未確認生物から女の子を守った結果――   作:対魔忍佐々木小次郎

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第十話

 遙か昔。

 本当に遙か昔のことだ。

 

 光あれ。どっかの誰かがそう言ったらしい。

 すると光が出来た。

 らしい。俺はかつてお姫様にそう語った。

 

「あの時は嘘ついて悪かったよ。んなワケねー。光なんて元から在ったんだ」

「えっそうなの?」

「……いや、知らんけど」

「適当言い過ぎでしょ!?」

 

 どうやら俺の発言がお気に召さなかったらしく、お姫様は爪先で俺の膝をゲシゲシ蹴ってくる。

 未だロリモードは継続中。背丈的には膝ですらちょっと背伸びして攻撃を届かせて居るぐらいだ。

 

「……モニターが全部落ちてるな」

 

 戻ってきたのは見慣れた、裏山の、相棒が造ったシェルター内。

 だがかろうじて起動していたはずの機器類が一切沈黙している。まるで役割を全て終えた、と言わんばかりに。

 

「もう託したってことなんでしょうね。じゃあ後は……」

「いや、一つやり残したことがある。それだけやらせてくれ」

 

 言うや否や、俺はシェルターの出口へと歩き出した。

 慌てて姫様も追随してくる。何をするのかと問いたげな様子ではあるものの、止めはしない彼女が、今は救いだった。

 階段を一つ飛ばしに駆け上がり、ドアを押す。恐らく外側は砂に埋め尽くされているんだろう。びくともしない。

 

「邪魔」

 

 雑に腕を振るった。それだけで俺の眼前から扉も砂も消し飛び、真っ直ぐな道が出来た。

 隣で姫様が絶句している。

 

「……吸収、したわけじゃないのよね?」

「ん? ああ、そうだな。今の俺は()()()()()()()()()()……」

 

 物理的な説明が難しいが、端的に言えば『象が蟻を踏み潰した』ぐらいの現象だ。

 余りにも当然だし、じゃなんでお前はそんなに重いんだと象に聞いても分からん。

 

「母艦をいったん無力化する。お前は──防衛軍を探してくれないか」

「防衛軍? いえ……あの男ね」

 

 俺のやり残したことに思い至ったらしく、姫様は頷くとすぐに飛び出していった。

 シェルターから俺も遅れて歩き出る。ふと、背中を押されたように感じて、思わず振り向いた。だけどシェルターの入り口は真っ暗のままで、度重なる籠城の結果、見るも無惨に傷ついている。

 

「……ありがとな、アル」

 

 不思議な心持ちだった。日常がぶっ壊れて、あり得ないぐらい、めまぐるしく、色々なことが起きて。

 だけど最後の最後には、俺の心は凪いでいた。

 

 

『──僕は成功した。君と出会い、君につなげた。それでいい』

 

 

 あいつは無感動にこんなことを言うんだろう。

 なら、それでいい。

 土砂と瓦礫に左右を挟まれた山道で、空を見上げる。大空を埋め尽くす巨大な空中戦艦。

 艦隊ではない。ただ一隻だけで、空全体を覆ってしまっているのだ。

 底面に取り付けられた砲口がめまぐるしく動いては火を噴いている。火、という現象としてしか認識できない光。よく見れば高熱による発光ではなく、光そのものが放たれているのだと分かる。都市部に対して広範囲殲滅攻撃を放ち、それからは残った敵戦力を逐次撃ち落としているのだろう。

 

 ……悪いけど、今回はもう、あんたらの出番は終わりだ。

 

 右手を伸ばした。戦艦は俺を見てもいない。掌を向けて、それから握り潰すようにぐっと拳を握った。

 最初の異変は沈黙。砲火が止んだ。そう、沈黙──戦場においては最もあり得ない、沈黙。

 それから戦艦の各部で発光していた光体がかき消えていく。一切の動きを封じられ、さらには内部の乗組員らも凍結していく。

 物質の書き換えという権能の応用。全ての物理学的な働きは、分子が振動することで行われる──逆説。一切の分子運動を封じてやれば、何も出来なくなる。

 

「何を、した」

 

 振り向けばそこには、さっき別れたばかりの、だが久々に見る顔があった。

 未だ表情には憎悪が滾り、狂気の光を両眼に宿す、俺の唯一の同胞。

 

「久しぶりだな、同胞」

「……ッ!」

 

 ロザン大佐は背後で俺に銃口を向ける部隊を、右手を持ち上げて制止する。

 事実を知ればこの邂逅ですらもが驚愕だ。世界一有名な独裁者──まさかその父親が、こうして現代まで生きながらえ、さらにもう700年も生きるなんてな。

 

「なん、だ……何があった。貴様、本当に同一人物か?」

「あんたが探し求めてる存在からは少し外れたよ。だけど、俺は俺だ──あんたの唯一の同胞。異星人と地球人が、存在単位で混じり合った異物。()()()()()()()()()()()だよ……あんたと同じでな」

 

 俺は大佐達の右側でこちらの様子を伺っている姫様を見ながら言った。

 姫様は俺の言葉を聞き、深く頷いて──コンマ数秒挟んでからボン! と顔を真っ赤にした。

 

「な、な、な……ッ!?」

「えっあれ、えっ今更これで照れるのかよお前! バカやめろお前が照れるとなんか俺まで恥ずかしくなってきただろうが! ちょっ、ハズっ、大佐ゴメン今のやっぱなし!」

 

 俺たちのやりとりを見て、大佐の顔が微妙なものになる。

 一つ息をついてから、俺と彼は頭をリセット──即ち、先刻のやりとりを記憶から消去した。

 

「事情は分からんが……いい、実にいいぞ。出力が跳ね上がっているな。あの母艦を止めたのも君か。素晴らしい──素晴らしいッ! 理解したのなら話は早い! 来い、同胞ッ! 貴様を吸収すれば、私単独でもあの母艦を打ち落とせる……ッ!」

「させねえよバカ。俺は……あんたを止めに来たんだ」

 

 同時、両腕を変質させる。

 未だに出来ること、出来ないことを完璧に理解したわけじゃない。だから俺なりに、SF的な解釈をさせてもらう。

 物体の上書きとは即ち、原子段階にまで遡っての物質変換作用だ。存在そのもののありかたを、分子を再構築して書き換えるのではなく、根本的な性質の段階で変質させる。自分が自分じゃなくなるというのはそのままで、俺はただ骨を弾丸にしたり肉を翼にしたりしていたが──本当はもっと別のことが出来るんだ。

 書き換えではなく()()

 既知と既知を混ぜるのではなく未知を引き寄せる。知らないモノは再現できない、というのは大きな縛りだった。違うんだよ。知らなくても良いんだ。

 元よりこれは──誰も知らない未来へ手を伸ばすための力なんだから!

 

「抵抗は──」

「有意義だ! さあ来いよ大佐! 俺とあんた、一対一(タイマン)だ! 彼女を救う前に、世界を救う前に、俺はまずあんたの怨念を救わなきゃならねえッ!」

 

 変質完了。銀色の増設装甲──地球上には存在しない材質。変換に伴って発生した熱を、装甲各部がスライドして高温の煙として排熱する。

 ロザン大佐は軍服姿のまま、部隊に再度制止を命令してから、ゆっくりと俺の元まで歩いてきた。

 

「怨念、か。そうだな。私のこれは怨念だ」

 

 未だ空中母艦は凍結状態。星明かり一切を奪うシルエットの下で、俺と大佐の両眼が赤く発光し、幾何学的な文様を浮かべる。

 視線が結ばれた。それが開戦の合図だった。

 

「私は許さない。ドラグの民を、地球の民すらをも──何よりも私自身が許せない! だから──!」

 

 地面が炸裂した。神速の踏み込みから、ロザン大佐が刹那の間隙で眼前に迫る。

 振るわれた右腕を打ち払う。大佐はその場で回転しつつ腰元から拳銃をドロウ。至近距離、俺の腹部に銃口を突き付ける。

 マズルファイヤが闇を祓う。着弾音が響き、視界の片隅で姫様が口元を覆う。

 だが大佐は両眼をめいっぱいに見開き、面白いぐらいに驚愕していた。

 

「ああそうだッ! その憎悪を全部俺にぶつけろ! ()()()()()を焦す憎悪、全部吐き出せ……!」

 

 銃弾がからころと地面に落ちる。腹部を覆う銀色のプレート。大佐の弾丸すらも防ぐ堅牢さ。

 当然だ。何故なら俺は七百年後の大佐と融合を果たしているのだから。

 

「あんたの案に乗った。あんたに協力するって決めた。だけどな……」

「……ッ!?」

 

 七百年後の大佐は憑き物が落ちたような有り様だった。

 彼は理性的で、合理的で、世界を救うための選択肢をご丁寧に整理して提示してくれたが──

 

「やっぱ、今のあんたは気に入らねえッ!」

「……何、を。何を言っている、貴様……!?」

 

 七百年だ。七百年、耐えることが出来たんだ。それほど高潔な人だった。だけど憎悪が、今この時代の彼を狂わせている。

 数えるのも馬鹿らしい年月を経ても尚、彼は妻子の記憶をかろうじて保っていた。

 愛していた。愛していたんだ。愛していたんだろう、なぁ!?

 

「愛っていうモンはなあ、眩しくて、温かくて……! 人々が信じられるものだろうッ!? それを! 愛を憎悪の燃料にしてんじゃねえッ!」

 

 胴体から銀色がせり上がっていく。

 液体金属が滑らかに広がっていくように、装甲が全身を覆っていく。

 

「きみ、は──何を知った!? 何を、誰から聞いたッ!?」

「あんただよ! あんた自身からあんたのことを聞いた! だから次は──俺の話を聞けッ!!」

 

 顔を騎士甲冑が覆い、最後にアイラインが一筋の光を宿す。

 特撮ヒーローみたいか。丁度良いじゃねえか。ナイトモードって呼んでくれよな。

 全弾撃ち尽くした銃を掴み取り、ギチギチと音を鳴らしながらも顔の前まで持ち上げる。膂力が違う。大佐の抵抗は赤子に等しかった。

 

「何度も世界を救ってくれて、ありがとう! 感謝してる──本当に感謝してるッ! 今ここにある世界にとって、あんたは全ての命の恩人だ! 一度目も、二度目も、より大きな災厄になる前にあんたが止めた!」

「……ッ」

 

 何故それを知っている、といわんばかりに大佐は絶句して、それから視線を鋭いものに変えた。

 俺を蹴り飛ばし、拳銃を手放す。たった一挙動で大地が割れた。周囲で姫様が慌てて木を掴み、兵士らが転がっていく。

 

「だから許せねえッ! あんたが犠牲にしたものをあんたは背負って、それで何やってんだよ! 本当に背負ったって言い切れるのかよ!? 災厄で人間を進化させるだと!? ふざけんな本当にやりたかったことは何だよ!」

「分かったような賢しい口をきいて──!」

「分からねえから言ってんだよッ! 勝手に背負って、愛した人を言い訳に使ってんじゃねえッ!」

 

 砕ける大地の中で何度も大佐と俺は激突する。

 右腕を振るう。胴体にめり込み、彼の口から血が零れる。

 カウンターのパンチが顔面に飛んでくる。左手で受け止め、そのまま拳を握り潰す。

 根本的に、存在の段位が違う──勝負の体を成していない。当たり前だ。俺は、彼に勝ちに来たんじゃない。

 

「一度目! 二度目! 三度目! そして四度目! あんた本気でこんな馬鹿みてえな未来図に手を貸すつもりだったのか!?」

「それ以外の道など──!」

「七百年後のあんたは見つけたぞ! だけど今は見えてねえ! だってずっと目を塞いでるんだからな!」

 

 激突の余波で地面がさらに抉り飛ばされる。

 俺と大佐以外に手出しは出来ない状態。すり鉢状のクレーター中央で、俺と大佐が何度も何度も何度も何度も衝突を繰り返している。

 交錯してそのまま後ろに抜けて、俺は大佐に振り向いた。

 

「……ッ!?」

 

 その時、確かに見えた。彼の背後。女の人が、残酷に嗤って、両腕を回して彼の顔を覆っている。

 ……ああ、そうか。それが呪縛か。七百年という年月が風化させた、だけど今この瞬間は彼を縛っている呪いか。

 

「負けるかよ」

 

 身体がひどく熱い。銀色の鎧が溶けていく。俺の生身を露わにしながらも、全身全霊の威力が、右の拳に充填されていくのを感じる。

 そうだ──未来の大佐を取り込んだ。だからきっと、今の俺が、今の彼を許せないのは、当然だ。

 だって。

 だって!

 

「愛を諦めた男に、俺が負けるわけにはいかねえ──!」

 

 七百年後。

 彼が俺に託したのはきっと、そこだ。

 勿論他に選択肢なんてなかったけど……俺に余りにも迅速に事情を説き、そして最初から逡巡なく委ねてくれたのはここだ。

 俺はまだ諦めていないから。愛も平和も守り抜けると信じているから。

 

 そうだ。七百年後の大佐はただ物わかりが良かったんじゃない。あれは全部諦めてしまったからこその漂白で、自分には出来なかったことを俺に任せてくれたんだ。

 

「──それに比べて、情けない奴!」

「な、……ッ!?」

 

 突然の罵倒に大佐が目を丸くする。だけど許してくれ。マジで言わなきゃ気が済まねえ!

 

「諦観を子供に押しつける大人はな──」

 

 右の拳を強く、強く強く握り込む。

 足下を炸裂させ一気に加速。視認できる頃にはもう俺の右ストレートが大佐の頬にめり込んでいた。

 

「──特撮じゃあやられ役なんだよッ!!」

 

 遅れて、轟音。

 大気が砕ける音と共に、大佐の身体は宙を舞って、それから地面に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 音が死んで、クレーターの周囲で振動と衝撃に耐えていた姫様がそっと顔を出す。

 大佐の部下達も同様で、俺と、横たわる大佐を見て、次の行動を取れず完全に固まっていた。

 

「……あんたの負けだ」

「────そうか。未来で、生き延びた私を吸収したのか」

 

 合点がいったらしく、彼は状態を起こして痛そうに頬をさすった。

 

「目が覚めるような威力があった……精神への干渉すら可能になったのか。随分と野蛮な目覚まし時計だな」

「地球にはないからな。無音の宇宙じゃこれぐらいが丁度いい」

 

 二人して空を見上げた。未だ凍結中の空中母艦。

 だが見据えたのはその先。真っ黒な宇宙。未だ広がり続け、そしてやがて縮退し始める、宇宙(そら)

 

「……娘は死んだ。私が、殺した」

「…………」

 

 そうするしかなかったと彼の記憶は叫んでいる。

 狂気に飲まれ、争いをばらまき、そして──史上最悪の独裁者は、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「私の因子を持つ子がどう育つのかは、研究材料だった。彼女は……まず研究所を根城にした。私が気づいたときにはもう、あそこは彼女の国だった」

「……物質の書き換えだけじゃなく、最初から精神への干渉が可能だったんだな」

「元より私の能力もそちら寄りだった。第一次世界大戦の中で、私が戦闘向きに組み替えたに過ぎない。そして娘は最初からそれを自分のものにしていた」

 

 滔々と、ロザン大佐は空を見上げたまま語る。

 

「彼女はある日、ある書類にサインをしてから、気まぐれに()()()()()()()()()()()()。そこで──気づいた。罪のない人々を虐殺するという書類に自分がサインして、それが実行されたことに気づいた」

「…………」

「私を呼び寄せるようにして、ある日警備が消えた。私は彼女の地下シェルターに行き、彼女を撃った。自殺ということになった」

「…………あんたはそれが許せなかったのか」

()()。問題はその先だ──材料は言ったぞ。もう君にも推測できるはずだ」

 

 何? 思わず眉根を寄せた。

 第二の厄災となった娘を誅殺した。それが、彼がドラグを憎む理由ではなかったのか。

 いや……待て。その後だと? ああ、そうだそのあとだ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 同胞の、子孫。

 ──俺にとっての同胞とは、唯一無二の存在だ。

 ──そしてアルは語った。自分は、()()()()()()()だと。

 

「待て」

 

 全身を悪寒が駆け巡った。

 そんな馬鹿な。だが、しかし。いやだけどそんなの!

 

「待て、あんた、何を……何をしたッ!? いや、いいやッ! ()()()()()()()()()()()!?」

「やった、だと? 馬鹿を言うな。気づけば事は済んでいた」

 

 考えるポジションを変えてみればすぐに分かる。

 貴重な個体である大佐と、第二の厄災と化したとはいえ、大佐以外では唯一の、同じ特異性を持つ個体。

 

「──掛け合わせたのか! だが!」

「ああそうだとも。この世界のどこかでは……私と娘の遺伝子から、連綿と実験が続けられているはずだ。今も、私と娘のDNAデータは厳重に保管されているだろう」

 

 つまり。

 つまり俺と出会ったアルは、未来の俺なんかじゃなくて。

 俺がアルだというのは、厄災になる定めを持つ同類だという意味で。

 アルの未来でも間に合わなかったのなら、第四の厄災である俺は進化を促しきれずにただ無為に死んだということで。

 

 ならば異星人と地球人が融合した個体の遺伝子データというのは、遙か未来においても系譜はただ一つで──!

 

「────ッ!!」

 

 点と点が繋がり、息をのんだ。

 大佐は……ふと頬を緩めて、胸元からシガレットケースを取り出した。

 

「報告した研究者は実に嬉しそうだった。人の形をした生命体が生まれるまでに三桁の失敗があったらしい。ついにやり遂げたという達成感が私にも伝わってきたよ」

 

 煙草を一本引き抜いて、それから胸ポケットを数度叩いて、諦めたように右手から炎を吐き出した。

 火力が強すぎて煙草の半分が消し炭になった。大佐は舌打ちして、まずそうに残り半分の煙草を吸い始めた。

 その、嫌そうな、不機嫌そうな、偏屈な表情──見覚えがあった。

 

「……第三の、厄災」

「ああ。ミッドナイト・サンの悪魔だな」

「アレは、あんたの遺伝子情報を引き継いだ、あんたの子孫だ」

 

 大佐が煙草を取り落とした。

 彼は無表情でじっと俺を見つめていた。

 それから堰を切ったように、彼は……涙を流し始めた。

 

「…………馬鹿な。全ての個体が今も管理されて……いや。未来か。未来から来た、と言っていたか。そうか……ふ、ふはっ、ハハハハハハ! そうか! あれは私の子孫だったのか! 血筋だろうなあ、厄災に身を捧げる決意が出来てしまい、計画し、実行する! なんとまあ……因果だな」

 

 笑っていた。

 涙を流しながらも、彼は狂ったように笑っていた。

 

「世界の存続に、あんたたちは全部投げ打った。その強さは認めるよ。だけど……全部諦めきった救世はさ、きっとその後の世界も、乾いたものにしかならない。例えば砂漠に埋め尽くされた星みたいにさ」

「ああ……そうだろうな」

 

 大佐はゆるゆると立ち上がり、俺に歩み寄った。

 

「……ッ!」

 

 姫様が飛び出そうとして、俺はそれを手で制する。

 もう大佐の瞳には狂気の光なんてなかった。

 

「融合したまえ。恐らく今から君がやろうとしていることは、分の悪い賭けなんだろう。私も取り込めば、可能性が少しは変わるはずだ」

「……1%にも満たないってさ」

「丁度いい。私で1%になるんじゃないか?」

「そう祈るよ」

 

 薄く笑ってから、彼は目を閉じた。

 

「……アルは。あんたの子孫は、俺を信じてくれた。俺が四度目になることを選択するのか、それとも別の道があるのか。どれを選んでも、希望になることを願ってくれた」

「希望か。安い言葉だな」

「アルが言った希望は、重かった。あいつはドラグの王族にもなっていた──未来では地球がドラグに滅ぼされて、残ったあんたたちのデータが、王族の血筋に取り込まれたんだろうさ」

「ドラグらしいやり方だ。反吐が出る」

「それを乗り越えてアルが言ったんだ。希望が必要だって。希望……あんたが真っ先に捨てた言葉だよ。でも今は、欲しくなってるだろ?」

「…………違いない」

 

 それが最後の言葉だった。

 大佐が差し出した手を、俺は握った。二度目の融合。自分が自分ではなくなるような感覚──が全然しない。

 アレ?

 

「あっ」

「むっ」

 

 そうか、と両者同時に思い至った。

 こいつって俺が取り込んだものと完全に同一個体なのだ。なら前回のような不快感はない。

 むしろ元からあったものを再度取り込む、分かりやすい工程。

 大層な決意をした直後なのに、なんかこう締まらねえ。バツが悪そうに俺たちは視線をさまよわせて、咳払いした。二度目のリセットである。

 

「……あんたの決意に感謝するよ」

 

 改めて告げると、彼は少し困ったような顔になった。

 

「君のためじゃない」

 

 俺は顔を上げた。大佐の首に腕を回す女がゆっくりと、彼の頬を撫でていた。

 呪縛と祝福は裏返し。先ほど感じた嫌な感じは、今はしなかった。

 

「かつて信じたもののためだ」

 

 同時、パッと大佐の身体が光の粒子になって飛び散った。

 しばらく俺の周囲を漂ったそれが、ゆっくりと体内に沈んでいく。

 工程を終えれば、辺りは静寂に包まれた。

 

「……もう無意味よ、やめなさい」

 

 銃口をさまよわせている兵士らに、姫様が警告を発する。

 兵士らは動きを止め、顔を見合わせると、そろそろと銃を地面に置いた。

 

「行きましょ」

「……ああ」

 

 頷いて、俺は姫様を連れ立って山道を歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 瓦礫の山に登れば都市部が一望できた。

 裏山からではなく、実際に砂に飲み込まれた東京都心の真ん中。

 

「どうするの?」

「気分の問題だ。大仕事の前にはちょっと気晴らししたいだろ」

 

 右手を地面に向けて、それから天へと持ち上げる。

 変化は劇的だった──地上を埋め尽くす砂が舞い上がり、天空へと逆再生されていく。

 凍結中の母艦すら素通りして、津波とかしていた砂は残らず大気圏外へ昇っていった。

 

 あとには、目を白黒させている都民たちが残っている。

 

「壮観ね」

「そうだな」

 

 眼下には地球の民が揃っていた。

 勢揃いだった。

 だからふと、完全にバカなのは分かっているのだが、どうしようもないほどにいたずら心が湧き上がってきた。

 

「な、なあ……」

「ん? 何をソワソワしてんの?」

「俺、このタイミング逃したら一生後悔すると思うんだ。でもこのタイミングでそれやったら一生後悔すると思うんだ。どうしたらいいと思う?」

「…………何の話?」

「選択の話だ。人生は、いつだって選択の連続だろ。君が君であるためには沢山の意志決定が必要だったように、俺が俺であるために必要なターニングポイント。それが今ってことなんだけど」

「じゃあ、やれば?」

 

 こうなるともう止まらないという性質を知っているからか、姫様は嘆息混じりに俺の行動を肯定してくれる。

 さっきから瓦礫の王様みたいに居座っている俺たちをいい加減都民らも見つけて、スマホで写真を撮ったりしていた。こいつら元気だなオイ、一応全員俺が蘇生したんだぞ。なに命の恩人をSNSにアップロードしてんだ。

 

「あー、ごほん」

 

 咳払いしてから。

 声量を拡大して、うるさくはなく、都内全域に俺の声が降るように調整してから。

 

 

 

 「ワレワレハ ウチュウジンダ」

『ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああっっ!?!?』

 

 

 

 絶対やんない方が良かったわ。

 

「何やってんのよこのおバカッ!」

「あべし!」

 

 姫様が俺の頬に拳をめり込ませる。普通に威力が高すぎて俺は瓦礫の山からゴロゴロと転がり落ちた。

 粉塵が舞い咳き込む。ああもう締まらねえッ!

 

「バカは死んでも治らないを地で行くんじゃないわよ! もういっぺん死んでみたら!?」

「た、多分治んねえ……」

「でしょうねえ!」

 

 土まみれになりながらも、這う這うの体でもう一度瓦礫をよじ登る。

 恐慌状態になってる都民らを一望して、再度声を張った。

 

「我々は──というか俺たちは宇宙人であり、地球人である! 地球の味方だ! 今を生きている命の味方だ!」

 

 ふっと、喧噪がやむ。

 逃げるのをやめて人々が俺を見ている。

 俺は隣の姫様にチラリと視線を向けた。

 

「俺は……どうしても守りたいものがある。そしてそれによって()()()()()()()()()()。だから、待っててくれ」

 

 最後の言葉は、人々に対してだったのか、それとも──自分では分からなかった。

 

「つーわけでちょっと宇宙救ってくる。以上!」

 

 宣言を切り上げると同時に、全身を銀色の装甲が覆う。

 姫様はちょいちょいと変身途中の俺を手招きした。

 うん? と顔を下げる。ちょうど頭のてっぺんと爪先まで銀色になった直後。

 

「帰ってきたら、直接してあげるから」

 

 ずいと姫様が顔を寄せた。それからまたすーっと顔を遠ざけた。

 数秒硬直。眼前で真っ赤になりながらも、俺をじっと見つめる姫様がいる。

 ちょっ──誰だよ今の感覚カットした奴! バカ! ホントバカ! 俺だわ俺バカ! すみませんもっかいお願いします!

 

「だから……いってらっしゃい」

「……次はベッドの中でしてくれよ」

「あんたホント最悪」

 

 彼女の赤く、紅く染まった頬を、一筋の滴が伝っていく。

 もう俺は彼女を励ますために笑顔を見せてやることも出来ない。仮面を被った以上、ただこうして、指でその涙を拭うことしか出来ない。

 

「大丈夫。俺と君はまた必ず、出会える。大丈夫だから」

「うん」

「宇宙なんてどうでもいいよ。ただ、君を救うために、いってくる」

「うん」

 

 

 

「──いってきます」

「──いってらっしゃい」

 

 

 

 同時、銀翼が顕現する。

 アルが残した未来の先進技術。それは単独での超長距離宇宙航空を可能にしていた。

 

 かつて、一番最初に、ドラグの母艦から逃げ出すときに再現したそれを、今度はデッドコピーではなく完全に再現する。未知すら生み出せるんだから、既知ができない理由はない。

 ナイトモード・アルカンゲロス、ってとこでどうかな。

 

 顔を真上に向けた。最後に姫様が膝から崩れ落ちるのが分かった。だけど振り向くわけにはいかなかった。最後の最後に心残りを作りたくなかった。

 翼が稼働し、俺の身体を跳ね上げる。滞空したままの母艦を貫通して、重力圏を飛び出し、あっという間に身体が宇宙に投げ出される。

 宇宙の中心。太陽系すら抜けて、どこにあるのかも分からないそこへと。

 

 長い長い旅が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……と思ったけど。

 

『あ、違う違う。方向はこっちだぞ』

『なんだ七百年の間にコアまで観測できるようになったのか』

『過去の私、君の時間軸からはざっと二百年後……つまり問題が顕在化した当初は、宇宙の核への攻撃が行われていたんだ。とはいえ全て無意味だったがね』

『だろうな。止められなかったのか』

『当時は他の方法もなかったのだよ』

 

『これが理論上、四度目の厄災が失敗に終わった後、私が独自に計画を立てていた第五の厄災だ。忌憚のない意見を聞きたい』

『むっ……候補者複数に因子を人為的に注入か。しかしその後の合体というのはナンセンスだな』

『第四の問題点は強度にあると考えてね。即ち、厄災の長期化が第五のテーマなのだ』

『着眼点は素晴らしいが、単純な長期化は進化ではなく停滞も招きかねないぞ。厄災の大前提はあくまで人類の勝利であるはずだ』

 

『やはり幼稚園の頃が最も愛らしかっただろう』

『馬鹿を言うな。SSを立ち上げた辺りが最も凜々しく、また可愛らしい』

『過去の私、ちょっとその感性はどうかと思うんだが……』

『なら妻は?』

『アカデミー時代──というのは違う。これは引っかけ問題だな。ハネムーンから帰ってきて新居の散らかりようを見て現実に引き戻された瞬間。100%だ』

『わかる』

 

 

 

「うるせぇぇぇ────────ッ!! 人の頭の中で何を好き勝手騒いでやがる! 六畳一間じゃねえんだぞ!」

 

 

 

 頭蓋骨の内側で同一人物二名による座談会が始まっていた。

 ていうかおかしいだろ融合したはずだろなんでこの人ら自我保ってんの?

 

『馬鹿を言うな。そもそも融合とは権能を譲り渡すのが主目的だ。十全に扱うためには、私という自我を一部切り離して保存し、君の存在内部でサブコンピュータのように稼働させる必要がある』

『私はそこに後から合流したのだが、七百年の間に多少意見の変容が起きていたらしくな。こうして語り合うために、存在を保存されているのだよ』

 

 理屈は分かった。だけどとにかくうるせえ。

 

『未来の私が居なければナビゲートできなかっただろう。数兆年はさまよう羽目になるぞ』

『ちなみに過去の私も演算に寄与している。君単独の宇宙航空が見るに堪えない有様なのでね』

「なんで場所ぶんどっておきながらそんなに偉そうに出来るの? マジでお前……いやお前ら頭おかしいんじゃねえの」

『ちなみに掌サイズの身体をホログラムとして投影することも出来るぞ』

「おっさんがサイバーエルフになろうとすんじゃねえ! シャットダウンするぞ!」

 

 一直線のコースを明示してくれるのはありがたいんだが緊張感がねえ。

 地球を飛び立って体感だとマジで十分ぐらいしか経ってないのに、太陽系からはもう外れているらしい。アルの遺産、余りにも強すぎる。

 

『ああ違うぞ。体感時間を私たちの方で適切に調整している』

『地球を出発してから98万と飛んで54年289日17時間8分だ』

 

 思考が止まった。

 思わず背後に振り向く。

 

『まだだ。まだ宇宙の縮退は顕在化していない。地球は今頃……ドラグの母艦が凍結されていなければ、植民地化されている。今はどうだろうな』

『予測では和平交渉が実際に結ばれて、外宇宙生命体とのコンタクトが一般化しつつある頃合いだ』

 

 つまり、もう、俺の知る人々は残らずいなくて。

 姫様は──

 

『だが至るのは破滅だ。我々が何もしなければな』

「……分かってるよ」

『着くぞ』

 

 顔を前に向けた。

 ずっと続いてきた暗黒の宇宙。眼前にはその黒をさらに凝縮させたような、『闇』があった。

 

「ビックバンの発生地点、か」

 

 頭の中で二人の大佐が頷く。絵面、最悪。

 俺は両腕を広げてその場に制止した。それから……()()()()()()

 音波が発生しているのは観測できない。ならば、きっとここでは俺の全く知らない方法で意思伝達が行われているはずだ。そこに周波数を合わせることが出来れば、対話が可能になる。

 

『まずは対話か。丁寧なことだ』

「うるせえよ。相手の存在がどういうものなのかを知らないと、どうにもできねえ」

 

 実際問題、何故縮退するのかは知りたいと思った。

 何せ今まではずっと拡大していたはずだ。宇宙は今も尚、際限なく広がり続けている。広がる速度は宇宙の中心を起点に、遠ざかれば遠ざかるほどに速くなり、理論上は光速すら超えるスピードを叩き出すらしい。

 

「広がって広がって広がって、だけど突然縮退し始める」

『……何かしらの意図を感じる、とでも』

「直感だけどな」

 

 振動ではなく思念も感知できるはずだが、空間は静寂に包まれている。

 眼前の闇もまた、回転や振動と言った運動を一切していない。いや、俺では観測できないのかもしれないが──

 

 その時だった。

 

 

 ──えっ、何きみ。

 

 

「…………ッ!?!?!!?」

 

 声が聞こえた──()()()()! 音波だ! 馬鹿かよあり得ねえ真空状態で本当に、俺が地球で聞いていた音と同じ音が響きやがったぞ!? どうなってる!?

 

『落ち着きたまえ。音波として観測できているが、()()()()()()()()()()()。恐らく、君がしようとしていたように……向こうがこちらに、周波数を合わせてきたのだ』

 

 未来の大佐が落ち着くように諭す。

 一度頭を振ってから、俺は深く頷いた。

 

「あ、あー……アナタに、会いに来たんです。その、これからさき、縮退を始めるとお聞きして……」

『……飛び込みの営業か?』

 

 お前マジ黙ってろよ。

 声の主はしばらくの沈黙を挟んでから、不意に口火を切った。

 

 ──凄いね。存在の位相が滅茶苦茶だ。時間軸もごちゃごちゃだし、何より色んなものがまぜこぜになってて、ぼくでも種族を絞りきれないや。えっと、どの星系から来たの? まあまあ、お茶でもどうぞ? とにかく座って。

「は?」

 

 途端、だった。

 歓迎の意思が分かりやすいようになのだろうか、俺の眼前に、湯飲みと小皿の置かれたちゃぶ台が出現した。

 もう既存の法則がなんも当てにならない。だって無重力地帯なのにちゃぶ台が()()()()()()し、湯飲みに至っては湯気すら上げている。めまいがしてきたわ。

 

「…………」

 ──えっと、君の思考から、君の元いた星系の歓迎を再現してみたつもりなんだけど。

『これは巧妙な挑発なんじゃないかね?』

『どうだろうな……茶菓子すらある。本気なんじゃないか』

 

 俺は嘆息っぽい行動をしてから、そのちゃぶ台にすっと近寄った。

 

「それで、えーと……」

 ──うん。縮退ね、そろそろ始めようかって思ってたけど……話が変わった。

「え?」

 

 湯飲みに伸ばしていた手がギシリと止まった。

 大佐達も絶句している。変わった、変わった? 今? 今!? 今の今で!?

 

「そ、それは?」

 ──ぼく、話せる人が欲しかったんだ。いっぱい広げたら、いつか来てくれるかなって。でもこんなに近くに元から居たなんて、失敗したなあ。

 

 俺は超例外なので多分試みとしては正しい。

 それにしても。

 

『友達が、欲しかったということか?』

 

 驚愕は俺も同様だ。まさか──まさか、そんな理由で宇宙が広がり続けていたなんて!

 

「てことは、その、拡大も縮退もする必要がなくなった……?」

 

 訪問しただけで問題が解決するとは思わなかった。

 決意がなんか無為になったような気がするが、ええい解決したならそれでいいんだよ!

 望外のスピード解決に俺がガッツポーズを取るか否か悩んでいると。

 

 

 

 ──うん。()()()()()()()()()()()()()。だから()()()()()()()()()()()

 

 

 

「────は?」

 

 ぽかんと、俺は馬鹿みたいに呆けることしか出来なかった。

 数秒遅れて頭蓋骨の内側に、最大音量で軽音が鳴り響く。

 

『始まった!? 馬鹿な! そんな……!?』

『縮退している……ッ! それも、未来で観測された縮退より遙かに速い! あと十数秒で宇宙が粒になるぞ!?』

「な、ま、まっ、待ってくれ何が何で……!?」

 

 周囲を見渡しても変化はない。だが確かに、数十万光年先から変化は行われている。俺でも観測できる本当に宇宙が縮んでる!

 めくれ上がるようにして、際限なく広がっていた宇宙が一転して存在を丸め始めた。置き去りにされた星が滅茶苦茶に揺さぶられているのが分かった。この広い広い宇宙が、突如として命に牙を剥いている。

 

「よせ! やめてくれ! なんでこんなこと……ッ!?」

 ──だって、ぼくはずっと欠けてた。ずっと足りなかった。だけどもう君と会えたから。だから。

 

 そこで声は一度、言葉を切って。

 

 ──()()()()()()()

 

 俺は思わず言葉を失った。

 宇宙は今も尚、際限なく広がり続けている。広がる速度は宇宙の中心を起点に、遠ざかれば遠ざかるほどに速くなり、理論上は光速すら超えるスピードを叩き出すらしい。

 ずっと友達を欲していたのだ。そして俺が現れた。

 

 根底で勘違いしていたんだ。

 宇宙は、広がる必要性なんて本当はなかった。話し相手が欲しくて広げていた。

 見つかったのなら──後は、元に戻すだけでいい。

 

「やめろ……」

 

 観測できる。数多の惑星が重力を狂わされ、住む者たちが天や地面に叩きつけられる。

 

「やめてくれ……」

 

 観測できる。地盤が割れ、星から大陸ごと飛び出すような惨事が次々と起きている。海がある星は空を津波が覆い、砂漠だけの星は奥底のマグマと砂漠が入れ替わって、町や都市が押し流されていく。

 

「もうやめろ、やめろッ! やめてくれ!」

 

 両腕を広げて叫んだ。だけど縮退が止まらない。

 地球がそれに巻き込まれるまであと数秒。

 

【──いってらっしゃい】

 

 させるか。馬鹿野郎させるかそんなことッ!

 

「大佐! "銃"を借りるぞ!」

『……ッ!? 何をするつもりだ!?』

 

 右手に大佐の銃を顕現させる。弾丸と銃身に、闇を纏わり付かせた禍々しいその拳銃。

 周波数を合わせてくれた。だがそれは見せかけであって、表面上は地上の音波であっても逆算すれば向こうの周波数をはじき出せる。

 適切な周波数を探りながらも思考を巡らせる。

 

『た、確かに周波数を合わせればよりクリアに意思疎通が出来るかもしれない、だがそこからだ! そこからどうやって止めるッ!?』

 

 決まってるだろ。撃ち込むんだよ。

 寂しいって、足りなくて補いたかったって。

 ()()()()()()()()()()()()()()()。だったら。

 一秒を切り刻み、そこからさらに細分化した世界。無限に停滞する時間の中で、俺は弾倉に弾丸を装填していく。

 いつも、今でも、彼女の色んな顔が思い出せる。思えば本当に感情豊かな奴だった。

 

 

 ────あっ。ねえねえ、あのかき氷って前に言ってたやつでしょ? 食べたいっ!

 無邪気に笑う顔。装填。

 

 ────貴方の居場所が、帰る場所がなくなっちゃう……!

 誰かの痛みに寄り添って悲しむ顔。装填。

 

 ────だから、内に引きこもって蹲ってないで──立ちなさいっ!! 立て、立ち上がりなさい!!! 私の騎士ッ!!!

 決然と啖呵を切る凜々しい顔。装填。

 

 ────ちゃんと……守ってよね。私の騎士様。

 信頼した相手に見せる甘えた顔。装填。

 

 ────どれだけ近くに、一緒にいたと思ってるの、アンタが無理をしてでも、それでも先に進むって目くらいもう知ってるわ。

 呆れたような物わかりのいい顔。装填。

 

 ────いってらっしゃい。

 そして、俺を信じて、送り出してくれた顔。装填。

 

 

 思いは形を成す。

 想いは、弾丸を象る。

 弾倉に込めた六発の弾丸が溶け合い、単独の銃弾に融合する。

 

 右腕を振るった。直線上に『闇』があった。

 照準は定まっている。

 優しくトリガーを絞るだけでよかった。想いを打ち出す。飛翔した弾丸は真空を滑らかに切り裂き、狙い過たず、その中心部分へと吸い込まれて。

 

 

 ──ッッ……!?

 

 

 制止。宇宙にあるべき制止が取り戻された。

 縮退し続けていた宇宙がピタリと止まって、嘘みたいな静けさが訪れる。いや、元々ここは静かだったか。

 

 ──なに、したの。なんで、ぼく、こんな……!?

「それが愛だよ」

 

 一つ一つの表情が愛おしい。

 もう会えるかも分からないのに、こうして胸の奥底から無限に気力が湧き上がる。

 だから、俺はここにいる。

 

 ──嗚呼。ぼくは……これが、欲しかったんだ。

「そうだ。そして、お前が広げた宇宙を、愛が今もう覆っているんだ」

 

 宇宙はそれきり沈黙した。

 既に縮退は行われてしまった。多くの星系が、数多の惑星が、死の星と化している。

 

「取り返しのつかないことをした、って?」

 ──……ッ!

 

 図星だったのだろう。声にならない声が聞こえた。

 俺は銃をかき消すと、優しく語りかける。

 

「だったらさ……もう一度、やってみようぜ」

 ──……え?

「最初だったわけじゃん。宇宙を造って、運営するなんてさ。そりゃ致命的なミスが起きて当然だろ。色んな行き違いがあって当然だろ。でも、今のお前なら。愛を知ったお前ならきっと、ほんの少しだけ優しくて、ほんの少しだけいい世界を作れるはずだ。勿論、俺たちも手伝うから」

 ──いい、の?

 

 恐る恐るといった問いに、俺は笑みを浮かべる。

 

「大丈夫。そのために来たんだからさ、俺たち」

『厳密には違うはずだが』

「っせーな黙ってろボケ」

 

 違うけどさ。そりゃ違うけどさ、今は良いんだよ今はよォ!

 

 ──……最初から。ぼくが生まれたときから、もう一回?

 

 俺の提案を受けて、声が震えながらも、彼はそう尋ねた。

 頷いて、俺は『闇』に飛び込む。

 途端、爆発的な意識の拡大があった。言語が消し飛んだ。認識が切り替わった。

 

『…………なるほど。これが神の視点か』

 

 大佐達も同様の影響を受けているらしい。

 全能感があった。宇宙をやり直すことも自由自在だという確信があった。

 

『成程な。君に託したのは……正解だったよ』

「ああ。……ありがとう、大佐。あんたは地球の恩人だ」

 

 俺が感謝を告げると、大佐はふっと笑った。

 

『こちらこそ感謝している』

『君を信じたのは、我々にとっても得だった。今度こそ我々は……かつて信じたものを、もう一度信じることが出来そうだ』

 

 二人の大佐はそう宣言してから、ゆっくりと拡散していく。

 宇宙を運営するシステムに自分を溶かしたのだ。まもなく、俺もそうなる。

 

 ──巻き戻すけど。だけど君たちは、巻き戻しきったら、弾かれちゃうよ。元の場所に戻れるかも分からない。

「……大丈夫だよ」

 

 声が震えないよう気をつけたけど、少しうわずった。

 それから意識を集中させる。やり直しはもう一度、同じ宇宙を広げるため。

 

「お前こそ、大丈夫か?」

 ──うん。分かったから、ぼく。いつかきっと話せる人がまた現れる。それまでは……僕を埋め尽くす愛を、一つ一つ見ていこうかと思う。

「それはいいな。無限に時間が経つぜ」

 

 言葉を交わしながらも原子の配分を少し弄る。

 ほんの少しだけ、調整された世界。

 ほんの少しだけ、争いが少なくなるように調整された世界。

 

 多くは求めない。

 

 ──どうして? 今君は、僕と同化して……文字通りの全能を手に入れたんだよ?

 

 その問いに、俺は薄く笑って。

 

 

 

「だって俺さ──未確認生物から女の子を守りたいだけなんだわ」

 

 

 

 直後、数百億年前の歯車が、少し切り替わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遙か昔。

 本当に遙か昔のことだ。

 

 光あれ。どっかの誰かがそう言ったらしい。

 すると光が出来た。

 らしい。俺はかつて誰かににそう語った。

 

 あの時は嘘ついて悪かったと思う。んなワケねー。光なんて元から在ったんだ。

 光があって、光を信じたからこそ、神様は宇宙をつくった。

 理由は分からないが俺はそう確信している。

 

 

 

 ……ところで、俺は誰にその話をしたんだろうか。

 

 

 

「であるからして、この文章の訳は──」

 

 教室に響く先生の声と生徒らが板書を電子ノートに書き取る音。

 それらを聞き流しながら、俺は仮想実体として投影された歴史の教科書を欠伸混じりにめくっていた。

 

 地球という星は過去()()()()()()を経験している。

 歴史の教科書をめくればすぐに分かること。

 

 二つの戦争は凄惨で、多くの犠牲を生んで、地上を滅茶苦茶にした。

 だからこそ、その()()()()を誰もが覚えている。

 

 一度目は、切欠となった銃弾を受けた平和の象徴──その場に居合わせたある男のおかげで一命を取り留めたその人物が和平に奔走し、その結果として一度目の戦争は終わった。

 二度目は、たった一人の元画家志望──彼女が強く強く平和を訴えて、絵画を通して人間の善性を高らかに謳い上げて、その結果として二度目の戦争は終わった。

 

「頑張りすぎだろ、この人ら……」

「おい、指名されてるぞ」

 

 隣の席の男子にせっつかれ、俺は教科書を消す。

 よく考えれば今は異星語の授業であって歴史の教科書を見ていた俺はどう考えてもおかしい。電子黒板の前に立っている、ドラグ星より移住してきた先生は額に青筋を浮かべていた。

 

「あー……すみません。未確認生物から女の子を守る妄想をしてました」

 

 ドッと教室に笑いが起こる。

 だが先生の顔色は変わらない。

 

「そんなことを考えている暇があるのなら、せめて航行船操縦のイメージトレーニングでも……ッ、ああいや、それだけは成績良いんだったなお前……!」

「俺のドラテク舐めないでください。ていうかそれだけって──こう見えて俺はドラグ語検定一級ですけど!?」

 

 キャラやら発言やらのせいで馬鹿だと思われている節があるが、俺はかなりの優等生なのだ。

 将来の夢は外交官である。超でかい母艦とか乗ってみたいしな。

 

「まったく、不良優等生など洒落にもならんぞ」

「不良でも優等生ですってば」

「お前が本当に外交官になれたら、翌日にはスカイツリーが割れるな」

 

 ドッと教室に笑いが起こる。

 俺よりウケ取るのやめてくれませんかねえシィ先生はさあ!

 

 

 

 

 

 

 俺が通うのは宇宙航空の専門学校だ。

 かつては国家単位のプロジェクトだった惑星間航行も、民間企業が台頭し、エキスパートに許された専門職業として認知されている。

 要するに俺はエリートなのだ。うん。

 街を歩きながら流行のタピオカミルクティーをすする。道ばたで色んな星からやって来た人々が、それぞれの端末でタピタピしてる自分を撮っている。有名人ならインスタに12億ぐらいはいいねがつくだろう。

 

『ロザン平和賞にはドラグ星の前指導者、カスタル・ドラグ氏が選ばれ──』

 

 街頭の大型テレビが最新のニュースを映し出していた。

 思わず足を止める。

 

『また本日には地球を訪れる予定の、現国家代表──』

 

 ドラグ。俺が最も興味関心を抱いている星。

 かつては侵略戦争によって領土を増やし続けた歴史を持ちながらも、時の流れにつれて段々と平和主義になっていき、最初に地球を訪れた異星生命体。

 

「……ドラグのお姫様、か」

 

 テレビが映し出すのは今最もホットな政治家の姿である。

 星の光を吸い込んだような淡い金の髪に突き出た二本のツノ。

 剥き出しの肘から先を覆うように細やかな鱗のようなモノが光沢を放ち、臀部からは太めの尻尾がふりふりと揺れる。

 

 記憶が、巡る。

 俺はあのように美しいヒトを知っている、気がする。

 

「…………」

 

 ずっと世界と自分がずれているような感覚があった。

 初めて触った宇宙船を、自分でも驚くほどのスピードで操縦技術を習得した──元々知っていたものを思い出したかのような感覚さえした。

 ドラグ語も同様だった。未知を既知だと錯覚してしまうほどには、俺の言語習得は早く、一方で他の言語についてはてんでダメだった。

 

 何かドラグと因縁があるのかもしんねー。

 飲み終わったタピオカミルクティーの容器を、街路に置かれたゴミ箱に捨てる。

 

「失礼」

 

 同時、俺以外のヒトも、容器をゴミ箱にぽいと投げ入れた。

 

「失礼」

 

 ……てっきりタイミングがかぶったからだと思ったんだがそうじゃないのか。

 眼前に佇む、地球製と思しきワンピースを着込んだドラグの女性は、俺の顔を見ていた。

 

「あ、はい…………!?」

 

 感覚がスパークした。

 だってさっきまでテレビで見ていた顔だしなんでこんな有名人が一人で普通に歩いてんだよってなるしでもドラグの王家の血筋なら認識阻害ぐらい楽勝だって気づいたし確かに滅茶苦茶なことを可能に出来る力だったわマジでって思うしお姫様って本当はこんな大人びた顔だったんだって思ったしロリ顔ばっか印象に残ってるからマジで分かんねーよ。

 マジで。

 マジで…………そうか。

 

 ああ、そうか。本当にお姫様じゃねーか今。

 

「あぁ」

 

 何かこう、とてつもない感嘆の息が漏れた。人生で一番だった。

 記憶が、巡る。

 俺はこの美しいヒトを知っている。知っている。知っているのだ。

 

「あの」

()()()()()

 

 彼女は俺の眼前で微笑み、そう告げる。

 数秒、呼吸が止まった。ゆっくりと拳を開いた。息を吸った。

 

「……初めまして。地球にようこそ」

「……あら? 認識阻害が効いてないの? 一応今の私は、地球人に見えるはずよ」

「ああ、多分こう……いや、分かんないっす……」

 

 ほんとだ俺見えてるのおかしいな。

 だけどまあ、どうでもよくて。なんというか、舞い上がった分の落差が激しくて。

 愛のパワーだとか軽口を返す余裕もなくて。

 

「それで、何の用でしょうか」

「道を尋ねたいのよ」

 

 彼女は腕を組んで俺をじっと見つめて。

 淡い金色の髪を風になびかせて。

 

 

 

「かき氷屋さん、どこ? アンタが言ったのよ、行くって」

 

 

 

 呼吸が止まった。

 身体が全部硬直した。

 

「帰ってくるのも遅いし。こっちから来ないといけないし。挙げ句の果てには約束まで忘れてるわけ? ホンットありえないんですけど!」

 

 怒濤の勢いで文句を言ってくる彼女に。

 幼くて、俺の半分ぐらいしか背丈のないロリが重なって。

 

 ほんの少しだけ、歯車が切り替わる。

 ほんの少しだけ、歯車が切り替わって、そこから連鎖して変化が波及していく。

 ほんの少しだけ、何かが変われば、全てが変わることだってある。

 

 だけど──変わらないものだってあるのだと。

 眼前の彼女の存在が、雄弁に語っていた。

 

「はは……」

「……何泣いてんのよ」

「お前だって、泣いてるぞ」

 

 俺たちは街頭で互いにはらはらと涙をこぼしていた。

 ああそうだ。ずっと、ずっとずっと、ズレている気がした。

 そのズレは──存在の欠落。居るべきヒトが隣に居ない。それがいま、収まった。

 

 どちらからともなく。

 笑いながらも、微笑みを浮かべて。

 

 

 

「──ただいま、姫様」

「──おかえりなさい、私の騎士」

 

 

 

 俺たちは同時に飛び込んで、互いの存在を胸に感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、約束の直接キスは?」

「あんたなんかがめつくなってない?」

 

 泣き笑いしながら男女が抱き合うとかこれ以上なく衆目を集めてしまったので、一時退散して。

 俺たちは俺の住むアパート近くまでやって来て、屋台のかき氷屋さんに並びながら言葉を交わしていた。

 

「そ、そんなに欲しいなら……だ、だけど外はダメよ! 護衛巻くのにすごい手間かかったんだから!」

「へえ。王族の力も、平和主義になって劣化したりしたのか?」

「そーよ。今はもう前みたいには戦えないわね。せいぜいが裏山の形を変えるぐらいかしら」

「十分だよ……」

 

 いちご味のシロップとレモン味のシロップがかき氷を彩る。

 二人してそれを受け取ると、近くにあったベンチに腰掛けた。

 一口食べればシロップの甘みと氷の冷たさが絡み合いながら舌の上に広がっていく。

 

「くぅ~ッ! このために生きてきたって感じがするわね!」

「俺は?」

「なんかめんどくささが前回より跳ね上がってないかしらあんた……」

 

 その言葉に俺は鼻を鳴らした。

 

「別に変わってねーよ。前はほら、最後の方はお互いいっぱいいっぱいだったろ。だから変わったように感じるんだ」

「ふーん……まあ、世界は結構変わったと思うわよ」

 

 私がここにこうしているのが証拠でしょ、と彼女は胸を張る。

 ワオ、大人モードだとしっかりありますね。

 二つの膨らみをガン見していると、姫様が段々と頬を紅く染めて、そろそろと自分を抱きしめた。

 

「……その。キスの先、なんだけど」

「したいです」

「即答!?」

 

 なんならそのためなら地面に額をこすりつけるまである。

 曇りなき眼で請願する俺に対して、「こんな騎士嫌だ……」と姫様がぼやく。

 

「ていうかさ」

「何よ」

「世界」

 

 俺のぶつ切りが過ぎる言葉に、姫様は眉根を寄せた。

 

「世界が、何?」

「大きく変わったとは思うけど。本当に、根本で変わったのはすげえ小さなことだと思うよ」

 

 根底を問うていけば。

 結局は寂しがり屋で愛を知らなかった幼子が、愛を知ったというだけで。

 愛を諦めてしまった寂しい男が、もう一度愛に賭けられたというだけで。

 愛を諦めたくなかった男が、最後の最後まで愛を信じ抜いたというだけ。

 

「愛と平和の物語なんて、前も、今も、変わりないだろ」

「そうね」

 

 頷いた姫様の横顔に、今この瞬間も見とれている。

 一瞬一秒が愛おしいとさえ思える。

 

 彼女の存在そのものが──俺にとって希望(HOPE)だったんだと。

 

 心の底から、確信できた。

 少し恥ずかしい思考をしすぎて、俺は咳払いしてから口を開く。

 

「何も変わっていない。そりゃ星と星はつながった、だけど今も宇宙はずっと拡大し続けてる。まだ見ない友達を探して、あいつは今も旅を続けている」

 

 かき氷を膝において、俺は空を見上げた。

 (そら)(ソラ)宇宙(ソラ)

 世界の在り方は変わっていない。

 ただ、ある男が愛を信じ抜けるようになったり。

 ただ、その娘が正しい道を選べるようになったり。

 その小さな積み重ねが世界の中身を変えたのだろう。

 

「この世界は平和でさ。滅びは来なくてさ。誰もが笑顔でさ……愛し合う男女はベッドインする」

「最後、一般的な話よね?」

「……愛し合う男女がこれからベッドインする」

「布団でしょーがあんたん家ィ!」

 

 ベッドならいいのか……ベッド買うか。

 顔を真っ赤にしてギャーギャーとかみついてくる姫様に対して、俺は最高の愛しさを全部込めて、肩をそっと抱き寄せる。

 

「え?」

「六発の弾丸だった。だけど本当は七発目があるはずだった。俺はそれを知らなかったからさ、今から見るよ」

「ちょッ──」

 

 視界が愛で埋まった。

 なるほどこういう顔なんだなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 世界は変わらない。

 ほんの少しだけ優しくなっただけで、宇宙は今日も広がり続けていく。

 

 

 その微かな変化が、何によってもたらされたのかっていうと。

 

 

 ──まあ、未確認生物から女の子を守った結果、なんじゃねえの?

 

 

 




ご高覧ありがとうございます。
本作品はtwitter上にて「お互いの好きで殴り合おうぜ」という発言がもとに生まれたリレー小説です。

参加者は。

・とやる氏
代表作 「クソの役にも立たないチート能力もらって転生した」
一言メッセージ 「皆愛してる(はぁと」

・泥人形氏
代表作 「無限ルーパー」
一言メッセージ 「アニメ化の打診待ってます♡」

・ベリーナイスメル氏
代表作 「二週目提督がハードモード鎮守府に着任しました」
一言メッセージ 「まともな人間が私しかいなくて辛い♡」

・佐藤樹氏
代表作 「強キャラ東雲さん」
一言メッセージ 「コミカライズの打診待ってます♡」

・弥宵氏
代表作 「銀の星、胎動す」
一言メッセージ 「二次創作待ってます♡」

以上五名となります。
誰がどの話を担当したか当てられた人には豪華プレゼントが?

作者一同楽しめました。読者の方もそうであればと願います。
ここまでのご愛読、改めてありがとうございます。

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