アズリールになったので自分に正直に生きます   作:ミレニア

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二人の天翼種の日常 バレンタイン編

 

今日は二月十四日。バレンタイン。

友人などには義理チョコというものを渡し、そんな義理すら貰えない悲しき人達はこの世界にもいる。

その中には稀に、本命チョコなどという一部人からは都市伝説なのでは無いかと言われるほど。

そして、ここに一人。日頃の感謝に愛しているの気持ちを込めて本命チョコを作り、渡そうとする少女。

 

「………………………」

 

少女、アズリールはただ願っていた。

どんなに感謝や愛を込めたところで残念ながらそのお菓子が美味しくなることは無い。

天翼種だったら想いの力で料理を美味しくする魔法でも作れたりしそうだが。

この場にはアズリールの他にステファニー・ドーラことステフは今回もその腕を買われてお願いされた立場である。

ステフも忙しい状況であったが、アズリールとしてはなんとしても間に合わせたく土下座も覚悟で頼み込んだ。

 

「………………………」

 

「…………どう、ですかにゃ」

 

ゴクリ、と飲む音が聞こえてくる。

 

「………アズリールさん」

 

「………はい…」

 

「───ですわ」

 

「…え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「合格ですわ!!!」

 

「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

一ヶ月。暇があればバレないようにチョコを作り続け、美味しく出来る努力をし、ついに報われる。

 

「普通に美味しいですわ。おめでとうございますね」

 

「マジにゃ?マジだにゃ?!本当に美味しいんだにゃ!!?」

 

再度美味しいですわの声を聞いて、感傷に浸る。

料理の腕は最低値。お菓子の腕など以ての外。

更には片腕縛りの困難続き。だが、それでもと諦めずにこの日の為にと頑張ってきた。

おかげで翌日にokを出されるというギリギリになってしまったが。

 

「あぁぁぁぁー、よ゛が゛っ゛だ゛にゃ゛ーーー」

 

「今までお疲れ様ですわ。ジブリールも喜びますわよ」

 

「本゛当゛に゛ス゛テ゛フ゛も゛あ゛り゛

が゛と゛う゛!」

 

「ええまぁ大変でしたけど、そこまで喜んでもらえたのでしたらよかったですわ」

 

泣きながら感謝を告げる。

あとはもう一度、ジブリールの為に用意する本命チョコを作るだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──エルキア大図書館─キッチン──

 

二人の天翼種が住むエルキア大図書館。

その片翼が自前で作ったキッチンに二人の存在。

それはジブリールとフィールであった。

二人はいつもの如くしていたが、フィールからもうすぐバレンタインの時期ですね〜と教えてもらい、ならばと翌日にチョコ作りに二人で励む。

そして奇しくも同時刻に、ステフとアズリールも同じチョコ作りに励んでいた。

 

「フィール、やはりチョコを渡すべき形はハート以外に無いですよね」

 

「当たり前じゃないですかぁ。好きな子にぃ、思いを伝えるにはストレート!なのですよぉ〜」

 

この二人はよく料理をする方であり、お菓子作りはあまりジブリールはしない方だったが、それでも安定度は凄まじい。

二回ほど試しにチョコを作って問題なく出来たので、本命作りにはいる。

小さなハート型の容器にチョコを入れて、それを何個か用意し冷やす。

シンプルだが一番伝わりやすい。

だが、この冷やしている待ち時間に一つ思いつく。

 

「あの、フィール。チョコレートケーキを作ってみません?」

 

「それはいいアイデアなのですよ〜」

 

やるならとことんやってしまおう。

そうして二人はチョコケーキ作りに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アズリールとジブリール。

お互いが立ち、向き合って、手を後ろに置く。

改めてこうしてやるのは中々恥ずかしい。

おずおずとした動きから、いつ言おうか悩んでいるらしく、攻めあぐねてる。

 

「あ、あの!」「ね、ねぇ」

 

被った。

 

「あ、いや、ジブちゃんが先に…」

 

「あ、いえ、アズからどうぞ…?」

 

またしても沈黙が訪れる。

ただチョコを渡すだけだというのに、その行為が恥ずかしくなってくる。

これでも六千年の付き合いだというのだから、慣れないのかと聞かれれば、なんとも言えないところではある。

 

「そ、そう?じゃあ、これ…」

 

そう手渡しするアズリールは恥ずかしがるように目線が少し横を向いていて、顔が全体的に赤くなり動きが落ち着かないといった様子。

それを受け取り、自分もと。

 

「で、ではアズ、これを…!」

 

そう手渡しするこちらも恥ずかしがりながらも目線はアズリールに釘付けであり、頬がほんのり紅がかる。

アズリールはそれを受け取る。

ジブリールは貰ったチョコを優しく抱きしめるように持ち、顔はにこやかで翼が上下に動いて嬉しいと表現するかのよう。

アズリールはその右手に持つチョコをじっと見て、口から笑みが零れる。

内心は嬉しすぎて転げ回っているのだが。

 

「あ、それとチョコレートケーキもあるんですよ、食べますか?」

 

「え、本当?食べる食べる!」

 

運ばれてきたチョコケーキは丸く、砂糖が振りかけられており、その周りを生クリームで囲われているシンプルなもの。

 

「美味しそうなのにゃ〜!」

 

チョコの件で盛り上がっていたところにもう一つ、ケーキという形で現れて、アズリールのテンションは上がりまくりである。

 

「本当にありがとうなのにゃ!!」

 

「どういたしまして。私もありがとうございます、アズ♡」

 

「どういたしまして!にゃはは、よーし、ついでにキスしちゃえ〜!」

 

「ぅえ?アズ───!?」

 

強引に口を合わせ、舌を入れる。

舌を絡ませ数秒数十秒と過ぎて離れる二人の口からは薄い糸があり10cm程離れるとぷつりと切れる。

アズリールはにこにこと、若干顔も紅いが本人は気がついてないだろう。

 

「にゃははぁ、久しぶりにした気がするにゃ〜?ジブちゃんをご馳走様!にゃひひ!」

 

「──も、もう!アズのばか!もう少しゆっくり…じゃなくて一言下さいよ!嬉しかったからいいですけどぉ

 

顔を真っ赤にし、油断していたのもあるが久しぶりというのも原因の一つであり、それでもぱたぱたと動く翼は正直者だった。




作成時間2.3時間程。回らなかった頭で急ぎました。
今日バレンタインじゃんと思いやりたくなった。
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