――プレイヤー名 ヤガミ……ログインID称号完了
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おかえりなさいませヤガミ様、この世界はあなたの帰還を心よりお待ちしておりました!。
機械的なメッセージが終了すると、腰のベルトに青いデジヴァイスを身に着けて、頭にゴーグルをした青年ヤガミが二段ベットの上の段で目を開けた。
ヤガミが目覚めた場所は、マンションの一室の中にある部屋だった。
部屋の中にはアグモンとガブモン人形が置かれた勉強机と、ヤガミが寝ていた二段階ベット、ほかにはオメガモンが描かれたポスターが壁に貼ってあった。
ヤガミがベットから身を下すと、隣にあるリビングへの扉を開いた。
リビングルームに入ると、ヤガミの耳に寝息の音が聞こえてくる。
寝息の主はソファで眠っていて、呑気に大きな鼻提灯を作り出していた。
ヤガミはそんな様子に一度ため息をついてからすっと息を吸い込むと、眠っているものへ大声で叫んだ。
「起きろおおおおおおお!」
「うわああああああ!? なに!? 地震!?」
「マイルームで地震なんか起こるか寝坊助」
眠っていた者、ヤガミのパートナーデジモンであるアグモンが驚きながら目を覚ました。
首をぶんぶんと振り回しながらヤガミを見つけると落ち着いたようだった。
「びっくりした、驚かさないでよヤガミ」
「びっくりって、このやり取りもう何回目だよアグモン」
「うーん……10回くらい?」
「三桁は超えてるよ……まったく」
ヤガミはやれやれとした顔で、ソファの近くにあるテーブルへと向かい椅子を引いて腰を掛けた。
そしてテーブルをたたくと、ルームの機能の一つであるメッセージの受け取り状況を確認する。
「なにか来てる?」
「とくには……いや一件あった」
ヤガミはNEW!と着いたメッセージを開くと内容を確認する。
「まじかよ、早いなおい」
「どうしたの?」
アグモンがメッセージの内容をヤガミに聞いた。
「前に俺がこのゲームやってるから自分もやるって言った奴の話はしただろう?」
「ええと……確かイズミだっけ?」
「そ、最初にこのゲームを始めるときにスピリットを選んだあいつだよ」
「そのがイズミがなんて?」
「初心者プレイヤーの登竜門、”始まりの試練”を手伝ってほしいってさ」
「あれ? イズミがこの世界に来たのっていつだっけ」
「一週間くらいだな」
「すごいね、ヤガミは大体一カ月くらいかかったのに」
「あの時は攻略ページなんてものもまだなかったからな~」
ヤガミはしみじみとした顔でそう言った。
「で、手伝うの?」
「当然」
「言うと思った」
ヤガミはアグモンと一度拳をぶつけてから、共に扉を開けて部屋から出ていった。
「おっ来た来た、おーいこっちだよー」
ヤガミはメッセージに書かれていた待ち合わせ場所ではじまりの街にやってきてた。
はじまりの街は初心者たちが集まるいわばチュートリアルの街で、周辺を見渡してみれば様々なデジモンたちとプレイヤーがともに歩き回っている。
待ち合わせ場所である噴水には、ニット帽にヤガミと同じくゴーグル身につけた紫色の髪の少女が立っていた。
腰のホルダーにはヤガミとは違い、スキャナーが付いた紫色のデジヴァイスが装備されている
「時間どうりで大変よろしい」
イズミは胸を張りながらそう言った。
「時間通りに来ないとうるさい奴がいるからな」
「時間通りに来ない男は嫌われるわよ、やっほーアグモン元気?」
イズミはヤガミの横にいたアグモンをぎゅっと抱きしめた。
「ちょっヤガミ助けっ」
「相変わらずかわいいなぁアグモンは!」
そのまましばらくアグモンを人形のようにしていたイズミを、アグモンから引き離しながらヤガミは話始めた。
「それで、付き添いってことでいいのか?」
「うん、私の勇士を目に焼き付けてくれたまえ」
イズミは胸を張ってそう言った。
「はいはいそれは油断してやられるフラグ」
「そんなフラグはへし折るまでよ」
「頼もしいことで」
二人と一匹は雑談をしながら始まりの街から移動する。
ナイトモンが守るゲートを越えて、向かう先はクエストが行われるエリアであるファイルフォレストへとやってきた。
ここは成熟期までの昆虫型デジモンたちがいる森で、初心者たちがまず最初に経験値を稼ぐことになるエリアだ。
そのエリアの中心部は広大な広場になっており、その中心には四階建てのビルほどの大きさの巨木が立っている。
「クエストの始め方はわかってるか?」
「当然」
そう言うと、広場の端にヤガミとアグモンを置いて、イズミは躊躇することなく
「イズミ勝てるかな?」
「大丈夫だろ」
そのまましばらくするとイズミが巨木の中から出てきた。
頭の上にはクエストを受注したことを意味する三角形の黄色いアイコンが出ており、クエストの受注は完了したようだった。
顔の横には数字が浮かんでおり60の数字が浮かんでおり、着実に数字が減っていっている。
「ちょっと離れておくか」
「だね」
ヤガミたちは舞いこまれないよう広場から少し離れた場所に移動する。
タイマーの数字が一桁になりついに0になると、巨木の青々と茂る葉のあたりから巨大なデジモンが現れた。
そのデジモンは、二本の角に赤い体をしたクワガタのような昆虫型デジモン、『クワガーモン』だった。
クワガーモンは広場にいるイズミを見つけると、急降下して襲い掛かった。
「グォォォォオッォォォ!」
「クワガーモンおおきいわね……でも、負ける気なんてさらさらないわよ!」
イズミは迫りくる脅威であるクワガーモンに怯まずに、素早くホルダーにセットしてあった紫色のデジヴァイスを取り出した。
取り出した。
デジヴァイスを左手に構え、右手にはいつの間にかバーコード状の光の輪……デジコードが浮かんでいた。
そして、イズミは右手に現れたデジコードをデジヴァイスで読み取り名が叫ぶ
「スピリットエヴォリューション!」
イズミの体をデジヴァイスからあふれるデジコードの光が包み込む、卵のような形となった後デジコードが消え中にいたものが現れる。
そこには先ほどまでいた人間の少女は存在してはいなかった。
代わりにバイザーを付けた蝶の妖精のような姿の人型デジモンが現れた。
「フェアリモン!」
そう名乗ると、フェアリモンは迫りくるクワガーモンの攻撃を飛んで躱した。
「まずは小手調べ!」
【ブレッザ・ペタロ!】
フェアリモンはクワガーモンの真上を陣取ると、両手に指に10の小さな竜巻を作り上げ、竜巻を叩きつけた。
鞭のように叩きつけられた竜巻は、クワガーモンの背中に直撃しダメージを与えた。
「ぐおおおおお!?」
攻撃を受けたクワガーモンは、攻撃を食らいながらもなんとか飛んで脱出に成功する。
そしてお返しと言わんばかりにフェアリモンへと向かって必殺技を放った。
【パワーギロチン】
大きな二つのはさみでフェアリモンを切り裂こうとするが、
「よっと」
という軽い声で交わされた。
負けじと巨木と枝を切りながら、再び切り裂かんとフェアリモンへと旋回してくる。
「うーんこのままでも勝てそうだけど念には念をね」
イズミがそう言うと、再び彼女の周りをデジコードが包み込む
【フェアリモン、スライドエボリューション】
そして再びデジコードが開けると、イズミの姿が変わっていた。
「シューツモン!」
背には先ほどまでのような蝶の羽は消え、代わりに鳥のような翼が生えた。
彼女のもう一つの姿シューツモンである。
「これで終わりよ!」
【ウィンド・オブ・ペイン!】
シューツモンは迫るクワガーモンに対し、目の前で腕回転させすべてを切り裂く大きな竜巻を生み出し攻撃した。
「グアアアアアアアアア」
攻撃を食らったクワガーモンは、大きく吹き飛ばされて行ってしまった。
そしてシューツモンは地上に降りると、本来の姿である人の姿に戻った。
「大勝利ってね!」
「おつかれ」
「おめでとー!」
「ありがと二人とも」
そう和気藹々と話していると、彼らの脳裏に何か威厳のある声が聞こえてきた。
『試練を乗り越えし者よ、汝の道に幸あらんことを……』
そう言い終えると、声は聞こえなくなった。
「これで終わり? なんだかあっけない」
イズミはどうやら不完全燃焼のようだった。
「こんなもんだって、クリアお祝いにどっか寄ってくか?」
「あっならデジタマモンのお店がいい!」
「僕も僕も!」
「お前を祝うんじゃないからなアグモン……ん?」
「なに? どうしたの?」
「し、静かに」
突如として森が騒ぎ出す、近場にいたデジモンたちはみなどこかへと消えて、不気味なくらいに静寂が漂っている。
だが、ヤガミが耳を澄ますとどこからか音が聞こえてきた。
「……あっちか!」
ヤガミたちは音が聞こえてくる方向に目を向けた。
そしてやってくるものの正体を見た。
「なあんだ、さっきのクワガーモンじゃない!」
イズミが安心したように話す、だがヤガミはいまだに警戒を解いてはいなかった。
「来るぞ!」
「来るって何がってぇええええ!?」
驚愕するイズミをよそに、クワガーモンはこちらへとやってくる……
先ほどの一体だけではなく、10を軽く超えるクワガーモン達がヤガミたちのもとへと迫ってきていたのだ。
「今のレベルであの数はキツイってか無理ぃ!?」
「さっきまでの威勢はどこへいったんだ?」
「冗談言わないでよ! 一体だけなら余裕だけど、あんなにいっぱいはまだ無理よ!?」
「そうか、じゃぁ俺たちの出番だな」
「そうみたいだね」
アグモンがヤガミたちの前へと踏み出した。
そしてヤガミは慣れた様子でアグモンに向かってこう言った。
「行くぞ! 相棒」
「うん! ヤガミ!」
「アグモン進化だ!」
ヤガミのその言葉が勝利への引き金だった。
ヤガミは腰につけていた青いデジヴァイスを手に取りアグモンへと向ける。
そしてデジヴァイスの画面に
【アグモン! ワープ進化!】
光に包まれたアグモンは、自身の進化を勇気の光で押し上げて究極の力へと至る。
今ここに現れるは、まさしく勇気の紋章を背負う者! 。
「ウォーグレイモン!」
両の腕に装備されるのはドラゴン型デジモンの装甲を容易く切り裂くドラモンキラー、クロンデジゾイド製の装甲を纏った竜戦士。
背中に装備されたブレイブシールドにはくっきりと勇気の紋章が刻まれている。
アグモンの究極の姿、『究極体ウォーグレイモン』。
「行って来い! ウォーグレイモン」
「おう!」
勇ましい声と共にウォーグレイモンはクワガーモンへと向かって飛び立った。
その速度は先ほどまで戦ったクワガーモンや
あっという間にクワガーモン達のいる場所まで近づくと、ウォーグレイモンは必殺技を放つために力をためる。
重ねた両の手の間から発生した太陽のような輝きは、ウォーグレイモンが天へと掲げ時、まさしく太陽そのものといっても過言ではないほどの輝きを放ちながら、ウォーグレイモンの2、3倍ほどの大きさに巨大化した。
そして、その太陽をクワガーモンへと解き放つ。
【ガイア……フォース!】
落とされた太陽にクワガーモン達はなすすべも無く、データへと消えていった。
ウォーグレイモンはそれを確認するとヤガミたちの元へと戻った。
「おつかれ、ウォーグレイモン」
「おつかれさま、そしてありがとうウォーグレイモン!」
「二人が無事でよかったよ」
ウォーグレイモンはアグモンへと姿を戻し、笑いながらそう言った。
「笑顔かわいいいいいい!」
「うわあ!? ちょっとイズミぃ!?」
「はは、しょうがない奴だなぁ」
イズミは街でやったように、またアグモンへと抱き着いた。
それをまたヤガミが引き離してから、アグモンと引きはがされしょんぼりとするイズミに向かってヤガミとアグモンはこう言った。
「「ようこそ! デジタルワールドへ!」」
こうして、一人の少女が仮想空間に生み出された電子世界の冒険へと一歩、踏み出したのであった。
デジモンたちの物語は終わらない、人々が覚えている限りデジモンたちは存在し続け、僕たちと共に未来を歩んでいくのだから。
――今、冒険が進化する