ソードアート・ログ・ホライズン   作:亜白

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※各記号表記の意味

◆◆◆…視点切り替え

◇◇◇…時間経過



前日譚 GGO編Ⅲ

今ここにいるキリトさん達のメンバーはこれで全員らしく、次は私とチカゲの番だ。

 

「ボクはR(ロア)、昨夜始めたばっかりの超がつくほど初心者ですが、このゲームの前にはALO…アルヴヘイム・オンラインをやっていました

ですから絶剣のユウキさんがいることに感激です!て、この話はまた今度にしましょう…

前述したように、まだ何も知らないのでいろいろ教えていただけたら嬉しいです」

 

よし完璧…緊張したけどちゃんと言えた。

私が内心ホッとしていると、視界の端の方でチカゲの何かを企んだような顔が見えた。

お願いだから変なこと言わないでね、例えば…

 

「俺はチカゲだ、事情があってリアルで忍術を嗜んでいるからさっきは未遂に終わって本当によかった

Rとは違って俺はGGOサービス開始からずっとやってるし、デスガン事件ももちろん知っている、更に言うと俺もRもALO事件やクリスハイトのことも知っているから、そこら辺は共有していけたらと思っている

断ってもいいがそっちで何か動けば俺達に筒抜けだから、そうやって探り合いをするくらいなら共有したい

せっかく知り合えたんだから…どうだ?キリト」

 

こんなこと言ったりとか…。馬鹿じゃないの?こんなこと言ったらキリトさんが警戒しないわけないじゃん。百歩譲って、もう少し言い方っていうものがさぁ…半分脅しみたいになってるし。

キリトさんは少し考える素振りを見せて、一つの提案を出してきた。

 

「俺としてもそういうことを共有していける仲間が増えるのは心強い、だけどまだ信用はできない

だから互いに、世間に出回っていない情報を一つずつ教えあい一人ずつ菊岡に確認をとるためにログアウトする

…その間、君の方はRを、こっちは俺以外のみんなを人質にする、情報の持ち逃げを防ぐためにな」

 

へ?

私は間の抜けた顔で驚いているけど、それはアスナさん達も同じだった。

それもそうだよ、ゲームで人質って何?

チカゲも同じことを思ったのか、首を左右に振りながらキリトさんの言葉に食いつく。

 

「待て待て、おかしくないか?人質とか何言ってるんだ?そこまでやらないといけないなら俺はこの話をなかったことにする」

 

自分から言っておいてこの逃げ腰……溜息が出るよ、でも気持ちはわかる。

 

「いや違うな、ここまでするからこそ信頼しあえるようになるんだ、君がこの話をなかったことにするなら今ここで俺が作り直す!俺からの取引だ、どうするチカゲ」

 

声のトーンと顔つきがあきらかに違う気がする。普段の軽いノリのチカゲも真剣な時は気迫が凄いと感じることがあるけど、キリトさんはもっとすごい。

私もチカゲも…というか、キリトさん以外の全員が圧倒されるしなくなっていて、誰一人として口を挟めなかった。その気迫を真正面から受けたチカゲは倒れこみそうになるのを踏みとどまった。

 

「ああ、わかった…じゃあそれでいいが、人質の件はどうするつもりなんだ?まさか現実の住所をバラしあって殺しに行くとか、そんなバカなことするつもりじゃないんだろ?」

「それをやったら殺人者だ、そうだな…アカウントの停止くらいでいいんじゃないか?俺達にとってもキミ達にとっても中々リスキーなことだと思うんだ」

「それでいい、だけどどうやってそれを?運営に知り合いでもいるのか?」

「ああ、ちょっとしたツテがあるんだ…そしてコレ」

 

と言ってキリトさんはメニューを開き、緑色のウィンドゥを起動する。

Prrrr… Prrrr…

電話の様な音が暫く続いた後、そのウィンドゥに出てきたモノは私達のよく知る顔だった。

 

『プリヴィエート!キリト君、どうしたの?』

「「セブンちゃん!?/七色博士!?」」

 

チカゲとほぼ同時にその人の名前を叫ぶ。

まさかのまさか、絶剣に続きセブンちゃんまで…ということはスメラギさんとも普通に面識ありそうだね。

 

『あら、もしかしてロアちゃんにチカゲ君!?貴女たちもGGOにいるのね』

「セブン、この二人と知り合いなのか?」

 

今度はキリトさんがややオーバーリアクション気味に驚いた後、それなら…と今度はチカゲとキリトさんの二人がいたずらな笑みを浮かべてウィンドゥ越しのセブンちゃんに迫りよる。そして…

 

「「頼みがあるんだ!!」」

 

◇◇◇

 

『う~ん、事情はわかったけどそういうのはあんまり乗り気じゃないわね…でもいいわ、今回だけだからね

そんなことに時間を費やす暇があったら少しでも長く、私が関わったゲームを楽しく遊んで欲しいもの!いい?ゼッタイに今回だけだからね?』

「「わ、わかったわかった」」

 

たじろくタイミングも、セリフも内容も、セブンちゃんに事情を説明してる最中も息がピッタリなのにどうしてここまで頑なに成し遂げようとするのかな…。

私がそう考えている間にも話がどんどん進んでいき、ついにその時が来てしまった。

どうやら、順番に交代でログアウトするようで、初めはキリトさんの情報を貰ったチカゲがログアウトして確認して来るらしい。30分以内に再度ログインして戻って来なかったら、私のアカウントが即時停止されるらしい。

 

「俺たちの情報はコレだ…SAOの時のものだがカーディナルのデータベースに残っていたのを復元したものだ

ここに書いてあるコードを菊岡に見せれば、そのデータを貰えるはずだ」

 

これだ、と言って見せられたのは、アルファベットと数字を並べただけの意味の分からない文字列。

チカゲも頭に?を浮かべていたけど、キリトさんの説明を最後まで聞いてからの行動は早く、何も言わずにログアウトしてこの場から消えて行ってしまった。

とり残された私は、ただ静かに近くのソファに腰掛ける。

 

「大丈夫?」

 

その場に座ってただ静かに待つ私の姿を見かねたのか、それとも私と同じ気持ちだからなのか、リーファたちが声をかけてきた。その中にはアスナさんとリズ、それとキリトさんの姿はなく、いるのはリーファ、シリカ、ユウキさん、シノンさん、部屋の隅の方にアルゴさんとクラインさんとエギルさん。

 

「あの、リズとアスナさんとキリトさんは…」

「……」

 

シノンさんが無言で指したのは奥の部屋に続く扉。私がそこを見て数秒後、なにやら騒々しい物音が聞こえ始めて何が起きているのか簡単に想像できてしまった。

それからリーファの方に向き直ると、シリカが申し訳なさそうに口を開く。

 

「あの、ロア君て本当は女の子…ですよね?」

「え…!?」

 

こんなに早くバレちゃうなんて…。

 

「振る舞いや仕草、とっさの時の反応で察しはついてたけど、決定打はアレね…さっきのセブンとの通話で、貴女のことをセブンはハッキリと『ロアちゃん』と言ってたもの」

 

シノンさんの言う、さっきのセブンちゃんの会話を思い出してみると、確かに『ロアちゃん』と言っていた。あの時はキリトさんがセブンちゃんと知り合いだったことと、話が急に進みすぎて呼ばれ方なんてまったく気にしてなかった。

 

「えっと…経験値ボーナスに目が眩んで、ランダムを選んだら男のアバターだったんです

ボーナスが付くのは30レベルまでだったんですね、少し前に知りました」

「これは結構卑怯な仕様よね、この大型アップデートから実装されたものだけど、新しく入ってきて騙されたって人をもう何人も見たわ」

 

私と同じように考えた人は結構いたみたい、妙な安心感を覚えてそっと胸を撫で下ろす。そのタイミングで奥の部屋からリズとアスナさんに続きボロボロになったキリトさんが出てきて、丁度良くチカゲも再度ログインしてきた。

 

「確かにアレは出回っていない情報だな

SAOに表と裏があったなんてな、裏といっても管理区エリアだが…ホロウエリアの情報、確かに受け取った」

「よかった、じゃあ次は君たちの情報をくれ…」

 

チカゲの報告を聞いたキリトさんはさっきの私みたいに一瞬胸を撫で下ろす素振りを見せいつもの優しい顔に戻ったけど、次の瞬間からまた強張った表情になり声のトーンも若干低くなる。

 

「俺たちが…、菊岡の許にいるってこととか」

「?…どういうことだ!知り合いってだけじゃないのか」

 

勢いよく問いただしてくるキリトさんとは反対に、これ以上は言えないと沈黙するチカゲ、横で見ている私も何も言うことが出来ない。

 

「すみませんキリトさん、これ以上ボク達から言うことは出来ません、ですから菊岡さんに直接聞いてください

キリトさんなら条件付きで教えてもらえると思います」

 

そこまで言うなら…と、これ以上聞いてくることなく早々とログアウトしていった。

 

◇◇◇

 

制限時間ギリギリ、私とチカゲ以外のみんなの不安が頂点に達する直前にキリトさんは帰ってきた。みんな一斉に駆け寄り、キリトさんの報告を待つ。

 

「OKだ、確認とれたよ!条件付きで…」

 

この言葉が聞けた瞬間、私は…いやたぶん全員んが心の中で歓喜の声をあげた。そしてピリピリとしていた部屋の空気感が少し和らいだのが分かった。

 

『ホントにもう、心配させないでほしいわ!』

 

セブンちゃんの声に振り返ると、どういうことなのか…チカゲはウィンドゥを操作していた。

 

「なんでチカゲが?キリトさんが使ってたはずなのに…」

『私がチカゲ君にもこの機能をあげたのよ、キリト君がログアウトしている間、私はここの状況分からなくなっちゃうでしょ?だからよ』

 

なるほど

 

「それでキリト君、その条件ていうのは…?」

 

未だに不安気なアスナさんは、キリトさんに条件の内容を聞き出しにいく。しかし不安気な顔のアスナさんとは対事象的に、キリトさんの顔は何かに満足したような、そんな顔をしている。

 

「新作の大型ゲームタイトルの開発用のテストプレイだ!ハハッ、やったぜ!!」

「それだけ…?で、でも二人ともあんな真剣な顔してたじゃない!どういうことなの、ちゃんと説明してよ!」

「ア、 アスナ落ち着けって…、極秘事項だったからだよ、俺も今語れるのはここまでだし…」

 

すみません、本当にそれだけです。何だが臭わせるような雰囲気を出してしまってスミマセン。

 

「本当に…?」

「本当だアスナ、信じてくれ」

「…ならまあ、信じる…けど…」

 

無理やりではあるけれど、一応信じてもらえたみたい。

とにかくコレで一連の取引っていうのは終わったとみていいみたいだね。

 

「まったく…チカゲもキリトさんも、勝手に人質にされるこっちの身にもなって下さいよ!」

「あ、そういえばそうですよキリトさん!」

「私もかなり焦ったのだけど?」

「チカゲ…アンタもアンタよね…」

 

まだ若干暗い空気感をいい加減に払拭したくて、軽く二人を弄り始めると、そのあとからシリカ、シノンさん、リズと続いていき、そこからはもう皆がワイワイと…。

時折聞こえてくるのはチカゲなのかキリトさんなのか分からない断末魔。

 

 

 

ちょっと大変だったけど、ちゃんと信頼関係を築くことは出来たかな…。

 

 

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