光と影と花びらの魔術師   作:夜仙

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 ナンバーワンとの何でもない雑談

「ガハハハ、それは災難だったなぁ!」

 

 耳がきーんとなる程の声量でそいつは笑った。唾を出し、足をばたばたさせ、腹を抱えて笑う。

 

 まさしく大爆笑している俺の友達。

 

 だが、それに対してあまりいい思いは出来ない。

 

「そんな笑えるネタじゃないだろ。というか、あんまり笑ってほしくないんだよ」

 

「おぉ、それはすまんすまん。sorrysorry」

 

 しかし、それでもくつくつと笑いつづける。

 

 だが、これを指摘したところで、これ以上何も変わらないだろう。最早、諦めざるをえない。 

 

 さて、ここで俺の友達の紹介をやっていなかったな。

 

 俺の友達である彼の名はジョン・デリンジャー。社会の敵ナンバーワンとも呼ばれた犯罪者だ。

 

 もちろん、言わずもがな罪人の廻り者だ。

 

 

 さて、ここで罪人の廻り者と偉人の廻り者の何が違うか答えなければならないだろう。そもそも廻り者というのは歴史上に名を刻んだ人達の性格と偉業ベースにして作られた存在、則ちその人のそっ

くりさんだ(まぁ、見た目や性別等は違ったりするが)。そして、ここにおいての『歴史に名を刻ん

だ』というのは偉人だけでなく、その時代で悪いことをした者達もいる。主に罪人の廻り者は、後者を素として作られた者で、彼等はベースにした者の悪行、性格等から人や廻り者に危害を加える存在だ。

 

 だが、偉人の廻り者と罪人の廻り者は大部分は同じで、どちらもベースにした者のような事をしようとするし才能も使える。ただ、唯一違うところは罪人の廻り者には自制心を持たない者がほとんど

ということだ。何故、持たないか。それは彼等の素が先ほど言った罪人だからだ。

 

 よくわからない、という人のために例え話をしよう。例えば、ここにアメリカのシリアルキラーとして有名なエド・ゲインがいるとしよう。そして、俺が仮に彼、もしくは彼女の前で死んだとしよう。そうしたらどうするか?墓に埋める?それとも警察に通報する?どれも違う。エド・ゲインの廻り者は自制心を気にもせず平気で俺を剥製にして服とかにでも仕立てるだろう。

 

 このことから理解してもらえるだろうが罪人の廻り者は危険な存在だ。現に『偉人の杜』という偉人の廻り者だけで構成された組織は罪人の廻り者を掃討している。

 

 ここで皆、疑問に思うことだろう。

 

 何故、そんな危険な存在である罪人の廻り者である彼を前にして俺は平気でいられるか、と。

 

 これには特に深い理由があるとかいう訳ではない。実はこの目の前で腹を抱えている馬鹿は俺の数少ない友人であるココの店の常連で、あるとき俺がデザインを担当した服をこいつがウケたことをきっかけにこいつが勝手に家に来るようになったのだ。

 

 俺としては基本、五月蝿くて鬱陶しい存在ではあるのだが、たまに俺の絵を買ってくれる数少ないお客様でもあるので無下にはできない。

 

 まったく、今日はゆっくり静かに絵を描こうとしたのに。

 

「で、そいつは一般人である警察に撃たれて終わり、と。ギャハハハ!これは最高の傑作だな!」

 

「お前、そうやって笑っているけど、お前もなるかもしれない未来なんだぜ。まぁ、俺としては嬉しい限りの未来だから良いが」

 

「それはそれは、御結構!だけど、残念。俺様にそんな未来は来る気配がない、いや無い」

 

 本当にその通りだと思うよ、世界一の犯罪者(騒音野郎)。伊達にこいつはジョン・デリンジャーの廻り者。社会の敵ナンバーワンの男。

 

 やっていることがそんじょそこらの悪人と違う。殺人、銀行強盗、窃盗、拉致……そんな行為をこいつは金さえ積まれれば笑って引き受ける。

 

 そして、こいつには他の悪人と明らかに違う点がある。

 

 それはーー

 

「で、どうだった?今日の俺のパフォーマンスは」

 

「流石といったぐらいだな完全犯罪者(糞野郎)

 

 俺はちらりとさっきまで見ていた映像をまた見る。そこにはデリンジャーの姿がありありと見えた。

 

 そこに居たデリンジャーは笑顔がドアップで映されたり、デリンジャーが何かをいじくっているのが見える。

 

 これは動画投稿サイトで今朝上がっていた物だ。

 

 そう、何を隠そう目の前にいるこいつは動画投稿者だ。視聴者もかなりいる。今朝上がったやつも既に俺が見る頃には六十万はいっていただろう。

 

 まったく、うらやましいことである。俺が仮に自分の描いた絵を動画として皆に見せびらかしてもここまでいかないだろう。

 

 本当に職業に関する動画を上げる者は苦労しないものだ。

 

「相変わらずのお手前だね。今回は何処でやったの、これ?何処かの銀行なのは分かるけど」

 

「今回はニューヨークの銀行でだな。いやぁ、あそこすげぇぜ!赤外線センサーの他に自動機関銃、人が入るだけで消し炭になるビームが出るやつもあったんだよ!」

 

 さいでっか、そんな中よく生放送の動画を撮る気になったもんだね。気が狂ってんじゃないの?いや、狂ってるわ、こいつ。だって、ピッキングとかしている間に余裕でチャットにある質問に答えているし。

 

「いやぁ、それにしても六十万再生なんて嬉しいもんだねぇ、動画投稿者としては最高の記録なんじゃね、これ」

 

「そうだな、こんなにお前に対する警察(お客さん)が見にきているからな」

 

「いやぁ、人気者って辛いもんだねぇ!」

 

 まったく、その通りだと思うよ。

 

「それで、何のようだ?」

 

「ん?」

 

「俺のところにお前が来たんだ、何かあるんだろう?」

 

「む、俺ってそんなお前に対してお願いしに来るような奴だったっけな」

 

「よく言うよ。去年なんて『俺の服のオーダーメイトを作ってくれ!』とか『金がないから五百万貸して!』、挙げ句酔っ払ってきて、『なんだよぅ〜、この白けた絵は〜♪』とか言ってココに依頼された絵を破ったりしたじゃないか」

 

「最後のすまんって言ったじゃねぇかよ。ほら、お詫びにお前に三百万渡したじゃんか!」

 

「その金もお前の酒代で消えたけどな」

 

「ぐぬぬ」

 

 何が『ぐぬぬ』だ。あの時の俺なんてお前の顔面をどれだけ殴りたいと思ったことか。

 

「まぁ、でも本当に何もねぇよ。ただ、お前の様子を見に来たついでに俺がまた明日、仕事に行くって言いに来ただけだよ」

 

「ふぅん」

 

「心底どうでも良さそうだな、お前」

 

 だって、どうでもいいし。

 

「ま、そんなわけでさいなら。良い絵を描けるといいな」

 

「さようなら、お元気で(さっさと捕まれよ)

 

 そんな感じで俺とこいつの会話は終わった。

 

 けれどこの時の俺は、よほど間抜けだったことだろう、と思う。

 

 あいつが何の気もなく尋ねることなんてあるわけないのに。

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