アズリールになったので自分に正直に生きます   作:ミレニア

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簡単な事

時は遡り一日前、つまり20日。

図書館にて一人の少女が。

 

「やった、遂に出来た、ふふふ、にゃはははは!」

 

高笑いして何かを作り出した事に喜ぶアズリール。

 

「イメージを紙に写せる魔法…つまり超能力の念写の魔法バージョン…でけたーー!!」

 

ようはイメージや考えてる事、なんなら記憶を紙に写せる魔法を作ったらしい。

 

「制作期間…覚えてない…けど、だるかった…!

でも、これで…ジブちゃんとの思い出を写真に残せるぞおおおおお!!!」

 

高く両腕を上げたいが出来ないので小さくガッツポーズして。

基本だるい事やめんどくさい事などしたくないアズリールだが、ジブリール関連ならばガチで取り組む。

ジブリールが空と白を倒そう、なんて言った日には速攻 「 」に挑みそうだ。

 

「っと、その前にジブちゃんにプレゼントをあげるって約束したんだった。

だが、もう決まっている、この魔法が完成したからな!」

 

誰に喋っているのだこの天使は、と第三者が見ていたらそう突っ込むだろう。

 

「うちの次に好きな本をプレゼントする!

そう、うちの!次に!好きな本!」

 

ジブリールは大の本好きだが、その本より上に立っているぞ、と自慢でもしたいのか。

 

「この世界の本はまだ読んでないのもあるけど大体読んだしこの図書館にあるから、この世界のはダメ、なら元の世界の本を作ればいい!

うち天才!褒めて!ジブちゃん!

あ、居ないんだった…」

 

独り言が激しい天使ってそれだけ聞いたらなかなか悲しいものである。

ようはアズリールの記憶にある元の世界の知識を本にコピーをする。

ただそれを繰り返す。

 

「今だけは退屈だった日々に感謝するぜ。

おかげで本の知識には自信あるからな…!」

 

一人になるとよくキャラ崩壊が起こる。

安心してください、ずっとアズリールです。

そこからはただただ同じ事を繰り返す。

本を取り紙一枚に知識をコピーする。

特に喋ること無く本を作る。

気がつけば一日経っている。

 

「ふぅ、流石に精霊を使いすぎたかな、今回はここまでにしよっと。

…あらま、日が変わってるじゃないか。

しかも昼位。

んー、これはそろそろかな」

 

そう言って椅子に座り待つ。

十分もしないうちにジブリールが転移して。

 

「アズ!よかった居ましたか!

今すぐマスターの元へ来てください!」

 

「わかった〜」

 

そして二人は消える。

 

 

───エルキア王城──王の寝室前──

 

アズリールを連れてきたジブリール。

 

「んにゃー、分からなかったかにゃー」

 

自分が呼ばれたという事はそういう事、と理解する。

 

「ごめんなさい、私達ではどうする事も…」

 

「お願いします、アズ…」

 

二人は申し訳ないように頭を垂れる。

 

「それはいいんだけどにゃ、白ちゃんも分からなかったかにゃー」

 

その言葉に扉の向こうにいる白は疑問を持った。

何か、見落としてる…?

 

「よーし、なら言おうかにゃ。

うちは『空』を知っている」

 

「「「えっ」」」

 

白も含めた三人がその言葉に驚く。

ぽこっと音がする。

 

『なんで知ってるの?』

 

その問いにアズリールは笑う。

 

「にゃはは、白ちゃんでもこんな簡単な答えを見つけられないなんて事あるんだにゃ」

 

白は考える。

 

簡単?

…あれ、そういえば、アズリールって。

 

白が答えを見つけると同時にアズリールは答える。

 

「そもそもうちは“記憶“、失ってないにゃ」

 

ジブリールとステフは驚く事しか出来なかった。

 

「な、何故記憶がアズにはあるのですか!?」

 

その疑問を真っ先に問うジブリール。

 

「ジブちゃんは空をマスターとして認め従者になったから盟約の範囲内、でも、うちは?」

 

その答えに二人はハッとする。

 

そもそもアズリールはずっとついてきてるだけ。

ただ、一緒に居るだけ。

 

「そう、盟約の範囲外、つまり獣人種達も空を知っているにゃ」

 

白は自分を自虐する。

白の馬鹿、その事に早く気がつければ、と。

 

「それじゃあ次、これは白ちゃんがちゃんと解くにゃ」

 

「…うん」

 

扉の向こうから声が聞こえ。

 

「一つ、何でそこにいる?」

 

白は考える。

 

何でそこにいる?

起きた時にここに居たから。

…ここに…居た…?

何故?ここは今、ステフの部屋なのに。

何故そこに自分が寝ているのか。

 

「二つ、空の言葉。

うちからはここまでにゃ、後は頑張るにゃ」

 

そう言われ、考える。

 

確か…

 

白、俺はお前を信じてる。

 

白、俺らは、いつも二人で一人だ。

 

白、俺らは、約束で結ばれてる。

 

白、俺らは、少年漫画の主人公じゃない。

 

白、俺らは、常にゲームを始める前に勝っている。

 

その時は意味が分からなかった。

 

だけど、今ならわかる。

 

白と空は、いつも二人で一人。

 

兄は自分を一人にしない。

 

つまり、この部屋に兄はいる。

 

二人で一人、なら自分もこのゲームに参加している。

 

兄は言った。

 

常にゲームは始まる前に勝っている。

 

ならばこの気が狂いそうになった状況も全て想定内、わざと行った行為。

 

兄は言った

 

俺らは、少年漫画の主人公じゃない、と。

 

少年漫画の主人公、それは成長するもの。

 

この場合、白が成長するフラグ。

 

空抜きでもやれるようになるが、兄はそれをハッキリと否定した。

 

兄は言った。

 

俺らは、約束で、結ばれている、と、

 

自分達は、二人で一人。二人で、完成品だと。

 

兄は言った

 

最後のピースを手に入れて来ようぜ、と。

 

つまり、東部連合との勝負を有利にするもの。

 

なら、敵は東部連合ではない。

 

なら誰だ。

 

しばらくして。

 

「国王選定戦で…たたか、った…人…」

 

その答えに、アズリールはにっと笑い。

 

「……あり、が……と……」

 

それだけ言い残し、白は意識を無くした。

 

-----------------------

 

白が意識を取り戻した。

そこからは早かった。

次々と仕掛けを解いて。

白がオセロの手を一手進める。

その瞬間アズリール以外の全員が襲ってきた頭痛に頭を抑える。

 

「いっ、た…な、なんですの…」

 

「っっ……思い…出しました。

ゲームのルールとはいえ、マスターを忘れていた…とは」

 

仕方の無い事とはいえ、申し訳なさに頭を垂れる。

ゆっくりとオセロは進む。

見えない相手が置けばひっくり返り、白が置けばその倍はひっくり返る。

そして聞こえてくる声は。

 

空の勝利。

そう響く声に。

直後に空が現れて。

 

「よし白、殴っていいぞ。覚悟は出来て──」

 

だが、迷うこと無く空の胸に白が飛び込む方が早かった。

 

「…ごめん、なさ、い……ごめん、なさい…もっと、はやく…!」

 

大粒の涙をこぼす白を撫でながら。

 

「お前ならやってくれると信じてたぜ?」

 

「やっぱり分かってたかにゃ〜、このこの〜」

 

空の頭をぐりぐりとする。

そんな楽しげな雰囲気も一人の少女の声によって壊される。

 

「クラミーッ!ねぇクラミーッ!

聞こえないのですッ!?」

 

皆が声が上がる方へ向く。

必死の形相でクラミーという少女を呼びかける森精種の少女、そして。

無気力に、いや、抜け殻、死体のように力なく崩れているクラミー。

空がどう勝ったのか、ステフには分からない。

だが、一歩間違えれば空がそうなっていた結末に、震えた。

 

「さて、俺"ら"の勝ちだな。第一要求といこうか」

 

空の言葉に、森精種の少女が悲鳴のように懇願する。

 

「待っ、どんなことでもするのですっ!

クラミーを、こんなにするのだけはっ!!」

 

だが、空は一切の温度を無くした瞳でそれを見返す。

 

「俺が負けて、白が同じことを願ったら、お前らはそれを飲んだのか?」

 

空の言うとおり、彼女が同じ立場なら歯牙にもかけなかったはずだ。

 

「む、虫が良すぎるのはわかっているのですっ!

で、でも要求内容は変更可能に設定したのはそっちだったのですよっ!

わ、わたしをどうにでも好きにしていいのです!

クラミーを、こんな……こんなにするのだけはっ!」

 

その言葉に、空は悪魔のような嗜虐的な笑みで、死刑執行人の鉈を振り下ろすように。

 

「だ〜め♪予定通りの要求をさせて貰う。というわけで」

 

「や、やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!]

 

「要求一、互いの奪い合った全ての記憶の定着と、奪い合った全ての返還。」

 

「「「「…え……?」」」」

 

その一言に、一同が揃って同じ音をこぼし。

 

「かはっ!はっ…はぁ…」

 

同時、クラミーが呼吸を思い出したように意識を取り戻す。

だが、目が覚めても虚空を見つめ続けるクラミーに、少女が駆け寄る。

 

「クラミー!クラミー!大丈夫なのです!?自分がわかるのです!?」

 

必死な少女の声に、だが、クラミーは呆然と虚ろな目を続ける。

それから、何度も身体を揺さぶられ、ようやく気がついたように。

 

「ええ…うん、私は、大丈夫…むしろ……」

 

とクラミーは震える自分の肩を抱きしめ、悪夢のように空を見た。

 

「あの男が、空が大丈夫な理由が、理解できないで、上の空だっただけ」

 

瞬間、盟約の実行に、ジブリールと森精種が作ったゲーム盤が爆音をあげる。

その様子に、もっとも冷や汗を流したのは、意外にも、空だった。

 

「あ、危ねぇ…ジブリールの"核"があってさえ、この要求はギリッギリだったか…」

 

原理的不可能性を有する契約は順守出来ない。

空の要求は、あのゲーム盤の全魔力量でも足りるか怪しかったわけだ。

 

「空、確かにこれからは危ない橋を渡れるだけマシなゲームをして行くんだろうけどにゃ、もう少し、さ」

 

「…そうだな、手段はもうちょっと選ぶようにするよ。

正直、想像を超えてたわ」

 

「それ、絶対にこっちのセリフよ…」

 

空の記憶を見て、過去を知って、そして疑わずに居られないクラミー。

恐怖に顔をひきつらせ。

 

「なんで、こんな経験をしてまともでいられるのあなたっ!?」

 

クラミーが何をもって、そう叫ぶのか。

ゲーム中の空の心境すら最後には奪われていたなら、見たはずだろう。

そのことかもしれないし、もしかしたら、

白さえ知らないことかもしれない。

だが、唯一その全てに心当たりがある空も、意外そうに一同に問う。

 

「え、俺ってマトモに見えるか?」

 

いいえ。

全員が首を横に振って。

 

「それに引きこもり、ニート、コミュ症、さらに童貞…君に残ってるのはなんだろにゃ?」

 

「薄汚いゴミのような命です…」

 

ボロクソに言われ一瞬そうだ、死のう、と思い床に跪いて涙を流しす空がいた。




あずじぶ絵もっと増えないかなー。
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