「本日を以て諸君らの入学を歓迎する。」
「共に王国を守る一員として、文武共に励んでほしい。」
「ようこそ、ライヒアラ騎躁士学園へ!」
ライヒアラ騎躁士学園とは、基礎教育を行う初等部と各専門教育に分かれる中等部、より高度な専門教育を行う高等部から成る、貴族平民問わず9歳から17歳の子供を教育するフレメヴィーラ王国の最大学府である。
入学式を終えて、エルが小走りで何処かへ走り去ってから少しして、初等部校舎階段脇で黄昏れるエルを発見した。
どうやら「先生、幻晶騎士に乗りたいです。(意訳)」と騎士科の教師に突撃して「君はまだ小っちゃいから乗れないよ。もっと勉強しながら体の成長を待って出直しなさい。(意訳)」と流れるように返されてへこんでいるとの事だそうだ。
……昨日父さんに似たような事言われていたのに。
……諦めきれなかったのか。
些か呆れながらエルに視線を送っていると、エルはため息を一つついて気持ちを切り替えるたようだ。
「まあ、仕方ありません。
幻昌騎士にまだ乗れないというのは非常に…、ひっじょうぅぅぅに残念至極ですが、今は将来の為に時間を有効に使うべきです。
…さしあたっては幻昌騎士を好き勝手改造出来るくらいの知識をつける事からですかね。」
「え?
エルくん騎躁士に成りたいんじゃなかったの?」
「当然騎躁士にも成りますよ。
その上で幻昌騎士を好き勝手改造したい!
完全新規の幻昌騎士を一から作ってみたい!
あれもこれも、やりたい事を諦めないというだけです。」
アディの疑問にさも当然と言うようにエルは宣う。
普通なら無理筋な答えだろうが、エルがただ乗るだけで満足出来るはずも無い以上、エルにとっては当然の答えだろう。
「まあ、新型機開発はここ数百年出来てないみたいだから難しいかもしれないけど、騎士団長くらいになれば専用機が与えられるそうだし、そうじゃなくても国機研付きの試験騎躁士にでもなれば改造案の提出も出来るかもしれないから、改造くらいなら案外不可能では無いかもね。」
「それ可能性があるってだけでメチャクチャ大変じゃないのか?」
「キッド、幻昌騎士狂いがたかが大変だと言う程度で諦めると思う?」
「あり得ないな。」
「二人とも僕を何だと思っているのですか。」
「「幻昌騎士狂い」」
「ヒドいです。」
「へこんでいるエルくんもカワイイ。」
不本意な周りの評価を知ってへこむエル。
そして平常通りのアディである。
「それにしても、幻昌騎士の作り方かぁ。どんなもんだかさっぱりだなぁ。」
「幻昌騎士設計基礎という、うってつけ授業があります。
是非にも受講したいですね!」
「学年も学科も違うよね…。」
「張り切ってるなぁ。」
「幻昌騎士設計基礎って魔法学基礎の裏だったね。
エルはどうする?
サボって幻昌騎士設計基礎の方にいく?」
無いとは思うが、万が一サボって幻昌騎士設計基礎を受講すると言い出したらどう止めようかと思いながら、一応聞いてみる。
「そんな事はしませんよ。」
「まずは実力で魔法学基礎の受講が僕には必要ない事をわからせてからです。
おあつらえ向きに次の授業は魔力の測定とやらですからね。」
そう言ってエルは早足に射撃場に向かう。
サボる気は全く無いようだが、入学初日の最初の授業からひどく荒れる事になりそうだった。