オルガ「は?あんた正気か?」
その電話は、意外とすぐに鳴った。
オルガがホテルにチェックインした翌日、承太郎から連絡が入った。軽い気持ちで電話を取り上げたのが、その内容は非常に暗いものであった。
仗助の祖父が、何者かに殺害されたという。スタンド使いの犯行で間違いないそうだ。承太郎は続ける。
「奴の名は片桐安十郎、通称アンジェロ。悪虐の限りを尽くしたような男だ…一度服役してるが脱獄、その際にもスタンドが使われたと見て間違いない」
「スタンド使いの犯罪者…ってことか」
「そのスタンドは水に同化できる。複雑な擬態も可能だそうだ…仗助の祖父は、その擬態の応用で殺されたと見ている」
「待ってくれ!仗助は無事なのか」
「ああ、無事だ。一度は奴を追い詰めたようだが…何も知らない一般人の命を利用して逃げ出した、という感じだな。やれやれ…」
驚くのはあの高校生が水のスタンドを一度捕らえたという点だ。どうやったのだろう、とオルガはなけなしの脳ミソを動かしてみたが、特には思いつかない。その事を聞くと、
「仗助のスタンドは、ものを『治す』能力だ。瓶を破壊して奴とともに『直せ』ば、復元した瓶の中に収まる、という手はずだ」
もっとも自分の傷は直せないらしいな、と付け加えて承太郎は沈黙した。それをオルガが継ぐ。
「おい承太郎、俺は、どうすればいいんだ?」
「お前は仗助の家で見張りをするんだ。それが最善だからな」
「見張り?」
「奴はまた戻ってくる、きっとな」
「おぉ…だが、俺が仗助の家に上がれるか?人種も若干違うみたいだが…」
「…誰が家に上がって見張れと言った?」
「…は?」
三日後。
オルガはテントの中にいた。承太郎曰く、
「流石に見ず知らずのの男を家にあげるのはまずいからな。近くの公園でテントを張って寝泊まりしてくれ、悪いな」
だそうだ。ちなみにこの時の承太郎の声に悪い、と思っている感じは微塵も無かった。
おまけに雨も降っている。テントの中にまで水が入ってきそうだ…
…水?
オルガは走り出した。向かう先は、東方家。
(まずい。雨の中なら、奴のスタンドは多分かなり『自由の身』だッ!)
玄関へ駆け込んで、ドアを開ける。鍵は開いていた。奥の部屋から物音がしている。
奥の部屋…台所に駆け込むと、男が二人立ちすくんでいた。仗助と承太郎。
「オルガ…まずいぞ」
承太郎がそう言う。見ると、鍋という鍋、ヤカンというヤカンでお湯が沸かされている。立ち昇る蒸気は部屋を覆い、肌を濡らす。
「どうも、オルガさん…この蒸気、どこからくるかわかったもんじゃあねーぞッ!」
蒸気で覆われているということは、つまりはどこからでも奴が襲ってこれるという状況である。三人は背中を付けようと後退りする…
「オルガさんッ!あんたの後ろだァァーッ!」
「‼︎」
オルガが振り向く。それを待っていたかのごとく、奴が、水のスタンドがオルガの口に飛び込む。
「ウ ゙ウ ゙ッ」
オルガは血を流してその場に倒れこむ。左手で虚空を指差して、呟いた。
「止まるんじゃねぇぞ…」
瞬間、オルガは立ち上がった。血を全て自分の元へ吸収し、完全に傷を治癒させる。そして
「承太郎、仗助!ここにいたんじゃ俺たちは確実に殺されるぞ!」
と一喝。別の部屋に走り出した。
「なんだ今の野郎は…あいつ…いい気になってんなァァァ〜ッ‼︎」
「まずいな、どこまで蒸気が広がってやがんだッ⁉︎」
オルガがそう悪態を吐く。次いつアンジェロが襲ってくるのかもわからないこの状況で、彼に優位なフィールド…蒸気に囲まれているのは非常に部が悪かった。
「さて、仗助。お前はこの状況、どうやって切り抜ける」
承太郎が仗助に問いかける。その仗助、まだ全然焦ったような表情はしていない。
「切り抜けるってのは、ちょいと違いますね…」
「は?」
そして出た。仗助のスタンドである。全身を銀色のアーマーのようなものが覆っており、ハートマークが各部にあしらわれている。拳を固く握り、
「ドラァッ!」
となりの壁へと打ち付けるッ!
承太郎はなるほど、と感心した。
(この隣は部屋だったか。この家の間取りを完璧に知るこいつにしかできない選択だぜ、やれやれ…)
「ほら、早くこっちへ。壁が…戻りますぜ」
壁が元の形に戻っていく。仗助に続き、承太郎とオルガも穴から部屋に入った。オルガは安堵した。
「とりあえず、やっと俺たちの居場所ができた、ってことか…」
「「「‼︎」」」
机から何やら冷たい風が頬を撫でている、と承太郎は考えていた。それもそのはず、机の上に置いてあったのは…
「まずい、加湿器だッ!電源が入っているぞッ!既にッ!」
「避けろ仗助ェェェーーッ!」
当然アンジェロのスタンドは、加湿器の蒸気から飛び出してきた。オルガの叫びも虚しく、予想外の攻撃に対処しきれなかった東方仗助の口に奴は入ってしまった。
「ぅごごが…」
「仗助ッ!」
仗助は自分の首を掴んで苦しそうな動きをする。一度奴に体を乗っ取られれば、勝ち目はもうない。
仗助の見開いた目が苦しそうに二人を映す。
「承太郎…さ…オルガ…さん…ッ」
「仗助ェェェーーッ‼︎」
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