黒猫氏の異界滞在記 作:〈黒ウィズ二次を飽きるほど読む夢〉
今回はいつもよりキャラ崩壊してるような気がするので、苦手な方はご注意を。
寂しがり女神と友人の話
「うぅ……。魔法使いさんに会いたい……」
図書館からこんにちは、聖女のリアラです。机の向こうで呻いているのは、こちらも聖女のクレティアです。
午後の聖女会議としゃれこんでいたリアラとクレティアでしたが、話題が魔法使いさんに移った途端にクレティアが突然へにゃりと机に突っ伏してしまいました。
これまでも会えない期間が長いとこんな症状が出ていましたが、今回は事情がちょっと違います。なぜなら──
「最近クレティアが猫さんを助けたあとにひょっこり来てくれたじゃないですか。それに、それまでは我慢できてましたよね?」
そう。ほんのニ週間前に魔法使いさんが遊びに来てくれたばかりなのです。その前は数ヵ月会えなくても落ち着いていたのを考えると、ちょっと様子がおかしいです。
「いやー、そうなんだけどさ」
顔は机にのせたまま、元気をなくした声でクレティアは呟きました。
「魔法使いさんに次に会うのは、私がどこに出しても恥ずかしくない立派な聖女になってからって思ってたんだよ……。それまでは我慢して、頑張ろうって」
「あぁー、だから頑張ってたのに、ご褒美が先に届いちゃったってことですね……」
「うん。会えてすっごく嬉しかったんだよ? それは本当。でもですねー。会えないからこそ頑張れた、みたいなところもありまして」
顔を上げて寂しげに笑うクレティアをどう励まそうかと悩んでいると、後ろから怒り声が飛んできました。
「二人ともー? そろそろ作業に戻ってくれない?」
何冊かの本を抱えたヒカリさんです。一番上のあれは……お菓子の本でしょうか? ずんずん歩いてきましたが、クレティアの表情を見て目を丸くしました。
「ってあれ、どうしたの? 全然元気ないけど、調子悪い?」
「それなら、部屋で休んだ方がいいんじゃないかしら」
そうこうしているとソラナさんまでやってきて、心配そうな顔をしています。変な形の石を眺め始めた本人に説明させるのもどうかと思うので、ここはリアラが事情を話しましょう。
「実はですね……」
「……というわけで、寂しいみたいです」
「あぁ……体調が悪いわけじゃないのね」
そう言ってちょっぴり安心した顔のソラナさんとは違って、ヒカリさんは難しい顔を崩しません。
「それは良かったんだけど……会えないってだけでここまで調子落としてたっけ? 他にも何かあるんじゃない?」
びくり、と肩を震わせたのが答えでした。それでも迷っている視線に、熱い目力をぶつけます。
「聖女が3人もいるんです! 相談ならお任せです!」
「や、私も聖女なんですけどね……。まぁ、1人で悩んでもダメだったし、聞いてもらうね」
「まずは……えっと、3人はさ、魔法使いさんの匂いってわかる? わかんない?」
「まぁわかんないですよねー。ふつう、そんな嗅ぐようなことしないし。ソラナもそんな首振らなくっていいって」
「いい匂いなんだよ、すっごく。なんか、いろんな人の祝福? 祈り? が詰まってるんだよね。いっぱいの縁と絆、それと魔力」
「あ、その辺はみんな匂いじゃわからないんだっけ。まぁそれは一旦置いておいて……」
「それで、魔法使いさんの匂いがさ。エークノームにずっと残ってるんだよね。薄くだけど、今でもわかるくらい」
「来てくれたのはニ週間も前だし、半日もしないうちにフラクタルに帰されちゃったはずなのに」
「まぁ、そんなことが気になってたわけです。匂いの話が他の人にはあんまり伝わらなかったから、調査できなかったんだけどね。たはは……」
匂いは心に強く影響を与える、というのをノインちゃんから偶然聞いていたリアラにとっては、見過ごせる話ではありません。
「だったら、匂いの出所を探しに行きましょう! 原因がわかるだけでも、もやもやしなくなりますから!」
手伝いを申し出ましたが、クレティアは首を横に振りました。
「今は聖女のお仕事中だよ? そんなことしてちゃダメだって」
「いや、さっきまで呻くだけだったクレティアが言っても説得力がないです」
うっ、とわざとらしく胸を押さえたクレティアにとどめを刺すべく、頼れる先輩方に視線を向けます。
二人とも笑って頷き、立ち上がって話始めました。
「そうね……。もう残りは私だけでも何とかなる量だから、行ってきても大丈夫よ?」
「いやいや、流石に私も残るから。ソラナだけに仕事を押し付けるわけにはいかないって」
「ありがとう、ヒカリ。……という訳で、二人は行ってらっしゃい」
「えっ」
自然な流れで、いつの間にか廊下へと押し出されていました。連携プレイ、恐るべしです。
「それで、匂いでしたっけ」
「うん」
取り敢えずで歩きながら、クレティアから聞き取り調査を始めます。本人には気づけない大切な情報が得られるかもしれません。
「どこが一番残ってる、とかありました?」
「実は図書館にも結構残ってたんだよね……」
「え、そうなんですか。じゃあ戻って図書館から調査を始めたほうがいいです?」
「うーん? 薄くなるだけだったから、あんまり手がかりにはならないと思う。後は厨房とか、どっちかっていうと、こうやって廊下とかで唐突……に……」
「クレティア? どうかしましたか?」
クレティアが突然立ち止まり、鼻をすんすん鳴らしています。これはもしかして……。
「追いますか?」
「走るよ、リアラ!」
「はい!」
クレティアの背を追って走ります。広い建物の廊下を右左へと迷いなく突き進み駆け抜け……。
……とある部屋へとたどり着きました。しかし、お互いに困り顔で立ちすくみます。いくらなんでも、神様の部屋をこんな理由で訪ねてもいいのでしょうか……。
「ここってさ……」
「はい、ですけど……ここまで来たんですし、行動あるのみです」
「そうだね。それじゃ、行きますか」
……目が覚めると君は、リタの私室にいた。ここ最近で随分と見慣れた部屋だ。君の感覚では二日ぶりといったところだろうか。
「あら、今日は来てくれたのね」
嬉しさを隠しきれないリタの声に、招待ありがとう、と手紙をヒラヒラと振って君は応える。ウサギの顔が描かれた、可愛らしさを感じるものだ。
いつかのように無理矢理呼び出されるのではなく、招待状がクエス=アリアスにいる君の手元に届くようになったのはここ二週間のことだ。初日に遊びに行って以来殆ど毎日届くが、当然君にも用事はあるので断ることも多々ある。
今回は仕事を片付け暇ができたタイミングでこうして遊びに来ているため、ウィズはバロンで遊んで……もといバロンにお世話してもらっている。
「いちいちお礼なんていらないわよ……。と、友達、だし、部屋でおしゃべりするくらい当たり前のことでしょ?」
そう、君とリタは友達だ。
しかし、エークノームに来ても、大抵時間がないためにゆっくり話すことはできなかった。リタは、その機会を用意するためにわざわざ招待状をしたためてくれたのだ。
それでも、感謝してるから、と正直に言った君に、頬を少々赤くしたリタが逃げるように口を動かした。
「わ、わかったから……。えっと、お菓子を持ってくるからちょっと待ってて!」
言うやいなや部屋を飛び出して行ったリタに呆気にとられた君だが、偶にあることなので気にしないことにした。
リタを待つ間に、どんな話をしようかと君は考えることにした。
以前は異界の魔物をカードを見せながら紹介したが、一緒にいたプリフィカ含め中々に反応が良かったのを君は思い出した。
やはり、混沌の女神ともなるとああいった魔物に興味が惹かれるものなのだろうか。そう結論付け、君は前回は出さなかった怪物たちのカードを用意し始めた。
カリュプスの腕、深淵の怪物たち、イグノビティウムの王……。並べたカードはただ見た目が凶悪なだけでなく謎の圧力を感じる。
多分、これはダメなやつだ。君はカードをそっと懐に戻した。
やがてリタがお盆片手に鼻歌混じりで帰ってきて、君はお盆に乗ったクッキーに手を伸ばす。
「どう? おいしいでしょ?」
君は深く頷いた。手間隙かけた味がする、と感想を述べると、花開くような笑顔が向けられた。
「実はこれ、ね……その……私が」
何か言いかけたリタの声を遮るように、ノックが響いた。君は目線で応対するのを勧めるが、どちらも動く前にドアが開いた。
『あれ? 鍵かかってませんよ?』
『本当だ』
聞き覚えのある声に、二人揃って苦笑した。お客を二人追加して、友人同士のおしゃべりは続く。
「あなたと二人で話す時間も楽しいけど、賑やかなのも悪くないわよね?」
……君も笑って頷いた。
「そういえばさ。お菓子作りの本ってもしかして、むががっ!?」
「クレティアー!? 大丈夫ですか!?」
「いたずらよいたずら。大丈夫よ、多分」
「多分ですか!?」
……大騒ぎに君は笑うことしかできなかった。確かに、賑やかだ。
二月は忙しさも落ち着く……はずですので、バリバリ書きたいですね……。
アンケートを再びとってみようと思いますので、よろしければご協力ください。次か、その次のお話になる予定です。