選択肢は君には存在しない。今も肩に乗っている黒猫となってしまった師匠、つまるところウィズを元に戻すまでは、足を止められない。加えて言えば、君には異界の歪みはどうにもできない。君が何を願ったところで、異界の歪みが待ってくれる訳でもないのだ。

 

 

 

 

 

 アパートの目の前で回想に耽っていた君は、ウィズの顔を見やり──バッチリ目が合った。先ほどから静かなウィズは、何もかもを見透かしたような目でこちらを見て、口を開く。

 

「キミは、どうしたいのかにゃ? このまま帰っていいのかにゃ?」

 

 何とも面と向かっては答えにくい質問に、君はたじろぐ。とはいえ、結論は既に出ているのだ。少しだけ沈む心を無視して、クエス=アリアスに戻る旨を伝える。ウィズを人間に戻す手がかりを探さなければ。

 

 ……何故か、深い溜め息をつかれた。

 

「私は、『キミの』したいことを聞いたのにゃ。私のことは考えなくていいにゃ」

 

 どこか呆れたような物言いに、君はウィズを抜きにして先のことは考えられない、と抗議する。自分を守ってそうなったのだから、責任は自分が果たす。君はそう熱弁した。

 

「私もそれを望んでなくても、かにゃ?」

 

 ……は? 

 

 君の口から間抜けな声が漏れる。

 

「キミ、驚くことかにゃ? 今私が人間に戻ったら、クエス=アリアスは間違いなく荒れるにゃ。状況が落ち着くまでは猫でいる方がいいにゃ」

 

 だがそれでは、人間に戻れるのは何年も先になってしまう。それは辛くないのだろうか。

 

「にゃはっ、平気にゃ。というか、変なしがらみが無いぶん猫の方がむしろ気楽にゃ。人の体が恋しくないわけじゃにゃいけど、当分は猫の体でいたいにゃ」

 

 ……だとしても、戻る方法を探すだけなら……。

 

「師匠思いの弟子で師匠冥利につきるにゃ、全く……それは置いといて、何にせよ私が言いたいのはにゃ」

 

 と、ウィズは一拍おいて、改めて君を見据える。

 

「これから起こることには、キミの心に従って答えてあげてほしいにゃ。私に気を使ったりしないで、私をキミの枷にはしないで」

 

 ……? 

 

 ウィズの言葉に、君は疑問を投げ掛けようとした。

 

 

 

 

「黒猫さん? どこ行くの?」

 

 その瞬間に突然ソフィ──この異界で何回も世話になった少女だ──に声を掛けられ、君は息を詰まらせた。会話を聞かれてはいないだろうが、あまりアパートの近くで話し込むべきではなかったと君は後悔する。

 

 君は咄嗟に、夜風にあたりたいから散歩に、と言い訳を口にし、

 

「黒猫さん、この世界の人じゃないでしょ?」

 

 核心を突く発言に沈黙させられた。

 

 まずい。冷や汗が吹き出る。君は、ソフィの確信を持った口調に、下手な言い訳が通用しないことを悟った。どこまで知られてしまったのだろうか。

 

「黒猫さんって悪い人じゃないのに、黙っていなくなっちゃうでしょ?」

 

「なにか理由があるんじゃないかと思っていろいろ調べたの。そのために、四次元魔道解析の研究にも本腰を入れたんだ」

 

 目の前の少女──ソフィ・ハーネットは、魔道士であり、調薬士であり、百数十万の従業員を抱える『ハーネット商会』の創設者にしてCEOだ。

 

「黒猫さんがソフィたちの前に現れたとき、それからいなくなったとき」

 

「残留している魔力を解析してわかったんだけど、魔道空間に似た何かが発生しているの」

 

 ともすれば経営方面への才能しか目につかないかもしれないが──

 

「ソフィはそれを〝空間α〟と名付けた。空間αはこの世界と魔力の連続性が絶たれたどこかに通じている」

 

「そこで気づいたの。前にリルムちゃんとミツボシさんから聞いた不思議な話に似てるなって」

 

「突然現れる謎の空間を通って、こことは違う世界に行っちゃうんだって」

 

 ──彼女は、研究者としても非凡な才能を持っている。今更ながらに、そのことを君は思い出す。

 

 君は、背中を流れる冷や汗を気にしつつ、説明の仕方に悩んでいる。が、ここまで研究が進んでいるとは思っておらず、うまい言葉が思いつかない。君の焦りが募る──同時に、なぜかソフィも焦り始めた。

 

「つまり、なにが言いたいかっていうとね、黒猫さんはソフィたちのことが嫌いだから黙っていなくなる──わけじゃないんでしょ!?」

 

「そんなはずないって信じてるけど……もしかしたらって思うと……」

 

 そんなことはない、嫌いだからいなくなってるわけじゃない。君は即座にソフィの懸念を打ち消す。

 そして、君は先程のウィズの言葉を思い出し、覚悟を決めた。君の言葉に安堵した様子のソフィに向けて、更に口を開く。

 

 自分のやりたいことは──

 

 

 

 

 ──本当は、ここにもっといたい。

 

君は、自分の心に従うことにした。師匠への遠慮も歪みで帰されることも脇において、想いを伝える。

 

 ──魔道バーベキューだって行きたかったし、ミツボシの筆頭理事就任パーティーだって参加したかった。自分がいなかったときの話も聞きたいし、何より、皆ともっと一緒にいたかった! 

 

 叶わないはず、叶わないことを知っているはずの君の願いを聞いて、ソフィはなぜか満面の笑みを浮かべた。

 

 でも、と言って君が自分の周りを見渡すと、既に光に包まれ始めていた。異界の歪みだ。相も変わらず空気が読めない光だな、と君は歪みに心の中で八つ当たりした。

 

「キミ、そろそろ時間にゃ」

 

 これまで口を挟まなかったウィズが声をあげる。満足そうな顔をしていた。君も不思議とすっきりした気分だった。寂しさも当然抱えたままだが。君はソフィに、ごめんね、と声をかける。危ないから近づかないでね、とも。

 

 

 

 

「大丈夫。黒猫さんの願いは、ソフィたちが叶えるから」

 

 そう言ったソフィは、笑顔のまま君に一歩近づいた。そして、

 

「アリエッタちゃん! エリスさん!」

 

 と、声をあげた。

 

 同時に、

 

「うぉぉおおお! くーろーねーこーのひと!」

 

「えぇ、任せて」

 

 と、二人がアパートから出てきた。アリエッタはそのまま君に突進し、君の腕に飛びつく。エリスも遠慮がちに君の手を握った。君は状況についていけなかったが、巻き込まれると危ないよ、と警告だけした。当然のように無視された。一体何をする気なのだろうか。

 

「出てこい、本! と杖!」「匣よ!」

 

 二人は、得物を取り出した。しかも、アリエッタは滅多に使わない杖まで持ち出した。そして、君には理解できない言語で詠唱を始める。

 

「にゃにゃ!?」

 

 詠唱が始まると、君を覆っていた光が段々とエリスの魔法を彷彿とさせる黒い魔力に包まれ、君から剥がれていく。見たことのない現象に君はしばらく呆然とした。それから我に返ると、初めて見る現象で危ないから離れて欲しい、と再び口にする。が、

 

「黒猫さん、詠唱の邪魔になるから、ね?」

 

 笑顔のままのソフィに諭され口を閉じた。詠唱の間ソフィがこれまでの経緯を教えてくれるようで、話を始めた。

 

 

「ソフィね、黒猫さんが嫌がるかなって思って、空間αの研究のホントの目的はみんなに内緒にしてたの」

 

「でもね、黒猫さんがミツボシさんと戦ったでしょ? その時にリルムちゃんがね、黒猫さんが違う世界のひとだってこと気づいちゃったんだ」

 

 柄にもなく熱くなってしまったのがよくなかったのだろうか、確かに、この異界では使わないようにしていた様々な異界のカードを使用した記憶がある。

 だが、それだけで真っ先に気づくあたり、リルムも侮れないなと君は感心した。リルムだって、今や大魔道士なのだ。

 

「それでね、そのことをアリエッタちゃんやエリスさんが知ったらね、ソフィが研究で何をしようとしてたのかまで言い当てられちゃって……」

 

 確かアリエッタやエリス──というか魔道士協会が空間α、つまるところ異界の歪みの研究に関わっていたというのは聞いた。となると、研究の目的を導き出すのは簡単だろう。

 

「それでね、皆で協力しようってなって、1つの魔法を組み上げたの」

 

 つまり、今完成しつつある魔法は──

 

「ソフィの元々の研究にね?」

 

「ミツボシさんが黒猫さんと戦って情報を引き出して」

 

「リルムちゃんがそれに気づいて、アイドルの世界の経験を話してくれて」

 

「エリスさんが封印魔法を参考にって明かしてくれて」

 

「アリエッタちゃんが発動式を組んで実験して」

 

「イーニア先生が式を調べて直して」

 

「レナさんが実験中に出てきた魔物を爆破して」

 

「そうして出来たのが、この──」

 

 ──お別れしないための魔法

 

 

 

 ソフィが話を区切ったと同時に、黒い魔力が君の体全体を包み込む。数秒して君の視界が黒から解放されたときには、もう異界の歪みを思わせる光は無くなっていた。

 

 呆然とする君は、嬉しさやら驚きやらで感情がこんがらがっていた。ただ、自分が笑みを浮かべていることだけはわかる。

 

 そんな君を見て、

 

「ふぃ~成功成功。流石天才、アリエッタ! わっはっは、黒猫のひと、もう離さないぞ~?」

 

「ぶっつけ本番だったけど、何とかなったわね。……あなたはアリエッタの秘書でもする? 歓迎するわよ?」

 

 君の手を握ったままのアリエッタとエリスが──

 

 

「お、成功した? 黒猫の魔道士さん、また手合わせよろしくね?」

 

「やったね黒猫の人! グミ食べよ?」

 

『我も小娘もいつになく頑張ったのだぞ? 覚えておけよ、黒猫の。あと小娘、夜にグミは健康を害するからやめておけ──話を聞かんか。それならこっちにも考えがあるぞ。おい、黒猫の。こいつは研究中はお前のためにと初めて熱心に我の話を聞いてくれてっちょ待って振りかぶらないで我のデリカシーが無かったのは謝るからあぁぁぁっ……我、道路に刺さってる……』

 

「おまえも随分と慕われたものだな。ふふ、しばらくここに居るのだろう? 今度こそ魔道士協会に入ってもらうぞ?」

 

「あら。それでしたら、私も楽ができそうですね?」

 

 アパートから出てきた皆が──

 

 

「ね? 叶ったでしょ?」

 

 君の目の前に立つソフィが──

 

 

 ──本当に嬉しそうに笑っているから。何かが込み上げて、君は目頭をそっと拭った。

 

 お別れの言葉は、まだ必要ないらしい。

 

 ありがとう、と万感の思いを込めて、手近なアリエッタから抱き締めた。

 

 




黒猫氏の(UG異界の皆への)好感度が高い。

ネタはそれなりにあるのでしばらく続くと思われます。

――以下今回でたメインキャラの解説――

『君』…多分ミツボシには勝利している。師匠大好きマン。でも異界の皆も大好き。

『ウィズ』…我らが師匠。猫の姿を気に入っているらしい。弟子にはもう少しやりたいことをやってほしい。

『ソフィ』…UWGではヒロイン力が高すぎた。この小説が書かれた切っ掛け。15歳にして世界に名を轟かせる商会を作り上げた傑物。心優しいが強メンタル。

『アリエッタ』…通称怪獣。弱冠12歳の大魔道士。才能に溢れすぎている。この異界に於ける最強の一角。

『エリス』…アリエッタのお目付け役兼元魔道士協会筆頭理事。唯一無二の封印魔法を扱う。魔法の性質上アリエッタを一方的に無力化できる有能。何かと苦労人。アリエッタに胃をやられたらしい。
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