この話を見なくても支障は無いです。
二人の天翼種の日常
このエルキア大図書館にいる二人の少女。
一人は翡翠色であり、しかしながら徐々に紫色へと変わっていく肩に乗る程の髪を持ち、首に蒼く、それでいて透明な宝石をシンプルなデザインで作られたネックレスを着けた少女。
一人は美しき桃色の髪を持ち、風が流れない場所でも靡き、その光の反射で綺麗なプリズム色を見せてくれる。
その手には翡翠色の少女から貰った本を愛おしそうに持つ少女。
彼女達の名はアズリール、そしてジブリールと呼ばれる。
そんな彼女達だが、最近は新たなエルキアの王の傍にいる為に知られていなかったが、最近ようやく何も予定もない日があった。
なので今回はそんな彼女達にとっては6000年前からの日常を見ていこうと思う。
エルキア大図書館の中央に置かれているテーブルとイスに隣同士で座る少女達。
彼女達はただ静かに。
ジブリールは手で、アズリールは片腕しか使えない為テーブルに置いて本を読む。
もし、二人はこういう時は楽しく又はイチャイチャしながらお喋りをしていると思っていたなら、意外にもそこに会話は無い。ただ黙々と読み続ける。
二人はこの場所にある本の内容を知っている。
既にエルキア大図書館にある本は全て一度は読んでいる。
それでももう一度読むのは忘れているからでは無い。
本に書かれた文字を読むのが楽しいからだ。
天翼種の記憶力を持ってすれば本の内容を全て覚えていることは簡単だが、それでも本を用いて読むのだ。
今ジブリールが読んでいるのは、恋愛小説というやつである。
その恋愛小説に書かれている事を
基本的に人類種、たまに他の種で書かれており「天翼種ではこんなこと絶対に起きない」と理解しているがそんなものを気にしていたら楽しめないのでそっと隅に追いやっている。
時々ちらちらと隣にいるアズリールの横顔を伺うのだが、本を読んでいる時のアズリールは凛々しく、たまにふふっと薄く笑っていてそれを見てはゆっくり顔を本に戻し、何も無かった風に写るが内心では「可愛い可愛い!」「かっこいいかっこいい!」と頬を両手で挟み身体ごと左右に振りながら叫んでいるのが見えなくもないが。
それに対しアズリールが読んでいる本とは。
と、言っても好き好んでこのジャンルを読むというのが無い。
何も考えず適当にふらついて適当に止まってはその手に掴んだ本を読むだけなのだ。
それが昔話の様な本ならば「そういえばこんな事あったにゃあ」と、実際に見ていた場合に限るが当時の記憶を思い出しながら本と記憶を照らし合わせる。
それが恋愛小説という本ならば「こんな事うちもしてーにゃ〜」と、ジブリールと同じく欲望に忠実である。
無論こちらも天翼種だからどうこうと言った話は気にしてない。
というよりは何も考えてないだけなのだが。
それが専門書の様な本ならば「暇だから読んでるけど何で読んでんだろにゃ?」と、天翼種の記憶力故に理解出来てはいるが「そもそも使い時あるか?」と。
それが料理のレシピなどが書かれた本ならば「あ〜、美味しそうにゃ。うちもジブちゃんに美味しく作ってあげたいにゃー。…はぁ」と、自身の腕を使えない事と下手くそという二つの意味で理解し悲しみに浸かる。
因みにあれから料理の腕が上がったかと言えば、ジブリールは「美味しい」と言ってくれるが他は「まぁ…
とまぁ、こういった感じでありアズリールは本を読む事は好きだしもちろん楽しいのだが、どちらかというと『ジブリールと隣同士で静かに本を読む』という事が好きなのだ。一人より二人、ジブリールのいるいないはアズリールにとってはとてもでかい訳で。
丸一日喋ること無く本を読んでいたなんて事もある。
まぁ、それはたまにある事であり今回は起きなかった訳で。
お昼頃になるとジブリールが昼食を作ってくれる。
本来天翼種に食事も睡眠も必要ないと分かっているがアズリールは「したいから」と続けている。
それに影響を受けてジブリールも真似る。
無論、ジブリールの作ったものはアズリールからすれば「美味しすぎる!!」と言った具合である。
一応料理の上手さを数値化し1~100とした場合。
アズリール──『15』──
ジブリール──『100』──
ステファニー──『130』──
といったところだろう。
あれ?おかしいなって思っただろうけど一般的に見たらこれで合ってるんです。
無論アズリール視点なら。
アズリール──『-100』──
ステファニー──『130』──
ジブリール──『1000』──(許容上限値)
といった感じで補正が掛かりに掛かりまくってカンストする、といった具合になる。
ジブリールの方はアズリールの『15』という数値が自分と同じ位になるだけなのでさっきと比べたらマシに見える。
しかし、アズリールが自力でジブリールと同じ所に行ければ、ジブリールも同じく許容上限値をカンストするのも事実。
さて、お昼が終われば二人はまた本の世界に戻る。
たまに外に行く事もあるが今回はそれらを抜きにした日常なのである。
といってもここからは先はとんとんと進む。
別段やる事が変わって無ければ語れることも無いわけでそのまま夜まで時間は飛んだ。
夜ご飯も食べ片付けも終わりベッドへと場所は移る。
ジブリールが右側、アズリールが左側。
キングサイズのベッドの上に二人は寝転がりこの時に本を読んでいた時の静寂分を話したりもするのだ。
そうすると、うとうと、と瞼が閉じてきて意識が落ちる。
今回はアズリールが寝落ちし、そんな彼女を愛おしいく、慈愛に溢れるような手つきで撫でていく。
ジブリールが寝落ちすれば、アズリールも似たようにする。
ただ二人の違う点を挙げるとアズリールは頭を撫で終わり自分も寝るのだが、ジブリールはアズリールの右手を手に取り自分の胸の中央まで持っていき、その手を両手で掴み抱いて最後にその顔を見て意識を落とす。
そして日が昇り、朝になれば基本的にアズリールが先に目を覚まし隣で自分の右手を持ち「すぅ…すぅ…」と寝息を立てて眠るジブリールを見つめる。
毎度毎度その顔を見つめれば出てくる感想は
「…うちの彼女、可愛すぎ…!?」である。
数分か数十分、時間が経てばもう一人の少女が目を覚ます。
目を擦り、ゆっくり身体を起こして、彼女の頬におはようのキスをする。
それを当たり前の如く受け入れ、ジブリールの小さな声がアズリールの耳に届く。
「……おはようぅ、ございます」
「おはよ、よく眠れた?」
「…はい、お陰様で」
「そっか!よし、今日もよろしくにゃー!」
「えぇ…♪」
短い会話と挨拶をして、新しい一日が少女達を迎い入れる。
何も変わらない、時に違った、そんな日常。