流星のロックマン Arrange The Original 2.5 ~ツカサ外伝~ 作:悲傷
約三年も放置してしまい、申し訳ありません。
流星のロックマン Arrange The Originalシリーズ、ここに復活です!
と言っても、今回は2と3の間に当たる、オリジナルストーリーですが……。
またご愛読していただければ幸いです。
それでは……どうぞ!
・2020/08/12
大幅修正
お願いだ。もうやめてくれ……
何度そう願ったことだろう。何度そう頼んだことだろう。
絞り出した声は罵声に飲まれて、誰にも届くことなくかき消える。続いて頬を打つ痛み。地面に手をつくと、背中に鈍い痛みが走る。蹴られたのだ。
お願いだから……やめてくれ……
痛い。痛い痛い痛い……。
頬が痛い。背中が痛い。でもそれよりも……胸が痛い。こいつらの……自分よりも一回り年上の子供たち。体が大きいのを良い事に、弱い者虐めをするくだらない連中。その口から放たれる言葉が……抉ってくる。少年を深く傷つける。
親無し
捨てられた
いらない存在
痛いよ……痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い
やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて
お願いだから、もうやめて……。懇願すれば、髪を引っ張られた。
お願いだから……もうこれ以上、追い詰めないで。出てきてしまう。あいつがやってくる。
ここにいてはいけない。逃げようとする。また髪を引っ張られた。女みたいだと笑われながら。ダメだ。いけない。そう、少年はここにいてはいけないのだ。ここにいたら……危ない。危険だ。この子たちが……危ない。
なんとか振り払おうとする。ガツンと音が鳴る。後頭部……意識が……遠、く……。
気づいたとき、少年は立っていた。次に飛び込んできた光景は、倒れている子供たち……。さっきまで少年を虐めていた者たちだ。
ああ……と声を漏らした。また……だ。また……やってしまった……。手が震えてくる。そこにある感触を理解しながら、それが夢であってほしいと願いながら、ゆっくりと持ち上げる。ある。確かにある。感触が残っている。確信する。これをやったのは……あいつだ……。また、あいつがやったのだ。
ふと前を見ると、あいつがいた。
少年を馬鹿にする同級生を、あいつが殴る。
少年に突っかかってきた上級生を、あいつが殴る。
少年に説教と言う名の悪口を言ってくる大人を、あいつが殴る。
止まらない。あいつは止まらない。
止められない。少年はあいつを止められない。
あいつの姿が変わる。黒い体つきで……額には一本の角。右腕側だけに取り付けられた装甲。笑っている。あいつが笑っている。高らかに……声を上げて。
やめて……くれ
声を上げる。虫の様な声で……。あいつが振り返る。口角を上げて、左手である場所を指さす。そちらを見る。一人の男の子がいた。赤い服を着ていて、何より目立つ癖毛に、額にかけた緑色のサングラス。胸元には流星型のペンダント。
首を振る。ダメだ。彼だけは……彼だけは……。
そして少年は気づいた。自分の姿に。白い体つき……額には一本の角。左手側だけに取り付けられた装甲……。
ああ……自分は……自分は……
違う……違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
「ツカサくん?」
ハッと目を覚ました。
目の前に男の子がいた。癖毛に、額にのせた緑色のサングラス。赤い服に、胸元にはペンダント。
「……スバルくん?」
ツカサはゆっくりと首を横に振った。
「……ここは?」
「おいおい、立ったまま寝てたのか?」
スバルと呼ばれた少年のポケットから、低い声がした。スバルが取り出したのは携帯端末だった。その液晶には青い体をした獣の様な生命体がいた。獣と違う点を上げるとしたら、緑色の炎を思わせる背中の鬣と、鋭い爪を携えた腕があり、足がないことだろう。
「いや……違うよ。考え事をしてたんだ」
ツカサは大きく息を吐くと、潮の香りを感じた。聞こえてくる波の音。照りつける太陽光に、混じってくる黄色い声。
「あ、そっか……海に来てたんだよね」
視線の先には友人たち……ルナ、ゴン太、キザマロ、ミソラがいる。
「ねえ、やっぱり寝ぼけてる?」
「そうかもね」
何をしているのだろう、自分は。大切な友達と一緒に海に来ているというのに、こうして海岸に突っ立っているというのに、それを忘れていたなどと。
「それより、早く水着に着替えようよ。ゴン太とキザマロが待ってるよ。するんでしょ、パンツ破り」
「…………………………うん」
たっぷりと二秒ほど間をおいてツカサは頷いた。
「ずっと気になってたんだよね。男にのみ許された禁断の必殺技なんでしょ。どんなのなんだろう?」
笑えない。こればっかりは笑えない。パンツ破り……それが鬼畜の所業であることを知らず、純粋な目をしているスバル。この後、彼がどんな顔をするのか……微妙な顔でごまかすしかなかった。
スバルは一足先に駆け出していく。ゴン太とキザマロが手を振ってくる。ルナとミソラも手招きする。
一歩足を踏み出す。少しだけ踏みとどまると、彼は駆けだした。
◇
「パンツ破りがあんなものだったなんて……」
ツカサの隣では、スバルが疲れた顔で肩を落とした。夕日がもたらす線状の光と合わさって、どこか痛々しい。ツカサは苦笑いをするしかない。
「無事でよかったね、パンツ」
「うん……母さんに謝ることにならなくて良かったよ……ゴン太はアウトだったけれど……」
「あれね」
「うん、あれ」
ブツンという盛大な音と、その時のゴン太の顔を思い出して「プクク……」と二人は吹き出した。笑っちゃ悪いとは分かってるが、これを我慢するのは無理というものだ。ちなみに、スバルのスターキャリアーはガタガタと震えている。ウォーロックが大爆笑しているのだ。
そんな二人の笑い声もすぐに小さくなっていく。分かっているのだ、二人とも。
「もうすぐ、行っちゃうんだよね……」
「……うん」
ツカサは小さく頷いた。もうすぐ波乱の連続だった夏休みが終わる。ツカサ達が通うコダマ小学校にも新学期が訪れる。生徒会長選挙が始まるので、ルナはゴン太とキザマロをこき使うだろうし、スバルもつき合わされるだろう。忙しいだろうが、そこにはやりがいと青春があるはずだ。
ただその中にツカサは加われない。転校するからだ。
「やっぱり、どうにもならないよね」
「……仕方ないんだ。孤児院側にも都合があるから」
ツカサは孤児である。世話になっている孤児院の都合により、ツカサは別の施設に移動することになっている。どんなやり取りや打ち合わせがあったのかは分からないが、知ったところで子供が関与できる話ではない。
これが最後なのだ。ツカサが皆と作った、最後の思い出だ。
「……スバルくん。また、会えるかな?」
「会えるよ。っていうか、会おうよ」
「……うん」
ツカサとスバルの暗い雰囲気を察したのだろうか。ツカサのスターキャリアーからポンと何かが飛び出した。黄色い光の塊のようなやつで、中央より少し上の部分には白い仮面がついている。
「ジェミニ、大人しくして」
ツカサが柔らかく声をかけると、スッとジェミニは戻ってきた。
スバルのスターキャリアーからもウォーロックが出てきて、ジェミニを訝しげな眼で見た。
「……今日も思ったが、随分と大人しくなったな」
「うん、このジェミニは前のジェミニとは違うけれどね。知能もだいぶ発達して来たみたい」
ウォーロックとジェミニは異星人だ。電波の体を持っている、正真正銘の地球外知的生命体だ。それぞれがAM星、FM星という惑星からやってきて、スバルとツカサのパートナーになった。
ジェミニはFM星王の片腕として地球破壊計画の中心を担った侵略者だ。ウォーロックはスバルの父、大吾との約束を守るために……そして自分の復讐の為にスバルに力を貸し、FM星人の侵略を防いだ。という過去がある。
当時のジェミニは冷徹非道で知恵も回る強敵だったのだが、今のジェミニからはそんな雰囲気は感じられない。ツカサの掌の上に乗り、どこか一点を凝視している仕草は幼い子供を連想させる。
「やっぱり、人格は別物なんだね?」
「うん、ゼロから再構築されているみたい」
以前のジェミニはこの世から消滅した。ここにいるジェミニは、ツカサの体内に残っていた残留電波から再構築された、文字通り生まれ変わった子供なのだろう。
スバルはジェミニをまじまじと見る。
「この様子だと、もう悪さをすることはなさそう……かな?」
「う~ん、どうだろうね……一緒にいる僕もさっぱり分からないよ。」
「少なくとも、僕の力は必要なさそうだね」
「え?」
スバルの言葉の意味がよく分かっていないようで、ツカサは首を傾げた。
「もしジェミニがまた悪い事したら、誰かが止めないといけないでしょ」
「あ、そうか。そうだね。気を付けるよ」
ジェミニが悪事を働いた時、スバルが近くにいれば対応できる。彼はウォーロックと融合……電波変換を行ってロックマンになれるのだから。地球の危機を二度……実は三度救っているロックマンがいれば、たいていの問題は解決してくれる。
ジェミニに害が無くなった以上、ロックマンの力は必要ないだろう。
ただ……ツカサにはもっと大きな問題がある。
「……ヒカルはどうしてるの?」
「……うん……」
ツカサの顔が本日で最も暗い物になった。
ツカサには大きな秘密がある。二重人格なのだ。大人しいツカサの反面……凶暴性のみを凝縮したようなもう一つの人格。それがヒカルだ。今こうしてスバルと親友になれたツカサだが、ほんの数ヵ月前にはヒカルの言葉に惑わされ、スバルを裏切って深く傷つけたことがある。
ツカサの人生最大の悩み……それがヒカルだ。
「ヒカルは……最近は出てこないんだ。以前戦った時以降、力が弱っているみたいで……」
「……そうなんだ」
「これについては、仕方ないよ。僕がなんとかしないといけないことだから」
「……そっか」
スバルもそれ以上は尋ねなかった。
「……さてと……スバルくん、僕は孤児院に帰るよ」
「分かった。僕も母さんが待ってるし」
「それじゃあ……ね」
バイバイとか、また明日とか……そんな当たり前の言葉を二人は使わなかった。
◇
薄暗くなってきた帰り道で、ツカサは今日のことを振り返った。海は楽しかった。スバルと泳いで競争をしたし、メガネを取ったキザマロの「3」のような目には笑ってしまったし、ゴン太はスイカ割りではしゃぎ、ミソラとルナはなぜか水着を着ただけで泳ごうとしなかった。ミソラのパートナーのハープ曰く、女にとって水着は着るためにあるらしい。よく分からない。
今日は楽しい一日だった。思い出して笑みを浮かべる。同時に暗い顔をした。
「結局、スバルくんとしかろくに喋れなかったな」
ルナ、ゴン太、キザマロ、ミソラのことは友人と呼んでいいのだろう。だが、それはスバルを中心として集まっているからに過ぎない。四人とは特別に親しいという訳ではない。そう呼べるのはスバルだけだ。
「こんなので、新しい場所で上手くやっていけるのかな?」
人付き合いは得意な方ではない。新しい孤児院の保母さんや施設の者たちと良好な関係を築けるのだろうか。学校にはどんな教師や生徒がいるのだろう。考えると不安でしかない。なによりヒカルがまた何かをしでかさないだろうか。
そんなマイナス思考をしていると孤児院に着いた。中に入って帰宅を告げると、年配の保母さんが出てきた。見知った彼女を見て、ツカサは動きを止めた。深刻な顔をしていたからだ。
奥に招かれ、椅子に腰かけて向き合うと、保母さんは苦しそうに声を絞り出した。それを聞いて、ツカサは椅子を蹴飛ばすように立ち上がった。
「……両親……が……僕の両親が、会いに来る……だって?」
オリジナルのストーリー……
上手く書けるか?
面白く書けるか?
分かりません。失敗する可能性の方が高いです。
でも、創作なんてそんなものですよね。
恐れず「もうどうにもでもなれ。なんとかなるだろ」という気持ちで書いていきます。
ただし、手は抜かないようにしていくつもりです。
また応援していただければ幸いです。