光と影と花びらの魔術師   作:夜仙

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魔術師とその友人達
 光と影と花びらの魔術師


 廻り者ーーそれは人間を超越した才能という名の能力を身につけた者。彼等はその昔にいた偉人や罪人達の実績などによる超人的な能力を使うことができる。

 

 例えば、物語を書く偉人になれたなら、その者同様に物語を書け、爆弾を使う罪人になれたなら、これまた同様、爆弾を使える。

 

 努力もせずに普通の人間なら二倍も三倍も頑張らなくてはいけないのを廻り者なら簡単に超えられる。しかも、廻り者にはそれとプラスして才能という名の能力を得ることができる。

 

 つまり何を言いたいか、それは明白だろう。

 

 俺達廻り者は人間を超えた超越した存在、ということだ。

 

 

 木々に囲まれたこの人気のない土地に俺は一人住んでいる。木々の葉の色は季節を経るごとに変わっていくのが家からだとよくわかる。さらに、毎日小鳥のさえずりとうるさい虫どもの羽音で目覚める起き心地といったら、悪くて仕方がない。全く良い土地だ。

 

 まぁ、分かっていただけただろうが、俺はこの地が嫌いだ。

 

 一応、しがない一画家からすれば、ここはよい絵が描けるのだろう。モネや葛飾北斎や歌川広重なら大喜びかもしれない。しかし、俺は別に自然に興味がない。あるのはキラキラしたまばゆい物と暗い暗い暗黒だけだ。あと、人があれば完璧だ。

 

 そんな俺が何故ここに住んでいるかはひとまず置いておくとして、俺は今何をしているかと言うと、ずばり人を待っているところだ。実は今日、友達に絵のモデルになってもらう約束をして、時間も決めたのだが、すでに三時間遅れだ。

 

 いくらなんでも遅い。

 

「あいつ、何処ほっつき歩いてんだ?これだから自意識過剰さんは嫌なんだ」

 

「誰が自意識過剰さんだ、ゴラ」

 

 聞き覚えのある声の方を振り向くと、そこには例な友達がいた。相変わらず、人を見下してくる大切な友達だ。

 

「よっ、やっと来たか。ユリウス=アントニウスさん」

 

「ご丁寧に本名を言ってくれてありがとよ」

 

 そう言って、友達はドカッと我が物顔をして近くの椅子に座る。ついでにだが、こいつはさっき自分の本名をユリウス=アントニウスと言っていたが、あれは嘘だ。こいつの本名はそんなんじゃない。

 

 俺とこいつは先ほど説明した廻り者だ。俺の方は何となく察しがついてくれているだろうが、画家のだ。一方のこいつのはーー

 

「おい、絵描かないのかよ」

 

「おっとすまない」

 

 

……

 

 カリカリ

 

「んで、どうだ?」

 

「……何が?」

 

「俺の美貌」

 

「いつも通りでございますよ。相変わらず、派手な物をつけていらっしゃって」

 

 こいつは廻り者のなかでも一位、二位を競うぐらいのファッションと浪費の凄さを誇る。まぁ、しょうがないはなしだ。なぜなら、こいつの前世の人はかなりの美貌で知られた人物であるからな。

 

「だろう?これは有名な時計屋の一番高いやつ、これは」

 

「はいはい、すごいすごい」

 

 俺は適当にいつもの友の自慢話を放って絵を描く。

 

 俺はちらりと友を見る。

 

 にしても相変わらずの美貌だ。人によってはかなり引くぐらいの値段の高そうな服や装飾品をあいつは見事にこなし、小麦色の肌とその整った顔とで完璧とも言える美男子へとなっている。これで女装でもされたら、世の男達は片っ端からハートを射抜かれる事だろう。それがあいつの本領では一応あるのだが。

 

「魔術師さん」

 

「ほいほい」

 

「最近はどうだ。相変わらず、他の芸術家の才能者の絵を片っ端から買っているのか?それでご破算中?」

 

「おい、地味にその手の話題はやめろ。やりそうで恐いから」

 

 「ふーん」と言うユリウス。ニヤニヤした顔つきで俺を見てくるのが目に浮かぶ。何となく今持っている絵筆をあいつの顔に投げたくなってきた。

 

 

……

 

 三十分経ったぐらいで俺の絵は完成した。

 

 うん、やはりモデルが良いと絵も良くなるな。しかも、俺の絵とこいつの特徴って中々相性が良いんから余計良くなる。

 

「できたぞ」

 

「おう、できたか。どれどれ」

 

 俺の絵をユリウスはじっくりと眺め回す。素人鑑定士のようなその姿には滑稽さを感じる。

 

「流石、魔術師さまだ。影と光によってこの絵の立体感を際立たせるな」

 

「だろ?ところで、この絵いるか?」

 

「……地味に売り出してくるんじゃねぇよ」

 

 そういいながらも、あいつは財布から樋口を出して俺に渡す。地味ではあるが嬉しい。

 

「そういえば、ココがお前に会いたいって言ってたぞ」

 

 ココが俺に会いたい、ということは服のデザインの事か。でも、あいつ服のデザインが一々細かいから嫌なんだよなぁ。まぁ、でも受けない理由はないし行くか。

 

「ん、了解」

 

「あと、前から思っていたんだけどお前の時計のそれ。何処から貰ってきたんだ。かなりオシャレなブレスレットだよな」

 

 そう言って、指差してきたのは羊の絵をモチーフにしたブレスレットだった。あぁ、これか、これね……。

 

「これは、その辺の市場で安く売られていたものだよ。だから、お前には合わないさ」

 

 「ふーん」と彼は適当に返事をすると、手を振って帰って行った。




ここでは彼等の前世が誰かは明かされていません。良かったら推理してみてください。一応、ヒントは色んなところにあります。
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