ドラゴンボールF   作:月日火

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信頼と裏切り

さて、ブロリーが何故バンパからこの星へと移住しているのか。

時は孫悟空が元気玉を準備している時まで遡る。

 

フリーザはナメック星の様子を観察していた際

星の手配が完了した連絡を受け

さっさとブロリーを移住し己の手元に置こうと

惑星バンパへと向かっていた。

 

だが、そこでフリーザが周りを見渡せばどこもかしこも

まるで何か大きな災害にでもあったような破壊が起きているバンパの光景。

 

そして、目の前には小さく縮こまったブロリー。

眼前に倒れ、息絶えている生物。

最後に、何者かの肉片。

 

ひとまずは話を聞いてみようとフリーザはブロリーへと近寄り話しかける。

 

「何があったのです、ブロリーさん?」

 

フリーザの声に振り向いたブロリーには

涙を乱暴に手で擦って拭いた跡が真新しく残っており

今までずっと、ブロリーが泣いていた事がわかる。

 

「フ、フリー、ザ?」

 

「ええ、私です。ここで何があったのですか?」

 

質問に少し黙るブロリーだったが

やがてポツポツと朧げに覚えている事を話し始めた。

 

 

♠︎

 

事の始まりはフリーザが最初にブロリーと会った後。

念力で封じ込められたパラガスは星から脱出できなかった事よりも

ブロリーが断った事に大層喜んだ。

ただ、修行をかまけてバアと遊んでいる事はパラガスにとって

不愉快な事であり同時に兵士としては邪魔な事だと認識していた。

 

それから、数日。

自分以外の誰かに友達を紹介するなど当然ながら初めてのブロリーは

更に修行を行わなくなった所かフリーザに教えて貰った握手が

切っ掛けになったかのように知識を欲するようになった。

 

それに感化されたのかバアも更にブロリーとの友好を深め

ついには修行など出来ない親友の様な存在となってしまい

ブロリーにとってバアとパラガスの立ち位置の認識がほぼ同列となるほどになっていた。

 

だが、人の心を知らぬ様にパラガスも自身がそんな立場に置かれていること

など知りはしなかった。

そして遂にパラガスは決心し、実行した。

 

 

ブロリーとバアがいつもの様にじゃれあいながら遊びに興じていた時

エネルギー波がバアの胸を貫く。

自分の兵士であるブロリーという道具に不要な存在をパラガスは排除したのだ。

バアは弱々しくブロリーの頰を舐め、何かに齧り付き、涙を流し、ブロリーとの別れを

惜しむ様に息を引き取った。

 

ーーその時、ブロリーの気が爆発的に上昇する。

 

頭を掻き毟り、そこにはもういないバアの存在を無意識に感じ取る。

怒りと哀しみが偶然にも最高の形で融合しブロリーの秘められた大猿の

力を解放する。

ブロリーはその怒りのまま理性を失い

だがそれでもバアの仇が誰であるのかは明確に分かっていた。

本来ならばバアを殺されたとしてもブロリーは自分が悪いと納得していたのだろう。

 

しかし、フリーザという一種の起爆剤がここに来て引火した。

渋々ながら父に知識を教えて貰ったブロリーにはその感情は無い。

そう、既にブロリーは親の枷から解き放たれていたのだ。

 

それを行なったのは間違いなくパラガス。

彼の失態はブロリーの力を恐れる余り

知識をブロリーに与えてしまった事。

始めは軽くあしらっていた。

だが、教えなければブロリーは修行にすら行かなくなった。

だから、教えた。

 

その結果がこれだ。

パラガスはそう後悔しながらもブロリーの首に付けてある制御装置を作動しようとする。

が、作動しない。

ふと、ブロリーの首を見ればそんなものは何処にも無い。

 

では、なぜ無いのか。

答えは簡単、バアが壊したから。

獣の本能がブロリーの自由の為に最期の力を振り絞って破壊したのだ。

 

ならば、もうパラガスに打つ手立ては何も無い。

襲いかかってくるブロリーから無様に逃げ惑い、しかし戦闘から離れて

久しいパラガスがバアとの遊びで無意識に身体の使い方を

覚えたブロリーに勝てるわけも無い。

 

怒りのままパラガスは何度も地面へと叩き潰され、しかしサイヤ人が

誇る異常なまでの生命力がパラガスに気絶させる事を許さない。

 

肉から骨が飛び出し、目玉は潰され、どこもかしこもペチャンコに

なりながらも死ななかったパラガスは自らの頭をブロリーに

踏みつけられ首から上が何もかも無くなった事で漸く苦痛から解放された。

 

この話をターレスが聞けばこう言うのだろう。

 

ーー子が親を殺す。それがサイヤ人だ。

 

 

♠︎

 

ブロリーから話を聞き終えたフリーザは内心ほくそ笑む。

 

なんて好都合なのだと。

 

ブロリーの説得にはパラガスが唯一の邪魔だったフリーザにとって

今回の事は本当に幸運でしか無い。

更に友達であるバアとやらも死んだのはフリーザにとって更なる策を

考えさせるのに充分な材料だった。

 

だが決してそれをフリーザは顔に出さずに同情の眼差しでブロリーを

見つめる。

 

「そうですか……大変でしたね。ブロリーさん。」

 

「ゔ、ゔん。バア、にも、フリーザを、紹介、したがっだ。」

 

話し終えた事で記憶が思い出されたのか再び大粒の涙を流し

ブロリーはバアの亡骸に向き合って、ぎゅっと抱きしめる。

 

ならばと、フリーザは提案していたある事をブロリーに告げる。

 

「ブロリーさん、よぉく聞いてください。……もしバアさんを生き返らせる事が出来るとしたらどうしますか?」

 

ブロリーはこの言葉に反応して勢いよく振り向く。

その目にはもう一度バアと遊べるのかという希望がこれ以上に

無いほど詰められていた。

 

「ほ、ほんと!ほんとにバアを!?」

 

その希望に縋る形でブロリーはフリーザに尋ねる。

フリーザもまた穏やかな笑顔を作り上げながら答えていく。

 

「ええ、ドラゴンボール、というものがこの宇宙にはあります。」

 

「ドラゴンボール…?」

 

「そうです。驚くべきなのはその玉を7つ集めれば何でも願いが叶う、という事です。」

 

「ほ、ほんとに!!?」

 

「ええ、嘘はついていません。どうですかブロリーさん。私と共にドラゴンボールを見つけに行きませんか?」

 

「うん!!」

 

フリーザの提案にブロリーは即答する。

そして、フリーザはその傍らでナメック星に類似する惑星をピックアップし

その星に保護を掛ける。

 

ブロリーは、バアが生き返るという喜びとそれを与えてくれたフリーザに

感謝する一心で満遍の笑みを浮かべていた。

 

「では、先ずはバアさんを安全な所に連れて行って差し上げましょう。

このままでは他の生物に食べられてしまうかもしれませんので。」

 

故にフリーザの提案にもあっさりと承諾し、ブロリーはそのまま

バアの亡骸と共にフリーザの瞬間移動でバンパから脱出したのだった。

 

そして、現在ブロリーは近くの土地で農園を築き

サイヤ人とは思えない程穏やかな生活を送っていた。

勿論、農業のノウハウやそれに類する機械を与えたのはフリーザであるし種を与えたのもフリーザだ。

しかし、ブロリーは持ち前の記憶力で直ぐに工程をマスターし

今では立派に果実や野菜を育てている。

今はこの星に来てから日は浅い為、芽は出ていないが

月が経てば立派に身が育つのは間違いないだろう。

 

そして、最愛の親友であるバアの亡骸はブロリーの家の隣にある大きな砂場の中に内蔵されている冷却装置によって腐る事なく眠っている。

 

そんな充実した暮らしを興奮しながら語るブロリーをフリーザは

軽い相槌をしながらしっかり聞いていた。

 

30分後、次の仕事の時間が迫ったフリーザはブロリーに別れを告げる。

ブロリーはそれを惜しむもののまた来て欲しいと告げ

再び農地へと飛んでいき

それを見届けたフリーザは

瞬間移動で次のビジネスの場へと向かうのだった。

 

♠︎

 

クウラの死から暫く。

フリーザの元に引退したコルドが姿を現した。

 

「フリーザよ、我が息子でありお前の兄であるクウラがサイヤ人に殺された。

お前にはそのサイヤ人の行方を捜し、儂と共にそいつを消しに行くぞ。」

 

コルドは子を殺された事により珍しく怒っており

フリーザにも問答無用で来てもらう腹づもりだった。

 

だが。

 

「そのサイヤ人なら地球という星にいますので後は勝手にどうぞ。私は兄上の仇打ちなどに興味はありませんので。」

 

フリーザは何てこと無いようにあっさりと拒否する。

 

「……なんだと?貴様、サイヤ人に恐れをなしているのか?」

 

「おや、何故そう思うのです?」

 

「聞けば、貴様は滅ぼしたサイヤ人を部下にしていると聞く、裏切られたともな。それにクウラは貴様よりも強かった。だから貴様は死ぬのを恐れ地球に向かおうとしないのだろう!」

 

そのコルドの言葉にフリーザは反応する。

 

「……何か、勘違いをしているようなので言っておきましょう。」

 

そして、フリーザは自らの気の僅か1割を解放する。

そのビリビリとした感覚はコルドをして死を予期させるほどの禍々しいモノ。

 

「私は兄上……いえ、あの負け犬に関して特に思う事はありません。

寧ろ目障りとしか思っていませんでしたよ。」

 

「な……!だ、だがお前はクウラをサポートする為に宰相になると……!!」

 

「あんなのはただの建前です。アイツをスケープゴートにし裏では私が政権を握る。その為の……ね?」

 

フリーザの態度にコルドは激昂し、指を鳴らす。

 

「我が部下達よ!奴を捕らえろ!!」

 

だかその指示をしても部下の誰一人として応じるものはいなく

一人、また一人とフリーザの元へと集まり跪く。

 

「な……!!何をしておるのだ!!愚か者ども!!」

 

「そして、これを最後に貴方も私にとって必要ではなくなりましたので。

……さっさと失せなさい。仕事の邪魔です。」

 

フリーザの放つ気が更に鋭さを増し、コルドは逃げる様にして自らの宇宙船に乗り込み地球へと向かう。

 

だが、付いてくる部下は一人としていなかった。

 

その跪いた部下達はフリーザに媚つく。

 

「へへ……フリーザさま…!貴方に忠誠を!!?」

 

しかし、跪いた全ての部下をフリーザは横薙ぎの風圧だけで上半身を

消しとばす。

 

「金を積まれただけで寝返る者など私の軍には不要です。」

 

そういって残りの痕跡をも消しとばして、フリーザは再び仕事へと

戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー。

・ブロリー
フリーザを完全に恩人認定。

・パラガス
「おおぉ……自分の子供に殺されるとは…これもサイヤ人の定めか……!!」

・クウラ
破壊された惑星はフリーザが修復し売りつけ、忠誠を奪われていた。
因みに元気玉には近くのフリーザ軍も参加していた。
哀れ。

・コルド
息子を失い、裏切られた挙句、たったひとりで地球へ
因みに引退生活でフリーザから金を得て、近くの星で隠居生活していたが
コルドが地球に行った瞬間、フリーザ軍がその星を劇的ビフォーアフターしたのでもう帰る場所もない
残当。

・フリーザ
身内の汚点が粗方消えたので、満足。
それどころかそのお陰でビジネスが円満化したので大勝利。

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