ドラゴンボールF   作:月日火

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取引と監視

トワが持ちかけた取引は大きく分けて二つだった。

フリーザはトワを普段会談で使うソファーへと案内し

その内容を聞くことにする。

 

トワはフリーザの思った以上の紳士的な対応に驚くも

これならばと一安心する。

キリの大きさからみてフリーザはミラを大きく上回っているからだ。

 

「先ずは私達の目的から説明する必要があるわ。」

 

「…ふむ、長い話になりそうですね。」

 

「まぁ…そうなるわね。」

 

ならばとフリーザはウィンドウを開き、近くにいる部下に指示を出す。

というのもスカウターのネットワークは全てフリーザが管理しており

ハッキング対策はベビーやライチーを中心とした研究メンバーによる

完全防備が敷かれている。

 

因みにこれは全てブルマ用の対策だ。

 

 

「スーイさん、お客様の飲み物を持って来なさい。」

 

『了解しました。少々お待ち下さい。』

 

 

「あら、別に構わないのに。」

 

「いえいえ、これから商談する相手に失礼があってはいけませんからね。」

 

「そう、ありがとう。」

 

スーイが飲み物のレモネードを持って現れ

互いにそれが行き渡った後にトワはこう語り出す。

 

「さて、改めて私達の目的は暗黒魔界の復興よ。」

 

「暗黒魔界……聞いたことがありませんね。」

 

当然、嘘である。

フリーザにとって暗黒魔界の存在は決して無視は出来ない存在。

よって没落したという情報が流れていようとも

逐一フリーザはその動向を確認していた。

 

「仕方ないわ、この数百年間で暗黒魔界は没落してしまったもの。…兄であるダーブラがバビディとかいう魔術師に洗脳されてしまったから。」

 

「それは…心中お察しします。」

 

「気持ちだけ受け取るわ。それでここからが最初の取引よ。」

 

「ええ、聞きましょうか。」

 

「暗黒魔界の復興。それの投資者になって欲しいの。」

 

フリーザにとって、その話は気が乗らない事ではあった。

何故ならば、復興を終えた後の自軍のメリットが無いにも等しいからだ。

寧ろ、侵略をこちらへと仕掛け戦争にすらなり兼ねない。

部下を失うのはこちらにとって害にしかならない。

 

だが、フリーザはこの要求が通ればこの取引を成立しても良いと考えた。

 

「…ふむ、それを引き受けたとしてこちらへのメリットは?」

 

「それと釣り合うのならば何を請求しても構わないわ。」

 

「随分と大きく出ましたね。」

 

「それだけ私達もその目的に賭けていると察して頂戴。」

 

「では、貴女方…いえ、トワさん貴女の技術知識とその運用方法の提供を要求しましょう。」

 

「いいわ。寧ろそんなに軽くていいのかしら?」

 

「貴女が虚偽の報告さえしなければ対等ですよ。」

 

あっさりと要求が通ったフリーザは更に警戒心を強める。

そして、牽制に軽い皮肉を加えトワの内心を探る。

 

とはいえトワもまたフリーザが思った以上に素直に応じる事に驚いていた。

自らの技術というのは暗黒魔界随一。

決して軽いものでは無いがそれで復興が叶うのなら願ったりである。

 

「では、先ずは一つ目は成立という事で。」

 

「ええ、それじゃあ次は……。」

 

トワが次の要求を持ちかけようとした時

フリーザの隣が青く光る。

 

「っ……もう嗅ぎつけたのかしら。」

 

「そこまでだ。トワ!」

 

青い光が晴れた先には水色の髪をした青年が立っていた。

青年は背中の剣を引き抜きトワへと向ける。

 

だが、そんな不届き者をフリーザが許すはずもない。

即座に尻尾だけで剣を弾き、首を絞め上げる。

その目には若干の苛立ちと呆れが浮かんでいた。

 

「…今、私は彼女と取引の最中です。

それに貴方は私の目からすれば不法侵入者。

容赦する理由はありません。」

 

そのクグッと首を絞められ青年はその苦しみから逃れようともがき出す。

 

その光景に唖然としていたトワであったが

直ぐに持ち直し、ミラへと指示を出す。

 

「ミラ、いつものように。」

 

「あぁ、わかった。おい、そいつをこっちに渡せ。」

 

ミラはそのまま立ち上がり、青年を引き渡すように要求する。

フリーザもこのままでは唯の邪魔なのでミラへと青年を投げつけこういう。

 

「闘いたいのでしたら、そちらのワープゲートから直通で訓練室の方に行けますのでそちらを使って下さい。こちらには大切な書類が沢山あるのでね。」

 

その言葉にミラはそのまま黙してワープゲートへと向かい青年と共に転移する。

 

トワはそのままソファーに座りなおすような動作を取り

二つ目の要求にはいる。

 

「…さて、邪魔が入ったけれども二つ目ね。」

 

「ええ。」

 

「二つ目は私達との同盟よ。それも半永久的なね。」

 

「ふむ…。」

 

フリーザはトワの契約書を軽く見

思った以上にまともな内容である事に軽く安心を覚える。

内容は要は復興まで傍観という事。互いに不干渉でいる事。

そして、トワ達の手だしの禁止。

 

これならばフリーザも口を出す事はしない。

別段フリーザ軍に対し何か害を仕掛けるなら話は別だが

不干渉というのなら特にいう事は無い。

一応魔術の解析もしたがそのような事があろうはずもなかった。

 

「ま、これも大丈夫でしょう。」

 

「そう、ならこれからよろしくねフリーザ。」

 

「ええ、いい関係にしましょうね。」

 

そう言って2人は握手を交わす。

その時に魔術が発動するのがわかったがフリーザに特に効果は無く

トワもやはりな、という顔で

その場から姿を消したのだった。

 

トワが消えたその後。

フリーザは虚空に向かって声をかける。

 

「さてと、どうせこの会話も聞いているのでしょう?

何処かの誰かさん。今回は大目に見ますが次はありません。

よく覚えておきなさい。」

 

そう言った後、フリーザは再びデスクワークへと戻っていった。

 

 

そして何処かの神殿で唾を飲み込む音がした。

 

 

 

♠︎

 

それから数ヶ月後。

 

スカウターの逆探知によりラディッツの居場所が地球という惑星にある事が

わかり

フリーザは暇潰しにラディッツの会話をスカウターを通じて監視していた。

 

『お前はサイヤ人の恥だ!死んでしまえ!!』

 

どうやら既に孫悟空との邂逅を終えていたようだ。

と言うことは今はピッコロと孫悟空が組みラディッツと戦闘をしている事になる。

 

フリーザは宇宙パトロールから受け取った機密情報。

宇宙の各地で指名手配されている犯罪者のリストを確認しながら

久々の休憩を存分に満喫していた。

 

更に秘密裏に開発していたフリーザ軍の慰安旅行の為の惑星全体を利用したレジャースポットの建設もそろそろ佳境という事もあり

後のフリーザの仕事は警備システムの確認と旅行案内のパンフレット作成のみ。

 

「ふむ、この人は…教育すれば中々使えそうですね。」

 

ペラペラとリストを巡りながらフリーザはいっそ可愛く見れるであろう

三人の戦闘をのんびりと見ていた。

 

ラディッツが高速移動で2人の背後に迫り肘打ち。

更に迫りくる2人の高速の攻防を見切り攻撃する姿。

孫悟空のかめはめ波による一時的な戦闘力の上昇にビビるラディッツ。

 

その後、ポッドを破壊し戦闘力を上回った孫悟空の息子にビビるラディッツ。

 

その無様な姿を見ていたフリーザだったが

ある人物の登場により眉を細める。

 

トワ達が行った洗脳により戦闘力が上昇したラディッツ。

それを加勢しに来た謎の男。

体格から察するにサイヤ人。

という事はアレがタイムパトローラーであるとフリーザは確信した。

 

「全く…これではショーが台無しですね。」

 

ならば、このショーに興味は無いと早々にフリーザは

ラディッツの生存を諦めた。

 

結局ショーは謎の男の活躍もあり、孫悟空がラディッツを抑え込み

ピッコロの魔貫光殺砲によって諸共貫かれラディッツと孫悟空は死亡した。

 

ならばとフリーザは監視から盗聴に切り替え

侵略中であるベジータ達の様子を伺う。

 

やはり、ベジータは地球のドラゴンボールを狙い地球へと向かうようだ。

ベジータ達に支給したのは旧型のポッドだったので

あれから地球に降り立つまで後一年。

 

フリーザは己の更なる研鑽をすべく

最近またベビーに無茶ぶりさせ改良した500倍の訓練室で

残りの休憩時間を費やす。

 

「ふっ……ふっ…!!」

 

フリーザが行なっている事は割と単純な基礎的なトレーニングだ。

全ての筋肉を平等に黄金比になるように自らの知恵を生かして

鍛える。

加えて気弾を超高密度かつ最小になるようにし

それを反射させその気を察知し回避するなどの高度なトレーニングもこなしている

 

フリーザ一族は筋肉が見えにくい体なので成果は分かりにくいが

フリーザの積み重ねは着実にその羽を広げている。

 

その成果は

 

「ハァ!!!」

 

自らのゴールデン化が更なる輝きを持つ事により確かに証明されている。

フルパワー時の力は全てゴールデン化が吸収した。

 

だが、慢心する事はない。

 

 

フリーザの敵は更にその先にいるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・トワとミラ。
フリーザが余りにも強いので現実的な形に落ち着く事にした。
よってトワはフリーザを余り怒らせないように立ち回る。
ミラは早く闘いたくてウズウズしている。

・謎の青い青年。
通称何ンクス。
彼が出る事で歴史が修正されるという何とも不憫な立場。

・時の界王神
正直バレるとは思わなくて一瞬滝汗が出た。

・ラディッツ
ドラゴンボールのゲームなら最初のチュートリアル的存在。
大体のゲームで報われないが
ネオだけは報われたと思いたい。

・タイムパトローラー
今作品の強さはそこそこ。
純粋悪〜ヒット程度の強さまで成長する予定。
よってもう既にフリーザへの敗北が確定。

・レジャースポット
今作オリジナル。
丁度良いところに緑と海が豊かで美しい星があったので
フリーザ直々に指示をし作り上げた後の宇宙最高の楽園。
警備はガーリックJr。
評価はスラッグが担当。
彼の為にこの惑星は改造され彼を太陽から守る特殊なバリアが張られている。



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