先ず手始めに行った事は何と言ってもトレーニングだ。
折角の才能を腐らせるのは愚の骨頂、やるならば徹底的にやるべきだ。
フリーザ一族は鍛えずとも戦闘力が軒並み高い種族ではあるがサイヤ人の様に急激なパワーアップは出来ない。
だが、コルドの系譜に限ってのみ異常な才能を秘めている事がトレーニングを始めて僅か1週間で嫌でも把握できた。
この肉体、何と言っても飲み込みが早い。
念力や気のコントロールは勿論、体術に関しても僅かな時間で体得してしまうのだ。
そのせいでどうにも達成感がないのが欠点ではあるのだが。
そのお陰もあってか戦闘力はみるみる成長し今では既にクウラを超えた。
とはいえ、その裏では父にかなりの説得をしたものではあるがまぁ必要経費だ。
組手の要望から始まり、この世界で最もメジャーな『重力』の修行や気をどう捉えるかなどを全てクウラに内密にしてほしいと頼んだのはどうしても必要ではあったものの難しいとは考えていた。
何せ、己の家系が頂点だと疑わない父だ。そしてクウラに甘い。
更に生憎と私には師匠などは居ないので全て独学。
どう考えても息子の狂言としか思えないだろう。
しかし父はかなり困惑したもののすぐに承諾してくれた。
魔人ブウや暗黒魔界辺りはこの時代にはもういるはずなのでその付近を考慮したのだろうか?
それにしても重力室に関しては正直期待してはいなかったが、地球の重力の約50倍まで作成してみせたのは正直驚いた。
と同時にブルマの恐ろしさが身をもって知れた。
「…ブルマさんをフリーザ軍に迎えてもいいかもしれませんね。」
…割と本気でそう思う。
♠︎
トレーニングを終えれば次は勉学。
国語、数学といった基本的な知識は勿論、異惑星語など高度な事を教わる。
教わるのは世話役でもあるベリブルだ。
「いいですかなフリーザ様?惑星というのはいかに空気が澄み土地が豊かであるかでその価値は決まります。
荒みきった土地などは論外ではありますがその価値もしっかりと判断するのですぞ?
そして当然ながらその価値を買う相手も把握した上で、なるべく安くなるように値段交渉してくる事でしょう。」
「ええ、それは当然でしょう。交渉相手も馬鹿ではありませんからね。」
「そうですとも。ですので値段は自身が確実に有利になるようにつけるのです。相手の癖を読み何を欲しているのか見極める。そうした上で相手がギリギリ払える値段を見つけるのがフリーザ様には求められておるのです。」
「ええ、心得ていますよベリブルさん。」
「よろしい!では次は……」
勉学の中で最も重要視されているのはビジネスだ。
星を侵略し、その惑星を協力者たる種族に売り払う事で生計を立てているこの軍にとって観察眼は何よりも大事。
軍の中には表向きコルドの力に屈し従っていても裏では反旗の機会や意趣返しの機会を狙っている者などざらにいる。
帝王にならなくとも、私はその様な機会は許してはおけない。
最強とは単純な強さだけでは駄目なのだ。
クウラが存分に踊る場を用意しなければならないのもまた私の役目になる。
つまりこれも自分の為。
手は抜かず免許皆伝を受け取ろうでは無いか。
♠︎
トレーニングと勉学を両立してからだいぶ経つ。
トレーニングから二ヶ月には50倍に慣れた上にゴールデンフリーザになる事が出来た。つまり父超えだ。
更に一年かけてゴールデンフリーザのコントロールはほぼ磐石となった。
残りの数年は勉学や他の技の研究に使用した。出来た技もあったが出来なかったものもある。
やはり『時とばし』や『破壊』は実際に目にして見なければやり方がわからないし『元気玉』や『界王拳』はどうやっても不可能だった。
やはり自身は悪だという事を再確認できたいい機会ではあったが。
そうして、着々と戦闘力を伸ばしていた矢先父からある命令を受けた。
「フリーザよお前もそろそろ惑星侵略をしてもらう。だがお前1人でだ。これは儂がお前が我が一族に相応しいかどうか確かめる試練でもある。心して掛かるといい。」
「ええ、わかりましたよ父上。で?私は何処へ向かえば?」
「惑星ルード。それが今回お前が向かう惑星の名だ。」
惑星ルード。
確かそこはGTで出ていた名前だったか。
究極ドラゴンボールを求めていた悟空達の前に立ち塞がったマシンミュータントのルード。
後はパラパラブラザーズ辺りぐらいしか印象に残っていないが。
「その惑星は最近宇宙中から謎の信仰者を集め勢力を伸ばしているらしい。
大した事では無いとはいえ勢力を伸ばされては面倒でな。頼んだぞフリーザよ。」
♠︎
個人用のポッドに乗って行く事約数ヶ月。
ようやく惑星ルードに到着した。
それにしても遅い。これは宇宙船の性能の向上にも着手すべきだろう。
「さて…ここが惑星ルード。ですが私には大した感傷もありませんしさっさと終わらせてしまいましょう。」
気を全身に張り巡らし、空へと浮く。
そして紫の気を掌に圧縮させて放つ。
要は魔人ブウが神の神殿にいた際行った地球全土の住民にした事と全く同じ。
住民にある僅かな気を探知して追撃し殺すホーミング弾は簡単に見えて実はかなり複雑なコントロールが必要だが私には大した問題でも無い。
ルードがいた場合は面倒だが、操縦者である奴を先に殺してしまえば戦力として奪えるだろう。
「…ハァ!!」
掛け声と共に気弾を放つ。
先ずは最も大きい気から…おやいない。
やはりルード教ではなく別の宗教。こんな昔にミューは来ていない事は分かっていましたしね。
ということはこの星は宗教の苗床として最適であり
ルードというのは元々の名前なのでしょう。
まぁ、私には関係ありませんがね。
小さな気を全て見失う事なく貫き消失させる。
人口はそこまで多く無いのが幸いし、約5分後には全ての気の消失を確認した。
「……拍子抜けですねぇ。まぁ楽で良いでしょう。」
後で生き残りがいると面倒ですし、最後に確認と掃除だけはしておきましょうか。
恐らく住宅街だったであろう所へ降り立つ。
辺りは頭が吹き飛び血を夥しく流す死体や心臓を貫かれしかし辛うじて生きているもので埋まっており、そしてそれらが放つ鉄の匂いが充満していた。
「ぁ…た、たすけ」
「…。」
助けを求めた者は例外なく留めを刺して行く。
そして、全ての生命が死んでいる事を確かめ再び気を放出する。
今から行うのは掃除だ。汚れた床を綺麗にするための。
惑星の表面ギリギリを削り血の痕跡を消す。勿論自然は残したままだ。
その後はさっさとポッドに乗り込み帰還する。
フリーザが去った後の惑星ルードはまるで初めから誰も居なかったかの様に綺麗であったそうだ。
♠︎
「よく帰ったぞフリーザよ!お前の活躍は近くに配置した偵察員からよぉく聞いておる!素晴らしい!あの状態ならばかなりの高値で売れるだろう!お前は我が一族の誇りだ!ハッハッハ!!」
「ええ、ただ今戻りました父上。そして…。」
「フン、帰ったか弟よ。あの程度の星ごときでくたばるかと思っていたが。」
「あの程度の星でやられる私ではありませんよ兄上。」
「…チッ。」
「さて、お前も晴れて立派な帝王の素質を持つ者になった訳だが…お前には褒美を与えようと思っておる。」
「へぇ…それはどのような?」
「なんでも構わんさ。お前にはそれ程期待しておるからな。」
「ふむ…では私に宰相の地位を与えて欲しいのです。」
「宰相とな?どういう事だ。」
「いえ、簡単な話です。私は帝王の座を兄上が受け取るべきだと考えました。」
ズシリ。と空気が重くなる。
それは兄であるクウラから発せられたものだ。
「…なんだと?貴様、俺を侮辱しているつもりでは無いだろうな?」
「おやおや滅相も無い、ただ面倒な惑星の管理などを私が引き受けようと考えたからです。他意はありませんよ。」
「…フリーザよ、詳しく聞かせてくれ。」
ええ、勿論。
その為にこんな場で私は宣言したのですから。
そう言おうとする口を押さえて概要を説明する。
「先ず、はっきりと言わせてもらいますが兄上は支配が雑です。」
「なんだと!?」
激昂するクウラをコルドは睨みつけ抑える。
「抑えよクウラよ。儂からも言うがお前は雑にすぎる。」
「……チッ!!」
そんなクウラに内心で溜息をつきながら更に続ける。
「ですが、帝王として兄上の様は恐怖の象徴として正に相応しいと私は思いました。」
「ほう。それで?」
父が興味を示した、後は王手を掛けるだけだ。
「ですので私は考えたのですよ。軍に二つの顔をつけようとね。」
「…成る程、考えたな愚弟よ。」
「お分かりになりましたか。そうです、兄上が恐怖の顔を持ち私が経済の顔を持つ。勿論頂点は兄上です。どうです?悪い話では無いでしょう?」
「…確かに悪い話では無い。俺が頂点であるならば貴様の意見に異を唱えるつもりも無い。だが一つ聞かせろ。貴様、何を企んでいる?」
ふむ、何をですか。
特に困る事も無いので言ってしまいましょうか。
これを言った方が操りやすくなりますからね。
「別に何もありません。強いて言うならば私と兄上に相応しい立ち位置があったから進言しただけですからね?」
そう言うとクウラは顔を破顔させ、大声で笑った。
ええ、そのまま笑い続けていなさい。
その用意された破滅の城で……ね?
紹介コーナー。
・クウラについて
兄弟仲はまぁまぁ。少なくともゲームよりは良い。
自身の下と認めた弟に一種の疑惑はあるものの、帝王の座に到達した嬉しさが上回った。
もしかして、ナメック星編。
・惑星ルードについて
完全にオリジナル。というかGTをみてあんなに集まるんだったら
宗教が集まりやすいのかなと思った結果。
因みに裏設定で宗教と偽装したレジスタンスという設定だったが
フリーザがそんな事を知るはずが無く、全滅したとさ。
なお、ルード。
・大王大勝利のお知らせ。
意図せずして願いが叶ったコルド、ここから引退の為の準備を始める。
なお、裏では。