ナイツ&マジック -緑鶏記-   作:唯乃塵

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弟子を取ろう

 私たちが住んでいるライヒアラ学園街はライヒアラ騎操士学園を擁する城郭都市(フレメヴィーラ王国は魔獣の襲撃に備える為ある程度の人口を擁する都市は全て城郭都市になっている。)であり、しかし基本的に警戒しているのは城壁外からの魔獣の襲撃であり、城壁内側の常時監視はしていない。

 つまり、毎日人が寝静まった夜遅くに高速で屋根づたいに飛び回る怪しい人影があっても、見つかる可能性はほとんどないのである。

 

 

 「それでは今日の走り込みを始めましょうか。」

 準備運動を終えた兄さんはフードをかぶり、身体強化魔法(フィジカルブースト)空気弾丸(エアバレット)を発動して隣家の屋根に飛び上がる。

 私もまた身体強化魔法(フィジカルブースト)を発動して兄さんを追いかけた。

 私と兄さんとでは魔法の運用が異なっている。

 兄さんは高い魔力(マナ)と演算能力を背景に常に高速で立体的に飛び回りながら射撃または斬り込みを行う機動戦闘を目指している。

 自分は魔力(マナ)こそ同等だが演算能力に劣っている(それでも平均以上であるが)ので、並列処理する術式をなるだけ減らし、小威力でも必要演算能力の低い魔法を使っての持久戦闘を目指している。

 そして、現在行っている走り込みは屋根づたいに移動する長距離跳躍が頻繁に必要なコースである。

 よって身体強化魔法(フィジカルブースト)空気弾丸(エアバレット)を自在に使いこなす兄さんを使用魔法を身体強化魔法(フィジカルブースト)のみにしぼって追いすがる私という構図になる。

 そうして走っているとある家の屋根によく似た背格好の恐らく自分達と歳もそう変わらないであろう黒髪の男女が見えた。

 昨日ここであった兄妹であった。

 「こんばんは。また会いましたね。」

 「待ってたんだよ。おまえ達を。」

 少年が応える。

 どうやら、わざわざ私達を待っていたらしい。

 「おまえらすごい速さで走ったり飛び回ったりさ。

あれ、身体強化魔法(フィジカルブースト)だろ。」

 「ええ。よくわかりましたね。」

 「やっぱり。」

 「なあ、俺たちに魔法を教えてくれないか?」

 この兄妹がなぜ私達を待っていたのか納得した。

 フレメヴィーラ王国では魔法は確かに一般的に普及しているが、基本的に基礎式(エレメント)中級魔法(ミドルスペル)の一部までで上位魔法(ハイスペル)を使える人は大凡騎操士(ナイトランナー)か騎士の一部、或いは魔法系の技術者か研究者かのいずれかになるからである。

 そして、これらの職種の子供でもなければ入学前に上位魔法(ハイスペル)を習うことはほぼ不可能である。

 しかし、この兄妹の前に自分達、つまり上位魔法(ハイスペル)を使える人が現れた。

 この状況で騎士や騎操士(ナイトランナー)、或いは魔法系の技術者や研究者として身を立てようと思っているならば、逃がせない上位魔法(ハイスペル)習得の好機だろう。

 「教えると言っても、とても難しい事ですよ。」

 「私頑張る。」

 「望む所だぜ。」

 兄さんは少し悩んだ様だったが、魔法を教えることにしたようだ。

 「俺はアーキッド。そしてこいつが双子の妹のアデルトルート。」

 「アデルトルートよ。よろしくね。」

 「僕はエルネスティと言います。」

 「私は兄さんの双子の妹のエヴェリーナ。」

 自己紹介をしながら私達はフードを下ろした。

 「おまえら、女だったのか。」

 「かわいい。」

 兄さんは少々憮然としながら訂正する。

 「良く間違われますが、僕は男ですよ。」

 「私は女だよ。」

 「どっちもかわいい。」

 何か可愛いもの至上主義のような気配を漂わせるアデルトルートからさりげなく兄さんとアーキッドが盾になる位置に移動しつつ、話を続ける。

 「今はもう遅い時間だからまた明日、改めて説明しましょう。兄さんもそれで良い?」

 「そうですね。では明日の昼過ぎにここから一番近くの南大門の前に集合としましょう。」

 「城壁の外でやるのか?」

 「当然です。火炎弾丸(ファイアトーチ)でも外して火事になったら大事ですからね。」

 「それもそうか。」

 「そういえば、二人とも杖はあるの?」

 「うん、あるよ。」

 明日急いで用意するものは特に無いようだ。

 「それじゃあ、また明日。」

 そう言って私達は二人と別れ、家路についた。

 そして帰宅後、明日、どう言った内容で魔法を教えるか兄妹ですりあわせたのだった。 

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