あれから何やかんやあり、森精種の少女とクラミーがスパイをする事になった。
その翌日、エルキア城の小さい会議室にて。
空と白、ステフ、ジブリールとアズリール、クラミーと森精種の七人が集まる。
「集まってもらったのは他でもない、俺達はこれから『共闘』する仲だ。
だったら、自己紹介をしようではないか」
そう言って空はクラミーを見る。
「そうね、なら私からさせてもらうわ。
クラミー・ツェルよ。よろしく」
………。
「え、それだけですの?」
「自己紹介なんてこんなものでいいでしょ?」
コホン。
「…えー、歳は俺と同じ18歳。
身長は158cmでスリーサイズは上からぁ…」
「ちょ!?あんたそれ卑怯よ!?」
「ついでにクールを装ってるけどピンチになったら子供のように泣くにゃ」
「なんで知ってんのよ!」
「え、聞いたからにゃ?(嘘だけど)」
若干目に涙を溜めてるクラミー。
「と、取り敢えず…フィーを紹介しないと説明が出来ないわね…」
「はぁい、フィール・ニルヴァレンなのですよー」
柔らかそうなふわふわのカールが掛かった金髪から森精種特有の長い耳を覗かせ、見た目十代中盤程の少女。
「フィーは…幼馴染。
正確には…私の主人、だけどね」
一瞬、意味が分からない様子の白にジブリールが解説する。
「エルヴン・ガルドは民主国家ですが、位階序列で自分達以下の種族を盟約で縛る事を推奨しています。
つまり、『奴隷制度』を採用しております」
「え…じゃあクラミーは……」
こくりと頷き。
「えぇ、曽祖父の代からニルヴァレン家の奴隷。
生まれも育ちもエルヴン・ガルドよ。
まぁ、その男に比べれば大したこと無いわよ。
誰だって苦労の一つや二つするものね」
言葉を失うステフ。
でも、それより、そんな出来事を体験したクラミー当人をして大したことないと言わしめる、空の過去にステフやフィール、ジブリールとアズリールまでも、疑問を覚えた。
「まぁ、よくある話よ。
奴隷の私をフィーだけが友人として扱ってくれた。
けど奴隷を友人扱いしてるなんて家名に傷がつく所の騒ぎじゃないから、表向きはそんな素振り見せれないけどね」
「私はぁ、それがす〜〜〜ごく気に入らないのですよぉ?」
「ニルヴァレン家はエルヴン・ガルドでも名のある家よ。
代々上院議員の末席に名を連ねてきたし、先代当主が昨年、鬼籍に入ってからフィーが事実上の家長──」
と、そこで話を呼んで、反応したのは。
「─じゃあフィールさんはエルヴン・ガルドの次期選挙まで上院議員代行……って上院議員が奴隷解放運動を企ててるって国家反逆じゃないですの!」
…確かにそれは、世界最大国家の、とてつもないスキャンダルだが。
だがそんな事より、全員の視線がステフに注がれる。
「ス、ステフ、が…話、に…つい、てこれ、た…?」
「大丈夫か、ステフ!熱があるなら言えよ!
まさか、病気か!?」
「ドラちゃん。いくら心配されるのが嫌だったとしても自分の体調の悪さは伝えた方がよろしいかと」
「大丈夫にゃ?一人で医師の所まで行けるかにゃ?肩、貸そうかにゃ?」
「あなた達揃って何なんですのよ!
いい加減バカのレッテル剥がして頂けません!?
政治については国政全てを丸投げしてるどっかの王様二人より詳しくなきゃ務まらないんですのよ!」
「…大変ね、あなた…」
割と本気で(アズリールはわざとだが)心配してた三人。
四人に怒るステフを少し同情したクラミー。
「えーっと、フィーって呼んでいいか?」
「いいのですよ〜」
「フィーはいいのか?それで」
「はぁい?何がですかぁ」
「俺達に協力するのは、エルヴン・ガルドの破滅に繋がるかもしれんぞ?」
そう、クラミーが口にしたように、空が企てるのは東部連合、その先。
「はぁ、でも、まぁわたしはぁ、クラミーが傷つかなければなんでもいいのですよぉ。
家とかどうでもいいですしぃ、議会がうるさいのでぇ、いっそ国ごと無くなれば話が早いのにと思った事もあるのですよぉ」
…さらりとえげつない事を言う。
「にゃ〜、空ぁ〜」
「ん?何だ?」
「ちょっとうちとジブちゃん抜けていいかにゃー」
「あぁ、別にいいぞ」
「ありがと、それじゃ、ばいにゃ〜。
さっ、行こうにゃ〜」
「はい♪」
腕を組んで消える。
「…あの二人、何をしに行ったのかしら」
「さぁ、まぁ、アズリールの事だ。
何か考えがあるのかただジブリールといちゃつきたいだけだろ。チッウラヤマシイ」
「はぁ、ほんと天翼種同士が付き合ってるって貴方の記憶を見ても信じられないわ…」
じかぁい、じぶあずかぁい